試合結果
得点
なし
(IAIスタジアム日本平/晴/気温19度)
スタメンと配置
・エドゥアルド、中野が左利き
選手交代
清水 64’竹内(ヘナトアウグスト)、64’後藤(鈴木唯)、72’中村(河井)、72’ディサロ(チアゴサンタナ)、西澤(カルリーニョス)
鳥栖 62’本田(林)、89’酒井(山下)、89’大畑(小屋松)
主題は清水の守備だが前提として鳥栖の保持をざっくりと。
鳥栖の保持時はおおむね下図のような配置を取っている。
左サイドの移動が特徴的。これで後ろから丁寧に繋いでいく。相手陣内では2トップとIHで中央、ハーフスペースを攻撃。相手DFが中央を締めたら空いたサイドのスペースをWBが上がり攻略していく。
この攻め手に対し4バックで横幅をケアするのは難しい。そこで清水はこの試合今期初めて3バックを採用することになった。
さて本題。鳥栖の保持に対する清水の守備だ。清水は鳥栖のCBの真ん中にはほぼプレスにいっていない。しかし2トップの1人は縦パスを切り、もう1人がアンカーの選手を抑える動きを見せている。鳥栖はGK朴がCB間に入ったり、アンカー松岡が降りたりするが清水の動きは変わらない。
左右のCB、ソッコまたはエドゥアルドにボールが出たらプレスのスイッチ。IHの鈴木唯人や河井が内側を切りながらプレスにいく。
右CBのソッコは右利き、左CBのエドゥアルドは左利き。なので清水のIHが内側からプレスにくればサイドにはボールを流しやすい。しかし単純なサイド攻撃なら3バックで中央とハーフスペースを埋め、サイドはWBで対応できる。ここからわかるのは清水はサイドからの前進はある程度許容し準備していることだ。
鳥栖は当然、中へのルートを作っていきたい。しかし中へのコースは清水のIHが蓋をしている。鳥栖としては清水のIHを動かしたい。
そこで鳥栖の動きを表したのが下図だ。
まずWBが前に上がらず低い位置を取ってくる。WBが低い位置でボールを受けて清水のIHを動かそうとしていたようだ。例えば中野が低い位置まで降りてボールを受ければ鈴木唯人がスライドを強いられるからだ。
さらに鳥栖はアンカー横に降りてくる仙頭のポジショニングで鈴木の守備を動かしてパスコースを作る。
これで徐々に仙頭から小屋松のルートが開くようになり、鳥栖がボールを前進できるようになってきた。
ここでヘナトの振る舞いに目を移す。普通に考えればあらかじめヘナトが鈴木の後ろのスペースにスライドしておけば小屋松はフリーにならない。しかしヘナトの動きを見ると、彼はあまりスライドしていない。なぜだろうか。この理由を推測する。
私の推測はヘナトをCBの前に固定したかったからだ。仮にヘナトがスライドした場合を下の図に示した。
もしヘナトがスライドしても小松屋にかわされた場合、もしくはWB中野を経由して中央を狙われた場合が問題だ。2列目のラインがブレイクされ、かつCBの前にスペースができる。そして3バックに対して4枚で攻め込まれてしまう。
次はヘナトがCBの前にステイした場合。
CBの前に1列ラインを作っているので直接相手の侵入にさらされない。カルリーニョスが松岡への横パスを切ってさえいれば、小屋松にはフリーなパスコースがない。しかも前に多少のスペースがあるので、小屋松は前に運んで2トップへのパスを選択しやすくなる。清水側からみればプレーを誘導している状態だ。
ここでようやくヘナトがプレスにいく。止められればOK。パスを通されてもプレーが制限されていれば最悪3対3でも対応できる。
ここでも清水は小屋松にボールが入った時にフリーで運ばれるのを多少は許容していると言える。
こちらが意図した許容は相手のプレーを誘導しているということ。誘導することでこちらの狙った場所で食い止める。つまり許容は相手のプレーの限定に繋がっているとも考えられる。
この試合で言いたいことはここまで。だが以下、点を獲る狙いにも簡単に触れておく。
先ほどの場面図をもう一度登場させる。
さきほどと同じ図だが表しているのは、ヘナトがCBの前に壁を作って相手からボールを奪ったところだ。
この時、図に丸印で表したようにサンタナが前で浮いている。そして鳥栖のCBはビルドアップのために左右に開いている。これでカウンターを撃つのは狙いの1つだったのではないかと思う。
次に後ろで保持した時も。鳥栖は 清水が後ろで保持するとヘナトを2トップの1枚で抑えながらサイドに誘導するようにプレスにくる。
そしてHV(立田や鈴木)をサイドに追い込むとそこからの全てのパスコースを消すように強くプレスをかけてくる。鳥栖はサイドの高い位置を奪いどころに設定しているようだ。
ここから清水の狙いで見えたものが2つ。
1つは鈴木唯人が相手を引きつけたスペースを使う。
よく見られたのが唯人にHV中野がついてできるスペースにサンタナやカルリーニョスが流れるプレー(上図)。その他には唯人がサイドに開いてコースを開かせ内側を通すプレーも見られた。
左サイドでも河井は下がるより裏を狙っていた。これらからHVから裏のスペースへの狙いは強くあったと思われる。
2つ目は唯人を使った逆サイドへの展開。
前半2:50辺りにカルリーニョスへのくさび。レイオフで唯人が受けて逆サイドへの展開が代表的だ。
鳥栖はサイドに全体で寄せてくる。これを回避すると逆サイドはフリーになっていることが多い。
しかし鳥栖はすぐに立田からFWへのフィードをケアするようになる。それでも清水は前のスペースを狙い脇から脇へのパスを繰り返している。結果、ただ前に蹴るだけの形になる。開始しばらくは清水も意図した前進を見せていたものの多くの時間は鳥栖にボールを渡すことになってしまった。
後半の清水の変化で見えたのはサイドレーンへの守備。鳥栖のWBが持ったら清水ははっきりとWBを前に出すようになった。これでIHが内側から動かなくなり中へのパスコースを消すことができていた。
ここから少しプレスゾーンを高くしてショートカウンターに繋げるようになる。後半の頭に勝負を仕掛ける感もあったが逆に前半抑えていた後ろのスペースを使われることもあった。
失点は避けたい清水は再び守備に比重を置くようになる。その後前目の選手交代で1点を狙う意図を見せるがあまりはまらず。試合はそのままスコアレスドローで終了した。
失点を避ける意識が強かった清水だが、強く意図したものは遂行できていたと思う。ひいき目だがあらかじめ用意したお互いのプランは互角と言ってよいかもしれない。
しかし試合中に相手を見ながらのやりとりは鳥栖の方が大きく上回っているように感じた。一方、清水は後半の入りに明確な修正を見せたがそれ以外は少し愚直すぎた印象だ。
鳥栖相手にアウェイでドローは満足といっていい結果かもしれない。守備的と言われるかもしれないが狙いのやり取りは濃厚な楽しさを感じた。しかし次回は勝点1を3に伸ばしたい。そのために監督のプランだけでなく試合中のやりとりでも互角に戦う試合が見られることを期待したい。