2019年明治安田生命J1リーグ第22節 名古屋グランパスvs川崎フロンターレ

はじめに

 結果は3対0で名古屋の勝利。内容も名古屋が押しており、ここまでの大差になるのは驚きだった。

 果たして川崎は何が上手くいかなかったのだろうか。清水サポの私としては24日に行われる清水vs川崎の予習も兼ねてそこに注目してみたい。

 まずスターティングメンバーと基本システムは下図の通り。

 

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1.川崎Fの保持:名古屋の非保持

 川崎の保持は後ろで数的優位を作り前進していく。そして相手のファーストディフェンスを外したらまず中盤とDFラインの間、ハーフスペースに位置する選手にボールを入れることを狙っているようだ。

 川崎が保持した時の動きのイメージは下図。

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 スタートはCHがCBの間に降りて3バック化し相手2トップに対して数的優位を作る。

 そしてSHが1枚の降りて2トップ周辺に2人(さらにもう1人降りる時もある)。1人が相手2トップの後ろで注意を引き付け、もう1人が脇でフリーでボールを受けようとする。

 そこからハーフスペースの中村やSHに縦パスというのが第一選択肢のよう。SBをサイドの高い位置に上げているがそちらは中が使えない時の選択肢。一番はまず中を狙うよというボールの動かし方だった。

 ライン間に入ったらそのパスがスイッチになり中央を前線のコンビネーションで動かしてDFラインのギャップやサイドの裏を崩していくのがゴールを狙う形のようだ。

 一方、名古屋の守備は強く前から奪いには行かずにミドルゾーンに縦にコンパクトな442のブロックを構えていた。

 特徴的だったのが左SHの和泉が頻繁にDFラインまで下がり532のような形になっていたことで、これにより川崎の右SB車屋が使いたいスペースが消えていた。

 当然中盤の脇が空くことになるのだがCHシミッチの守備範囲の広さと、2トップのシャビエルやジョーが中盤をフォローするように下がることでそのスペースをカバーしていた。逆に左SHの前田はそこまで下がらずどちらかというと前を見るような守備をしていた。

 川崎としてはこの構造から中盤の両脇から攻めれば良さそうだとは感じたが、川崎はまず内側にボールを入れるのを狙っているようでサイドから相手をずらすような仕組みは見られなかった。

 川崎の特徴はボール周辺に人を近づけてショートパスによるコンビネーション。名古屋は中盤サイドを空けても和泉を下げてDFラインのギャップを無くして、サイドに逃げようとしても5バック状態でサイドのスペースを消している。おそらく意図的にこのような状態を作っていたのではないだろうか。

 

2.名古屋の保持:川崎Fの非保持

 キックオフにはそのチームの特徴が表れるという。前半開始のキックオフは名古屋。FWがCHネットに戻すとネットは相手のDFをドリブルで剥がしFWのジョーに縦パスを入れた。対面の相手を1枚剥す。ジョーのポストを使うという2つのプレー。これが名古屋の攻撃の特徴と言えそうだ。

 名古屋はジョーが降りてきてポスト。ジョーが動くことでできるスペースをシャビエルやSHが使う。

 また左サイドを和泉、シミッチ、吉田の三角形で崩して吉田を相手SBの裏に送りこむパターンも多い。

 ポジトラでは右SHの前田がやや前残り気味でそこが出口になっていた。

 川崎の守備はセットして待ち受けるよりボールホルダーに早めにプレスをかけていく。しかしマンツーマンではなくプレスに出たらその周囲の選手がカバーする約束のよう。しかし基本プレスに行く意識が強いのかカバーの約束事が曖昧になる時がある。例えば9分。名古屋左サイドで脇坂が吉田のマークについていたが和泉にボールが渡ると脇坂は吉田のマークを外し和泉にプレス。SBの車屋も和泉を見ていたためマークがかぶり吉田のマークが外れてフリーで裏を取られた。

 また川崎の2失点目は名古屋DF中谷が運んで中村憲剛を剥がし後方が次々と局面的に(川崎1人:名古屋2人)の状態になってゴール前までボールの前進を妨害できなかった。前から行ってはまらないと後ろの守備は薄くなりそうだ。

 

3.後半選手交代による川崎の変化

 川崎は後半開始と共に脇坂に代えて齋藤、59分に山村に代えてレアンドロダミアン、71分に中村に代えて家長を投入。

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 システム表記だと433のような。実際は齋藤と阿部はサイド寄りの前に出て、登里がやや内側に絞って後ろからのビルドアップに関わる形。

 この配置ならダミアンで深さも取れるし齋藤でサイドも使えるとバランスはいい。

 バランスをもあるがそれ以上に川崎はいかに相手陣内に人とボールを入れていけるかか重要そう。登里が後ろの繋ぎに参加することで前から人をが降りる必要がなくなった。前目に人数を掛けて家長が前線で自由っぽく動きボールの循環をスムーズにしていく。この形で上手くいきそうに見えていただけに79分に谷口が退場してしまったのは残念だったなと思う。

 

4.最後に

 3-0の結果はチーム力の差より相性とゲームプランもあったのかなと思う。前から奪いに行きたい川崎と対面の相手を1枚剥がしてからボールを進めるような名古屋。ベクトルが逆になりずれると2点目、3点目のように1枚剥がされて後ろが芋づる式に守備側が不利になって奪われしまうみたいな。

 その点、名古屋の方がまずミドルゾーンにブロックを構えたり、和泉を低い位置に下げたりと守備面で相手への対策を意識していたようだ。

 逆に川崎は相手の弱みを突くより自分達の強みを出していこうとしていたように見えた。それが名古屋の守備にもあった隙を上手く突けなかった理由かもしれない。

 川崎の強みはボールに関わる人数を多くして選択肢を増やし相手の守備の逆を取ることだと思う。その強みは相手ゴール前で出された方がより恐い。そう考えると後半家長が出てきてからの川崎の攻撃の方が本来の彼らの強みに近いようだ。

 清水との対戦では、前回は0-4と散々なものだった。しかしこの試合の前半のように中盤が列を降りて強引にライン間にパスを出させる展開に持っていければ勝機があるかも知れない。