マッチレポート【2022年明治安田生命J1リーグ第2節 ジュビロ磐田vs清水エスパルス】

試合結果

【得点】

磐田 1- 2清水

【得点者】

9’ 鈴木唯人(清水)

23' 鈴木雄斗(磐田)

67' 中山克広(清水)

スターティングメンバーとフォーメーション

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(清水)フォーメーション:1-4-4-2

選手交代:51’中山(山原)、51’滝(コロリ)、82’髙橋(神谷)、84’栗原(滝)


(磐田)フォーメーション:1-3-4-2-1

選手交代:60’大津(大森)、70’ジャーメイン良(金子)、70’ファビアンゴンザレス(杉本)、81’小川(遠藤)

 

清水の非保持局面(磐田の保持局面)

プレスをかける清水と保持して前進を狙う磐田

 磐田が保持した時は下図のようなポジション取り。この4-3-3のようなポジション取りを生かしてボール保持を強く意識した攻撃を展開していく。

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 対する清水は4-4-2の守備組織。札幌戦ではプレスが上手くはまらなかった清水。しかしこの試合では相手を見ながら前向きで制限をかけることができていた。始めはアンカーポジションの選手(主に山本康)を2トップの背中で抑える。ボールが動いたら勢いよく詰めていく。またアンカーポジションが浮いたら白崎が前に出てチェックしていた。

 そしてSHは基本相手のSBを見る。相手がCBを広げてSBを高く上げたら、SHとSBが縦にスライドして前向きにプレスする状態を作っていた。

 一方、保持する磐田にはWB鈴木雄をフリーにする仕組みが見える。

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 右CBの伊藤が神谷を引き付けて鈴木雄へのコースを作る。同時に金子が片山に意識させるように裏へのランニング。また左ボランチの白崎が前に出るので清水の左にはスペースができやすい。GKから浮かしてサイドに付けるパスにもWBを起点にする意図を感じる。

 鈴木雄斗がワイドで持ったら、降りてくる杉本やアンカーポジションの山本が横でサポート。加えて裏に走る金子で複数の選択肢を作りシュートに繋げる。鈴木雄斗を起点にするこの攻撃は繰り返し見られるものだった。

 左は遠藤が中継役になりながら、松本と大森が入れ替わったり、松本がハーフスペースを抜けていって大森がカットインする動きが見られた。しかしこちらは原が大森を抑えることで決定的な場面は作らせていない。

磐田のネガトラ問題

 試合を通して清水のプレスを受けても前進はできていた磐田。しかし奪われた後、ネガトラ局面では組織的な問題を抱えているようだ。

 磐田はボールの前進と共に松本、伊藤がサイドの高い位置を取る。そのため奪われた時、後ろが2CBとアンカーの山本だけになることが多い。しかも山本がビルドアップサポートのためにサイドに寄ると、DFライン前のフィルターがさらに薄くなる。磐田は遠藤を動かしてプレス回避の役目をさせたり、ライン間でプレーさせたそうだが、そうなると山本康裕の周辺が薄くなるのが悩ましげ。

 清水は前向きに奪う状態を作り、その矢印をそのままカウンターに繋げる。そして相手の守備が整う前に攻撃を完遂させたい。ボールを奪うと2トップ+SHが一斉にあがっていく。この上がり方は整理されていて、中央とその左右、3レーンを並走するように、さらにSBがSHの位置を見ながら大外もしくは内側のスペースに入っていく。

 磐田は奪われた後に守備組織を整えたいが、この速いカウンターにさらされて時間をもらえない。この試合に限らず志向していた清水の攻撃が磐田が抱えるネガトラ時の弱みにちょうど重なっていたと言えそう。

 開始から立て続けにカウンターを受けていた磐田。しかし10分過ぎくらいから後ろの形を変化させる。SB化していた伊藤がDFラインに入り後ろを3枚のビルドアップに。さらに山本が降りて金子と遠藤がアンカーポジションとライン間を入れ替えたりと清水のプレスを揺さぶっていく。

 これで清水は、はまっていたファーストディフェンスがずれてSHの守備がぼやける。SHの守備がぼやけるとボールを前に運ばれる。

 ボールを運ばれて後ろのスペースを気にしてしまうと前向きの矢印が無くなりカウンターに繋がりづらくなる。

 始めはバタついた磐田だったが前半の半ばからは、ボールを握って清水のブロックを押し下げるようになっていった。そこから前半終了までは磐田の時間だったと思う。

清水の保持局面(磐田の非保持局面)

 清水の保持は2CBが両ハーフレーンくらいに広がり、そこに竹内が少し降りてフォローする形。長いボールはあまり出さずに後ろから保持する意識は見せている。

 磐田の守備組織は5-4-1。まず杉本がサイドを限定。横に広がるCBにはSHが出てきてプレスを掛けている。

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 この時、磐田のSHのプレスは正面を消して縦パスを塞ぐようなかけ方だ。CBからサイドに誘導して、そこをWBの縦スライドで詰める狙いのようだった。

 もしボールを運ばれたら磐田は5-4-1でセット。清水はハーフスペースで受けようとする唯人やSHに縦パスを入れたそうだが、無理にねじ込むようなパスが多い。それをカットされて磐田にボールを渡してしまう流れだった。

 前半の清水は保持から崩せた場面はほとんどない。特に気になったのは右サイド。清水のボールの循環はほとんど右サイドで、CB鈴木から原に出したとこでプレスをかけられ詰まっている。前半の半ば過ぎからは特にこれが顕著。磐田に流れを作られた大きな要因になっていたと思う。

後半の流れ

プレッシャーを回避するための修正

 清水は後半にまずCBの左右を入れ替える。監督コメントにもあるように”ビルドアップのところで相手にプレッシャーを掛けられていた”部分への対策だろう。

 後半、まず目についたのが中距離のパスだ。SHをワイドに出して、CB→SHのような飛ばすパスを出している。詰まり気味だった右サイドにフィードが正確な立田を置いたのはSBを飛ばすようなパスを出させる意図だろうか。

 また磐田が前からきた時は、ボランチがCBの間に入る動きも見えて、杉本によるサイド限定を回避して左右への展開を可能にしていた。

 前半は右に限定されていたボールの循環だったが、後半は左からビルドアップする場面が明らかに増えている。プレッシャーが軽減してボールを運んでパスコースを作れる鈴木義宜の特徴が生きてきたのも理由だと思う。

 さらに左から右ワイドの山原へのサイドチェンジが何度か。相手を広げて開いたスペースに飛び込んでいく攻撃を繰り出していった。

 飛ばしのパスを使ってプレスを回避。磐田にセットされたらサイドチェンジで横に引き伸ばす。中長距離のパスで広い展開を作ることで清水も保持から前進する場面を作れるようになっていた。

お互いの選手交代策から終了まで

 まず動いたのは清水。51分にコロリ、山原を下げて中山、滝を入れる。当初の意図は、ワイドを使って前進できる状況を作れていたので、中山に裏を狙わせて彼の打開力からフィニッシュに繋げたかったのだと思う。コロリはやや足を気にしていたところと、無理にねじ込まなくてもボールが前進するようになったので、前を向いて仕掛けられる滝にしたのか。

 磐田は63分、大森に代えて大津。磐田の左サイドでは松本のフリーランから大森がカットインして仕掛ける状況はつくれていた。そこでワイドを万能型からよりフィニッシュに向かえる選手に代えたのだろう。

 清水はこの磐田の交代と同時辺りに、神谷を前に出して中山を左SH、滝を右SHに回す。

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 ここは試合後の監督コメント通り。疲れで神谷の動きが落ちたので、中山を左SHにして常に起点になっていた鈴木雄斗をケアさせる。

 結果的にこの交代が決勝点に結びつく。鈴木義宜がカットしてダイレクトで中央の神谷にパスを出すとカウンター発動。神谷が右の唯人に出して前を向く時間を作ると、再び神谷、そして左の中山と渡って、最後は中山がカットインからゴールを決めた。  

 この得点も清水のカウンターパターン通り。中央を神谷、唯人と中山がその左右を並走。左SB片山がインナーラップしてきて中山のシュートコースを創出していた。

 後半、磐田は山本康裕がサイドに寄る時は、松本や遠藤が下がってカバーしているようにも見えた(見えただけかも)。この場面でも遠藤が中央にはいたが、どうしても守備の強度は高くない。結局、清水の狙い通りのカウンターから2失点を喫してしまった。

 磐田は70分に杉本と金子に代えて、ファビアンゴンザレスとジャーメイン良。前への推進力を出して得点を狙う。しかし、山本義道、ファビアンゴンザレスと続けざまに退場者が出てはさすが厳しい。

 相手の退場によりスペースを得た清水。2人の数的優位から幾度と決定機を作るが、GK三浦が最後の砦となり磐田も得点を許さない。最後は完全な清水優勢の流れだったが、そのままスコアは動かず2-1で清水の勝利となった。