2019年明治安田生命J1リーグ第28節浦和レッズvs清水エスパルス

 

0.スタメンと基本システムf:id:hirota-i:20191009110545p:plain

1.前半【保持する浦和、守ってカウンターの清水】

  浦和はまずボランチの青木をDFラインに降ろして槙野と岩波をSBの位置に開かせる。4バックみたいな形にしてビルドアップのスタート。サイドの槙野と岩波で金子と西澤を開かせてシャドウへのパスコースを作りたかったのではないかと思う。

 この浦和の狙いに清水は上手く対応できていた。下の図がその清水の守備の狙い。

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 ドグと河井は横並びになって442の守備。FWの2人はいつもに比べて前から行かずに下がって真ん中のスペースを消す。清水はFWとSHとボランチの距離を縮めることで中を締め浦和のシャドウへパスを入れさせない守り方をしていた。

 そしてSHの金子と西澤は浦和のCBが持った時は中に絞り、縦パスを出されそうになったら前に出てプレスをかけてボールをサイドに誘導している。
 中を消された浦和がWB(関根、橋岡)にパスを出すと清水のSHはサイドにスライド。SBと協力してはさみ込む。

 清水のSBがサイドに出て行くと浦和はシャドウがSB-CB間を狙う。ここにはCBがついて行きボランチが空いた中央スペースを埋める。そしてサイドからボールを運ばれるとブロック全体が撤退。河井も下がってブロックのスペースを埋めていた。
 中を消すことでサイドに誘導。サイド側のガードを強くしながら撤退して後ろのスペースを埋めてボールを奪うというのが清水の守備全体での狙い。

 守備で強いて気になるところを言うならときおり西澤が前に出てスペースを空けてしまうことくらい。でもそこを使われても上手くサイドに追い出せていたので僕の気にしすぎ、もしくはチームの想定内のプレーだったのかもしれない。

 流れとしては浦和が保持して清水が撤退するので浦和の選手は清水陣内に多く入っていて、自陣には3バックが残っているのみ。さらに清水がボールを奪った時にドウグラスが前を狙って浦和のDFを後ろに引っ張るのでポジトラ時には浦和中盤にスペースができていた。

 今の清水の特徴の1つが攻めに転じた時の思い切りの良さ。ポジトラ時にできたスペースで河井がボールを運んで両SHが一気に前に出てドウグラスと共にゴールを狙う。またはスペースを使ってコンビーネーションで相手をかわしたり。

 一方、清水がボールを持った時は基本ドウグラスへのロングボール。競って落としたセカンドボールを拾ってという攻撃だった。シンプルな攻撃だったので配置が崩れてカウンターでピンチという場面はあまり無かった。

 こんな感じで守ってカウンターという狙いが上手く機能していた前半だったと思う。そして悪くないけど決めきれないなぁという流れの中、二見のスローインからドグが決めて先制。まさに清水にとっては願ったり叶ったりの展開になっていった。

  しかし前半アディショナルタイム、相手陣内でのパスミスからカウンターで失点。この時、橋岡のクロスの前に竹内が金子に対して橋岡を見るよう指示をしている。しかし金子は上がってきた岩波が気になってサイドに出ていくことができなかったように見える。金子が岩波を気にしたのは不意のロストが原因で河井もドグも戻り切れていないからだろう。残り時間を考えればリスクのあるプレーは避けるべきだったと思う。

 

2.後半【変化を出したことが裏目に】

 後半も前半同様に442でセットして守る清水。しかし少し守備局面で前に出て奪いに行ったり、ボールを持った時も後ろで繋いでいこうというプレーが見え始めた。やっぱり勝ち点3が欲しいという考えはあったのだろう。

 かたや浦和の攻撃を見ると前半の途中から少しずつライン間にパスが入るようになっていた。シャドウがブロック内から下がってきたり、サイドのレーンに開いたりと清水の守備が届かない場所へ動き出し始めたのが理由だと思う。さらに興梠もひんぱんに降りて受けようとし始める。清水からしたら「シャドウを消していたら前にいた興梠が隣にいる!」みたいな感じでマークに付きづらかったはずだ。

 そんな感じで前半と同じ形ではあるけどちょっと動きが出てきたよ、というのがが後半の始めの方の流れだった。そして62分に体調不十分だったドウグラスに代えてドゥトラがピッチに入る。それと同時にシステムを4141に変更。

 交代とシステム変更後、明らかに前にプレスしていくようになった清水の守備。

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 プレスの意識が強くなるとマッチアップのずれが明確に浮かび上がってくる。まず左右のCBにはIH(六平、金子)が出ていくという動きははっきりしていた。しかしそうなると後ろのスペースにいる相手のボランチやシャドウが浮いてしまう。例えば六平が岩波にプレスしたら竹内や西澤がスライドして見るのが約束のようだが、竹内は中央のスペース、西澤は橋岡へのパスコースが気になるようでプレスが後追いになってしまっていた。

 その後の監督のコメントを読むと守りを意識しながらもギアを上げて点を狙って欲しいようだった。しかしこれまで4141への変更では「スペース気にせずとにかくガンガン」みたいな動きで点を取ってきたので監督の希望は少し難しいのではと思ったのは個人的な感想。

 そんなこんなでボールを運ばれ始めてしまう清水の守備。75分にはセットプレーの流れから橋岡に逆転ゴールを決められてしまう。4141への変更後は守備の基準がぼやけていたのは事実。セットプレー後にポジションがごちゃごちゃしていた中でのマークはさらに難しくなっていたのだろう。

 逆転された清水は金子、河井に代えて川本とテセ。ここは意図がはっきりしている。もう点を取るしかないので試合をコントロールするよりオープンにしての殴り合い。そのために前をより馬力のある選手に代えたのではないかと思われる。

 ドゥトラのシュートや川本の仕掛けなど前でチャンスを作ろうとするもそのままスコアは動かず1-2での敗戦となった。

 

3.最後に【打つ手の少なさゆえに...】

 前半は最後に失点したものの全体的には狙いを遂行できていた。そして後半62分の選手交代とシステム変更が分岐点になった。ここは多くの人が感じるポイントだと思う。僕も同じ。ではなぜあのような采配になったのか。その推測をまとめにしたいと思う。

 まず後半しばらくして何らかの対策をする必要があったのは理解できる。文中に書いたように前半途中から後半にかけて442での守備を浦和にかいくぐられる場面が何回か出てきたからだ。そのままだとじりじりと攻略されてしまう可能性があった。

 しかしその時選択できる手が4141しかないというのが悩ましいところ。しかもこれまでの成功例を考えると、4141はハイプレスと前線の馬力で押し切る代りにこっちの守備にできる穴も受容するという安定感とは程遠い手段。

 理想を言えば守備の意識はそのままで変化をつける手段があれば良かったのだろうがその手は持ち合わせていない。結局、そのまま何とか耐えるか、思い切って4141に変更するか以外に方法はなかったのだろう。

 そうであればどちらでもかまわないのでもっと明確なメッセージを送って欲しかったなというのが一番の感想だ。できることは多くなくても迷いなくチームを信じてプレーするのが今のエスパルスの強みだと思っている。もし結果的にミスであってもその時の意図や判断を明確に信じて欲しいし、監督にはそういうメッセージを送るような采配をして欲しいと思う。