明治安田生命J1リーグ第14節 清水エスパルスvs湘南ベルマーレ~エリアを支配する


"前半にPKから2点を連取するという幸運な形でリードを得た清水。決して盤石といえる守備ではないものの、相手の最終局面における精度の低さに助けられて無失点で試合を折り返す。ホームチームは後半の立ち上がりにも一瞬の隙を突いて2点を積み重ね、大勢を決した。ただ、その後は守備の不安定さから湘南に一方的に攻め込まれる展開に。六反の獅子奮迅の活躍でどうにか逃げ切ったが、反省点の多い内容となった。一方の湘南は前節に続いて相手に二度のPKを与えてしまい、自滅。失点の仕方が悪いだけに、速やかな改善が必要だろう。"

上はFootball LABの選評である。清水の得点は”幸運”と相手の”隙”によってもたらされたと書かれている。またDAZNの配信でこの試合を解説していた興津氏も清水は内容が悪いが点は取れているというニュアンスの解説をしていた。

データを見てみよう。

・支配率  ⇒ 清水39.7%  : 湘南60.3%
・シュート数⇒ 清水8    : 湘南16

このようにデータも湘南がボールを支配してゴールに迫っていたことを示している。

では何故、清水は4点を奪うことが出来たのか。本当に運が良かっただけなのか。

視点を変えてみよう。

ボールではなく、場所の支配という視点だ。両チームのスタメンは下の通り。

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清水の攻撃と湘南の守備の局面を考える。湘南は守備では高い位置からプレスに来ていた。かみ合わせは下の通り。

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便宜上、場所を①、②、③と分ける。①の場所は各々のチームの選手が同数でかみ合っている。②の場所は湘南の前線3枚の内の1枚が下がって中盤のカバーをするので湘南の数的優位。つまり湘南は、①のエリアで清水の攻撃を限定して、②のエリアで守備の強度を上げて奪い取るという戦略を立てていると考えることが出来る。

そして③のエリア。清水は攻撃の時にサイドハーフを絞らせて前線が4枚になることから清水の数的優位になっている。ここは清水の優位なエリアだ。

試合開始直後、清水は湘南のプレスによって落ち着いてボールを持つことが出来ず、ディフェンスラインから近くの②のエリアにボールを入れる場面が多く見られた。湘南は狙い通りこれを奪い攻撃に繋げる。しかし何度かピンチを凌いで15分くらい過ぎると攻撃に変化が出始める。

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清水はまずゴールキーパーの六反がビルドアップに加わる。これで①のエリアは清水の数的優位に変化する。それにより後方での保持に余裕が生まれる。余裕はフィードの精度に繋がる。清水は相手の守備の密度が濃い②のエリアを飛び越えて、自分達が優位な③のエリア、特にクリスランへ精度の高いボールが直接入るようになる。

クリスランはポストプレーヤーというタイプではないが、フィジカルが強く競り合いではかなり高い確率で勝利することが出来る。そして他の前線の選手(北川、石毛、金子)は機動力がある選手だ。クリスランが競り勝ったボールを拾う、相手が押し上げたところを裏を狙っていくという方法で優位な③のエリアを攻略していく。

2点目は正にその形から。クリスランに入ったボールを北川に渡し、再びクリスランが受けて前進したところから生まれている。1点目も竹内がマッチアップしている相手ボランチから奪い③のエリアに侵入したことで生まれた得点だ。

では湘南が前からのプレスを抑えて5バックにしたらどうだろう。

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湘南は3-2-5のシステムになり前線は同数、後ろは数的優位だ。これで③のエリアは清水優勢でなくなる。しかしこの配置になると、

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今度はボランチ脇から、サイドのエリアがフリーになる。3点目はこのサイドを飯田が切り裂きクロス。クリスランが落として北川がゴール。エリアの攻略と質的優位を使ったゴールだ。4点目はクリスランからボランチ脇で受けた竹内、そのボールに対応して前線の選手が前向きにスペース目掛けて走ることで③のエリアを攻略している。
相手が人数をかけて守っても、サイドからのクロスやDFラインを背走させることにより、そのメリットを削ることが出来る。

確かに清水はボールを保持されて決定機を作られたように試合全体を支配していたわけではない。湘南の攻撃も機能していたし、清水の守備にも課題があるだろう。しかし清水が奪った得点は運や相手のミスではない。自分達の優位なエリアを制圧することで主体的に奪った得点と言えるだろう。

...なんてね。もっともらしく結果を組み合わせた言葉遊びでした。