J2リーグ 第13節 徳島ヴォルティス戦

 
得点 
67分 山崎(徳島)
 
スタメンの配置
 
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徳島の攻撃の考えはいたってシンプルでした。一言で言えばDFラインの裏狙い。そのためにやっていたことは、ファーストディフェンスを外し、浮いている2列目に渡し、DFラインのギャップから裏に前線が走り出し、そこにボールを入れるという形です。
 
徳島は、3バックとそれを補助するカルリーニョスで後方からのビルドアップを開始します。前半はカルリーニョスが1列下がってビルドアップする場面がよく見られました。

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2トップと片側のサイドハーフ3枚でチェックにくる清水に対して4枚のボールの出所を確保します。3バックの左右はサイドバック化せずあくまでビルドアップ隊として後方に。この後方の数的優位で清水のファーストディフェンスを外します。その中でもカルリーニョスは独力でファーストディフェンスを外し、多少のプレッシャーの中でも前にボールを運べるやっかいな存在でした。
次に2列目。カルリーニョスが最終ラインに下がるとシャドーの選手がボランチの横に降りてきます。これによりDFラインから2列目に3つのパスコースを作ります。

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4-4-2のゾーンで守る清水はボールサイドに横圧縮するので逆サイドが空きます。またサイドの高い位置にSH、そのカバーにSBが上がるという動きからボランチとSHの間の守備がぼやける時がありました。ということで逆サイドのWBか降りてくるシャドーにボールを入れて

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そこからDFラインとGKの間にボールを送り、トップと逆サイドのシャドーは裏にめがけて抜け出します。ここでは複雑なつなぎはせず迷わず裏にボールを送り込みます。よく見れば単純で、イメージほど成功率が高いわけでもありません。しかしシンプルで縦に速い攻撃は清水に後ろ向きに守備をさせ、苦手な競り合いに持ち込むという効果がありました。徳島はこの試合ではいつもと渡と山崎の位置を入れ換えていたそうですが、それもそれらの効果をより最大にするためでしょう(渡の裏抜け、福村とのミスマッチ)。清水の守備は前向きにセットしている時はしっかり守れていますが後ろに相手と併走しながらの守備ではDFラインのカバーリングのところ(監督の言うローリングの動き)にズレが出てくるように思えました。
 
これらの攻撃に対し守備側としてはどうするか。方法は出し手を消すか受け手を消すかになりますが、清水は受け手へのパスコースを消すという方法を取っていました。特別なことはせずこれまでのやり方ということです。カルリーニョスにマークをつけないの?となるのですが、それはそれで面倒なことになりまして。
 
画像の場面はそこまでガチガチではないですがテセがカルリーニョスを見て、元紀が中央の8番岩尾を押さえ中を塞いでいます。
 
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しかし、ボールの出ところが後ろに4つあるので、右の橋内の出されそこから中を通されます。
 
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このように前からマーンマーク気味のマークをつけて交わされ中を崩されるよりも、清水としては受け手を消すために中を締めるという方法をとっていたのだと思います。後半もその形は変わっていないように見えたので監督も特にカルリーニョスをガチガチにマークするという考えは無かったのではないかと思います。ただゾーンの守りでもボールホルダーにプレッシャーをしっかりかけ続けること、コースを切るようポジションを常に修正することは必要です。ここ数試合はそこが足りてないのは確かだと思います。
 
もう1つ。後半カルリーニョスはあまり下がらずCHの位置でプレーすることが多くなります。後ろを3枚にして中からもう少し崩したいという意図でしょうか。
 
気になったのはこのサイドで囲った時。ゾーンで守っていても奪うときはポジションを捨てて奪いにいかなくてはなりません。いわばこのサイドでの囲いは守備での勝負する場面といえます。
 
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ボランチとSB、前から下がってきたSHで囲んで奪いにいきます。縦と斜めに切り込んでいくスペースは塞いでいるのですが横にパスを出され中に逃げられます。ここはポジションを捨てて奪いにいくところなので絶対に奪うか後ろに下げてやり直させなければいけません。しかし何度かこのように中を通されてしまっていました。ここで中を通されるとポジションを空けて奪いにいっているためSBとCBの間にギャップができたところに縦パス、そこから一気にトレーラーゾーンを抜けられる可能性が出てきます。これはここ数試合見られる現象でこういう場面から実際ピンチになっています。

これはもしかしてですが各チームここをあえて狙ってるのかもしれません。あらかじめ囲まれる場所の横に人を配置してSHが戻りきる前に横にはたいて囲い込みを外す狙いです。これはあくまでもしかしてですが。
 
ただ、この場面では弦太がギャップを消すように相手をマークし縦パスを入れさせませんでした。そしてさらに、

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村田が右サイドから中を締めるため絞ってきていたのでカルリーニョスからボールを奪うことが出来ます。ここはSHが絞るというチームとしてのポジショニングの約束事があったためボールを奪えたことになります。その他の場面でも中を崩されているようでもよく見れば、中央では最後は中で引っ掛けてボールをはじき出せています。問題はこのサイドの部分と長いボールを入れられた時。守備が崩壊している、一から再構築したほうがいいという声も聞かれますが僕はやり方自体は問題無いと思います。仕組みが悪く崩れているのではなく、個々のポジショニングや判断の甘さを組織の仕組みがカバーしていると考えた方が近いと思うからです。監督は問題点、修正すべき点は明確に把握していると思います。取り組むべきはもっと練度を上げることで、そうすれば僕は守備は安定してくると思っています。
 
最後に攻撃に触れてみます。僕はこちらには仕組みの問題があるのではないかと感じています。徳島が前からプレスをかけて来たのが面倒そうでしたがそこは何とか交せていました。一言いうならもう少し落ち着けくらい。僕が考える問題は相手の前プレに対してじゃなく、この部分、
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くさびが入った時。徳島はこのくさびに対して躊躇なく奪いにきていて、ここで奪われる場面が多く見られました。徳島はくさびが入ると自分のポジションを捨てて前に出てきて後ろにスペースを作るのがわかります。さらに進んで、

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元紀が外にはたき本田が受けて、元紀が相手の間に入ったところで再び中に入れる。
 
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元紀が少し外に運ぶとDFラインの間に大きなスペース。ここでは本田が1番危険なスペースに入っていきますがそこにパスは出ませんでした。ポストでスペースを作り、そこに入っていく選手もいる。ただそこからが上手く繋がりません。僕はチームとしてここの仕組みが足りないのではないかと思います。楔からシュートを打てる場所までボールを運ぶチームとしての仕組み。
 
ペナルティエリア手前まで運ぶ仕組みは出来ています。スペースを作る動きもあるし、そこに入って使うという意識もあります。後はシュートを打つ場所までボールを持っていくための何かオートマチックな仕組みが欲しいところです。今はターゲットマンに踏ん張ってもらうか、ゴール前に混雑を作っても味方が寄っていくかのどちらかです。だから相手は楔さえ潰せばと全力で楔を受ける選手を潰しにきて実際そこで攻撃を止められてしまうのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
 
やろうとしていることはわかるのですが、なかなか相手を動かしてそのスペースを使うということがうまく出来ていません。となると点を獲るためには、相手が作ってくれたスペースを利用するしかない。つまりカウンターです。しかしこのチームは足元の意識が強くカウンターの意識が薄いように思えます。
 
下の画像は守備の話の時に使った52分の場面の続き。
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村田が寄せて本田が奪い、河井に繋いでカウンターに移行します。この時、元紀がいる場所がここ。

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河井がボールをドリブルで運びますが、元紀は前に進まずサイドに開いて受けにいきます。ここは何度も見直して考えたのですが、何度見ても
「元紀は前に飛び出した方がいい」
と思えるのです。この後サイドで繋いで結局引っ掛けられます。そんなことするなら前に飛び出してDFに元紀とテセの2択を迫った方がいい。カウンターしか選択肢がない場面ではしっかりカウンターから点を取っています。もっと意図的にカウンターを繰り出した方がいいのではないかと思います。
 この試合を見直して思ったのは、このチームはしばらく点を獲ることに苦労しそうだということと、守備はすぐに改善できそうだなということです。今は二兎を追って一兎をも得ずになっているのでまず守備から入った方が良さそうです(引いて守るという意味ではないですよ)。少し我慢して縦横をコンパクトにしてまず点を与えない。高い攻撃能力はボールを保持して試合を支配するために使う。実際点を奪うのは隙を突いたカウンター。こんな試合運びをすればここ数年のエスパルスとは違った面白いチームになると思うのですが。