2021年明治安田生命J1リーグ第22節 徳島ヴォルティスvs清水エスパルス 【プレビュー】

・前回対戦の振り返りと徳島の近況

 ホームでの前回対戦(第7節)は0-3での敗戦。清水は積極的なプレスを仕掛けたが徳島の巧みなビルドアップでそれを完全に空転させられた。さらに攻撃も無得点に抑えられスコア、内容とも完敗と言わざるを得ない結果であった。

 今期新たにポヤトス監督が就任した徳島。しかし入国制限により合流が遅れ、シーズン序盤は甲本監督代行が指揮を執っていた。第10節から正式にポヤトス体制となったがそれ以降の戦績は1勝8敗2分。なかなか勝ち星がついてこない苦しい状況だ。

・直近の試合から見る徳島ヴォルティスの特徴

 システムはどの試合も4-2-3-1。下図は札幌戦でのスタメンだ。

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 配置をしっかりとりながらポゼッションをしていく志向はこれまでと変わらないよう。しかし以前ほど最後尾からショートパスを繋いで相手守備をはがしていくことにはこだわっていない。平たく言うと流動的な動きが減り、より固めのチームになった印象だ。

 前回対戦時には後ろで保持した際、ボランチが降りて数的優位を作ったり、ポジションをローテーションしてこちらのプレスを外す動きが見られた。しかしポヤトス監督の元ではあまりそういった動きは見られない。基本は中盤が降りることはなくDFラインとGKのみでビルドアップスタートしている。

 そのため上手くフリーを作れずプレスに詰まることがあるが、その時は長いボールを早めに前へフィードする。ターゲットのなるのは前線中央にポジションを取るCFの垣田。よって相手のCBと垣田の空中戦は頻繁に発生していた。

 ボールポゼッション時には下図の配置を取ることが多い。

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 右SB岸本を少し上げて後ろ3枚。右SHのパトッキオが中央に入ってくる。パトッキオのいたスペースには岸本やボランチの鈴木徳真が上がっていた。基本これをあまり崩さない。

 後ろから繋ぐときは、DFラインから中盤の岩尾、パトッキオを経由してスペースに入る前線にボールが配球される。

 ロングボールは垣田に当てたボールをセカンドトップの位置に入る渡井やパトッキオが拾う。渡井が仕掛けたりパトッキオが配球する仕組みだ。ただ渡井はパトッキオとプレーエリアがかぶり少し窮屈そうだ。どちらかというとパトッキオがパスを散らすパターンが主となっている。またセカンドボールを周囲が上手くフォローできずひたすら垣田が頑張る切ない場面も多々見られた。

 アタッキングエリアに入った時は以前のような間で受けた選手が仕掛けてワイドから斜めにゴールに向かう選手にスルーパス、のような明確な形は見られない。そして単純なクロスもほぼない。強いて言うならアタッキングエリアでもスペースを作ってパスワークで崩すことを狙う傾向だろうか。パスワークからDFラインの裏のスペースを突いてマイナスの速いクロスの形は何度か狙っているようだった。

 

 次に守備の動きについて。プレスを強くかけてくるが最前線から嚙み合わせてくるマンツー気味のプレスではない。2トップは高い位置からサイドを限定。中盤とDFラインはコンパクトな4-4を形成するゾーンの要素が強い守備だ。中盤のラインまで誘導したらボールサイドに閉じ込めるように強いスライドを行ないプレスをかけていた。

 奥井のタイミングのいい上りや原のクロスなどサイド攻撃の形が見え始めた清水だがこのコンパクトな4-4でスライドしてくるプレスにはまったらかなり苦労するだろう。

 清水としては長いボールを基調に攻めるのか、DFラインで動かしてスライドを逆手にとってスペースを作るのかロティーナ監督のプランが注目されるところだ。

清水エスパルスはどんなプランで挑むのか

 ここからは余興程度に予想を交えてみる。

 まず清水のシステムは4-4-2、スタメンは大分戦同様と予想する。徳島は長いボールも使うものの基本はボールを保持したいはずだ。しかし今はまだどんなプレスも外すほどビルドアップが整備されてはいない。また守備局面では引いて守ることは好んでいなく保持して押し込んでDFラインを高く保とうとするはずだ。となれば4-4-2でプレスをかけ保持を阻害した方が相手のやりたい展開を消すことができそうだ。

 相手が垣田へのフィードからセカンド狙いを多用するので、こちらのCBとボランチは固くいつものメンバー。

 ロングボールで押し込む手段を考えて片山は右SH起用が良さそうだ。片山が引き付けて原がサイドを上がってクロスの得意パターンも有効そうだ。

 ただし徳島の左SBジエゴは馬力と高さはあるが地上戦は苦手のよう。相性的には中山のようなタイプに苦労しそうだ。それを見越して相手は田向を起用する可能性もある。ここは両監督がどんな選手起用をするか、駆け引きも見どころの一つだろう。

 徳島のスタメンは私の知識では予想する意味がないので最近の試合で主に起用されている選手の紹介にとどめる。黄色で表したのはこれまでほぼスタメン起用されている選手だ。

 2列目の選手はパトッキオをトップ下に右小西、左宮代も十分考えられる組み合わせだろう。

 ということで以下予想スタメン図。

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 最後に。自分達のプレースタイルを前面に押し出してくるリカルドロドリゲス前監督に比べてポヤトス監督はより90分の駆け引きと相手への対応を重視している節が感じられる。我らがロティーナ監督に近いタイプとも言える。スタメンと前半の優勢、劣勢だけでなく90分どんなやり取りが行われるかを観察するのもこの試合の楽しみの一つではないだろうか。