2019年明治安田生命J1リーグ第22節 名古屋グランパスvs川崎フロンターレ

はじめに

 結果は3対0で名古屋の勝利。内容も名古屋が押しており、ここまでの大差になるのは驚きだった。

 果たして川崎は何が上手くいかなかったのだろうか。清水サポの私としては24日に行われる清水vs川崎の予習も兼ねてそこに注目してみたい。

 まずスターティングメンバーと基本システムは下図の通り。

 

f:id:hirota-i:20190814113039p:plain

 

1.川崎Fの保持:名古屋の非保持

 川崎の保持は後ろで数的優位を作り前進していく。そして相手のファーストディフェンスを外したらまず中盤とDFラインの間、ハーフスペースに位置する選手にボールを入れることを狙っているようだ。

 川崎が保持した時の動きのイメージは下図。

f:id:hirota-i:20190815184212p:plain

 スタートはCHがCBの間に降りて3バック化し相手2トップに対して数的優位を作る。

 そしてSHが1枚の降りて2トップ周辺に2人(さらにもう1人降りる時もある)。1人が相手2トップの後ろで注意を引き付け、もう1人が脇でフリーでボールを受けようとする。

 そこからハーフスペースの中村やSHに縦パスというのが第一選択肢のよう。SBをサイドの高い位置に上げているがそちらは中が使えない時の選択肢。一番はまず中を狙うよというボールの動かし方だった。

 ライン間に入ったらそのパスがスイッチになり中央を前線のコンビネーションで動かしてDFラインのギャップやサイドの裏を崩していくのがゴールを狙う形のようだ。

 一方、名古屋の守備は強く前から奪いには行かずにミドルゾーンに縦にコンパクトな442のブロックを構えていた。

 特徴的だったのが左SHの和泉が頻繁にDFラインまで下がり532のような形になっていたことで、これにより川崎の右SB車屋が使いたいスペースが消えていた。

 当然中盤の脇が空くことになるのだがCHシミッチの守備範囲の広さと、2トップのシャビエルやジョーが中盤をフォローするように下がることでそのスペースをカバーしていた。逆に左SHの前田はそこまで下がらずどちらかというと前を見るような守備をしていた。

 川崎としてはこの構造から中盤の両脇から攻めれば良さそうだとは感じたが、川崎はまず内側にボールを入れるのを狙っているようでサイドから相手をずらすような仕組みは見られなかった。

 川崎の特徴はボール周辺に人を近づけてショートパスによるコンビネーション。名古屋は中盤サイドを空けても和泉を下げてDFラインのギャップを無くして、サイドに逃げようとしても5バック状態でサイドのスペースを消している。おそらく意図的にこのような状態を作っていたのではないだろうか。

 

2.名古屋の保持:川崎Fの非保持

 キックオフにはそのチームの特徴が表れるという。前半開始のキックオフは名古屋。FWがCHネットに戻すとネットは相手のDFをドリブルで剥がしFWのジョーに縦パスを入れた。対面の相手を1枚剥す。ジョーのポストを使うという2つのプレー。これが名古屋の攻撃の特徴と言えそうだ。

 名古屋はジョーが降りてきてポスト。ジョーが動くことでできるスペースをシャビエルやSHが使う。

 また左サイドを和泉、シミッチ、吉田の三角形で崩して吉田を相手SBの裏に送りこむパターンも多い。

 ポジトラでは右SHの前田がやや前残り気味でそこが出口になっていた。

 川崎の守備はセットして待ち受けるよりボールホルダーに早めにプレスをかけていく。しかしマンツーマンではなくプレスに出たらその周囲の選手がカバーする約束のよう。しかし基本プレスに行く意識が強いのかカバーの約束事が曖昧になる時がある。例えば9分。名古屋左サイドで脇坂が吉田のマークについていたが和泉にボールが渡ると脇坂は吉田のマークを外し和泉にプレス。SBの車屋も和泉を見ていたためマークがかぶり吉田のマークが外れてフリーで裏を取られた。

 また川崎の2失点目は名古屋DF中谷が運んで中村憲剛を剥がし後方が次々と局面的に(川崎1人:名古屋2人)の状態になってゴール前までボールの前進を妨害できなかった。前から行ってはまらないと後ろの守備は薄くなりそうだ。

 

3.後半選手交代による川崎の変化

 川崎は後半開始と共に脇坂に代えて齋藤、59分に山村に代えてレアンドロダミアン、71分に中村に代えて家長を投入。

f:id:hirota-i:20190816073235p:plain

 システム表記だと433のような。実際は齋藤と阿部はサイド寄りの前に出て、登里がやや内側に絞って後ろからのビルドアップに関わる形。

 この配置ならダミアンで深さも取れるし齋藤でサイドも使えるとバランスはいい。

 バランスをもあるがそれ以上に川崎はいかに相手陣内に人とボールを入れていけるかか重要そう。登里が後ろの繋ぎに参加することで前から人をが降りる必要がなくなった。前目に人数を掛けて家長が前線で自由っぽく動きボールの循環をスムーズにしていく。この形で上手くいきそうに見えていただけに79分に谷口が退場してしまったのは残念だったなと思う。

 

4.最後に

 3-0の結果はチーム力の差より相性とゲームプランもあったのかなと思う。前から奪いに行きたい川崎と対面の相手を1枚剥がしてからボールを進めるような名古屋。ベクトルが逆になりずれると2点目、3点目のように1枚剥がされて後ろが芋づる式に守備側が不利になって奪われしまうみたいな。

 その点、名古屋の方がまずミドルゾーンにブロックを構えたり、和泉を低い位置に下げたりと守備面で相手への対策を意識していたようだ。

 逆に川崎は相手の弱みを突くより自分達の強みを出していこうとしていたように見えた。それが名古屋の守備にもあった隙を上手く突けなかった理由かもしれない。

 川崎の強みはボールに関わる人数を多くして選択肢を増やし相手の守備の逆を取ることだと思う。その強みは相手ゴール前で出された方がより恐い。そう考えると後半家長が出てきてからの川崎の攻撃の方が本来の彼らの強みに近いようだ。

 清水との対戦では、前回は0-4と散々なものだった。しかしこの試合の前半のように中盤が列を降りて強引にライン間にパスを出させる展開に持っていければ勝機があるかも知れない。

2019年明治安田生命 J1リーグ第20節 清水エスパルスvsFC東京

1.スターティングメンバーと基本システム

f:id:hirota-i:20190727142447p:plain

 清水のシステムは変わらずの4-2-3-1(4-4-1-1)。CBは出場停止明けのファンソッコの復帰も考えられたが立田が前節に引き続きスタメン。

 FC東京のシステムは4-4-2。前節はSHでスタメンだったナサンホ(味スタでの同点弾はトラウマ 泣)がベンチ外。今節は代わって大森が起用され右のSHへ、そして東が左SHに入っている。

  システムの噛み合わせを見れば中盤と後ろは4-4でマッチアップに大きなずれはない。前線のドウグラスと北川が縦並びになっているのが唯一ずれる場所。

 清水の攻撃時には北川がスペースで受けられるか。守備時には北川は前に出て噛み合わせていくのか、縦並びのままCHを見るのか。システムからの注目点はそんなところだろうか。

 

2.機能しなかったエウシーニョシステム(清水の攻撃)

 引く時はしっかり引いて裏のスペースを消す。縦幅は中盤と最終ラインの間をコンパクトにする、横はスライドやプレスバックでスペースを与えないというFC東京の守備を攻略できなかった。多少戦術は違えどサガン鳥栖との対戦時と同じだ。

 そんな時に頼りになるのがドウグラスエウシーニョの個人での打開力。この試合でもお互い長いボールを蹴り合いスペースがあった開始直後は、エウシーニョのチャンスメイクやドウグラスを経由したカウンターなどでフィニッシュを狙えていた。しかしその攻撃も次第にその強みが消されていく。その理由を考える。

 まずFC東京の守備は、2トップはCBに強くプレスをかけながらもボールがサイドに動いていくと必ずもう1枚はプレスバックしてCHを見るような立ち位置を取る(特に永井はめっちゃ追いかける。守備しすぎで反則にすべし!)。

 中央を消しながらサイドに誘導してエウシ-ニョにボールが入ると左SHの東が即チェック。さらに中盤と最終ラインはボールサイドにスライドしてブロックを圧縮していた。

 前が詰まるとエウシーニョは得意の内側へドリブルで相手の中盤を剥がしたいのだが、ボールを運ばれるとFC東京の2トップがプレスバックして中盤の前を埋めているためそのスペースが無い。特に先制後のFC東京は2トップが清水のCHのラインまで引いて守りを固めていた。

 そこでエウシーニョが強引にブロック間へパスを出し相手の守備に引っかかることが多くなる。ボールを奪ったらすかさずエウソン裏にディエゴオリベイラを走らせカウンターに繋げるのがFC東京のポジトラの形になっていた。

 保持しても詰まることが多くなると清水の中盤は列を下げてボールを受けようとしたり、サイドに人を集めて数的優位を作ろうとする。しかし相手のブロックを動かせなければそれらの動きのデメリットが目立つ。

 例えばの1失点目は北川が列を下げてブロックの外でボールを受け強引にミドルシュートを撃ちそれを弾かれたのがきっかけ。

 またサイドで数的優位を作る時はトップ下の北川がボールサイドに寄っていくが、北川が組み立てに参加すると崩してもゴール前にドウグラスと逆サイドのSHしかいない。昨年と違い得点者がドウグラスに偏っているのはこの仕組みが理由だと思われる。

 DAZN配信で紹介されたデータによると前半清水は左サイドからの攻撃が53%、右が29%となっている。この数値はエウシーニョが止められていた前半の状況をよく表しているのではないだろうか。

 

 3.サイドを崩して中央を使う(FC東京の攻撃)

 開始しばらくは様子を見るためかボールを持つと長いボールを早めに前線に入れてきたFC東京。しかし先制点を挙げたあたりからFC東京が保持して清水が守るという展開になっていく。

 

f:id:hirota-i:20190724192407p:plain

 上の図がFC東京の攻撃のイメージ図。

 FC東京はサイドでSB、CH、SHの三角形を作っての前進。サイドから前進して詰まれば無理をせず戻してサイドチェンジ。逆サイドでも同様に三角形を作り頂点を循環させながら崩していくという形。

 清水の守備はかなり人への意識が強くサイドからサイドに振られると両サイドに中盤が寄って中央に人がいない状態になっていた。そこにサイドからの崩しだけでなく中央のスペースに高萩が入ってくる。

 清水は通常はトップ下の北川が相手のCHの1枚を消すのだがこの日はドウグラスと北川が横並びになることが多く、相手のCHに中盤ラインの前でボールを持たれていた。これも高萩や橋本に中央でボールを持たれてしまった要因だろう。

 さらに相手のパスを弾いてもサイドに守備者が寄って中央に人がいないためセカンドボールを相手に拾われカウンターに移行できない。逆にFC東京はしっかりボールを保持して全体を押し上げ、ネガトラ時のスペースを消していく。

 清水がカウンターに移行できても、守備時に相手のポジションチェンジにそのまま人がついて配置が崩れていることで前線に人を送り込むことができない(上の図のように中盤の選手がDFラインにDFラインの選手が中盤にいることが多々あった)。

 決してマンマークが悪いというわけではないのだが、もう少しスペースを意識したり、ボールが離れたら配置を整える意識があった方が良いような気はする。

 

4.清水のシステム変更の流れ

 前半に2失点を喫した清水は35分頃に4-1-4-1にシステムを変更。これまでの試合と比べて早めのシステム変更だった。前半早々の2点ビハインド。流れも完全に相手ペース。変化を出して早めに1点でも追いついておきたいという監督の意図だろう。

 1トップとIHを1枚前に出して相手のCBにハイプレスをかける清水。しかしFC東京はGKが早めに前に蹴り出すことでプレスを回避する。

f:id:hirota-i:20190726203114p:plain

 GKが前に蹴ったボールはディエゴオリベイラが競ってヘナトの脇に絞ったSHが拾う。1列目の猛プレスを回避されるとヘナト周りが空いてしまうのは篠田4-1-4-1の泣き所だ。

 もし清水側が競り勝ちボールを奪えばそれまで同様2トップが制限しながらしっかりブロックを作って守るFC東京

 相手に蹴らせる、後ろでは保持できるので保持率は取り戻す清水だが(15-30分には29.7%だった保持率が31-45分には41.7%~Football LABのデータ参照)狙い通りの展開を作れていたかというとそうとも言えない4-1-4-1へのシステム変更だった。

 FC東京は67分にディエゴオリベイラに代えて三田。東がトップ下の4-2-3-1。2列目の3人は中央に寄ってプレーしていたように見えたのでヘナト周りのスペースを使おうとしていたのかなと思う。

 守備ではちょうど東がヘナトを見る位置なので逃げ切りを考えて守備強化の意味合いもあったかもしれない。

 清水は80分に河井に代えて滝を入れ3-4-3と2度目のシステム変更(配置は下図参照)。

f:id:hirota-i:20190726210016p:plain

 この図で何が言いたいかというとFC東京の守備は立田に大森、エウシーニョに小川を当ててきたので滝がサイドに流れると相手のSB裏を取れる。

 しかし実際はブロックの中で受けようというプレーが多くそれはどうだったのかなということ。

 松原とエウシーニョをWBにした3-4-3なのでサイド攻撃が狙いかなと思ったがそこまで徹底したものではなかった。

 

5.最後に。

 早めに2失点してしまったのが試合を難しくした一番の要因だと思う。恐らく1点差なら4-1-4-1への変更は後半からだっただろう。

 篠田監督のシステム変更は相手のシステムとの噛み合わせや配置で優位性を狙うというより、変化で相手を混乱させるという意味合いの方が強いのではないだろうか。

 相手のシステムに関係なくスタートは4-2-3-1。そして必ず4-1-4-1から3-4-3の順番でシステム変更していくというのがその理由だ。

 FC東京の守備の固さを考えれば早めに1点を返しておきたかったが、まだ体力も頭もフレッシュな相手に落ちついて対応されてしまったのは苦しい状況だっただろう。

 それでも4-1-4-1を引っ張って残り10分でシステム変更を機に逆転を狙うなど、できる範囲で手は打っていたと言える。

 しかし、4-1-4-1のプレス回避や守備時にできるスペースなど相手にとって狙い目となる場所は見え始めている。そこは早めに対応する必要があるだろう。

2019年明治安田生命J1リーグ第17節 サガン鳥栖vs清水エスパルス

1.始めに

 篠田監督就任して初の敗戦。前半こそ先制されても追い上げる勢いを見せた清水だったが、期待された後半は1点も加えることが出来ずに試合終了。なぜ清水はこれまでのような勢いのある攻撃ができなかったのだろうか。

 今回はまず鳥栖の守備の狙いに注目してみたい。そして清水はそれにどのように対応していたのか、お互いにどんなやり取りが行われていたかについて書いていきたいと思う。

 

2.スターティングメンバーと基本システム

f:id:hirota-i:20190704192056p:plain

 清水のシステムは4-2-3-1(もしくは4-4-1-1)。システム、スタメン共に前節同様。左SHの西澤はこれで2試合連続のスタメン。監督からの評価が高まっていることが窺われる。

 鳥栖のシステムは4-4-2。システムはこれまでと変わりがないが、スタメンはトーレス、クエンカ、原と前節から3人が変更されている。ここ3試合は勝ち星から遠ざかってはいるが、監督交代してからは上位からも勝ち星を奪い、個々の能力も高いチーム。順位こそまだ下位だが決して油断のならない相手であるのは間違いないだろう。

 

3.消された清水の強み(鳥栖の守備を見る)

 清水の攻撃での特徴は何か。僕は相手SBを動かしそこをシンプルに狙うというのが篠田監督が就任してからの清水の攻撃の特徴だと考えている。さらにその攻撃の起点となるのがCHの竹内。しかしこの試合では鳥栖の守備によってこれら清水の強みとなる部分は消されてしまっていた。

 鳥栖の2トップは清水のCBが後ろで持つと、竹内とヘナトへのコース上に立ち中央へのパスコースを塞ぐポジションを取っていた。

 そこから、まず鳥栖の右サイドの守備を見る。

f:id:hirota-i:20190704191832p:plain


 中へのパスコースを遮断されると二見はサイドに開いて2トップ脇にボールを運んでいく。そこへ金崎が中を消しながらプレス。そして上の図のように中盤以降の選手が中央とハーフスペースで受けようとする清水の選手へのパスコースを遮断するようにスライドしていく。

 これで前へ長いボールを蹴らせて回収。また二見からサイドの松原へ出せば、

f:id:hirota-i:20190704191855p:plain

SHの安がサイドへスライド。その際、SB小林はDFラインから動かない。

 松原から竹内へ中へのパスはトーレスが塞ぎ、サイドからのクロスには中に人数を固めて跳ね返す。またSBが動かないので西澤が使いたいスペースも開かない。

 次に右サイド。

f:id:hirota-i:20190704205026p:plain

クエンカがエウシーニョへ、原が金子へと早めに人を捕まえるような守備。開いたSB-SH間はCHがカバー。

 こちらは中外と動いて決定的な仕事をするエウシーニョをフリーにしたくない、またクエンカを後ろに下げたくないという意図からはっきりと人をマークしていたのではないかと推測する。

 鳥栖はこのように中央で竹内にボールを持たせず、また左右で動き方は違うが清水が攻撃で使いたい場所、つまりSBのいるスペースを使わせなかった。

 前半20分頃まではやや左サイドの守備がやや不安定だったが(少し人に噛みつき過ぎだったか?)、それ以降は上手く清水の攻撃を押さえていたと思う。

 

4.クロス対応

 鳥栖の攻撃と清水の守備についても軽く見ていく。

 鳥栖の前進は主には左から行われているようだった。クエンカがハーフスペース、サイドの大外の同じ高さまでSB原を上げ、その下にCHの原川。この左サイドの三角形でサイドを崩していた。

 ボールを前進させると鳥栖は左サイドの原から、また左から右へサイドチェンジして外に張っている安がDFラインの横から速いクロスを何度も上げていた。

 清水はこの試合4失点しているが、その内の2点は右からのクロス(もう2点はフリーキックから)。

 おそらく清水DF陣のクロス対応の弱さを狙っていたものだと思われる。

 

5.試合を締める鳥栖 vs システム変更での打開を狙う清水

 後半開始早々に清水は金子に代えて中村。ここではシステムの変更はなし。

 次の選手交代は鳥栖。53分に右SH安に代えて高橋。高橋がCHに入り、福田をSHに回す。CHができる選手を並べることで右サイドの守備のスライドが一層スムーズになった。守備面を考えての交代だと思う。

 清水は66分に竹内に代えて六平。同時にシステムを4-1-4-1に変更する。後半途中での4-1-4-1への変更からハイプレスをかけてやや停滞気味の試合をオープンにすること、起点となる竹内が抑えられていたので中央の位置からボールを前に運べる六平の投入の意図か。

 しかしこれまで何度も奇跡的な逆転劇のきっかけとなった4-1-4-1もこの試合では上手く噛み合わない。

 というのも鳥栖は前が詰まれば躊躇なく豊田に向かってロングボール。またボールを持つとピッチいっぱいに選手が広がるためプレスに行く距離が長くなり結果的に清水の守備も大きく広がってしまう。

 

f:id:hirota-i:20190704211359p:plain

 この状態だと清水の守備の短所が目立ってくる。数的不利でも前にプレスに行き、IHが出たスペースからアンカーのヘナト脇を使われる。

 攻撃でも鳥栖が低い位置にコンパクトなブロックを作るためシステムのずれを利用できなかった。

 システム変更は空回りかと思われたが、篠田監督の判断は早かった。4-1-4-1がはまらないと見るや74分に北川に代えて滝。システムをヘナトを3バックの中央に入れた3-4-3に。中央を塞がれるなら松原、エウシーニョをWBとして外からボールを動かし、3トップで相手のDFラインに襲い掛かる。

 しかし、滝の惜しいシュートなどチャンスも作ったがスコアは動かず試合は終了。2-4で悔しい敗戦となった。

 

6.最後に
 鳥栖がこれまで見せてきた清水エスパルスの特徴を上手く押さえた試合と言って良いだろう。明確な特徴がある以上必ず対応される。まさに新たな課題を突き付けられた形だ。

 しかし、この試合中でも采配によってその課題をクリアしようとする姿を見ることができた。敗戦という残念な結果ではあったが、相手がこちらの強みを消す、それにこちらも対応して上回ろうとする。チーム同士のやり取りは楽しい試合だった。

 チーム成長していく過程では必ず課題を乗り越えなければならない。僕は、壁に当たったことを悲観するよりも課題をどう乗り越えていくかを楽しみにチームを追っていきたいと思う。

 

 

 

 

2019年 明治安田生命J1リーグ第14節 松本山雅FC vs 清水エスパルス

noteに書いた記事に加筆、修正したものです。元記事はこちら。

note.mu

1.始めに

 システムというと難しく感じる方もいるかもしれません。システムとは要は選手の配置の目安。なので複雑に考えずファンにとっては試合を見る時の目安、ガイドにみたいに考えてもいいかもしれません。

 もちろん、サッカーの試合は色んな要素が複雑に絡みあっているのでシステムの理屈通りにはなりません。でも何となくでも試合の目安みたいなものが見えていた方が理解しやすくなるのではないでしょうか。

 というわけで今回は両チームのシステムに注目して松本戦をザクッと振り返ってみたいと思います。

試合の局面を、「自分達がボールを持っている局面」と「相手がボールを持っている局面」の2つの分けてそれぞれの局面でお互いがどういう振る舞いをしているか見ていきます。

 

2.清水がボールを保持している局面

 両チームの基本システムは、清水が4-2-3-1、松本が3-4-2-1。このシステムの噛み合わせで図にしてみます。清水が上から下へ攻めていくと考えてください。

 当然、試合中に選手は動くのでこの通りにはなりません。でもどこを見るかの基準があればいいので、とりあえずこの噛み合わせからフリーになりそうな選手や場所を探します。

 まず①の清水のゴール前。清水のディフェンスラインが4人で松本の前線は3人。松本が前からプレスに行っても清水の選手が1人フリー。そこからボールを運ばれそうです。

 次に②のサイド。1vs1だけど位置がずれています。このままだと金子選手や中村選手がフリーになって3バックの脇を突かれそうです。また北川選手が中央で浮いているのでそこも注意が必要になりそうです。

 こんな感じでフリーになりそうな場所のめどをつけました。そうしたら次は試合中に、その場所でどう振る舞っているかを見ていきます。

 松本はどう振る舞っていたかというと、シャドウの杉本、前田両選手を中盤サイドに回して下の図のように5-4-1という配置に変化をしていました。

 これで中盤と後ろは数的優位。しかもサイドは誰が誰を見るか守備の基準点が明確になっています。システムの噛み合わせ的には、清水は攻めあぐねる形です。そこで今度は清水が少し形を変えていきます。

 清水はセンターバックソッコ選手や二見選手が左右に開いたり、ボランチの六平選手がサイドに出て、松本のシャドウの前に立つような位置取りをするようになりました。

 松本は明確になっていた守備の基準が再びあいまいになってしまいました。さらに清水はボールサイド側の3人がサイド、ハーフスペースにポジションして三角形を作る、または北川選手を加えて菱形を作ってボールを動かしているようにも見えました。

 対する松本は、サイドに出てくる選手(図で言うと二見、六平)にはシャドウが対応。エウソン選手、松原選手にはウイングバックがという守備基準を取ることが多くなります。

 ウイングバックが前に出てしまうと金子選手や中村選手を見る選手がいなくなり、彼らが相手の3バックの脇を突きやすくなっていきます。

 また清水は北川選手が3バックの脇に流れてHVを開かせる、入れかわるように金子選手が内のレーンに入っていくなど、ポジションを交差しながら相手を動かしスペースを突いていきます。

 76分にはドウグラス選手がペナルティエリア内で倒されPKを獲得。この場面も仕組みは同じです。

 二見選手がサイドに動くことで本来(前田-松原)、(田中-中村)だったサイドの守備基準がずれて前田選手が二見選手を見る形になりました。松原選手をウイングバックの田中選手が見るので、中村選手がフリー。それはまずいと3バックの右の今井選手が中村選手について行き今井選手がいた場所がフリースペースになりました。

 そこにドウグラス選手が入っていったことでキーパーと1対1になる。という構図でした。

 5-4-1で中央を塞ぎ、サイドの守備を明確にした守る松本。それに対してサイドからずれを生じさせた清水。そして最終的にはディフェンスラインに出来た穴を突く。これが清水が保持した時の流れになっていました。

 

3.松本が保持している局面

 松本が保持する局面でも同様に基本システムを噛み合わせて、フリーになりそうな選手や場所を予想してみます。

 まず①の松本のゴール前。3バックの左右がフリーになりボールを運べそうです。

 ②のサイドや③の清水ゴール前。人数はいるけど位置がずれています。なので誰が誰をマークするか曖昧になりそうです。

 ではそれに対して清水はどう振る舞っていたのか。清水は松本とは逆に前から数的不利の場所を埋めていきました。

こんな感じです。

 清水はサイドにボールを誘導してその周囲のパスコースを全て塞いでいきます。さらに北川選手とサイドハーフの選手が後ろへのパスコースを消しながら(カバーシャドウの動き)ボールを持った選手にプレッシャーをかけます。そしてこのサイドの網の中で奪ったり、相手が苦し紛れに蹴ったボールを回収するという形です。

 松本の方はというと、清水の前プレを飛び越えてしまえとレアンドロペレイラ選手へのロングボール。そして、その裏を前田選手が狙います。清水はレアンドロペレイラ選手を二見選手がマーク。その裏はソッコ選手がカバー。後ろから直接蹴られる分には人数が揃っているので問題なし。

 問題となったのは前のプレスがずれた時。特に北川選手の守備がずれると、前ではめこみたい清水はボランチの選手が前に出てきてプレスをかけにいきます。すると中盤にボランチが一人しかいない状態になり縦パスをスパンと通されてしまいます。基本的に清水は前へのプレスを回避されたら後ろは自分の前方へ根性のマンツーマンでついていきます(下の図)。

 マンツーマンでついていくとシステムの噛み合わせ上、清水ゴール前で松本のシャドウが一人浮いている形になり、そこからピンチになりやすいという構図です。

 42分に六平選手が杉本選手を倒してイエローカードをもらったのはこの構図通りのプレーでした。

f:id:hirota-i:20190616133646p:plain

 松本はこの場面以外でも右シャドウの前田選手が左側にが流れることが多くそこにソッコ選手が噛みつくと二見選手との間が大きく開きます。その間に2列目から入って行くとフリーになりやすくなっていました。

 また64分にPKを与えた場面。きっかけはボールを奪われたところからでしたが、強いマンツーマンの意識でセンターバックが引っ張られる、間のスペースが開いてそこをボランチが後追いで追いかけるのでファールになりやすいという仕組みが原因になっていました。

4.最後に

 以上、システムの噛み合わせに沿って試合の流れを追ってみました。始めにも書いたようにシステムの理屈通りに試合が進むわけではありません。しかし、サッカーは11人と11人で行われるスポーツ。誰がどこでどういうプレーをするかは間違いなく試合に影響を及ぼします。試合の開始前に注目ポイントを考えたり、試合後に振り返る時、システムの噛み合わせに注目してみるのも楽しいのではないかと思います。

 

2019年 明治安田生命J1リーグ第13節 清水エスパルスvsベガルタ仙台

 

文章を整えるのが大変なのでメモ書き程度に。繋がりなく羅列気味ですがお許しを。

 

まずスタメンと初期の配置。

f:id:hirota-i:20190529091831p:plain

 

・前半、清水の攻撃

 

仙台はマークの受け渡しをあまりせずに強く人についていく守備。清水の攻撃にはその特徴を利用しようという意図が見える。

 

金子が相手のSBを引き連れ中に入り、北川がクロスするようにサイドに流れる。そこでフリーでシュート(11:15)。

六平がサイド奥に侵入。対面のCH椎橋がマークでついていく。椎橋が動いてできた中央のスペースに松原がカットイン。ドグにスルーパス(15:30)

 

北川と金子のクロスする動き、SHが引いてそのスペースへCH(主に六平)が侵入する動き、CHの空けたスペースへサイドバックが中へのドリブルなど。相手マーカーを引き連れてのスペース作りとそこへ侵入する動きの組み合わせ。

 

清水はサイド奥のスペース狙っているのが強く感じられる。数的優位もサイドで作ることが多い(CB+SB+SHor北川)。人に付いてくる仙台の守備を動かしてサイド奥からのクロス。それが保持からの攻撃では大きな目的となっていたと思われる。

 

清水の1点目(4:40)も同様の動きから。

f:id:hirota-i:20190529093148p:plain

(赤矢印→人の動き、黄色矢印→ボールの動き)

エウシーニョの中央へのドリブルで石原を引き付け二見へ。松原が吉尾を開かせること中村へパスコースを作る。中村からサイドチェンジ。受けた金子はフリー。左SH石原はエウシーニョについているので、永戸はカバーが無い状態で金子と1対1。右SB蜂須賀は中村について中盤まで上がっている。そのためセットした状態からにも関わらずクロスに対してゴール前にはカバー無しでCB2枚がのみという状態だった。

 

前半終了間際の3点目も北川、金子が左SB永戸を引き出し、その裏でエウシーニョがボールを受けている。その前のエウシーニョの動きを見ても相手のSB裏を狙っていたというのはあながち外れではないと思う。

 

・前半、仙台の攻撃

 

仙台の保持は2CBでスタートしたり、CH下ろして3枚でスタートしたり。CHは後ろに降りるときもあったが、SHが第2レイヤーに降りて入れ替わるようにCHが前に出て行くこともあった。全体のバランスでどこかが動いてもサイド、ハーフスペース、中央と相手守備ブロックの間、間にポジションをとっている。

 

清水の守備は大分戦と同様、サイドに限定してパスの出口を塞ぐ。ドウグラスがサイドを限定して、SHがサイドレーンを塞ぎ、北川がアンカー管理。降りてくるSHにはCHがついていく。

f:id:hirota-i:20190529111220p:plain

 結果的に、詰まった仙台は開始から20分過ぎまでは早めに2列目を越えるようなパスが多い。

 

そこからトップが1枚引いて受けて内側に入ってくるSHに落とす。逆のSHとFWが裏抜けしてSHからスルーパスとか。

SBは突破よりサイドに引っ張って中央広げて間のスペースを使う。または裏抜けへのアーリークロス。前半の仙台はハーフスペース攻略を狙っているようだった。
 

しかし仙台は24分辺りから清水のファーストディフェンスを回避できるようになっている。

 

目的地は清水の限定サイドと逆側のスペース。逆に持っていくために中央を管理している北川をずらしたい。そのためのCH降ろしの3バック化、HVの運ぶドリブル、SHとCH松下で2択を迫るなど。限定がずれたら右HVから左HVへの飛ばしのパス。

 

f:id:hirota-i:20190529113020p:plain

清水の守備は始めのプレスを交わされると、後ろでブロックを形成するがそこの移行に弱点を抱えているように見える。人は下がってくるが上手くスペースを埋められていない。24分過ぎに仙台がファーストディフェンス回避できるようになってから、明確に仙台が保持して清水ゴール前まで迫る場面が増えていく。

 

清水は逆サイドに振られるとHVにはSHを、SBにはSBのように対面の選手がプレスに出て行く。基本的にセットより前に行きたい守備の狙い。清水はここで取れればカウンターチャンスだが、交わされればゴール前まで運ばれる。仙台は相手ゴール前までのルートは見えているがミドルレンジのパスがずれることも多々あり、お互いにチャンスを作り出すという前半の流れだった。(3-2で清水リード)

 

・後半の流れ

 

後半、仙台は清水のSB裏狙いが強く見られるようになっていた。エウシーニョを前に引き付けてSHやFWが裏に流れる。中央への縦パスからもハーフスペースへのスルーパスでなくサイドにはたいてSB裏に流れることが多い。

 

清水のカバーはFWが流れたらCBが、SHが裏抜けしたらSBがと対面の選手がそのままついていく形。やはりヨンソン監督時より人を見る意識が強まっている。

 

60分。3-3と追いつかれた直後エウシーニョから立田に交代。サイドバック裏攻撃への対応。同時に守備時のプレスラインがやや下がったようだ。ファーストディフェンスが回避されていた、そこから撤退する時のスペースを突かれていたなら始めからセットしましょうということだろうか。

 

62分。北川を右に回して4141。プレスを回避されて中盤以降を固めたいときは人を増やすやり方は大分戦と同じ。スライドとカバーでブロックを作るのは得意ではなさそう。

 

仙台は2トップが縦並びになって一枚が竹内を見てる形。後は嚙み合わせ通り。

 

66分に中村に代えて西澤。西澤入ると再びプレスラインを高めに。守備ではCBにドグとIH(金子、六平)の1枚が前に出てプレス。アンカーの竹内が前にスライド。SHがどこまでスライドするかはいまいちはっきりしない。やや気持ちプレス気味でアンカー周辺でスペースができやすい。仙台は2列目あたりのスペースからの前進ルート自体はわかっている様子。

 

プレスがはまる、または相手がプレスに慌ててミスればチャンス、繋ぎ切られれば相手のチャンスという慌ただしい展開。ジャーメイン入れてスペース狙いは理解できる交代。

 

清水は北川を右に張らせて残り前線4枚で中央崩す。金子と交代した西沢は積極的に突破、カットインからのシュート。指示はおそらく相手の4‐4‐ブロックを破壊しろ。そこで仙台が4-4で中央固めたら北川サイドのアイソレーション。突破からのクロス。結果的にこれが決まり終了間際の勝ち越しゴール。最後は清水が押し切った形。

 

・最後にひとこと

 

お互いに明確な攻撃の意図を持っている。しかしお互いに守備の弱点もありそこを明確な攻撃の意図で突いているという試合だった。

仙台は保持して攻撃することがチーム作りの土台となっていそう。そこが上手くいく、いかないかが重要そうだなという印象(勝手な印象だが)。

清水のファーストディフェンスを回避するところや、その後のボールの動かし方を見ると背骨はしっかりしているチームというのは感じられた。

 

清水は篠田監督就任して2試合目だが、おおむね前節大分戦と同じパターンの試合展開。こういう采配をするんだなというものは見えてきたような気がする。

SBの中へのドリブルやSHとCHの入れ替わりなどはヨンソン監督時にも見られたが、より整理されていたように見える。ベースとして持っているものを整理してプレーさせること、相手の特徴をスカウティングして試合に生かすことは上手そう。

ただプレスの外され方やその後のボールの運ばれ方も大分戦同様だった。基本攻撃でも守備でも前向きで行くことで選手の思い切りのいいプレーを引き出している。しかもそれが篠田監督のやり方と合致している。大分、仙台とも後ろから保持していくタイプのチームだった。そうでない相手に対してどんな試合展開になるだろうか。次節以降に注目していきたい。

 

 

2019年明治安田生命J1リーグ第9節 清水エスパルスvs浦和レッズ

1.スターティングメンバーと配置

f:id:hirota-i:20190506203547p:plain

  清水エスパルスのシステムは4-4-2。キャプテン竹内の負傷欠場によりCHに六平が起用されているのが前節との変更点。

 浦和レッズは保持時3-5-2、非保持時5-3-2またはFW武藤が左の中盤に下がっての5-4-1。浦和も右のWBが前節出場の橋岡から森脇。そして3バックの右には鈴木大輔と前節からメンバー変更されている。

 

2.浦和の保持とネガトラ設計

 

 浦和は3バックの左側に長澤が降りたり、槙野とマウリシオの間に青木が降りたりと清水のファーストディフェンスの挙動をうかがうように後ろの形を変えながらのビルドアップスタート。さらに清水の2トップ脇にボールを入れては戻すを繰り返すなど、非常に慎重なボール回しだった。

 

 それに対して清水は前からはめ込むよりも、FWと中盤が連動してまず中央のスペースを消す、ボールが動いたらFWが1枚出てサイドに追いやるようなプレスをしていた。   

 浦和は、後から興梠や武藤に縦パスを入れようとそぶりも見せたが、清水が中央のスペースを消していたこともあり基本無理をせずサイドからの前進が中心となっていた。

f:id:hirota-i:20190508100042p:plain      

  上はイメージ図。

 組み立ての中心は右サイド。浦和は右サイドにWB森脇とHV鈴木を縦に並べるような位置取り。鈴木はビルドアップ時にはDFラインの一角というよりも、森脇と共に右サイドでの組み立てに関与する役割だった。
 サイドでボールを動かしながら松原を森脇に引き付けてFWがSB-CB間を狙う、また鈴木がサイドを上がり森脇がハーフスペースに入って行くなど、清水のSB-CB間を狙うというのが一つの形。

 

 右サイドで詰まると森脇から左WB山中へのサイドチェンジ。左サイドの攻撃はその他には清水の右SH金子を槙野が引き付けて山中へのパスなど、細かい繋ぎはあまりなく山中をフリーにさせてシンプルにゴール前に入れていく攻撃が中心だった。

 

 浦和の組み立てが主に右サイドで行われるということは、当然ネガトラも右サイドで起こりやすい。鈴木を森脇の後ろに置いていたのは奪われた時のガードの意味合いもあったと思われる。

 

 そして左サイドはシンプルにゴール前に入れることで攻撃を完結させてネガトラを発生させない。逆に左でボールを奪われた時は、左サイドやや内側で金子がフリーになっている場面が多く清水のカウンターの起点になっていた。

 

3.清水の保持と浦和の守備局面。

 

 清水のシステムは4-4-2だが、保持をするとCHが1枚アンカーのような位置に下がりもう一枚のCHと縦関係を作る。そしてテセが前に張り、北川がやや降りてくるので見た目は4-1-4-1に近い配置になっていた。

 

 浦和は清水の保持に対して高い位置からのプレス。噛み合わせとしてはまず2CBに2トップ。そして中盤の脇は(浦和から見て)左側は長澤がスライド、右側はWBの森脇が前に出て対応していた。

 

 そこで清水の配置と浦和の守備の基準を嚙み合わせると、下の図のような現象が起こりやすくなるのがわかる。

 

f:id:hirota-i:20190508165047p:plain

 まず左SB松原が森脇を押し下げると、浦和の中盤の脇にスペース。中村がこのスペースに下がって受けるのはよく見られたプレーだ。

 

 また一度金子サイドにスライドさせてサイドチェンジすると中盤の逆サイドがフリー。13分37秒の金子のサイドチェンジから中村慶太のシュートはこのスペースを使って撃っている。浦和はこのスペースが気になったのか時間が経つと武藤が中盤に下がり5-4-1守備になっていく。

 

 次にCHの1枚がアンカーの位置に下がり相手の中盤を前に釣り出すので、その裏にパスコースができる。FWの北川は頻繁にこのスペースに降りてボールを受けていた。

 

 そして左WBの山中はあまり中に絞らず、しかもテセは必ず前に張ってDFラインを押し下げているので金子が内側に入って行くとフリー。さらに北川についていく浦和DFの裏のスペースを狙う。北川がボールを受けると決まったようにフリックをしていたことからもこのスペースの作り方と使い方はチームで共有されていたものだと思われる。

 

  浦和はDF3枚はゴール前から動かさず必ず人を確保。DFラインに侵入してくる相手は絶対に撃退するという守備だった。清水はアタッキングエリアまでは狙い通りボールを運べていたが最後の精度と判断がずれて決定的なシュートまでには至らない。

 

 確かに理にかなった清水の前進ではあったが、ゴール前でフリーでもオートマチックにフリックやスルーで味方を使おうというプレーは気になった。引いてくるだけでなく、2トップが直接相手のCBを攻撃しても周囲にスペースはできる。昨年見られたそのようなプレーをもう少し意識しても良かったような気はする(無責任な感想ではあるが)。

 

 4.繰り返す失点パターン 

 

 後半しばらく前半と同じ流れ。しかし7浦和の武藤と汰木が交代した直後の73分。右からのCKを一度は跳ね返したが、拾われてのクロスを興梠がシュート。六反が弾くもこぼれ球をマウリシオに決められて先制点を奪われる。

 

 まず興梠のシュートはファンソッコがマークについていたが、一瞬ボールを見失いシュートを撃たれている。元々ソッコはクロスの対応が得意でないように思えるが、特に今期はマークを外してしまうことが多い。

 

 またマウリシオのシュートはフリーで撃たれたが、興梠がシュートを撃った時点ではヘナトがそのスペースを埋めていた。ここの約束事で明確でこの動きは必ず行われる。しかしシュートを防いだ後の二次攻撃に対しての守り方がかなりアバウト。CHはそのままゴール前を埋めるのか、受け渡して中盤のポジションに戻るのか。結果的にはヘナトが前に戻ったことでマウリシオがフリーになってしまった。

 

 クロスに対してマークを外してしまうことと、CHがDFラインのカバーに入った後のバイタルの埋め方。ここが原因での失点は繰り返されている。

 

5.最後に

 

 アディショナルタイムにカウンターから2点目を決められ0-2での敗戦。しかし、シュート数は清水7本に対して浦和10本。ペナルティエリア侵入回数は、両チームとも8回(いずれもFootball LABより)。作り出したチャンスの数はそこまで大きな差は無い。決めるか決めないか、止めるか止められないか。単純に考えれば、そこの差が結果に表れたと言える。

 

 この試合がお互いに慎重でスローな展開だな、というのは見た人の多くが抱いた印象だと思う。浦和が慎重だったこともあるが、清水もあまり長いボールを使わず中盤を使って組み立て、サイドでもえぐってクロスよりも一度内側に持ち直して逆足でクロスを入れるなど確実なプレーを選択しあえてオープンな展開を避けている節も感じられた。

 

 Football LABのデータによると、昨期の清水は攻撃回数リーグ7位、被攻撃回数リーグ16位。つまり攻撃もするけど攻撃もされる行ったり来たりの展開が多いチームだった。しかし今期の清水は攻撃回数リーグ15位、被攻撃回数リーグ6位。じっくりと攻撃して相手の攻撃回数を減らす遅行型のチームに近い数字だ。

 

 オープンで不確定要素の多いチームから、自分達で試合をコントロールし狙い通りの結果を導けるチームへバージョンアップさせようとしているというのは1つの推測。今期の清水は、概ねどの試合でも自分達でボールを握り相手の陣内まで前進することができている。昨年のカウンターを消されると沈黙してしてしまうチームを考えればそこは上積みだ。しかしコントロールできないとより穴はより大きくなる。またより緻密な組織が必要となりシンプルにプレーしていた昨年に比べプレーに迷いが出て個々のデュエルに集中できなくなる。あくまで可能性の1つだが。

 

 実際は望んでのこの戦いなのか、なにか消極的な理由があってなのかはわからない。いずれにしても良し悪しでなく、チームが何をしようとしているか、その結果試合がどうなっているのか。僕にはそこを想像していくことしかできないけど。

 

 

明治安田生命J1リーグ第7節 ジュビロ磐田vs清水エスパルス ~ 静岡ダービー

1.スターティングメンバーと配置

 

f:id:hirota-i:20190417180933p:plain

 

 清水エスパルスのシステムは4-4-2。右のSHに中村が復帰。前節好プレーを見せたヘナトが引き続きのスタメン起用となっています。

 ジュビロ磐田のシステムは3-4-2-1。保持した時はポジションの入れ換えが起こりますが、基準となるベースは3-4-2-1といっていいでしょう。川又離脱以降の3試合は同じスタメン起用となっています。

 調子が良いとは言えない両チーム。しかしこの試合は静岡ダービー。絶対負けられない戦いです。これまでの歴史同様に、選手、サポーター、チームに関わる全ての人達の想いがぶつかり合う熱い試合になるのは間違いないでしょう。

 

2.ディフェンスラインのギャップを狙う(清水の攻撃)

 

 ジュビロは3-4-2-1のシステム。3-4-2-1で守る時に問題となるのがボランチの脇。磐田はボランチ脇に運ばれた時はWBが前に出て、後ろはボールサイドにスライド。実質4バックのような形を作り守っていました(下の図)。

 エスパルスはその守備に対して、相手のボランチ脇にボールを1度入れることでWBを前に引っ張り、相手がスライドする前にWBの裏のスペースを使っていました。特に前半始めの方はこの形が多かったですね。

 

f:id:hirota-i:20190419181555p:plain

 

  また、ジュビロがスライドする時に、テセが相手のCB新里を中央でピン止めするとHV(HalbVerteidiger=中間のDF、つまり3バックにおける左右のCB)との間にギャップができます。

 

f:id:hirota-i:20190419183948p:plain

 

 そのスペースに北川やSHが走り込むという攻撃も見られました。

 要はWB裏も含めて、相手のDFラインをスライドさせて揺さぶる。そして隙ができたところを突く。そんな狙いが強く感じられました。

  

 ジュビロボランチ脇からWB裏を執拗に狙われると、そこが気になりシャドウがサイドのカバーをするようになります。すると前からのプレスがかからなくなり、徐々にエスパルスが保持する展開になっていきます。

 長くなるので詳しくは省きますが、エスパルスは右SBエウシーニョが中に入ることで相手のボランチを動かしたり、中央で誰かがフリーになってパス出しできるような仕組みができてきています。前半はエスパルスがサイド、中とパスを通して上手く攻撃ができていました。

 

 また、繋ぐだけでなく後ろからテセへのロングボールも多用していました。ターゲットに当てて前線とのコンビネーションはエスパルスがどの試合でもやる攻撃です。

 ただジュビロは最終ラインを攻撃された時にカバーの関係性が乱れやすいという傾向があったので、ここに対する狙いもあったのではないかと思います。エスパルスはテセを競わせた時には他の選手がその近くでDFラインの裏を狙うような動きをしています。

 先制の場面は六反からテセに入った時、ジュビロのDFは斜め後ろでカバー。ここはカバーできていましたが、すぐ横にいた北川にボールが渡ると北川一人に複数人が行ってしまい結果的にテセがフリーになってしまいます。この場面のようにDFラインを連続攻撃された時に特に乱れが出やすいようでした。

 

 それでもジュビロは守備の仕組み自体は整理されていたと思います。サイドをWBにカバーさせることで、後ろ加重になることを防ぎ、シャドウを攻撃に専念させるという形は理解できます。

 しかし局面の対応は昨年失点した時の形に似ているなというのは何度も感じました。まあ、弱点が直らないというのはお互い様なので偉そうなことは言えませんが... 。

 

3.ジュビロの可変システム

 

 ジュビロの攻撃も見ていきましょう。ジュビロは保持している時、面白い可変をしていました。

 ボランチがDFラインに降りるのはどのチームでもやる形ですが、更にシャドウがボランチの位置に降りて、WBがシャドウの位置に絞りこみます。そしてHVがSBのように開いてサイドのスペースを使います(下の図)。

 

f:id:hirota-i:20190421095519p:plain

 

 この動きで使いたいのはサイドと中央のスペース(当たり前かw)。

 

f:id:hirota-i:20190421101903p:plain

 

  図がごちゃごちゃしてすみません。

 サイドはWBが中に入ることでスペースを作ります。前半にあったアダイウトンの決定機はこの形から。

 中というのは相手のボランチを動かして、そこに後ろから大久保や山田が入っていく形。シャドウがプレッシャーの強いブロックの中で受けるのではなく、味方が作ったスペースに入ってフィニッシュに絡むという形を作りたかったのではないかと思います。

 それに対してエスパルスの守備はボールの位置を基準にコンパクトなブロックを作り、ジュビロの動きにも大きな隙を作ることはほぼありませんでした。しかも、空いてしまったスペースはヘナトアウグストがことごとくカバーして奪取。そしてカウンターです。

 元々ボランチとCBの間が空きやすいジュビロですが、ポジションチェンジによりシャドウがボランチの位置にいるのでなおさら後ろへの意識が薄くなっています。そこから失点はありませんでしたが危険な場面は何度か作られていました。

 

4.エスパルスの2点目を考える

 

  エスパルスジュビロのビルドアップに対して、ボランチに強いプレッシャーをかけていました。そしてSHはハーフスペースを消すようなポジションを取ります。

 ジュビロはポジション変換をすることで中と外にビルドアップの選択肢を作っていましたがエスパルスが中央からハーフスペースを消していたため、ジュビロボランチにボールが入った時は選択肢が無いという状態になっていました。

 ジュビロは中央で詰まると、割りとオートマチックにサイドにボールを動かします。それをパスカットするというのは、おそらくエスパルスの狙いとしてあったのではないかと思います。見た目は山田のイージーパスミスを奪っての得点ですが、中から外へのパスをカットする形は得点場面以外でも何度か見られました。

 

5.ジュビロの選手交代からの逆襲

 

 ジュビロは53分に森谷→ロドリゲス、62分に大久保→エレン、63分に山田→荒木と選手交代。この選手交代でシャドウがロドリゲスと荒木。左のWBがエレンになっています。

  僕が思うポイントの1つはシャドウがドリブルで運べる選手に代わったこと。前半の大久保、山田違い彼らは低い位置に下がらずブロックの中でドリブルを使いボールを運ぼうとします。

 エスパルスはそれをケアするためライン間が広がりジュビロの選手がボールを持った時にプレッシャーがかからなくなっていたように見えます。

 ジュビロは相手のプレスによって、ボランチにボールが入った時にビルドアップが詰まる傾向がありました。しかし、エスパルスのプレスが弱まりジュビロボランチがプレッシャーから開放されるとボールの流れがスムーズになっていきます。

  またロドリゲスとエレンは中外とポジションを入れ替えてサイドにスペースを作ります。ジュビロの得点はまずエレンがハーフスペースで受けたところから。その時サイドにいたロドリゲスが中に入っていきサイドにスペースを空けます。エレンは内側にプレスをかけていた金子をドリブルで外しそのスペースに運んでクロス。中に入って行ったロドリゲスがヘディングシュートを決めます。エスパルスの相手のボランチからハーフスペースを塞ぐような守備を逆に利用された形でした。

 

6.試合終了までとちょっとした感想

 

 エスパルスはまず北川に代えてドウグラスを投入。その後、テセに代えて飯田を入れます。

 ジュビロはロドリゲスが中や外に動いてサイドの守備をぼかしていました。そこでシステムは4-4-2のまま、エウシーニョが外に開かず中を固めて、サイドの上下を飯田がケア。守る場所を明確にして一番危険だったエレンのクロスを防ごうという動きでした。

 そして、最後はボールを落ち着かせて試合を終わらせるために中盤に六平を入れて4-5-1。なんとかそのまま試合は終了しました。組織が整っていたとは言えませんが、それでも最後は体を張ってゴールを割らせませんでした。内容が良くても勝てなかったこのチーム。最後の踏ん張りという足りなかったものをこの大事な試合で見せてくれました。監督も上手く手を打ったと思います。

  ここまで勝てていなかったという苦しい流れの中での静岡ダービー。この重圧に負けず結果を出してくれたチームを誇りに思います。これを良いきっかけにして本来チームの持っている力を発揮してくれることを期待します。

 

 一方ジュビロも選手交代から最後の追い上げは見事でした。やはりダービーはライバルがあってこそ。仲良しにはなれないけど、良きライバルではありたいですね(笑)