2016年明治安田生命J2リーグ第35節 清水エスパルスvsFC町田ゼルビア レビュー

【得点】
21分 大前元紀(清水)
90分 鄭大世(清水)

スタメンと配置
 
イメージ 1
(町田はボールを持つと森村がトップ下の位置にくるようだけど配置は目安で)

試合開始して、まず目を引いたのが両チームの固い守備ブロック。町田は高いラインとピッチの横半分くらいに全選手入ってしまうくらいの横幅圧縮。サイドチェンジされても全体がすかさずスライドして守備ブロックを形成する組織的な守備でした。

清水も怪我の河井に代わり本田がボランチに入ったことで中央はより強く。さらにテセが相手ボールの時には中盤中央を埋めに下がっていたように、いつも以上にチーム全体の守備の意識は高かったように見えました(テセ、シラはいつでも守備頑張ってくれますが)。

両チームとも守備は固く、やや膠着気味の渋い試合展開に。チャンスに繋がるのは固い中央からでなくそれ以外の場所という形になっていたようです。

清水の狙いとしてまずテセへのポスト。しかし、テセまでは入るものの町田の寄せが早くその後が繋がりません。ということで攻めの中心は町田のブロックの外。空いている町田のラインの裏とサイド大外のスペースになっていきます。テセのポストを相手DFに意識させての裏抜けする選手に、また後ろで大きく左右に振って町田のブロックをずらしてサイドバックを使うという攻撃がよく見られました。特に町田は中を空けたくないためか松原でサイド、本田で中の守備をピン止めすると深くまで追ってこず、サイドの低い位置で竹内が持ちやすいという状況が発生していました。ということで竹内が起点になる事が多いようでした。
しかし町田もそれはいつも警戒してるよというような対応で清水の攻撃を防ぎます。もう少し落ち着いて見れば崩せる場所はあるような気もしましたが、それは外から見ているから言えることでしょう。ただ攻守の切り替えや町田の空き易い裏といった試合前の狙いどころを意識しすぎたのはあったのかなとは思いました。
 
一方町田の攻撃で見えた事。1つが中央コース。ボランチの李が下がり気味に森村をトップ下の位置に。李から森村に入れてそこからラストパス。しかしこちらは清水がスペースを消してくるため森村から後が上手く繋がりません。そこで次の町田の手はFWがサイドに流れ起点を作ること。これは主に左側(清水から見て右、弦太の方)。そこに中島や仲川が流れて起点となりその横のレーンを他の選手が上がってサイドを崩したり、中にサイドハーフと森村を集めてあわせる形。こちらはカウンター時に通ればチャンスという場面もありましたが、右サイドバックの弦太がかなり効いていて決定打までには至りません。
 
両チームとも決定機はないまま時間は進んでいきましたが、動いたのは前半20分。相手のバックパスを元紀が奪いそのままループで決めて先制。守っている時にも点を取ることを狙っていう意味では攻守の切り替えから奪った得点でチームの狙いと個人の技術が合わさったゴールといえるでしょう。決定打の打てなかった清水としてはこの時間帯大きな先制点でした。
 
しかし、この後大きく試合が動くことなく固い展開のまま前半は終了します。
 
後半になると町田はやや攻め手を変えてきました。前半は左へ流れる中島へのボールを弦太が弾き返していたことから、仲川へボールを集めスペースへのスピード勝負に持ち込んだように見えました。後半、仲川がボールを前で持てるようになると決定機とまではいかないまでもゴール前まで運ぶ機会は増えてきます。
 
その反面守備でも少し変化が見え始めます。1点ビハインドの町田は前で奪ってカウンターを狙ったか前半に比べてファーストディフェンスでの圧力を強めたように見えました。清水としてはそこをかわせば中が使えます。清水は前半に比べると中を通す攻撃を時折交ぜるようになります。またサイドへのスライドが間に合わなくなってきたのでしょうか。弦太がフリーでボールを持って上がる機会も増えていました。
 
ここで先に町田が動きます。裏を狙うならと久木野を前に入れ、中島をサイドに回します。続いて清水。中で繋ぐならと72分に元紀に代えて金子(元紀を休ませる決まっていた交代という意味合いの方が大きいと思いますが)、サイドが空いたならと80分に村田と石毛を交代。
 
町田、清水共に交代選手の特徴を生かしチャンスを作り出していきます。特に右サイドの村田はスペースさえあれば独力でチャンスを作りだしていました。

さすがに固い試合も後半中ごろ過ぎると少しオープンになっていたようです。この試合2回目のゴールが生まれたのはアディショナルタイム突入間際の90分。左サイド松原からテセにクロス。テセのヘッドは右に流れましたが右の奥に駆け上がってきた村田がフリーで折り返し。再びテセに渡ったところを町田DFが倒しPKの判定。これをテセが自ら決めて決定的な2点目。この後、交代で入った航也の惜しいシュートもありましたが2-0清水の勝利で試合終了します。

(雑感)
町田は整備された守備組織だけでなく、前線にはボールを持って違いを出せる選手を配置してしっかり機能させているところに非常に好感を持ちました。イメージでは守備をしそうにない選手(イメージでごめんなさい)もスライドやプレスバックでボールを奪っている場面は驚きでそれを落とし込める監督に優秀さを感じました。

この試合は会社の後輩君と見に行ったのですが彼曰く「固い試合で勝ったのはいいけど、もう少し何かないと上に行くなら大変じゃない?」と。清水サポとしては、いやいや、と言いたくなりますが落ち着いて考えれば客観的で妥当な意見。有難く戴いておきましょう。

ただ固い試合を狙ってその通りの結果を出すのはチーム力がなければ難しいものです。しかも以前はボールを持って高い技術で相手を叩くことこそ全てという考えだったチームがそれ以外(守備や切り替え、得点、失点に対する細部のこだわり)で意思統一して相手を上回るというのはこのチームを追いかけている身としては評価したいところです。ただそれが上に行っても通用するかはわかりません。それは来年以降が証明してくれるはずなので、それを楽しみにしましょう。

来期の話は別として、この日の結果は偶然ではなかったと思います。リスクを抑えてチャンスを待つ。守り切れる力と決める力がエスパルスにはあったということだったと思います。この内容と結果はちゃんと評価します。でも今の力でもまだ出来たことはあったはず。それを出しても良かったんじゃない?というのがトータルの感想です。