マッチレポート【2025年明治安田生命J1リーグ 第38節 清水エスパルスvsファジアーノ岡山】

 2025年シーズンもついに最終戦。対戦相手は清水と同じく今期の昇格チーム、ファジアーノ岡山です。すでに残留は決定している両チームですが、J1での成長度を見比べる意味ではとても興味深い一戦となりました。

 まずは両チームのメンバーです。

 システムはどちらも3-4-2-1。清水は残留決定後は4バックにもトライしましたが、この試合は3バックを採用。マッチアップを噛み合わせつつ、最も安定したシステムで有終の美を飾りたいという意味合いもあったのかもしれません。

試合の入りはやや岡山が優勢か

 システムは3-4-2-1同士、いわゆるミラーゲームです。お互いに人基準で相手を捕まえる守備の傾向から、ボールの行く末でバチバチとデュエルの発生する試合の入りとなりました。

 清水は岡山のプレスを回避するためか、後ろから右サイドの奥に長いボールを蹴る場面が目立ちます。おそらく右WB高木選手を岡山の左WB佐藤選手と競り合わせ優位性を作る意図があったのだろうと思われます。

 しかし岡山は高木選手へは佐藤選手でなく、左CB工藤選手を前に出して対応。高木選手vs工藤選手はほぼ工藤選手の勝ちで、清水は出したロングボールをことごとく失ってしまいます。

 岡山は工藤選手が競り勝ったこぼれ球を拾い逆襲に転じます。その際、岡山の前線はプレスで前に出ているのでそこをシンプルに使うことでチャンスを作ることができていました。

 序盤はマッチアップが噛み合う中で、岡山がトランジションからチャンスを作る回数がやや多いかなという流れで進んでいたと思います。

前半の半ばから清水がボールを保持する流れに

 岡山のプレスにビルドアップが詰まっていた序盤の清水。前半の10分も過ぎるとマテウスブエノ選手がディフェンスラインまで降りてボールを触り始めます。ブエノ選手が後ろでビルドアップに絡むと徐々に清水が保持できるようになっていきました。

 ブエノ選手が降りると、左右のセンターバックが開いて4バックのような並びになります。

 清水の後ろが4バックに可変したことによる影響は、岡山のファーストプレスの基準がずれたのと、高い位置に上がる清水のウイングバック高木、山原選手に両サイドの佐藤、本山選手が押し込まれたことです。

 さらに間に顔を出す乾選手や矢島選手を消すため1列目の守備がやや絞り気味。こうした理由から岡山1列目の脇にフリースペースができて、そこを起点に清水が前進をうかがえるようになりました。

 また岡山のプレスが弱まったため左の後ろに降りたブエノ選手がフリー気味になります。これでブエノ選手が自分で持ち運んだり、インサイドの乾選手や最前線に出た山原選手に絶妙なパスを通したりと左サイドで多くのチャンスを作り出せるようになっていきます。 

 清水は相手陣内まで前進すると、ボールサイドに人数をかけて岡山の最終ラインを崩しにかかります。

 試合全体を通して岡山のブロック守備は、カバーの動きなどしっかり整理されているなという印象を持ちましたが、清水の人が湧き出でるような流動的な攻撃に少し組織が崩れそうな場面も見られました。

前半終了に向けて再び岡山がペースを握る

 38分辺りの岡山非保持(守備の局面)に注目すると、まず左WBの佐藤選手が縦スライドして住吉選手のところまでプレスをかけてボールを後ろに戻させています。

さらに梅田選手を経由して左に降りたブエノ選手にパスが出ると、今度は右WBの本山選手が縦スライドしてブエノ選手までプレス。

 岡山が1列目脇のスペースやブエノ選手をWBの縦スライドで消し始めると、清水のビルドアップは自陣寄りで詰まるようになっていきます。

 また岡山のボール保持では、江坂選手がボランチの高さまで降りたり、左WB佐藤選手が低めで持ったりと清水のプレスを引き付けるようなプレーも見られるようになりました。

 これで左CB立田選手が少しフリーになって精度の高いパスを前線に通したり、サイドの高い位置まで上がったりと崩しに関わる場面を作っていきます。

 清水はこれに高い位置から制限をかけようとしますが、プレスの連動が薄いため一人交わされると一気にディフェンスラインが晒されるような場面が頻発します。

 例えば42分。清水が苦し紛れに前に出したボールを岡山が奪うと、田上選手が清水のプレスを引き付けてから右サイドの奥にフィード。これを奪おうとサイドまで飛び出した蓮川選手が本山選手に裏を取られ、本山選手からルカオ選手にラストパス。そこからルカオ選手のシュート→ポスト→跳ね返りを江坂選手が拾って再びシュートとかなり際どいシーンを作られてしまいます。

 このまま岡山が押し込む流れが続きましたが、清水がしのいでスコアレスのまま前半は終了しました。

後半の入りは長いボールとトランジション

 後半の入りはお互いにセーフティを意識したのか前に長いボールを出す場面が多かったように見えます。

 その際、清水は前半と違ってステファンス選手に向かって蹴ることが多く、これをマイボールにできるかは五分五分といった感じだったと思います。

ステファンス選手のプレーを長い時間じっくり見る機会がありませんでしたが、どうやら競り合いに強いタイプではないようです。

 この展開であればワントップは競り合いが得意な選手がいいということなのかもしれません。58分にステファンス選手と髙橋利樹選手の選手交代が行われます。

 岡山も60分に宮本選手→田部井選手、本山選手→松本選手の交代。ここは岡山の選手の特徴を把握してないので明確な意図はわかりません。

 交代後、61分の清水のチャンスは髙橋選手のプレーから。相手二人を背負ってキープ。潰れながらも粘って高木選手に繋いで右サイドの崩しの起点になります。松崎選手が右からクロスを入れて逆サイドに降ったボールを山原選手がシュート。シュートは相手に当たって外れましたが、ここは清水の選手交代の意図が上手く表れたシーンだったと思います。

岡山の先制点は再三狙っていた形

 先ほどの清水のチャンスのすぐ後、63分に岡山がついに均衡を破ります。

 岡山がスローインを後ろで繋いだ時、同時にルカオ選手が住吉選手の脇にポジションを取っていました。左サイドの佐藤選手から立田選手にパスが送られると立田選手はダイレクトでルカオ選手にピンポイントのロングパス。

 

 ルカオ選手は住吉選手を強引に振り切ってシュートを撃ち、これが決まって岡山が先制します。

立田選手の見事なダイレクトパスとルカオ選手の身体の強さは特筆すべきですが、3バックの脇を狙ったフィードは岡山が何度か見せていた形です。

 清水の非保持はマンツーの意識がかなり強く、対面の相手にポジション取りが影響されます。

この試合でも左右のWBが相手のWBを見るため前めのポジションを取っていて、そのため何度か3バックの脇を綺麗に取られる場面が見られました。

 岡山の一発に上手くやられてしまったように見えますが、前半から何度か突かれていた攻撃に清水の守備がついに決壊してしまったとも言えそうです。

整理されていく岡山の非保持組織

 清水は66分、松崎選手、矢島選手、高木選手に代って北川選手、宮本選手、北爪選手の3枚替え。得点を狙うためにフォワードタイプの北川選手を入れ、ワイドにはより高い位置に北爪選手を張り出させる。交代の意図はそんな感じでしょうか。

 しかしこの時間帯、僕の目についたのは岡山の非保持組織でした。1点リードしたことで無理にプレスをかける必要がなくなったのかもしれません。プレスと同時にスペースを埋める動きもより整理されてきたように見えました。

 例えば66分。ファーストディフェンスでサイドに誘導すると、WBが縦スライドしてサイドのエリアに蓋をします。同時に1列目の木村選手が背後のボランチにプレスバック。これで山原選手から前に出すコースを消して後ろにボールを戻させました。


 またマテウスブエノ選手が後ろに降りても、同じようにサイドにはWBが縦スライドして、中盤のスペースはシャドーが埋めます。

 またボールを持たれたらしっかり5-4-1でセット。これで岡山の非保持組織に隙がなくなり、清水が後ろでボールを持ってもブロック内まで侵入できない時間が続きます。 

 そして71分にルカオ選手→一美選手の選手交代が行われたすぐ後、75分に岡山に追加点が生まれます。

 ブローダーセン選手からのロングフィードが清水陣内で弾かれて、いったりきたりした後にボールは江坂選手のもとへ。江坂選手が山原選手の裏のスペースへパスを出し、受けた木村選手がほぼフリーで右サイドからクロス。木村選手からのクロスをゴール中央に走り込んでいた江坂選手がボレーで決めて岡山がリードを2点に広げます。

 まずクロスを上げた木村選手が3バックの脇のスペースに流れてフリーになったのはここまで何度か見られた形。そして逆サイドのWB北爪選手が前に出ていたためゴール前のカバーが間に合わず江坂選手がフリーでした。

 江坂選手のシュート自体はゴラッソでしたが、ラインの繋がりが薄い清水の非保持組織の問題点が表れていたシーンだったと思います。

最後に清水が1点を返す

 2点目を取られてしまった清水。少し焦りもあったのか岡山ブロック内に無理に差し込むようなパスが目立ち始めました。

 しかし岡山がそれまで通り組織を整えてスペースをしっかり管理しているので、パスを差し込んでも引っかけられてカウンターを浴びる。そんな展開が続きます。

 清水は80分に蓮川選手に代えて小塚選手。小塚選手と乾選手をサイドに置いて4-4-2にシステム変更しました。

 清水のシステムが代わっても展開は特に変わらず。岡山がスライドとプレスバックによるスペース管理をしっかり行うため、清水はなかなか前進をうかがえません。

 そんな展開の中、88分に清水のゴール。北川選手が左サイドに流れて動いたことで岡山の守備の連動が少し崩れて、引きつけられた立田選手の裏にギャップができる。そのギャップに山原選手が相手を外して走り込むとそこに乾選手が針の穴を通すようなスルーパス。山原選手が中央に折り返し、髙橋選手がゴールを決めました。

 ここまで流れとしては岡山ペースでしたが、アタッキングサードでの一発があるのは清水の強みです。

 ここも前半の良い時間帯のようにサイドで人が動いて相手の守備を動かす。ディフェンスラインのギャップに斜めに入って裏を取る。ピンポイントで合わせる選手同士の関係性など。まぐれではなくこれまでの清水の特徴が表れたゴールだったと思います。

その後、6分ほどアディショナルタイムがありましたがスコアは2対1のまま試合終了のホイッスルが鳴りました。

最後に

 過去3年間、岡山とは何度も対戦しましたがこの日の岡山が一番強いなと感じました。これまでは何かを取ると何かが足りなくなるのかなというイメージがありましたが、どの局面でもJ1の強度が出せていたのではないかと思います。

 清水は監督始めスタッフ陣や一部選手の退団も報じられモチベーションの維持が少し心配されましたが、しっかり湘南戦から立て直して良い試合を見せてくれました。

 結果は残念でしたが、得点シーンも失点シーンにも秋葉エスパルスらしさを感じることができ、このチームの締めくくりの試合内容だったといっていいのかもしれません。

 このチームのマッチレビューを書くのも最後かと思うと少し寂しさを感じますね。とにかく3年間有り難うございました。なんだかんだで楽しかったです。