2021年J1リーグ明治安田生命第17節 横浜Fマリノスvs清水エスパルス レビュー”両者の意思のぶつかり合いという面から試合の流れを考察する”

 

 マリノス戦における両チームのやりとりを振り返りたいと思います。細かい動きではなく大枠の狙いだけを書いていきます。

 僕がこの試合で注目したのは、

・守備における前向きの意識

・攻守の切り替えをどのエリアで行うか。

 この2つ。以下それをもう少し掘り下げていきます。まずはスタメンと並びから確認しましょう。

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 マリノスは直近ルヴァンカップで対戦した時と同じ4-2-1-3のシステム。

 一方、清水は3-5-2。守備をするときは両サイドのエウソンと奥井が引いて5-3-2のような形になります。ルヴァンでの4バックから3バック(守備時5バック)への変更はこの試合を観る上での大きなポイントです。

マリノスの特徴を確認しましょう。

 話の前提としてマリノスのやり方を簡単に確認しましょう。 というのもこの試合はルヴァンカップでの敗戦を踏まえて考えた方が良さそうだからです。ルヴァンでどんな形でやられたかを振り返ります。

1)攻撃の時

 攻撃時にはウイングが両サイドいっぱいに張ります。これで相手の守備を広げます。そして広げた守備ブロックの間、間に選手が入って崩してきます。

 例えばルヴァンカップの時のように清水が4バックだった場合、

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上図のような状態を作られます。こうなるとディフェンスラインが開いてしまうので清水の中盤の選手はそこに入っていく相手が気になって低い位置に下がってしまう。そうしてどんどん意識が後ろになり相手に押し込まれてしまった。ルヴァンカップでの大雑把な流れはそんな感じだったと思います

2)攻撃から守備に切り替わった時

 ボールを奪われたら即、切り替えて奪いにきます。

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 彼らは攻撃時に均等に間、間にポジション取りしています。なのでそのままの位置から近くの相手をすぐ掴むことができるのです。

 ・3バックによる前への追撃

 それではこの試合について考えていきましょう。

 さきほど説明したようにマリノス相手に後ろを埋める意識で守ると逆に攻め込まれます。たとえブロックの位置は低目でも中盤の守備ラインは一定の位置をキープしなければなりません。加えて幅取り役とライン間に入ってくる選手にも対応する必要があります。そこで清水が何をしたか。それが3バックでの迎撃です。

 まず相手のウイングにこちらのウイングバック奥井とエウソンを当てて監視。さらにセンターバックを2枚でなく3枚に増やす。そして間に入ってボールを受ける選手へはセンターバックが積極的に前に出て追撃します。センターバックが1枚出ても、まだ2枚後ろにいるので持ち場を捨てても安心して前に出られる寸法です。

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  図で言うと中村慶太は後ろを気にするのではなく前の岩田にプレス。間で受ける小池へは福森が前に出て対応します。

 この対戦、言ってみれば前に出ていくことで清水を潰そうとするマリノスと、防衛ラインをキープして跳ね返す清水の戦いです。清水は後ろから前に押し出すことでマリノスの攻撃に対抗していたと考えられます。

・攻守の切り替えをどのエリアで行うか。

 言い換えるとどこでボールを奪うのか。どこでボールを奪われるかです。

1)どこでボールを奪うのか。

 清水がボールを奪取を狙っていたのは相手ボランチの周辺だと思われます。

 清水の守備を見ているとサンタナカルリーニョスはピッチ中央やや低め。マリノスが2トップ横に運んできたら左右の中盤(片山、中村)が前にスライド。これらから相手を少し引き込みながらも中央は塞ぎたい意図が読み取れます。

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 図に沿って清水の意図を説明します。マリノスはボールをじっくり保持するとサイドバックも上がって間、間に侵入してきます。そしてマリノスが間の選手にボールを差し込んだところを後ろから追撃。

 ここでボールを奪われるとマリノスは彼らの特徴から近くのボランチが1枚はボールにアタックしてきます。

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 ボランチが前にきたら、その裏の2トップやボランチの逆側で浮いている中盤(図では中村慶太)にパス。こうしてボランチを外したらマリノスセンターバックを背走させた状態で2トップ+中盤(主に片山)が相手ゴール前に迫ります。 

 マリノスの選手をこちらの守備ブロック内に侵入させる。奪ったら中盤のフィルターを外して相手のセンターバックを背走させ前の馬力でゴールを狙う。清水のボールの奪うエリアからはそんな狙いが読み取れます。

2)どこでボールを奪われるのか。

 清水がボールを奪われ場所として設定していたのは相手陣内のサイド際です。何故そう言えるのかを見ていきます。こちらは簡単です。

 清水はボールを持つと相手陣内の右サイドに片山を上げて執拗にロングボールを配球しています。マリノスの左サイドバックティーラトンとのミスマッチを狙った攻撃です。またティーラトンと片山を競らせる際にはエウシーニョを同じ高さに上げています。片山が競り勝ったボールやこぼれ球を片山、エウシーニョが拾いティーラトンの裏を使ってゴールに迫るのは明確に見せていた狙いでした。清水の得点はまさにその形から生まれています。

 この攻撃の意図は1つは得点を狙うため。もう1つは同時に相手の攻撃のスタートをこちらのゴールから遠ざけることです。

 マリノスは自陣で攻撃をスタートすることになるのでまたじっくり保持して清水の陣内に選手を送り込んで押し込みにきます。そうなれば清水もまたじっくり構える。間にボールを差し込まれたら後ろから追撃。そして中央を割ってカウンターに繋げる。ボールを奪われるエリアの設定にはそんな狙いが読み取れます。

 この攻守の循環が清水側から見た大枠の狙いだと思われます。そしてこの清水の狙いは試合の多くの時間、上手く遂行できていたのではないでしょうか。

・選手の交代と失点について〜まとめにかえて

 ロティーナ監督のコメントから清水の選手交代はフィジカル的に厳しい選手から行われたようです。これは仕方のないことです。

 その中でも一番試合に影響したのは2トップの交代でしょう。なぜカルリーニョスサンタナに代えて鈴木唯人と中山だったのか。

 これは清水の狙いが奪ったら相手を背走させるようにゴールに迫ること。そう考えれば納得できる交代です。監督はこの2人がそれを一番期待できると考えたのでしょう。

 試合は終盤。そして1-1の同点。お互い切るべきカードを切りました。こうなればもうどちらが1点奪うかの勝負です。そして決めたのは横浜Fマリノス。試合はそのまま1-2で終了しました。

 最後の失点は局面を切り取り細かいことを言えば問題はあるでしょう。しかしそれは試合の大枠とはまた別のところです。例えばもしかしたら宮本は畠中のところまで出ない方が良かったかもしれません。でも2トップの脇に運ばれたら中盤がスライドして中央付近は塞ぐ、相手を引き込んだら前向きに奪うチームの狙いを遂行した結果です。

 またマリノスの得点は清水が塞ぎたかった中央を縦パスで割り、天野、仲川と間で繋いでワイドへの展開からクロス。マリノスも最後まで狙いをやり通しました。

 敗戦という結果は悔しいものでした。しかしその中身を掘り下げれば両者の意思がぶつかり合う濃密で熱い試合だったと思います。

 

2021年J1リーグ明治安田生命第12節 大分トリニータvs清水エスパルス レビュー”エスパルスの攻撃を中心に大分戦を振り返ってみましょう”

 アウェイでの大分戦を振り返ります。試合全体のお話というより見たとこだけを書き流していきますね。得点不足が話題になっているので主に相手の守りとこちらの攻めについて見ていきます。

 まずはスタメンと選手の並びです。 

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 エスパルスは4-4-2。スタメンはある程度主力が固定してきた感もあります。左の中盤は中村だったり西澤だったりですが、この試合は中村慶太が起用されました。

 大分は3-4-2-1でしょうか。ワントップに元エスパルス長沢駿が起用されています。チームは変わっても主力として活躍してくれているのは嬉しいですね。

 

 さて、まずは大分の守備から見ましょう。

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 大分の守備は基本はウイングバックが下がって5-4-1の形(上図)。

 ただエスパルスが後ろでボールを持つと下の図のように駿が右サイド寄りをケア、同時に右サイドの町田が前に出てくる5-3-2のような形になっていました。

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 エスパルスは鈴木義、エウシーニョ、河井で相手を引き付け中盤にスペースを作りたい。しかしFWの駿に右寄りをケアされることでマッチアップがずれずボールが入った時に強くアタックされてしまいます(下図)。

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 大分の守り方を見ると間で受ける唯人や河井には強く当たってターンさせない、またそこからボールをサイドに出させて小林成豪と香川の2枚で挟んでボールを奪取しています。そこに大分の狙いを感じました。

 

 一方、左サイド。こちらは右シャドーの町田が立田にいける時はいくのですが、どちらかというと町田は立田を見ながらも下がってブロックを形成する傾向が見られました。

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 そして奥井にパスが出たらウイングバック松本が前に出てプレス。間の慶太にパスが出れば町田と小林裕紀ではさみます。エスパルスの左サイドは基本中村と奥井で攻めるので大分のこの守備対応で詰まっているようでした。

 

 こんな感じで前半の序盤は上手くいったとは言い難いエスパルスの攻撃。しかしちょっとずつ修正らしきものを見せてきます。それを見ていきましょう。

 

 まず飲水タイム後、25分すぎくらい。唯人がサンタナと左右入れ替わったり、中山がワイドから中に入って縦パスを受けたり。ちょっと立ち位置を変え始めています。おそらく役割を入れ替えることで相手の守備基準をぼかしたかったのでしょう。また右の奥に長いボールを入れて相手ブロックを下げようとする狙いも見えます。

 これで少し唯人が浮くようになってゴールに向かって仕掛ける場面も作れてきます(まあほんの少しですが)。

 また一つ、個人的に注目したプレーですが

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 前半29分。実際はここで立田はパスを町田に引っかけられてしまいます。しかしもし通っていれば図のように慶太が左サイドの奥を取ることができました。形としては良かったと思います。

 この大分の右ウイングバックに対して2対1ができるのは大分の守り方から構造的に発生する形です。しかし前半の始めの方は立田は早くパスを出し過ぎ、慶太は中盤に引き過ぎでこの形を発生させられませんでした。この少し前の28分にも立田は町田の近くまでボールを運んでいたので、もしかしたらこれは飲水タイムに指示が出たプレーだったかもしれません。

 

 僕の妄想はこんなところにして時計の針を後半まで進めます。後半はざっくりしか見てないので大雑把にわかるところだけでいきますね(笑)

 後半にはもっとはっきりした修正がされていました。

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 後半になると慶太は明らかに左の高い位置を取って対面の松本を押し下げます。慶太が高い位置を取ると町田は奥井と立田の2人を見る状態。町田は自陣寄りの奥井をフリーにするわけにはいかないので中盤に吸収され大分は5-4-1で守備ブロックを作る傾向を強めていきます。

 こうなると清水は後ろで持てるようになってきます(46~60分の保持率55.4%、61~75分の保持率62.9% Football LABより

 後ろで持てるようになるとエウシーニョが下がる必要がなくなりどんどん前に出てきます。エウシーニョが前の内側に入ってくるので左サイドの小林成豪が絞る。小林が絞ると中山は対面の香川と1対1になり仕掛ける状態を作れる。こんな感じで徐々にポジショニングでチャンスを作れるようになってきます。

 61分に唯人→後藤、河井→西澤の交代。中山を左のワイドに置いて1対1を仕掛けさせるとその流れはより顕著になってきます。

 ここからは左に中山、右に西澤でクロスを上げて中で合わせる狙い。中山が左に回ってからは流れ自体をこちらに引き込みチャンスも何度か作り出します。

 しかしチャンスは作っても決めれないいつものパターン。徐々に高さを加えて最後はヴァウドを入れての鬼のパワープレー。

 しかし最後に入ったエンリケトレヴィザンが想像以上に強い。

 最後は不完全燃焼でタイムアップを向かえてしまいました。

 

 こんな流れで振り返ってきました。エスパルスの守備面は?それはもう大変なのでなしにします。

 最後に僕の全体の感想を言うと始めの方は上手くいかず、でも少しずつ修正して後半はまあまあやれていたのではないかと。ただやれていても点が決まらず負けてしまうのはやっぱり問題でそこは監督が”分析しがたい”とコメントした部分であると思います。やれていたから負けていいとは思っていません。

 それでもチームが成長しているかといえば成長しています。これは間違いない。どんなにイマイチに見えてもここ数試合は狙った形でチャンスを作り出せていてそれはチームのやりたいことが浸透している証だと思います。これは絶対続けるしかない。

 後はチーム戦術を使って相手とやりとりすること(ハーフタイムを待たずにピッチで何らかの修正をして欲しかった)、そして何よりゴールを決めることでしょう。

 そしてそのゴールに関しては僕は唯人だと思っています。現在、チームとして確立されたゴールの形のひとつはサンタナへのクロス。こちらはそれで実際に点も取っています。

 もうひとつ必ず決定機として表れるが唯人のゴール前での突破。これも唯人のためにスペースを作って彼の力を生かすチームで作る形です。これが決まるようになれば一気に複数点が取れるチームになれると思います。まあ、これ希望なんですけど(笑)

 どちらにしても計算できる得点パターンはもう一つ欲しい。なので唯人と唯人が作ったチャンスを決める周囲の選手。そこには過剰に期待しているんですけどね。

  

以上、今回はこれで終わります。

試合結果

大分トリニータ1-0清水エスパルス

得点

38’町田也真人(清水)

昭和電工ドーム大分 /屋内/気温13.9度)

選手交代

清水 61’奥井(西澤)、61’後藤(鈴木唯)、71’指宿(中山)、87’ヴァウド(中村)、87’福森(奥井)

大分 68’渡邉(小林成)、74’福森(松本)、89’エンリケトレヴィザン(小出)

2021年明治安田生命J1リーグ第10節 ガンバ大阪vs清水エスパルス 観戦メモ

試合結果

ガンバ大阪0-0清水エスパルス

得点

なし

パナソニックスタジアム吹田/雨のち晴時々曇り/気温12.2℃)

スタメンと配置

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(左利きは黒川、チアゴアウベス)

選手交代

清水 75’ディサロ(サンタナ)、84’福森(奥井)、84’後藤(鈴木唯)、90+2’竹内(河井)

G大阪 62’倉田(チアゴアウベス)、73’福田(佐藤)、73’山本(チュセジョン)、87’一美(黒川)

清水の保持局面

・清水の最後尾の保持はCB2枚、もしくは時々GK入って3枚でスタート。

・CHの宮本は2トップの裏、河井は宇佐美と左SHチアゴの間にポジションを取っている(エウソンと河井が入れ替わる時もある)。

・右にボールが回った時のお互いの関係は下の図。

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・ガンバの2トップは1枚がアンカーをケア。もう1枚がCBに出ていく。左SHのチアゴアウベスはエウシーニョを強く意識しているようだった。ただし間にポジション取りする河井にもチアゴと宇佐美は影響を受けるため、少しプレスがずれてボール前進のきっかけになっているよう。

・間の河井に対しては井手口が積極的にプレスに出ていく。井手口が広範囲に動くためチュセジョンの周辺にスペースができやすい。

・清水は井手口の後ろのスペースに鈴木唯人。チュセジョンを挟んで左側に西澤がポジション。清水は井手口が動くことでできるチュセジュン周辺のスペースを意図的に狙っているようで鈴木唯人や西澤がフリーになってボールを運べることが多かった。

ガンバの守備対応について

・ガンバのCBは基本はゴール前を埋めたそう。アンカー周辺でフリーの唯人や西澤へは追撃に出てくるが深追いはしない。相手がボールを離せばすかさずDFラインに戻る。またボールホルダーがゴール前から離れれば味方に受け渡してDFラインに戻っていく。

・CBが動けばSBが絞ってゴール前のスペースを消す動きを見せる。またはCHが下がって埋める。基本的には4バック+アンカー1枚の形を保ちたいようだ。

・多少中盤を譲ってもゴール前は動かしたくなさそう。結果、相手に中盤で持たれても最後は最低限1対1、プラスGK東口の状態に持ち込めている。

・清水の右SH中山にボールが入るとガンバのDFは(ガンバから見て)左にずれる。その際、清水のFWサンタナは左に流れる傾向がありマッチアップの担当は右SBになる(下図)。

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サンタナが左に流れた時にミスマッチになりそうな右SBのポジションだが、そこがCBタイプの佐藤のためミスマッチになっていない。

・SHのチアゴアウベスはエウシーニョが上がるとDFラインまで戻って守備をしている。ゴール前で不確定要素になるエウシーニョをマンツーで消し、不意な対応でゴール前の1対1がずれるのを防いでいたのではないだろうか。

・中盤のスペースを使い素早くゴール前を襲いたい清水。中盤は譲ってもゴール前は固めたいガンバ。ある意味前半の展開はお互いの狙いが噛み合っていたと考えることもできる。

清水の守備局面

・ガンバも保持時は基本CHを降ろさない。右SBがあまり上がらないので右寄り3枚のビルドアップとも解釈できる。

・清水は右SH中山を前に出して4-3-3気味の守備陣形。2トップの片方がアンカーを抑えているのを確認したら中山ともう1枚のFWでプレスに出ていく。

・左SB黒川が高い位置。昌子が右利き。中山が右を切りながら出てくる。そのためかガンバはボールを右に誘導されることが多かった。

・ガンバの前進はCB三浦からパトリックへのロングボール。または三浦から右SB佐藤、佐藤からチュセジョンへ斜めのパス。配置的に佐藤がややスペースを得ているため(西澤が中盤から出て行く形のため)前進パスの起点になることが多い。

・ただし清水も2トップの1枚がアンカーを監視しているのでチュセジョンからクリーンに展開される場面はあまり見られない。

・井手口はあまり下がらずフィニッシュ時にはゴール前まで出ていくポジション取り。

・宇佐美は前線から降りてきて中盤のフリーマン的役割。フィニッシュ時はゴール最前線でなくバイタル周辺。ちょっと浮いた場所からのミドルシュートが脅威になっている。

・ガンバのビルドアップがやや単調なこともあり清水は中央を消しながらサイドに押しやる守備ができている。

・ガンバはトランジションやこぼれ球を拾ってのチャンスが多い。これはビルドアップが上手くいってないのか、またはあえてクローズ気味にしているのかはわからない。左SHのチアゴ、右SB佐藤の起用からあえてカオス度をコントロールしていたと見ることもできなくはない。

後半の流れ

 後半、ガンバは宇佐美を前に残してパトリックが下がり4-4-1-1に近い守備。前半、井手口が見ていた河井のポジションをパトリックが見る形だ。

 そのためCBへのプレスは弱まり清水は後ろでの保持に余裕が出てきた。ただしブロック内のスペースは前半より少ないためスローダウンして左右に振りながら前進を狙っている。

 清水が使えているのは昌子と黒川の間のスペース。そこに流れてぺナ角からぺナ角に振って逆サイドのSHやSB(西澤、奥井)が入ってくる形が何度か見られた。

 ガンバは62分にチアゴアウベス→倉田の交代。倉田はチアゴに比べて広く動いてボールを引き出すためガンバは左サイドからもボールを前進できるようになっていった。

 ガンバはさらにCHに山本、右SBに福田の選手交代。両SBを上げて前線4枚がゴール前。長いボールを入れながら全体的に前掛かりになりゴール前でごちゃついた展開を作っていった。

  清水は75分に動きの落ちてきたサンタナに代えてディサロ。84分には鈴木唯人→後藤、奥井→福森。長いボールと上下動する展開に対応するような交代だ。

  ややアンコントロールを受け入れてもオープンな状態からチャンスを作るのはガンバの狙いでもあるだろう。

 対してそれを抑えながらカウンターから勝ち越しを狙う清水。事故的な失点を防ぎながらチャンスも作ったが得点は奪えず0-0で試合は終了した。

 

 

2021年明治安田生命第9節ヴィッセル神戸vs清水エスパルス"保持、非保持局面と失点場面についての簡単なメモ”

試合結果

ヴィッセル神戸1-1清水エスパルス

得点

74’エウシーニョ(清水)

88’古橋享梧(神戸)

ノエビアスタジアム神戸/屋内/気温19.1度)

スタメンと配置

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選手交代

清水 75’竹内(河井)、75’金子(中村)、75’後藤(鈴木唯)、88’ヴァウド(奥井)、90+1’福森(原)

神戸 60’初瀬(藤本)、60’増山(中坂)、82’櫻内(山川)

 

清水保持局面

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・清水の保持時は中村が降りて宮本がアンカーの3センターのような配置。

・宮本は基本2トップ裏にポジション。味方の保持に合わせて絶えずポジション修正していた。2トップを引き付けたり、2トップがプレスに動けばフリーになってボールを受ける位置に動いたり。宮本やその他選手も細かいポジション修正はスムーズになっていた。

・神戸は2トップとSHがかなり積極的なプレスをかけてくる。また内側低めで受ける中村にはCHの郷家も出てくる。そこでプレス時の神戸は山口蛍が中盤1枚で他は前後分断気味になることが多かった。

・清水は後ろでボールを動かして神戸を前に引き付けて裏のスペース狙っている。または中盤にできるスペースで中山や鈴木唯人が受けている。

・降りてきた中村が受けて右に決め打ち気味にサイドチェンジが何度か。中盤逆サイドにフリースペースができやすいのは事前にスカウティングしていたか。

・基本的には上記のように相手陣内にフリースペースを作って早めの攻撃が多かった。清水の現在地を考えると現実的かつ効果的な手法だったのではないだろうか。

清水非保持局面

・相手の後ろでの保持に対してまず中央への縦パスを消すのはこれまで同様。やみくもにプレスにいかず2トップのどちらかが後ろのスペースを消し、もう1枚がサイドを限定しに行くのが基本の動き。

・SHは前を気にしながらサイドへもいける中間ポジション。相手SBにボールが出たら縦を消すポジションに入り強くプレスをかけていく。

・CHにボールが入らない神戸は山口蛍がCBの左脇に降りてきていた。山口が降りると左SHの井上がCHの位置に入ってくる。

・清水は神戸の上のような可変の動きにも山口から中へのコースをまず消す。限定したらプレスに出て奪う。神戸は清水のファーストディフェンスを迷わす動きをあまりしてこなかった。したがって清水は比較的高い位置からプレスにいくことができていた。

失点場面について

 どう修正するべきだったのかはわからないが、個人的に気になったところを記していく。

 まずこの時間帯、神戸はロングボールを多く入れてきている。特に左SB奥井と神戸の右SH増山がミスマッチでそこにボールが入っていた。

 ロングボールが入り、それを起点にサイドからクロスを入れられている。そのためか宮本、竹内は少し後ろを埋める意識が強く感じられる。CHの埋める意識が強いと1列目と2列目の間が空きそこをフリーで使われやすくなる。ここまでが下地として考えたこの時の状況。

 失点場面のスタートは清水のカウンターが終わり相手キーパーが山口にパスを出したところ。この時プレスにいったサンタナの後ろで山口がボールを受けている。少なくとも前半は2トップ裏のCHにボールが入ることは無かった。チアゴは後ろに向かって前にきてくれとジェスチャーしている(少し前の場面でも後藤が後ろに向かって前にきてとジェスチャーしていた)。ここも中盤選手の後ろを埋める意識が影響したのではないだろうか。

 ライン間からライン上に降りてきた古橋に山口が縦パス。ここに竹内が対応しているが少し間を空けて縦パスを警戒するような動き。ただ横方向への制限は効いておらず古橋は2列目の前を右(清水の左サイド側)に横断。ラインの前で横断されると縦軸がずれやすい。宮本の脇から増山に縦パスを出された。ここでも2列目前がわりとフリーなのが気になるところだ。

 そこからクロス。クロスがファーに流れたが折り返されシュート。これが決まって神戸が同点に追いついた。

あとわずかの残り時間。神戸は攻勢を強め、清水は守り切れば勝利。そして神戸は長いボールでの陣地回復を狙ってくる。そこで清水の中盤が前を制限する意識が薄れた可能性は考えられる。

同点後、奥井→ヴァウドの交代。そして原を左SBに回す。これは中央の強度を高めるだけでなく奥井と増山のミスマッチを解消しロングボールによる後退を防ぐ狙いがあったのではないだろうか。

 以上が私の見解だ。では実際、どんな対応をすべきだったのか。それはわからないし、簡単にCHが前に出ろと言ってもピッチ内には複雑な状況があるだろう。しかし同じような状況になったとき何らかの修正が見られることを期待したい。それが見られるならこの試合の勝点1も前向きなものと言えるかもしれない。

 

 

2021年明治安田生命J1リーグ第6節柏レイソルvs清水エスパルス 観戦メモ

試合結果

柏レイソル1-2清水エスパルス

得点

4’鈴木義宜(清水)

28’チアゴサンタナ(清水)

66’神谷優太(柏)

三協フロンテア柏スタジアム/雨/気温19.5度)

スタメンと配置

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左利きは三丸

選手交代

清水 34’奥井(ヴァウド)、70’中山(金子)、70’後藤(カルリーニョス)、85’河井(宮本)、85’チアゴサンタナ(ディサロ)

柏 46’染谷(上島)、46’神谷(椎橋)、59’鵜木(イッペイシノヅカ)、80’高橋(三丸)、80’仲間(サヴィオ

 

 まず柏の保持。CBが持つと左SB三丸はサイドの高い位置。右SB古賀はあまり高い位置を取らない。そして左のCB脇にCHが降りることが多い(主に椎橋)。

 左SHサヴィオは内側にポジション取り、クリスティアーノは張ったり入ったり。2トップは細谷が前に張り、イッペイシノヅカは降りたり左サイドに流れたりと間に顔を出す動きをしていた。

 柏のCBは持ち運んで前をうかがうことはあまりしない。右SBの古賀や脇に降りる椎橋からボールの前進を狙うことが多かった。

 清水のファーストディフェンスは相手CBが後方中央で持つ時は積極的にプレスにいっていない。2トップは中央からの縦パスやアンカーの位置にいるヒシャルジソンを消すポジションを取っている。

 ボールが古賀に入ると左SH金子が積極的にプレスに出ていく。右SH西澤は三丸が上がるとそれに合わせて低い位置まで下がっている。なので2トップと西澤の間は空きがち。そこを椎橋に運ばれた時は河井が前に出てスペースを埋めている。清水の守備基準を大雑把に表すと下の図のようだ。

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 先に述べたように柏のCBは基本持ち運びをしていない。またCHがブロック内の間で受けて中央でゲームを作る動きはしない。柏の特徴はサイドからの攻撃。サイドの高い位置で右はクリスティアーノの右足、左は三丸の左足を生かしたいようだった。

 上に書いた清水のファーストディフェンスは柏のビルドアップのスタートを目詰まりさせるような挙動だ。ボールを持つ時間が長い柏だったが、両SBと脇に降りる椎橋を塞がれ上手く前にボールが入る場面は少なかった。

  柏のチャンスに繋がるのは後ろから長いボールを入れ、落としをシノヅカが受けて間を使われた時だった。清水の両SHはSBをケア、CHの1枚河井が椎橋を見るので少し中盤が空き気味。

 清水のCBは基本ゴール前から動かないのがこれまで観た試合での特徴だ。しかしこの試合の鈴木はサイドへのスライド、前への追撃とかなりゴール前から動いている。おそらく上でかいたようなシノヅカの動きをケアするため与えられていたタスクではないかと思う。

 この試合の清水は相手の保持の形に合わせて人基準度合いが強いを守備をしている。それぞれに役割が明確に与えられているような動きだった。これはこれまで見せてきた守備のやり方とはだいぶ様子が違っていた。 

 次に清水が保持した時。後ろで持つと早めに前に入れていく動きが多かった。2トップへのくさびや、中盤の選手へも相手の2列目を越えるようなダイレクトなボールを入れている。SBは中に入ってビルドアップのサポートをせず基本はサイドを上下動。ここからも後ろでの保持は意識していないのがわかる。

 前へダイレクト、もしくはサイドからの前進。これらは柏の前線の激しいプレスからのショートカウンターを外す意図があったのではないだろうか。推測。

 この試合での気づき。表面に見える型だけを見ていてはロティーナのサッカーを理解できない。ロティーナはまず相手の強みを消して試合を有利に持っていく。そしてそれに対応するためのプランを練り、適した選手を起用する。試合の状況自体を作り出している。この試合、これまでと違いワイドアタッカーを置かない4-4-2で挑んだのはそのような意図からではないだろうか。

 言いたいことは概ね以上。でもせっかくだから後半の様子も書いておく。

 後半開始と同時に柏は選手交代。椎橋に代えて神谷、上島に代えて染谷。システムは4-1-4-1のような。

 神谷は右サイドにボールがある時、下のように金子を古賀とはさむような位置を取っていた。(言い換えると金子と竹内のライン上)

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  神谷はこのライン上やラインから下がって受ける。また大南が持った時はラインから上がって大南をフリーにしたり。神谷のポジショニングで竹内、金子のラインが影響されて少しフリーができてきた。後半はこの神谷を中心にボールを運ぶことができている。また後半はDFラインに中盤が降りずCBだけでボールを動かす。後半入った染谷はボールを動かせる選手に見えた。よって左サイドも前半に比べスムーズになってきている。

 66分、古賀から細谷。細谷のラストパスを神谷が決め柏が1点を返す。しかし後は清水が選手交代を絡めて反撃を断ち切り2-1で試合を終わらせた。

 

2021年明治安田生命J1リーグ第4節 清水エスパルスvsサガン鳥栖 レビュー”相手の前進を許容しているエリアから清水の狙いを考える”

試合結果

清水エスパルス0-0サガン鳥栖

得点

なし

IAIスタジアム日本平/晴/気温19度)

スタメンと配置

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エドゥアルド、中野が左利き

選手交代

清水 64’竹内(ヘナトアウグスト)、64’後藤(鈴木唯)、72’中村(河井)、72’ディサロ(チアゴサンタナ)、西澤(カルリーニョス

鳥栖 62’本田(林)、89’酒井(山下)、89’大畑(小屋松)

 

 主題は清水の守備だが前提として鳥栖の保持をざっくりと。

 鳥栖の保持時はおおむね下図のような配置を取っている。

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 左サイドの移動が特徴的。これで後ろから丁寧に繋いでいく。相手陣内では2トップとIHで中央、ハーフスペースを攻撃。相手DFが中央を締めたら空いたサイドのスペースをWBが上がり攻略していく。

 この攻め手に対し4バックで横幅をケアするのは難しい。そこで清水はこの試合今期初めて3バックを採用することになった。

 さて本題。鳥栖の保持に対する清水の守備だ。清水は鳥栖のCBの真ん中にはほぼプレスにいっていない。しかし2トップの1人は縦パスを切り、もう1人がアンカーの選手を抑える動きを見せている。鳥栖はGK朴がCB間に入ったり、アンカー松岡が降りたりするが清水の動きは変わらない。

 左右のCB、ソッコまたはエドゥアルドにボールが出たらプレスのスイッチ。IHの鈴木唯人や河井が内側を切りながらプレスにいく。

 右CBのソッコは右利き、左CBのエドゥアルドは左利き。なので清水のIHが内側からプレスにくればサイドにはボールを流しやすい。しかし単純なサイド攻撃なら3バックで中央とハーフスペースを埋め、サイドはWBで対応できる。ここからわかるのは清水はサイドからの前進はある程度許容し準備していることだ。

 鳥栖は当然、中へのルートを作っていきたい。しかし中へのコースは清水のIHが蓋をしている。鳥栖としては清水のIHを動かしたい。

 そこで鳥栖の動きを表したのが下図だ。

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 まずWBが前に上がらず低い位置を取ってくる。WBが低い位置でボールを受けて清水のIHを動かそうとしていたようだ。例えば中野が低い位置まで降りてボールを受ければ鈴木唯人がスライドを強いられるからだ。

 さらに鳥栖はアンカー横に降りてくる仙頭のポジショニングで鈴木の守備を動かしてパスコースを作る。

 これで徐々に仙頭から小屋松のルートが開くようになり、鳥栖がボールを前進できるようになってきた。

  ここでヘナトの振る舞いに目を移す。普通に考えればあらかじめヘナトが鈴木の後ろのスペースにスライドしておけば小屋松はフリーにならない。しかしヘナトの動きを見ると、彼はあまりスライドしていない。なぜだろうか。この理由を推測する。

 私の推測はヘナトをCBの前に固定したかったからだ。仮にヘナトがスライドした場合を下の図に示した。

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 もしヘナトがスライドしても小松屋にかわされた場合、もしくはWB中野を経由して中央を狙われた場合が問題だ。2列目のラインがブレイクされ、かつCBの前にスペースができる。そして3バックに対して4枚で攻め込まれてしまう。

 次はヘナトがCBの前にステイした場合。

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 CBの前に1列ラインを作っているので直接相手の侵入にさらされない。カルリーニョスが松岡への横パスを切ってさえいれば、小屋松にはフリーなパスコースがない。しかも前に多少のスペースがあるので、小屋松は前に運んで2トップへのパスを選択しやすくなる。清水側からみればプレーを誘導している状態だ。

 ここでようやくヘナトがプレスにいく。止められればOK。パスを通されてもプレーが制限されていれば最悪3対3でも対応できる。

 ここでも清水は小屋松にボールが入った時にフリーで運ばれるのを多少は許容していると言える。

 こちらが意図した許容は相手のプレーを誘導しているということ。誘導することでこちらの狙った場所で食い止める。つまり許容は相手のプレーの限定に繋がっているとも考えられる。

 この試合で言いたいことはここまで。だが以下、点を獲る狙いにも簡単に触れておく。

 先ほどの場面図をもう一度登場させる。

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 さきほどと同じ図だが表しているのは、ヘナトがCBの前に壁を作って相手からボールを奪ったところだ。

 この時、図に丸印で表したようにサンタナが前で浮いている。そして鳥栖のCBはビルドアップのために左右に開いている。これでカウンターを撃つのは狙いの1つだったのではないかと思う。

 次に後ろで保持した時も。鳥栖は 清水が後ろで保持するとヘナトを2トップの1枚で抑えながらサイドに誘導するようにプレスにくる。

 そしてHV(立田や鈴木)をサイドに追い込むとそこからの全てのパスコースを消すように強くプレスをかけてくる。鳥栖はサイドの高い位置を奪いどころに設定しているようだ。

 ここから清水の狙いで見えたものが2つ。

 1つは鈴木唯人が相手を引きつけたスペースを使う。

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 よく見られたのが唯人にHV中野がついてできるスペースにサンタナカルリーニョスが流れるプレー(上図)。その他には唯人がサイドに開いてコースを開かせ内側を通すプレーも見られた。

 左サイドでも河井は下がるより裏を狙っていた。これらからHVから裏のスペースへの狙いは強くあったと思われる。

 2つ目は唯人を使った逆サイドへの展開。

 前半2:50辺りにカルリーニョスへのくさび。レイオフで唯人が受けて逆サイドへの展開が代表的だ。

 鳥栖はサイドに全体で寄せてくる。これを回避すると逆サイドはフリーになっていることが多い。

 しかし鳥栖はすぐに立田からFWへのフィードをケアするようになる。それでも清水は前のスペースを狙い脇から脇へのパスを繰り返している。結果、ただ前に蹴るだけの形になる。開始しばらくは清水も意図した前進を見せていたものの多くの時間は鳥栖にボールを渡すことになってしまった。

 後半の清水の変化で見えたのはサイドレーンへの守備。鳥栖のWBが持ったら清水ははっきりとWBを前に出すようになった。これでIHが内側から動かなくなり中へのパスコースを消すことができていた。

 ここから少しプレスゾーンを高くしてショートカウンターに繋げるようになる。後半の頭に勝負を仕掛ける感もあったが逆に前半抑えていた後ろのスペースを使われることもあった。

 失点は避けたい清水は再び守備に比重を置くようになる。その後前目の選手交代で1点を狙う意図を見せるがあまりはまらず。試合はそのままスコアレスドローで終了した。

 失点を避ける意識が強かった清水だが、強く意図したものは遂行できていたと思う。ひいき目だがあらかじめ用意したお互いのプランは互角と言ってよいかもしれない。

 しかし試合中に相手を見ながらのやりとりは鳥栖の方が大きく上回っているように感じた。一方、清水は後半の入りに明確な修正を見せたがそれ以外は少し愚直すぎた印象だ。

 鳥栖相手にアウェイでドローは満足といっていい結果かもしれない。守備的と言われるかもしれないが狙いのやり取りは濃厚な楽しさを感じた。しかし次回は勝点1を3に伸ばしたい。そのために監督のプランだけでなく試合中のやりとりでも互角に戦う試合が見られることを期待したい。

2021年明治安田生命J1リーグ第3節 セレッソ大阪vs清水エスパルス レビュー ”第2節までに見られた清水の特徴からセレッソ大阪戦を考察する“ 

試合結果

セレッソ大阪2-1清水エスパルス 

得点

5'中山克広(清水)

22'西尾隆矢(C大阪

84'清武弘嗣C大阪

 (ヤンマースタジアム長居、晴、9.2度)

スタメンと配置

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 清水の攻守の特徴に沿いながらこの試合について考える。

 まずは攻撃の局面から。中でも清水の得点を狙う形からみていく。

 ここまでの試合、清水のチャンスは左サイドが起点になることが多いと感じる。よく見られるのが下に表した形。

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 左ワイドにカルリーニョス。広がった相手のSB- CB間のスペースを片山が狙う。ゴール前にチアゴサンタナ。ファーに後藤と中山が入っていく。

 ここから狙うは主に以下の3つ。

1)片山にパスを出してポケットからクロス

2)片山に相手の中盤がついたらそのスペースにカルリーニョスがカットインしてシュート。(動画はちょっと違うけど左ワイドで持ったらハーフスペース突撃とそれにより空いたスペースを使うところを見てください。)

 3)インスイングのクロスをファーに入れて後藤や中山がゴールを狙う。

 ポジションや役割が入れ替わることはあるが、これに近い動きは頻繁に見せる。また上記の形を作るための左サイドへのボールの運び方も相手に合わせて変化する。

 開幕から2試合は中村慶太をIHの位置でプレーさせカルリーニョス、片山と三角形を作り崩しながら左サイドを前進していた。

 C大阪戦ではここが少し変化。中村に代わり河井を起用。ビルドアップの時に河井を CBの左に降ろしてプレーさせている。

 後ろ3枚の清水。そして左は組み立ての起点になれる河井。河井がボールを持って前をのぞくとC大阪はSHの坂元を前に出してプレスにくる。坂元が前に出るのでC大阪の右SB松田はカルリーニョスと片山を気にする状態。これで松田を狙い打つように長いボールを左奥に送ってサイドの起点を作っていた。

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 このビルドアップから何度かチャンスが生まれている。

 またC大阪のCBは割とボールサイドにスライドしてくるが、逆サイドのSBやSHはあまり絞ってこない。そのため右サイドから後藤や中山がゴール間に入ってくると浮きやすくなっていた。例えば開始直後の中山、また10分の後藤の決定機。これらの場面で彼らはほぼフリーでシュートを撃てている。

 しかし前半の半ば頃から坂元がやや後ろやサイドのスペースを気にするようになる。さらにそれまでDFラインにとどまる意識が見えた松田がサイドに早めに出てくるようになった。これでC大阪の守備対応が明確になったように感じる。よって清水は徐々に左サイドで良い状態でボールが持てなくなってしまった。

 一方、右サイドに目をうつす。右サイドのざっくりした役割はSHの中山は幅取り役、IHの後藤はセカンドストライカー。なので後ろの組み立てはCBのヴァウドとSB原で行いたい。しかしヴァウドがオープンな状態でボールを持てないため相手の守備を動かせない。ときおり後藤が降りてボールを受けるものの右の組み立ては原が大きなウェイトを担う状態になっている。

 原はポジションを中や外に動いて中山へのコースを作ろうとしていたが、清武は原のポジションに動かされず基本はサイドをケア。原は単独で打開するタイプでないため相手に対応されるとよい状態で中山にボールを届ける場面は少なくなってしまった。

 次に守備の局面を見ていく。

 システムでいうと4-4-2と4-5-1の中間のよう。しかしシステム表記に無理に当てはめるのはあまり意味がないと思える。ラインを作ってブロックを固めるより、ボールと味方の位置を見ながらポジションを取っているように見えるからだ。具体的にみていく。

 まず相手が後方で持つ時はサンタナと後藤でプレスに行く。ただし奪いにいくよりサイドを限定するようなプレスだ。

 そしてFWの脇に運ばれたらサンタナがサイドを限定したまま後藤が少し斜めに下がる。これで斜めに中へ入れるコースを消す。(下図)

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 次に左に運ばれた時。先ほどと同様にサンタナが下がる時もあるが、河井やカルリーニョスが出る時が多い。その時の動きを下図に示す。

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 例えばカルリーニョスが前に出たら河井と竹内はスライド。カルリーニョスはサイドを切りながら前に出るが、それでも通されたら河井がさらにサイドにスライドする。そしてカルリーニョスは河井のいたスペースに入る。こうして常に中を埋めながらサイドで奪う。

 その際、逆側のスペースが気になる場合は後藤が下がって中盤ラインを形成する。これで見た目は4-5-1。

 当然必ずこの通りに動くわけではなく、ボールと味方の位置によってプレスとスペースを埋める選手は変化する。

 この試合でも相手が縦パスを入れるコースを消せており、セットした時はほぼ崩されることはなかった。

 しかし少し気になることが2つ。あくまで気になる程度。

 1つはサイドチェンジをされた時。しかもこちらの2列目を越えるように斜めに深くサイドチェンジされた時だ。 

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 上図のようなボールを入れられると、右サイドで前向きな守備から、左側にスライドしながら後ろに下がる守備に変化する。つまり身体の向きと動きの方向を逆に変えなければならない。しかも移動距離が長いため即座にポジションを取れない。

 C大阪はサイドチェンジから清水がセットしきる前にサイドから真横にパスを入れていた。

 守備をセットできないと個々の守備対応の強さに左右される。C大阪のチャンスはこのパターンが多かったように見えた。

 もう一つ気にになったのが相手のボールを奪っても、再びすぐ奪われてしまった時だ。切り替えの切り替え。これは福岡戦で特に目についた。攻撃に転じる際にIHが前に上がっていくためどうしてもアンカーの竹内の周辺にスペースができてしまう。福岡は意図的にそこを狙っていた節も感じられた。ここを狙われた時にどう修正するかは注目だ。

  選手をあまり前に上げず後ろで作り直すのか。または中盤にボールをガードしながらキープできる選手を起用するのか。セレッソ戦では中村の代わりに河井を起用し保持時に低い位置に置いたのはここも関係しているのだろうか。そこはわからない。今後の起用を見ながらまた考察を進めていきたい。