2020年明治安田生命J1リーグ第20節 大分トリニータvs清水エスパルス レビュー

1.はじめに

 週2回の連戦がようやく一区切り。ここしばらくの試合ではシーズン当初に見せたアグレッシブなスタイルを見せることができていない清水。1週間の準備期間を得たことで勝ち星とともに試合内容の改善も期待されました。

 しかしふたを開ければ1-2の敗戦。しかも終始主導権を相手に握られサポーターにとってかなり期待外れと言っていい試合内容でした。

 それでも試合を振り返ると狙うサッカーの一端は垣間ることができます。以下、試合で見えたものからできたこと、できなかったこと、そしてわずかに見えた清水の狙いを想像しながら書いていきます。

2.スターティングメンバーと配置

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・大分のスタメンは1-3-4-2-1

・清水のスタメンは1-3-4-2-1

 初期の配置はミラーゲーム。しかし両チームともボールを持った時は相手のファーストプレスをずらすように配置を変えていた。

3.大分の保持と清水の非保持の様子

 スタイルは違うもののボールを保持したい両チーム。その狙いを実行できたのは大分の方だった。

 清水は大分の後ろでの保持に対してCFとシャドーの3枚で積極的なプレス。大分は数字上ではCHを1枚降ろして4枚で数的優位。しかしそれより清水のプレスを見ながら必ず1人がフリーになるような巧みなポジショニングが目を引いた。あくまで数的優位はその結果。それはともかく大分はボールを左右に動かして後ろでフリーの選手を作りそのフリーになった選手から中盤に斜めのパスを入れていく。

 清水はアンカー役の選手へはCHがシャドーにはHVがこれまた積極的に前に出てプレスするが単発のプレスになってボールを奪うことができない。前での制限できなさが後ろへ順送りされていく形だ。

 大分の最終的な狙いは清水のHVとWBの間のギャップ。ボールを後ろ、中盤で動かすことでHVとWBの間が空いたらすかさず対角線に長いボールを入れていく。清水は人につく意識がいつも以上に高くボールを動かされると多々ギャップを作っていた。特に左サイド、立田と西澤の間から裏は狙われていたように思える。右のシャドーに田中を入れたのは立田の脇を狙ってドリブルで仕掛けていく狙いを反映したものだと思われる。

4.清水の保持と大分の非保持の様子

 まず清水が持った時には下の図のような配置を取っている。

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 センターバックが左右に大きく開き、ウイングバックとともにサイドのレーンに2枚。

  中盤はシャドーが1枚下がってボールを引き出し、同時にボランチが1枚上がってライン間に。主に河井がアンカー、六平がライン間の役割。

 前線はドゥトラとシャドーの1枚で2トップの関係。片方がゴール前、もう片方がハーフスペースに流れてラインの裏を狙っている(一応)。

 大分は清水の3バックでの保持へ1トップ2シャドーを当てて高い位置からプレス。清水の後ろでの保持のおぼつかなさを狙って前から強く制限をかけるのは最近の対戦相手と同様。

 清水はこのプレスを開いたHVからWBとサイドで動かすことで回避しようとする。しかしWB、特にエウシーニョから内側へボールを動かす時に詰まってしまう。

 後藤や前に上がった六平はサイドにボールが入った際に、相手のWB裏を狙う動きを見せていたがエウシーニョカルリーニョスドゥトラでのコンビネーションに偏ってしまい裏にボールが出てくる場面は少なかった。その結果、中央でボールをカットされる場面が目立った。

 清水の保持で気になったのは高い位置で幅を取る選手が少ないことだ。そのため相手はゴール前を固めることに集中できてしまう。サイドでの幅取り役がWB。そのWB西澤、エウシーニョは共にカットインしてのプレーを持ち味としている。また初期配置で中央が厚め、しかもカルリーニョスドゥトラとも個での打開に自信がある選手のためボールの循環が内側に偏ってしまうとも考えられる。 

5.さいごに

 保持、非保持ともに上手くいったとは言えない試合だったが、チームとしての狙いはこれまでとおそらく変わっていないと思う。しかし選手の配置または特性のかみ合わせのせいかその狙いをピッチ上に描けていないかった。

  またスペースを見ている後藤と局面の打開を狙うエウソン、ドゥトラの関係のように選手それぞれの見ているところがずれているようにも感じる。そこを調整し早急に狙うサッカーが表現できるようになることを期待したい。