サッカーの戦術とは

 
・戦術の定義とは「選手同士がコミュニケーションをとるためのツール」である 。
 
レイモンド・フェルハイエン
 
 
・「戦術」とは、『その中でも、実際に現場で活動している人々が、その局面を戦略によって要求されている成功に導くための方法』の部分です。
 
 鈴木達郎
 
 
・戦術とは問題を解決する行為である。
 
 

『ゲ ーム中に相手を打ちのめす 、または相手の意図を無効にすることを可能にするアクション 』
 
『戦術とはフィジカル ・テクニック ・メンタルまたその他とを折り合わせて 、相手が引き起こす予測不能な状況を素早く解決する方法 』
 
『ゲ ーム中に起こる状況を解決するための 、個人 ・組織による知的活動 』
森亮太、坪井健太郎
 
 
 カルチョ(サッカー)において、マンマークでもゾーンでも関係なく、戦術の主な基本とは組織化であるべきだ。どの監督も設定せねばならない目標は、全員が同じ状況で同じことを理解するように、その能力と考えを集団に伝えることである。そうして全員が疑いの余地なく協同し、議論するために共通言語を作り出す。
 
ステファーノ・ピオーリ
ステファーノ・ピオーリによるUEFAプロライセンス修士論文「4-4-2におけるサイド・チェーン」
 
(いずれも敬称略)
戦術について明確に説明してくれている記事を5つ挙げてみました。レイモンド・フェルハイエン氏はレイモンド理論を提唱するオランダ出身の指導者、鈴木達郎氏はドイツ、坪井健太郎、森亮太氏はスペインで活躍する指導者、セリエAの幾つものチームで監督を務めたステファーノ・ピオーリ氏。関わりのある国は様々、しかし表現は多少違いますが、戦術の定義として同じ意味合いのことを述べています。
 
「コミュニケーションをとるためのツール」
「成功に導くための方法」
「問題を解決する方法」
「同じ状況で同じ事を理解するための共通言語」。
 
いずれも目標を達成するため、選手が試合中に使うものということ。つまり戦術とは、試合に勝つために監督が練ったプラン(戦略)を選手が実行しやすくなるように与えられる道具のようなものと考えられます。そうであるならば、道具がそれ単体ではただの物体であるように、戦術は目的(戦略)と使用者(選手)がなければ意味を持たない物ということになります。道具には何に使うかという目的があるように、どう試合を進めるかという戦略がまずあって戦術はその目的に沿ったものでなければなりません。また選手の能力を補助し、より能力を効率よく発揮させることのできるものでなくてはなりません。
 
サッカーの試合において、戦略、戦術、選手の能力は全て一直線上に繋がっているべきものだということです。
 
以前、組織が大切か、個の能力が大切かという議論が頻繁に行われていました。今でも細かく戦術を決めすぎることにより選手の能力を制限してしまうという意見も聞かれます。しかし、戦略、戦術、個の能力が同一線状にあるものと考えれば、それらの議論や意見がナンセンスだということがわかるはずです。もし戦術により選手の能力が落ちてしまい試合で不利になってしまうなら、それは戦術を与える事が悪いのではなく、選択した戦術が選手の特性上無理があるか、選手が戦術を理解していなかったか、そもそも監督の立てた戦略が間違っていたかのいずれかということです。(ここでいう選手の個の能力を生かすとは選手のやりたいことをやりたいようにやるという意味でなく、選手の能力がチームのために最大限生かされるという意味でなければないません。)

自宅から少し離れたお店へ買い物に行くとしましょう。車という道具を使う(戦術)ことはおかしい事ではないはずです。しかし、荷物を大量に積めるからと大型トラックを使う(戦術)、逆に筋力と持久力という個の能力を生かすため常に自分の足で走って行くという行為(個が大事、戦術など必要ない!)は効率を考えたら間違った選択になります。お母さんが軽自動車で行くという戦術が一番簡単な話です。しかし、お父さんが大型車の運転の練習をするため、長男が部活のために体力作りに買い物を利用するという戦略であるなら、それぞれの戦術も意味があり間違いとは言い切れないということになってきます。極端ですが、戦略、戦術、個の能力の関係性の例え話です。

 
戦術について考える時、つい海外で流行しているスタイル、戦術と比較して評価をしてしまいがちです。しかし本来はどういう狙いで相手に勝とうとしているのか、起用できる選手の特徴はどうなのかを見極めて、採用している戦術が合っているか、合っていないのかを判断しなければならないということなのですね。僕はつい知ったかぶりをして戦術を語りたくなってしまう人なので、そうならないようもっと全体の繋がりを考えて試合を見ていきたいと思います。