マッチレポート【明治安田J1百年構想リーグ 第4節 ガンバ大阪vs清水エスパルス】

 明治安田J1百年構想リーグ第4節ガンバ大阪対清水エスパルスの雑感です。

 今回もスペースで話した内容をまとめました。スペースは下のリンク。

https://x.com/hipokotms/status/2028815017676828977?s=20

 清水はセンターフォワードの主力だったオセフン選手が欠場で髙橋選手が起用されています。

 ここまでエスパルスの攻撃は、ほぼオセフン選手に長いボールを入れるところから始まっていたので、髙橋選手に代わってどうなるのかは一つの注目ポイントになるかと思います。後のメンバーは前節と同じです。

 ガンバ大阪は今シーズンよりドイツ出身のイェンス・ヴィッシング監督が就任。当然Jリーグで指揮するのは初めての監督で、どんなサッカーをするのか非常に楽しみです。

 システムは4231。トップにヒュメット選手、トップ下に名和田選手。サイドの食野選手、唐山選手はワイドに張るより中に入って攻撃に関与するのが特徴のようです。

 

 それでは試合を観ていきましょう。

 まずエスパルスで注目するのは髙橋選手の役割。オセフン選手は相手を背負いながら最前線で起点を作るプレーが多かったのですが、髙橋選手はどちらかというと動きながらボールを引き出すプレーが目立ちました。

 髙橋選手が動いてポイントを作るので、前進の経路も中盤でブエノ選手に落としてパスを展開したり、サイドで受けてサイドバックから裏を狙うウィングに出したりと、オセフン選手がいる時と少し違う形になっていましたね。また髙橋選手を経由せずに裏を狙うウィングにフィードを出したりと、高橋選手のワントップの方が選手の動きも攻撃の形もちょっと流動的な感じになっているように感じました。

 次にエスパルスの非保持を見ていきます。ここのエスパルスのプレスとガンバの後方保持の噛み合わせがこの試合のポイントになっていたように思います。

 ガンバは縦に速い攻撃と言われていますが、エスパルスのようにロングボールを最前線に入れるスタイルではありませんでした。まず後ろでボールを動かして、パスコースができたら素早く縦パスを入れて前進していく。そんな志向の攻撃だと思います。ゴールキックからのスタートを見ても、ほぼロングボールを使っていません。そこからもボールを繋ぎながらという傾向がうかがわれると思います。

 ガンバはセンターバックとサイドバックの4枚で後方の保持をスタートしていました。ボランチが降りたりサイドバックの片方を上げて後ろ3枚にするような可変はあまり見られません。たまにはボランチが降りたりするんですけど、基本的には4枚でビルドアップするという形でした。

 ガンバの後ろ4枚ビルドアップに対して、エスパルスは左右のウィングを上げて前4枚で噛み合わせるようにプレスをしています(実際は単純にマンツーマン的に4枚出ていくわけではないのですが)。前半かなりの時間、エスパルスがこの前4枚のプレスでガンバのビルドアップを塞げていて、結果として高い位置でガンバを押し込めていたと思います。 

 ただし、エスパルスのプレスをガンバが回避すると、エスパルスはウィングを両方上げているので真ん中がボランチ2枚になっています。さらにガンバはサイドハーフを絞らせているので、中央レーンの付近に選手が密集していてエスパルスのボランチ周りをパンパンとパスを繋いで前進していきます。

 前半全体としてはそれなりにエスパルスはガンバのビルドアップを塞げていたんですけど、プレスを回避された時はそんな感じで前進されていて、内2回が失点に繋がるという結果になってしまいました。

 1失点目は27分。後ろの保持にキーパーが1回入ったことで左CBの中谷選手がフリーになったのがスタートです。エスパルスの2トップはプレスがずれた時にすかさず前に出ていくより、背後のボランチを気にする傾向があります(おそらく2トップは必ず背中でボランチを消すタスクになっている)。そこで中谷選手がフリー。縦パスを繋がれゴール前まで持っていかれました。

 2失点目は42分。髙橋選手が勢いよくプレスに行ったところを逆取られて交わされ中谷選手の前がオープンになったのがスタートです。中谷選手がパスを出す時、エスパルスのダブルボランチの周りをガンバの中盤5人で囲む形になっていて、それを利用しパスをテンポよく繋いで前進。そして最後はヒュメット選手がシュートを決めました。

 人を内側に集めて、センターとインサイドのレーンへの配置からコンビネーションを使っていくのがガンバの前進の特徴といえそうです。

 そして2点とも中谷選手が起点で、中谷選手は運べるし相手を見て動かしながらパスを出せる。ここをフリーにしてしまうといい感じに前進されやすい傾向はあるかなと思います。

 あともう一つ、これは開幕戦から気になっていたことで、エスパルスの守備は何気に間への縦パスを通されやすいように感じます。この試合に限らず、ウィングの位置がやや前目で守備時に絞り切れていないことが多いような気がします。思い返すと名古屋戦の失点も間を通されたところからで、守備ブロックをセットしている時でも縦パスを通されるのは修正が必要かもしれません。

 

 さて前半は2対0とガンバのリードで折り返します。しかし2点リードされるほどエスパルスが悪かったわけでもないなというのが僕の感想です。かといって失点は偶然にワンチャンを決められたというわけでもありません。お互いの構図から、エスパルスのプレスを交わされた時はゴール前までボールを運ばれやすい状態だったと思います。

 そして最後の点を決める、防ぐという部分はヒュメット選手がスーパーだったということになるのかもしれません。

 それにしてもヒュメット選手、本当に上手いですね。7分辺りでサイドで囲まれても正対して相手を止めてつつ、ボールを相手の届かない方に持っていってすり抜けたプレーがあったんですけど、そこで思わず「上手いな!」と声が出ちゃいました。ここは余談ですが。

 

ということで後半です。

 ガンバは名和田選手、唐山選手に代わって南野選手と倉田選手が入ります。エスパルスは交代なし。リードしているガンバが変化をつけて、リードされているエスパルスがそのまま。前半の内容と結果のミスマッチが表れたような後半の入りでした。

 まず後半、エスパルスの保持で印象に残ったことがあるのでちょっとそこに触れます。

 52分過ぎ。ブエノ選手が後ろに降りて、本多選手と住吉選手が左右に広がり、ブエノ選手がいたアンカーポジションに小塚選手が降りてくるという場面がありました。

 ここはポジショニングがよく整理されていて、相手の2トップに対して本多選手と住吉選手がちょうど脇を取る位置取りになっています。そして小塚選手がアンカーポジションにいるので、2トップは背後が気になり積極的に前に出てこれない。

 これで本多選手が脇を運んで、1回引っかかってしまったけど、その後再び同じ配置で保持スタート。今度はブエノ選手のインサイドキックで小塚選手に縦パスを入れ前までボールを運んでいったという流れです。

 前節の神戸戦で、こちらの数的優位にも関わらず後ろで上手く動かせなかったという話をしましたが、この試合ではそこをしっかり整理してきたなという印象を受けました。

 一方、ガンバも交代で入った南野選手、倉田選手が1本ずつシュート打つなどゴール前でチャンスを作っていたので、両チームとも悪くない後半の入りだったと思います。

 そして59分に清水が髙橋選手と千葉選手に代えて松崎選手と宇野選手。始め少しポジションがごちゃごちゃしてましたが、北川選手がセンターフォワード、松崎選手は左ウイング、宇野選手が千葉選手がいた位置に入ったようです。

 ガンバも同時に交代で食野選手がアウトして、奥抜選手がイン。奥抜選手はそのまま左サイドハーフに入りました。

 エスパルスは交代した後、宇野選手が1列目で北川選手と2トップ、もしくは4411みたいな守備組織になったと思います。エスパルスはこの選手交代からあまりプレスをかけずブロックを組んで守っているように見えました。サイドの高い位置にもウイングが出ていかず中盤でラインを形成する。サイドバックは縦スライドするけど松崎選手は内側を埋めるような動きも見られます。

 これで前半に問題になっていたボランチ脇は埋まるのですが、ファーストディフェンスがあいまいでガンバに2トップ周りを好きに使われてしまっています。中谷選手だけでなく左CB三浦選手にも運ばれたりして、縦パスを間に通されてゴール前まで持っていかれる流れになっていました。

 これが例えばエスパルスがリードしていて守備固めようとした(けど結果的に上手くいかなかった)というならこの状況もわかるんですけど、負けてる状況でこの流れはちょっと解釈が難しいかったです。何らかの意図があると思いますが、僕には読み取れなかったです。

 ガンバはガンバでボール運べるんですけど、守備に切り替わった時にちょっと戻りやスライドが緩いようにも見えました。なのでガンバが攻めてるんだけどエスパルスもボール持ったら攻撃できる、そんな感じになってますね。言い方は悪いのですが、ちょっとお互いぐだぐだというか...。

 ガンバは74分にヒュメット選手に代えて満田選手。

 エスパルスは77分にサイドバックをパク選手から北爪選手に。そして小塚選手に代えてステファンス選手を投入しました。ステファンス選手が右ワイドに入って、松崎がトップ下もしくは左のインサイドハーフかな。宇野選手が保持時に右インサイドハーフ、非保持の時はボランチみたいなポジションですね。

 82分にエスパルスが1点を返します。北爪選手のクロスをファーでカピシャーバ選手が折り返して北川選手のゴール。

 ガンバは非保持でボールサイドに絞るので、サイドバックが空くことは前半からありました。前半、パク選手にボールが渡るとフリーで、北川選手にパスを出すみたいなシーンが何度かあったと思います。

 また北爪選手がクロスを上げた時にファーのカピシャーバ選手はフリーで、慌てて三浦、鈴木、倉田選手の3人が寄せたので、北川選手もステファンス選手も中央でほぼフリーになる。そんな状態になってますね。これもガンバはボールサイドにスライドするのでファーをどう見るかが、一つ問題になるかもしれません。

 2点目は、奥抜選手が住吉選手に出たところから芋づる式にスペースを使われて宇野のクロスまで繋がるという流れでした。この2点目は交代で入った選手の特徴と崩しの動きがロジカルに機能していていました。

こんな感じ...

 まず奥抜選手がプレスに出てきてその後ろで北爪選手がフリー。そこにガンバのサイドバック初瀬選手が縦スライドしてくるのでその裏に宇野選手が走り込む。その宇野選手のランへのカバーにボランチの安部選手が付いていって中のステファンス選手へのパスコースが空いたと。ステファンス選手は相手を背中で抑えながらボールを収めて裏に抜ける宇野へパスを出す。からの宇野選手のクロスと。

 そして宇野選手のクロスをファーで受けたカピシャーバ選手がフリーでシュート。ここも1点目と同様にファーが空いてるんですね。

 また宇野選手がサイドバックの裏に走った時にガンバのボランチが付いていったので中へのパスコースが空いたんですけど、これとほぼ同じ場面はその前にもあってガンバはこの場面にどう対応するか講じる必要があるかもしれません。

 まあ、戦術的にどうこうもありますがガンバは全体的にスライドとか戻りが緩くなってるかなというのは感じました。そこはエスパルスにも若干言えるんですけど。

 ということで90分では2-2の同点で試合は終了しました。PK戦については特に触れません。

 

 今節も前節から改善しているなと思ったところ、依然気になるなというところなどありましたが、着々と前よりできることが増えているので次の試合を観るのが楽しみです。

 ガンバの中央を素早くパス崩すスタイルもとても面白かったです。いわゆるラングニック系(以前ラングニックを研究している方のセミナーを聞いたことがあります)を体現したようなスタイルで中々興味深いなと思いました。

 それでは今回はこんなところで。ではまた(そろそろ連続レビューも疲れてきたのでいつまで続くか...)。

 

マッチレポート【明治安田J1百年構想リーグ 第3節 清水エスパルスvsヴィッセル神戸】

 J1百年構想リーグ第3節清水エスパルス対ヴィッセル神戸の雑感です。

 今回もほぼほぼスペースで話したのでそれをまとめるだけで。またもや下手くそな僕のトークは下のリンク。

https://x.com/hipokotms/status/2026961713195897094?s=20

 エスパルスのスタメンは前節と同じ。前節、内容的にはやりたい形ができていたということで継続なんだろうと思います。現状、このメンバーがスタメン争いを一歩リードといったところでしょうか。

 

 神戸はおそらく乾選手がトップ下の4231。ワントップには小松蓮選手。J2で秋田と対戦した時に身体を張ってハードワークできるいい選手だなと思ったのを記憶しています。

 

 それでは試合を見ていきます。

 エスパルスの保持はここまでの試合同様、ボールを持ったらまずオセフン選手に長いボール。その周辺にセカンドを拾えるよう中盤の選手が押し上げる。そしてオセフン選手がボールを収めたり、こぼれてもセカンドを素早く回収してダイレクトにゴールに向かっていく形です。

 この保持からゴールに向かう、そしてネガトラが起きても即座にプレスにいく仕組みはすでにある程度はできているといえそうです。

 そして前節に引き続きこの試合でも良いプレーを見せてくれたのが千葉選手でした。千葉選手のプレースタイルは今のエスパルスの戦術にとてもマッチしている印象で、難しいことを考えず彼のプレーをそのまま出せば求められるタスクに適合する、おそらくそんな感じなんじゃないかなと思います。

 

 一方、神戸を見るとボールを持ったらエスパルスとほぼ似たような形ですね。長いボールをCF小松蓮選手に集めて、トップ下の乾選手とボランチの片方が上がってサポートしています。

 両サイドの武藤選手と佐々木選手は内側に入ってきて小松選手が競ったボールを受けてゴールに向かう。これは昨年までの神戸のやり方(つまり今年のエスパルス)と似ていて、スキッベ監督は自分のゲームモデルに当てはめるというより、今あるベースを生かしながらチームを作っていくタイプの監督なのかなという気もしました。

 

 お互いに似たスタイルでゲームが進む中で、先ほども言ったように千葉選手が前を向いて仕掛けるプレーが目立っていました。

 千葉選手が前向きに仕掛けられる理由の一つには、プレス時の神戸の位置取りも関係しているのではないかと思います。

 神戸は割と前からプレスにきていて、前の3枚に連動して井手口選手がアンカーのブエノ選手のところまで出てきます。その時にCFオセフン選手が上手く深さを取っているので、少しボランチとCBの間が開いて、ボランチの裏で千葉選手がボールを受けられる。そんな形になっているように見えました。

 例えば8:50の辺りのプレーもそうですね。この時は井手口選手が即座に対応したので千葉選手は裏に抜けられませんでしたが、それとほぼ同じ形でボールを受けた31分には前向きでボールを受けた千葉選手を井手口選手が引っ掛けてイエローカードが提示されました。

 

 そして18分。神戸のセンターバック山川選手が裏に抜け出そうとした千葉選手を引っ張ってレッドカード。

 この時は神戸の非保持プレスではなく保持がスタートでしたが、特徴的なプレーが見えたのでもう少し詳しく触れておきます。

 神戸は保持時に左サイドバック永戸選手がたびたびインサイドレーンに上がっていくプレーが見られました。その時にボランチの鍬先選手が左に寄ってパスを出し入れています。

左ワイドにウイングの佐々木選手、インサイドに永戸選手、そしてその下に鍬先選手と左側で逆三角形みたいな形を作って組み立てる。もしかしたらこれは神戸のボール保持の特徴なのかなとも思いました。

 さらにこの時、井手口選手は真ん中の前のほうに上がっていて、おそらく左で作った攻撃の折り返しを狙ったり、こぼれた時のネガトラでの回収のために押し上げているのだろうと思います。

 鍬先選手が左サイド側で攻撃を組み立て、井手口選手は前に押し上げているのでボランチが真ん中から動いています。この状態で神戸のネガトラ(エスパルスのポジトラ)が起こると千葉選手がボランチの後ろでフリー。

 さらにオセフン選手をトゥーレル選手が見て、山川選手は少し下がったそこカバー的な位置。なのでボランチとセンターバックの間が開いて千葉選手が前向きフリーで仕掛けられる。山川選手は抜かれそうになったので思わず引っ張ってしまいレッドカード。こんな流れでした。

 

 一方、パスをカットしたエスパルスの守備もとても良かったのでそこも触れておきます。

 神戸が左サイドでパスを繋いだ時に住吉選手がサイドまで流れて対応したので、本多選手との間が開いた状態でした。その時、小塚選手が下がってその間をスムーズに埋めてボールをカット。

 昨年までのエスパルスだとディフェンスラインのギャップを割と放置気味で、そこを使われたりが多かったのですけど、今年は必ずギャップができたら誰かが埋める状態を作れています。

住吉選手が動いたら本多選手はスライドしてカバーの位置を取っていますし、本多選手がカバーできない時はボランチが下がって埋めています。現状、攻撃だけでなくこうした守備戦術もちゃんと落とし込まれているなという印象を受けました。

 

 ということで神戸が一人減って数的不利、エスパルスが数的有利という形になりました。

しかしエスパルスは1人多いにも関わらず、それを生かして試合を進めていたという感じでもありませんでした。決して悪い流れというわけでもないんですけどね。

 神戸は山川選手が退場した後、トップ下の乾選手に代えてセンターバックのンドカ選手が入ります。これで神戸は4231(非保持時は442)から、乾選手が抜けたので非保持の時は441の並びになったわけです。

 1列目の守備が小松、乾選手の2人から小松選手1人になったので、エスパルスの優位はセンターバックの本多選手と住吉選手のところということになります。

 この後ろの優位を生かしてボールを運びたいところでしたが、正直いってエスパルスの後ろでの保持はあまり上手くいってるようには見えませんでした。

 センターバックがボールを動かせないので、アンカーのブエノ選手が降りてボールを動かす現象が見られます。後ろで動かせないのでブエノ選手が降りるのは昨年と同じ現象ですね。

 ブエノ選手が降りても、センターバックが上手く立ち位置を取れればいいんですけど(例えばサイドバックの位置に広がるとか)そうでもない。結局CBが2枚が消えたことになりこの時点で有利は無くなってしまいます。

 

 さらに気になるのが、アンカーのブエノ選手が降りると相手のFWの後ろに選手がいなくなることです。

去年ならブエノ選手が降りても、ボランチの宇野選手がいたり、乾選手が降りてきたり、松崎選手も降りてきたりと誰かが1列目と2列目の間にいる状態ではありました。まあ、みんな降りてきちゃうのはいいことじゃないんですけど。

とにかく誰かが相手FWラインの後ろにいてブエノ選手に選択肢を作れる状態ではあったと。でも今年はブエノ選手のワンアンカーで、千葉選手も小塚選手も前目にポジションしていています。ここで状況に応じて上手くポジションを取れればいいのですが、そうでもないのでどうしてもパスレンジが遠くなります。これでブエノ選手がミドルやロングレンジのパスを入れてもイチかバチかになって、ブエノ選手の特徴は生かせないなという状態でした。

また1列目の後ろに人がいないと、相手は背後を気にせずプレスに出てこられます。なので神戸が423気味に前に出てプレシャーをかけると結局ロングボールを蹴ってしまうという流れになります。

ロングボールは悪くはないけど、相手の中盤と後ろは退場前も後も44ブロックのまま変わらないのでこのままだと特に有利というわけではありません。

ということで相手が1人減って数的優位になった割には、エスパルスペースというわけでもないなという展開のまま前半はスコアレスで終了します。

 

後半です。

後半はお互い選手交代は無し。神戸はそれなりに対応できていたのでそのままで問題ないという判断でしょう。

エスパルスも優勢になったわけではないけど、特別問題があるわけでもない。早々に交代カードを切るほどでもないなという判断かなと思います。

後半入ってしばらくは前半の山川選手退場後とほぼ同じ展開で試合が進みます。

しかし48分、エスパルスのコーナーキックで相手選手にハンドがあったとの判定でエスパルスがPK獲得。これをオ・セフン選手が決めてエスパルスが先制します。

71分にエスパルスは日髙選手に代えてパクスンウク選手。神戸は小松選手、井手口選手に代えてパトリッキ選手と濱崎選手が入ります。

神戸は一人退場して前を削っているのでシンプルに前に出して前線の能力を生かすという攻撃になっていました。またロングボールではサイドの選手もターゲットにしてくるので、運動量の多く疲労も見えた日髙選手のところを手当てした。そんな交代なのではないかと思います。

神戸はパトリッキ選手を左に入れて、CFに武藤選手、右に佐々木選手という配置に。先ほど書いたように攻撃がシンプルになるので、スピードのあるパトリッキ選手で一気にゴールに持っていきたい。そんな狙いなのかなと思います。神戸の特徴はわからないのですけど。

そして77分には小塚選手、千葉選手に代えて髙橋選手と宇野選手。ここも千葉選手の運動量が少し落ちてプレスにいけない場面が見えてきたので納得の交代といえるでしょう。ちょっと縦パスを通されたりしたのは気になるところでありました。

ここまで見てきて吉田監督の交代策は固いなという感想です。前の試合もそうですが後半入っての守備の穴はすかさず塞いでくる。そんな印象を抱きます。小塚選手に代えて宇野選手のところもやっぱりそんな感じだと思います。

お互いに長いボールが多いし、疲労が出てくるとオープンになってくる。1人少ない神戸にも全然ワンチャンあるなという展開でした。

神戸の方はリードされているので、ボールを運べたり前に行けそうな選手を入れていくと。ボランチに入った濱崎選手はいかにもセンスのある選手で、彼が入って中盤から前にボールを運べる場面も増えていたように思います。

試合としては互角で、いったりきたりする展開ですが、意図としては失点の可能性を減らしながらもあわよくばワンチャンを狙うエスパルス、ボールを前に運んで行って追いつきたい神戸という感じになってたのではないかと思います。

そしてさらに交代があったりしながらも試合はそのまま進み、エスパルスが1点を守って1-0の勝利。エスパルスは最後はキープ交えて時間を使ったりと、もう少し慎重でも良かったかなと思いました。しかしまあ逃げ切ったのでプランは成功といって良いのではないでしょうか。

 

着実にチーム作りが進んでいるところ、意外とまだまだだなというところ。それぞれが見えたとても興味深い試合でした。

そして何より吉田エスパルスの初勝利。とても嬉しいですね。それでは今回はこんなところで。

マッチレポートという名の雑感【明治安田J1百年構想リーグ 第2節 清水エスパルスvs京都サンガ】

明治安田百年J1構想リーグ第2節清水エスパルス対京都サンガの試合の感想です。

 

先日Xのスペースでこの試合の感想を話ました。その時の下書きを軽くまとめた内容です。僕のどちゃくそ下手くそなトークは下のリンク。

https://x.com/i/spaces/1mrGmBBBnAvJy

 

ということでまずは両チームのメンバー。

 エスパルスは前節から2人のメンバー変更。名古屋戦に出場したインサイドハーフの松崎、宇野選手に代わって千葉、小塚選手がスタメンに入りました。

 

 京都は左インサイドハーフの平岡選手と左サイドバックの須貝選手が前節からのメンバー変更です。去年の対戦した時と比べると移籍やレンタルバックで抜けた選手以外にも何人か変更されていますが、監督は代わってないので基本的には去年と同じスタイルだろうなという予想はできました。

 

 さて試合を観ていきましょう。

 どちらのチームもダイレクトな攻撃を志向しているので、後ろで無理に繋がず長いボールを入れていく傾向となっていました。

 なのでゲームの全体の流れとしては、行ったり来たりが激しいトランジションゲームの構図になっていたと思います。

 

 まずエスパルスから見ていきます。

 エスパルスは後ろで持ったらターゲットをオ・セフン選手に設定して長いボールを入れていきます。インサイドハーフ(千葉選手、小塚選手)はオ・セフン選手の近くまで押し上げて攻撃をフォローしつつ、ボールがこぼれたら即座にアタックできるよう攻守の切り替えに備えるポジションを取っています。

 ウィングはワイドに張るよりハーフスペースの辺りまで中に入ってきてゴールを狙えるような位置取りです。


 この配置で、高い位置に起点を作ってゴールに向かう。ネガティブトランジションでも即時奪回できる。そんな設計を作っているように見えました。

 

 ここまでは前節の名古屋戦と同じですが、名古屋戦ではオ・セフン選手に当てた後の連携がまだ未整備で、少し単調な攻撃になっていました。結果、松崎選手やカピシャーバ選手が相手の守備に単独で突っ込んでくような形になり、相手陣内でプレーできてはいたものの決定機はあまり作れない。そんな流れになっていたと思います。

 

 松崎選手は一人で相手の守備に突っ込んで打開してというプレースタイルではないですし、得意のカットインからのシュートは左利きの左インサイドハーフなので難しい。

 宇野選手にしても前にスペースがあった方が推進力が出しやすい選手で、相手が構えている守備ブロックの中でボールを持っても中々持ち味を出せないという名古屋戦の内容だったと思います。

 

 そこで今節インサイドハーフに入った千葉選手ですが、元来フォワードの選手で多少相手がいても強引にゴールに向かえますし、ある程度相手も背負えます。

 この設計でまだ崩しの連携がそこまでできていないとなると、ボールを持った後に一人で1回ゴールに向かえる選手の方が今の段階だと上手く回るような気がしました。

 小塚選手も単調な流れの中で貯めだったり、ボールを循環させる部分を個人の技能やアイデアで補ってくれます。

 全体の設計はできてるけど細かい部分の完成度がまだ足りない今のチームの進捗状況では、このインサイドハーフのコンビの方がチームの足りない部分を上手く補えるのかなという印象です。

 

 あとはシステム的なところで、京都は基本システム4-3-3で非保持の時も4-3-3のまま守る形になっています。つまり中盤の底はアンカー一人で守っているので、千葉選手が京都のアンカー斎藤選手を外すとそのままCBまで仕掛けていけるという形にはなっています。

 さらに京都のアンカー斎藤選手は、バイタル付近で構えているよりかなりカバーに動く傾向が見て取れます。

例えばエスパルスがオ・セフン選手にボールを当てた時、CB鈴木義宜選手が出てくる。すると斎藤選手は鈴木選手が出た後ろのスペースのカバーに入る動きを見せる。そうなると千葉選手へのマークは薄くなるので千葉選手が動きやすい。千葉選手がゴール前まで仕掛けていけたのは、そういった影響もあったのではないかと思いました。

 千葉選手は試合途中から、ロングボールに対してもフォワードの位置まで出てることが多くなっていきました。これは相手の配置を見ながら、自分は前に出た方が良さそうだなというのを感じとっていたのかもしれません。

 こんな感じで名古屋戦とは違い、インサイドハーフの選手がゴール前まで迫れていたエスパルスの攻撃になっていたと思います。

 

 あともう一つ京都が4バックだったことの影響ですが、オ・セフン選手に当てた時に守備ブロックがカバーのため中に寄るのでワイドの北川選手が空きやすい傾向はあったと思います。

 またオ・セフン選手と千葉選手と中に2つポイントがあるので北川選手はそこまでストライカー的な位置には入らず、ワイドで仕掛けてクロスみたいなシーンも前節より作れていました。

 

 ただ少しもったいなかったのが、北川選手とサイドバックの日髙選手の連携がまだ上手く取れていないように見えたことです。北川選手がワイドで持った時に日髙選手が上がってくれば京都のサイドバック須貝選手に対して2対1の状況を作れますが、これをもっと上手く利用できればなという場面が何回か見られました。

 

 例えば、39分に日髙選手がサイドの高い位置でボール持った場面。須貝選手が日髙選手に出てきた時に、北川選手が上手くセンターバック鈴木選手を外して須貝選手と鈴木選手の間のスペースに流れてボールを要求していました。しかし日髙は一人で仕掛けてクロスを上げるもオーバーしてボールはアウト。この時、簡単に北川選手にボールを流してあげれば北川選手が内側からクロスを上げられるので、よりチャンスの可能性を高められたのではないかと思います。

 

 積極的に仕掛ける姿勢自体は決して悪くありません。ただ上手く連携すればより可能性が高い形が何回かあったので少しもったいないと思いました。まあ細かい連携はこれからでしょうし、修正場面についてチームからも振り返りがある思うので今後のプレーに期待したいです。

 

 あともう一つ。非保持プレスのところ。京都はロングボールが多かったので、そんなに問題にはなっていませんでしたが、気になったプレーがあったので少し触れたいと思います。

 エスパルスは基本的にウィングが外切りでプレスをしていますが、特にカピシャーバ選手が外切りで出てきた時にその背後を使われる場面が気になります。

 この試合でいうと例えば15分の清水の非保持の場面ですね。この時は京都のサイドバックの位置が低かったので前進はされませんでしたが、カピシャーバ選手の後ろで福田選手がフリーになってます。

 また25分30秒のところ。カピシャーバ選手が外切りプレスにいく。前にコースがあるのでアピアタウィア選手がジョアンペドロ選手に縦パスを入れる、ジョアンペドロ選手がダイレクトでサイドに叩いてプレス回避成功。カピシャーバ選手の背後でまた福田選手がフリーでボールを受けています。

 このような一回縦に入れてワンタッチでサイドや、浮き球でカピシャーバ選手の頭を越えてサイドバックへなど、J1チームはどこも外切りプレスの回避方法を持っているような気もします。

 名古屋戦でもカピシャーバ選手の背後で原選手がフリーになってそこからチャンスを何回が作られていたのでちょっと気になるところです。清水の方もここは今後に何らかの対応はすると思いますので、そこはこの後の試合の注目ポイントの一つとして見ていきたいと思います。

 

 次に京都についても見ていきます。京都の保持も基本はロングボールで、3トップがわりと真ん中の方まで入ってきて、サイドの方、例えばマルコトゥーリオ選手になんかにロングボールを後ろから当てることが多いように見えました。

 そこから幅広く攻撃するより、ボールを入れたレーンに集まって素早くゴールを目指す。そんな攻撃に見えました。

 またラファエルエリアス選手はターゲットという感じではありませんでした。当てたボールを受けてフィニッシャーになったり、ラストパスを出すような最後のプレーに関わせる意図なのかもしれません。

 京都の前線は独力で持っていけるバワーやスピードがある選手ばかりで、3トップやインサイドハーフの選手が躊躇なくどんどん前にいくところが脅威でした。ということで京都も何回かゴール前に迫っていたという流れでした。

 

 ただやっぱりダイレクトで早い攻撃なので、攻守が入れ替わると後ろにスペースがあってすぐに逆に相手の攻撃になってしまう。そんな傾向はありました。

 行ったり来たりで逆襲を食らいやすいのはエスパルスもなんですけど、エスパルスの方が両サイドバックが同時に上がることが少ないので、その分若干カウンターでの安定はあるようにも感じました。

 とりあえず前半はこんなところです。スコアレスで前半を折り返して後半に向かうことになります。

 

 後半を観ていきます。後半はあまり詳しく観てないので簡単に。

 まず京都が選手交代。アンカーの齋藤選手に代えて米本選手。左インサイドハーフの平岡選手に代えて平戸選手が入りました。

 齋藤選手に代えて米本選手は、前半に触れた千葉選手がアンカーを外すとそのままゴールに向かえるという部分。おそらく対人で強さのある米本選手でそこをカバーしたい意図なのかなと思いました。

 平戸選手に関しては、名古屋戦で宇野選手から小塚選手に代えたのと近いかなと。平岡選手があまりボールに絡めていなかったので、ボールを引き出して長いボールだけでなく変化も付けたい意図でしょうか。昨年対戦時には平戸選手に上手くボールを動かされたイメージが残っています。

 

 後半すぐにエスパルスがオウンでゴールを奪いましたが、ここもトランジション、お互い前に入れて行ったり来たりしたとこからゴールが生まれています。

 もう少し細かく見るとサイドの北川選手にボールが入った時に相手のサイドバック須貝選手が出てくる。その時のセンターバックとの間が開いてそのギャップに小塚選手が入ってクロス。これがオウンゴールを誘ってエスパルスが先制です。

 見方によっては、39分に日高選手が持って北川選手がギャップ取った時と同じ形ですね。今度は北川選手がギャップに入った小塚選手にパスを出して小塚選手が内側からクロス。やっぱり内側からクロスを上げた方が点に繋がりやすいなというのは感じたプレーでした。

 

 ここからは本当にざっくり。

 京都は58分に左フォワードの新井選手に代えて奥川選手。奥川選手が入ってから京都はサイドから攻撃できるようになったように見えました。例えば60:45の奥川選手が日髙選手に仕掛け、その外を須貝選手が上がっていく形です。

 奥川選手はスペースに向かうだけでなく相手に対峙して仕掛けられるのでサイドの2対1を上手く作れるように見えました。こんな感じで京都がサイドも使えた方がエスパルスは対応しづらかったと思います。エスパルスはディフェンスが横にコンパクトなのでサイドにポイントは作りやすいかもしれません。

 

 この後、63分のジェラ選手のゴールがオフサイドになったシーンがあったりして、お互い選手交代もあり、エスパルスが79分に千葉、小塚選手に代えて髙橋、弓場選手。たぶんここからエスパルスは4-4-2にしたように見えます。どちらかというともう1点取るぞというより、残り10分は固くいこうという交代じゃないかなと思います。

 

 そうなると京都の方が少し押しているかなという流れになりました。最後アディショナルタイムに大畑選手が自陣右サイドでクリアしようとしたボールを奪われてエリアス選手のゴールが決まります。結局90分では1対1で終了しましたという流れでした。

 

 PKはこのリーグの特別なレギュレーションなのでそんなに気にしてませんが残念な結果ではありました。あと最後に選手交代して少し押されたようにも感じましたが、1点リードで固くいくのは普通にありだと思いますし、そんなに悪い流れでもなかったと思います。

 

 

 

マッチレポート【2025年明治安田生命J1リーグ 第38節 清水エスパルスvsファジアーノ岡山】

 2025年シーズンもついに最終戦。対戦相手は清水と同じく今期の昇格チーム、ファジアーノ岡山です。すでに残留は決定している両チームですが、J1での成長度を見比べる意味ではとても興味深い一戦となりました。

 まずは両チームのメンバーです。

 システムはどちらも3-4-2-1。清水は残留決定後は4バックにもトライしましたが、この試合は3バックを採用。マッチアップを噛み合わせつつ、最も安定したシステムで有終の美を飾りたいという意味合いもあったのかもしれません。

試合の入りはやや岡山が優勢か

 システムは3-4-2-1同士、いわゆるミラーゲームです。お互いに人基準で相手を捕まえる守備の傾向から、ボールの行く末でバチバチとデュエルの発生する試合の入りとなりました。

 清水は岡山のプレスを回避するためか、後ろから右サイドの奥に長いボールを蹴る場面が目立ちます。おそらく右WB高木選手を岡山の左WB佐藤選手と競り合わせ優位性を作る意図があったのだろうと思われます。

 しかし岡山は高木選手へは佐藤選手でなく、左CB工藤選手を前に出して対応。高木選手vs工藤選手はほぼ工藤選手の勝ちで、清水は出したロングボールをことごとく失ってしまいます。

 岡山は工藤選手が競り勝ったこぼれ球を拾い逆襲に転じます。その際、岡山の前線はプレスで前に出ているのでそこをシンプルに使うことでチャンスを作ることができていました。

 序盤はマッチアップが噛み合う中で、岡山がトランジションからチャンスを作る回数がやや多いかなという流れで進んでいたと思います。

前半の半ばから清水がボールを保持する流れに

 岡山のプレスにビルドアップが詰まっていた序盤の清水。前半の10分も過ぎるとマテウスブエノ選手がディフェンスラインまで降りてボールを触り始めます。ブエノ選手が後ろでビルドアップに絡むと徐々に清水が保持できるようになっていきました。

 ブエノ選手が降りると、左右のセンターバックが開いて4バックのような並びになります。

 清水の後ろが4バックに可変したことによる影響は、岡山のファーストプレスの基準がずれたのと、高い位置に上がる清水のウイングバック高木、山原選手に両サイドの佐藤、本山選手が押し込まれたことです。

 さらに間に顔を出す乾選手や矢島選手を消すため1列目の守備がやや絞り気味。こうした理由から岡山1列目の脇にフリースペースができて、そこを起点に清水が前進をうかがえるようになりました。

 また岡山のプレスが弱まったため左の後ろに降りたブエノ選手がフリー気味になります。これでブエノ選手が自分で持ち運んだり、インサイドの乾選手や最前線に出た山原選手に絶妙なパスを通したりと左サイドで多くのチャンスを作り出せるようになっていきます。 

 清水は相手陣内まで前進すると、ボールサイドに人数をかけて岡山の最終ラインを崩しにかかります。

 試合全体を通して岡山のブロック守備は、カバーの動きなどしっかり整理されているなという印象を持ちましたが、清水の人が湧き出でるような流動的な攻撃に少し組織が崩れそうな場面も見られました。

前半終了に向けて再び岡山がペースを握る

 38分辺りの岡山非保持(守備の局面)に注目すると、まず左WBの佐藤選手が縦スライドして住吉選手のところまでプレスをかけてボールを後ろに戻させています。

さらに梅田選手を経由して左に降りたブエノ選手にパスが出ると、今度は右WBの本山選手が縦スライドしてブエノ選手までプレス。

 岡山が1列目脇のスペースやブエノ選手をWBの縦スライドで消し始めると、清水のビルドアップは自陣寄りで詰まるようになっていきます。

 また岡山のボール保持では、江坂選手がボランチの高さまで降りたり、左WB佐藤選手が低めで持ったりと清水のプレスを引き付けるようなプレーも見られるようになりました。

 これで左CB立田選手が少しフリーになって精度の高いパスを前線に通したり、サイドの高い位置まで上がったりと崩しに関わる場面を作っていきます。

 清水はこれに高い位置から制限をかけようとしますが、プレスの連動が薄いため一人交わされると一気にディフェンスラインが晒されるような場面が頻発します。

 例えば42分。清水が苦し紛れに前に出したボールを岡山が奪うと、田上選手が清水のプレスを引き付けてから右サイドの奥にフィード。これを奪おうとサイドまで飛び出した蓮川選手が本山選手に裏を取られ、本山選手からルカオ選手にラストパス。そこからルカオ選手のシュート→ポスト→跳ね返りを江坂選手が拾って再びシュートとかなり際どいシーンを作られてしまいます。

 このまま岡山が押し込む流れが続きましたが、清水がしのいでスコアレスのまま前半は終了しました。

後半の入りは長いボールとトランジション

 後半の入りはお互いにセーフティを意識したのか前に長いボールを出す場面が多かったように見えます。

 その際、清水は前半と違ってステファンス選手に向かって蹴ることが多く、これをマイボールにできるかは五分五分といった感じだったと思います。

ステファンス選手のプレーを長い時間じっくり見る機会がありませんでしたが、どうやら競り合いに強いタイプではないようです。

 この展開であればワントップは競り合いが得意な選手がいいということなのかもしれません。58分にステファンス選手と髙橋利樹選手の選手交代が行われます。

 岡山も60分に宮本選手→田部井選手、本山選手→松本選手の交代。ここは岡山の選手の特徴を把握してないので明確な意図はわかりません。

 交代後、61分の清水のチャンスは髙橋選手のプレーから。相手二人を背負ってキープ。潰れながらも粘って高木選手に繋いで右サイドの崩しの起点になります。松崎選手が右からクロスを入れて逆サイドに降ったボールを山原選手がシュート。シュートは相手に当たって外れましたが、ここは清水の選手交代の意図が上手く表れたシーンだったと思います。

岡山の先制点は再三狙っていた形

 先ほどの清水のチャンスのすぐ後、63分に岡山がついに均衡を破ります。

 岡山がスローインを後ろで繋いだ時、同時にルカオ選手が住吉選手の脇にポジションを取っていました。左サイドの佐藤選手から立田選手にパスが送られると立田選手はダイレクトでルカオ選手にピンポイントのロングパス。

 

 ルカオ選手は住吉選手を強引に振り切ってシュートを撃ち、これが決まって岡山が先制します。

立田選手の見事なダイレクトパスとルカオ選手の身体の強さは特筆すべきですが、3バックの脇を狙ったフィードは岡山が何度か見せていた形です。

 清水の非保持はマンツーの意識がかなり強く、対面の相手にポジション取りが影響されます。

この試合でも左右のWBが相手のWBを見るため前めのポジションを取っていて、そのため何度か3バックの脇を綺麗に取られる場面が見られました。

 岡山の一発に上手くやられてしまったように見えますが、前半から何度か突かれていた攻撃に清水の守備がついに決壊してしまったとも言えそうです。

整理されていく岡山の非保持組織

 清水は66分、松崎選手、矢島選手、高木選手に代って北川選手、宮本選手、北爪選手の3枚替え。得点を狙うためにフォワードタイプの北川選手を入れ、ワイドにはより高い位置に北爪選手を張り出させる。交代の意図はそんな感じでしょうか。

 しかしこの時間帯、僕の目についたのは岡山の非保持組織でした。1点リードしたことで無理にプレスをかける必要がなくなったのかもしれません。プレスと同時にスペースを埋める動きもより整理されてきたように見えました。

 例えば66分。ファーストディフェンスでサイドに誘導すると、WBが縦スライドしてサイドのエリアに蓋をします。同時に1列目の木村選手が背後のボランチにプレスバック。これで山原選手から前に出すコースを消して後ろにボールを戻させました。


 またマテウスブエノ選手が後ろに降りても、同じようにサイドにはWBが縦スライドして、中盤のスペースはシャドーが埋めます。

 またボールを持たれたらしっかり5-4-1でセット。これで岡山の非保持組織に隙がなくなり、清水が後ろでボールを持ってもブロック内まで侵入できない時間が続きます。 

 そして71分にルカオ選手→一美選手の選手交代が行われたすぐ後、75分に岡山に追加点が生まれます。

 ブローダーセン選手からのロングフィードが清水陣内で弾かれて、いったりきたりした後にボールは江坂選手のもとへ。江坂選手が山原選手の裏のスペースへパスを出し、受けた木村選手がほぼフリーで右サイドからクロス。木村選手からのクロスをゴール中央に走り込んでいた江坂選手がボレーで決めて岡山がリードを2点に広げます。

 まずクロスを上げた木村選手が3バックの脇のスペースに流れてフリーになったのはここまで何度か見られた形。そして逆サイドのWB北爪選手が前に出ていたためゴール前のカバーが間に合わず江坂選手がフリーでした。

 江坂選手のシュート自体はゴラッソでしたが、ラインの繋がりが薄い清水の非保持組織の問題点が表れていたシーンだったと思います。

最後に清水が1点を返す

 2点目を取られてしまった清水。少し焦りもあったのか岡山ブロック内に無理に差し込むようなパスが目立ち始めました。

 しかし岡山がそれまで通り組織を整えてスペースをしっかり管理しているので、パスを差し込んでも引っかけられてカウンターを浴びる。そんな展開が続きます。

 清水は80分に蓮川選手に代えて小塚選手。小塚選手と乾選手をサイドに置いて4-4-2にシステム変更しました。

 清水のシステムが代わっても展開は特に変わらず。岡山がスライドとプレスバックによるスペース管理をしっかり行うため、清水はなかなか前進をうかがえません。

 そんな展開の中、88分に清水のゴール。北川選手が左サイドに流れて動いたことで岡山の守備の連動が少し崩れて、引きつけられた立田選手の裏にギャップができる。そのギャップに山原選手が相手を外して走り込むとそこに乾選手が針の穴を通すようなスルーパス。山原選手が中央に折り返し、髙橋選手がゴールを決めました。

 ここまで流れとしては岡山ペースでしたが、アタッキングサードでの一発があるのは清水の強みです。

 ここも前半の良い時間帯のようにサイドで人が動いて相手の守備を動かす。ディフェンスラインのギャップに斜めに入って裏を取る。ピンポイントで合わせる選手同士の関係性など。まぐれではなくこれまでの清水の特徴が表れたゴールだったと思います。

その後、6分ほどアディショナルタイムがありましたがスコアは2対1のまま試合終了のホイッスルが鳴りました。

最後に

 過去3年間、岡山とは何度も対戦しましたがこの日の岡山が一番強いなと感じました。これまでは何かを取ると何かが足りなくなるのかなというイメージがありましたが、どの局面でもJ1の強度が出せていたのではないかと思います。

 清水は監督始めスタッフ陣や一部選手の退団も報じられモチベーションの維持が少し心配されましたが、しっかり湘南戦から立て直して良い試合を見せてくれました。

 結果は残念でしたが、得点シーンも失点シーンにも秋葉エスパルスらしさを感じることができ、このチームの締めくくりの試合内容だったといっていいのかもしれません。

 このチームのマッチレビューを書くのも最後かと思うと少し寂しさを感じますね。とにかく3年間有り難うございました。なんだかんだで楽しかったです。

 

 

 

 

 

マッチレポート【2025年明治安田生命J1リーグ 第33節 清水エスパルスvsFC東京】

 途中まで書きかけたところで、アルマジロさんもこの試合のレビューをアップされました。

note.com

 

  見えた内容はほぼ同じなのでアルマジロさんのを読んだ方がわかりやすいです。とはいえ書きかけでやめるのもなんなので、とりあえず私もまとめます。

 まずは両チームのメンバー。

 

 FC東京の非保持を見ると、4-4‐2でミドルゾーンに構えていて、積極的にプレスはかけていませんでした。

 さらにボランチの選手が乾選手や小塚選手をマークするように付いているようにも見えました。

 スペースは消され受け手も警戒されているわけですが、試合序盤の清水はそこに後ろから差し込むようなパスを入れています。結果、中盤でボールを奪われ何度もカウンターから決定的な形を作られてしまいます。 

 相手が構えているところにパスを入れるので当然奪われやすいのですが、相手の状態よりも自分達のやりたいプレーを優先するのは今の清水のあるあるです。

 相手関係なく自分達のプレーをする。これはある意味主体的なプレーなのかもしれませんが、そもそも前提としてサッカーは相手とやり合う相対的なスポーツです。

 いくらこちらが高い技巧を発揮しても、相手が狙っている場所にパスを入れればそのパスは奪われやすくなります。それは集中力が高かろうが、ふわっとしていようが同じです。起こる事象は常に相手のプレーとの関わり合いの結果です。

 そんなこんなで前半途中までは完全にFC東京の時間帯。しかしFC東京の守備ブロックに隙がないかというとそうでもないようでした。

 FC東京は正面から清水のパスを向かえ撃つ時は対応できていますが、スライドやカバーを強いられると組織が崩れる傾向がありました。

 典型的なのは34分の清水の得点場面。清水は一度左サイドで繋ぎ、右に大きくサイドチェンジ。この時、FC東京の左サイドハーフサイドバックは(FC東京から見て)左サイドにスライドしますが、他の選手は中央に撤退。結果、センターラインと左サイドの間に大きくスペースが開いてしまいます。

 さらにジェラ選手が内側レーンから裏を狙うと、左サイドハーフのマルコスギリェルメ選手がそのカバーについていきます。これで内側をカバーする選手が完全にいなくなり吉田選手の左側にはフリースペース。ボールを受けた吉田選手がそのスペースに運びインスイングのクロス。それを髙橋利樹選手が合わせて清水が先制します。

 FC東京は、サイドチェンジされた時にもう少し全体で左にスライドするなり、2列目のラインに2トップの一枚を下げるなりして、ハーフスペースをカバーした方が良かったような気がします。

 個人の対応を見れば、室屋選手は吉田選手の縦を切っていましたが、ジェラ選手のランで内側のカバーが剥がされたので中切りで縦に行かせるのがセオリーだったと思います。

 清水としては、まずジェラ選手がタイミングよく内側を上がり大外で1対1の吉田選手に選択肢を作ったプレーがベリーグッド。吉田選手もジェラの作ったスペースに繋がり運んでクロス。味方との繋がりが感じられるよい連動からのゴールだったと思います。

 

 このように前半途中までは完全にFC東京のペース。しかし前半30分近辺から、清水は後ろから繋いで前進よりも長いボールを蹴る回数が増えました。

 長いボールで中盤を飛ばせば、ショートカウンターを食らうことはありません。なのでこの時間帯から、清水がカウンターを食らう機会が減って逆に相手ゴール前に迫る機会を作り始めました。

 しかしロングボールが増えると、こぼれたセカンドボールをどちらが拾うかの勝負になって、球際に勝った方がチャンスを作ります。FC東京もすごくビルドアップにこだわっているという感じでもないのでお互いにチャンスもピンチも作る流れでそのまま前半は終了します。(前半終わって1対0で清水がリード)

 

 後半です。前半はプレスを抑えて構え気味だったFC東京。後半は清水の後ろの保持に対して積極的にプレスをかけるようになっていました。

 1列目のプレスにサイドハーフも出てくるので中盤にスペースができがちな上、プレスを交わされてもそのまま人に付いているので、やや守備組織がばらけ気味です。

 清水としてはテンポ良く動かしていけば相手の方から崩れてくれるので、いつもの通りスペースにどんどん人が動くことでボールを運べるようになっていきます。

 清水の保持は目の前にあるスペースにとにかく速く人とボールを動かしていくので、ゴール前への推進力が出ますが、配置のバランスが悪くなる上に不用意なミスも出やすいです。それを技巧のある選手を並べて補っているわけですが人間ですのでそれも限界があります。

 後半は、清水がボールを繋いで相手陣内に攻め込む時間を作りますが何気にミスも多く、FC東京もカウンターでチャンスを作るという構図になっていました。

 

 75分。プレッシングにいくのか、ミドルブロックを構えるのか清水の非保持の意図がばらけたところで、FC東京が後ろからロングフィード。俵積田選手が斜めのランニングで裏を取り、佐藤選手に渡ってゴラッソ。これで1対1。FC東京が追いつきます。

 決めた佐藤選手を褒めるべきですが、清水はどうしてもプレス含めてプレーの基準が出てきた選手によって左右されてしまう。そこは少し気になりました。ちなみにこれはどの選手が正しい、間違いではありません。

 

 同点に追いついた後のFC東京は少しプレスを自重したように見えました。そこで清水がボールを持って攻め込むも崩しきれず最後は引っかかってカウンターを食らう。そんな展開が何度か。

 試合終盤は清水が北川、矢島、高木各選手を順次投入して出力を上げます。アディショナルタイムに松崎選手、住吉ジェラ選手が決定的な場面を作りますがゴールは決まらず試合終了。結果は1対1の引き分けでした。

 

 最後の決定機が決まってさえいればはその通りですが、FC東京にも決定機が何度もありました。ドローは内容的にはフェアな結果かなと思います。

 始めはふわっと入ってしまったが、後半から我々らしく主体的に相手を押し込むことができた。片面的にはそういう見方もありますが、それだけだとちょっと一人称すぎるかなと思います。

 サッカーは相対的なゲームなので出てくる結果は相手と自分達、両方の意図と振る舞いの関わり合いによって生まれます。

 その視点で見れば、この試合の展開も自分達のメンタルや姿勢も当然ありますが、概ね相手の挙動に応じて流れが変化していたように思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

マッチレポート【2025年明治安田生命J1リーグ 第26節 清水エスパルスvs横浜Fマリノス】

 第26節の対戦相手は横浜Fマリノス。現在降格圏内と苦しんでいますが、ここのところ戦績は上昇基調。しかも選手の質は相変わらず高く、難しい試合になることが予想されました。

 一方、前節アウェイで広島と互角以上の勝負を繰り広げた清水エスパルス。結果は引き分けでしたが、走力、球際、前への意識を押し出したその試合内容に自分達のサッカーを再確認できたものと思われます。

 さて、そのアグレッシブなサッカーで次こそ勝利をと期待されたホームアイスタでのこの試合。しかし結果は1対3。思いもよらぬ惨敗となってしまいました。

両チームのメンバー

 清水のシステムは4-2-3-1。広島戦の3バックから4バックにシステム変更。

 マリノスも4-2-3-1(4-2-1-3というべきか)ですが、これをミラーといっていいのかちょっとわかりません。

 個人的にはミラーかどうかより、ファーストディフェンスをどう設定するか、ピッチの横幅を何人で守るかの方が大事だと思っています。

 あとは前節からのメンバー変更で矢島選手がトップ下に入っています。

 矢島選手もハードワークできますが、選手のキャラ的に走って球際行ってという面では少し強度が落ちるような気もします。

プレスにいくのかブロックを構えるのか

 清水はマリノスの保持に対して広島戦同様、積極的なプレスの意思を見せていました。

 対するマリノスの保持は、まず両センターバックが左右に広がるポジションを取りつつ、その間にキーパーの朴選手やボランチの選手が入って後ろの保持に参加します。

 この時、清水の2トップ(髙橋選手と矢島選手)がそのままセンターバックにいくと間へのパスコースがぱっくり空いてしまいます。

 そこで2トップの片方がボールを持つセンターバックへ、もう片方はボランチ(アンカー)を抑える形でプレスを行います。

 ボールが左右に動いたら2トップで背後のアンカーを受け渡しながらスライドしますが、ここで問題になるのがマリノスセンターバックの立ち位置です。

 左右に広がるセンターを2トップだけで見るには距離が遠く、スライドが間に合わない場面が出てきます。

 しかもキーパーの朴選手もボール出しの上手い選手で、そこにもプレスをかけないとボールを前に付けられてしまいます。

 そこでサイドハーフが1枚前に出て人数合わせをしますが、例えば松崎選手が前に出ると下の図のように加藤選手がフリー。この時点でマッチアップがずれてくるわけです。

 背後にフリーできれば、後ろが気になってプレスの勢いが弱くなる。プレスが弱いと「前から強く圧力をかける」清水の守備の前提が崩れてしまいます。

 極端な言い方ですが、清水のプレスは対面の相手を強く捕まえにいく。ずれたら根性のスライドで走ってそのずれをカバーするやり方です。

 移動距離が長くなったり、意図的に引き付けられてスライドが不能になると、選手の頑張りではどうにもならない場面が出てきます。

 また前からのプレスではめ込むためには、後列の選手の縦スライドが必須です。上の場面なら加藤選手がフリーになったら、右サイドバック高木践選手が縦にスライドしなければなりません。しかしこの時、高木選手はウイングの宮市選手にピン止めされて前にでることができません。

 マリノスの両ウイングは、ワイドに張って独力でも仕掛けられる選手です。さらに清水の守備は全体でスライドするより対面の相手を捕まえる意識が強いのでよりピン止めされやすい傾向があったと思われます。

 つまりこの試合で頻繁に見られた事象は、

・プレス志向が強くサイドハーフ含めた前線4枚でプレスをかけにいく。

・しかしマリノスの後方保持でプレスがずれて前進される。
サイドハーフが前に出ているのでボランチの両脇を締められずにスペースが生じる。

・さらにトップ下の植中選手がいるので、中盤は数的不利。

・ディフェンスラインは、マリノスの3トップにピン止めされて縦に間延びした状態。

・中盤からフリーでパスが通るので、優位な場所を素早く使われ勝負される。

 こんな感じになっていたと思います。

 これだけプレスがはまらなければ、普通はミドルゾーンにブロックを構えた方がいいはずです。しかし広島戦でのプレーをもう一度の想いがあるのか、前線はプレスをかけに前に出ていき、後ろの選手と距離が乖離したままです。

 組織全体でプレッシングにいくかブロックを形成するのか。この判断がバラバラになるのはJ2時代から継続する清水の課題だと思います。

 本来、ハイプレスかミドルブロックかは、ボールにかかっている圧力とファーストディフェンスに連動した味方同士の繋がりによって規定されるもの。そこはグラデーション的に繋がっているものですが、清水の場合はハイプレスかローブロックの人海戦術かで、それぞれ全く別々のやり方になってしまっています。

 前半29分までに2失点を喫した清水。34分辺りから3-4-2-1にシステム変更。矢島選手をボランチに、嶋本選手を左シャドーの位置に上げています。ポジション取りが不安定だった嶋本選手を前に出して、最終ラインの人数を5人に増やしました。

 これだけディフェンスラインがダイレクトに晒されていれば後ろに人を増やした方がいいですし、ポケットを何度も取られていたので5枚にしてギャップを塞いだ方がいい。

 それでもポケットを取られていましたが(ピン止めされやすすぎる...)、それ以降はなんとかやり過ごした前半の流れだったと思います。

ボール保持している時のバランスは?

 次に清水の保持を見ると、左サイドからの方が前進しやすく、右は少し詰まっているように見えました。

 というのもボランチのブエノ選手が左脇に降りるので、そこにヤンマテウス選手がプレスにくる。すると、左サイドバックのブルネッティ選手が少し上がった位置でフリーになりやすいのが1つの理由だと思います。

 ただし、味方と連動しながら上がっていくタイプのブルネッティ選手に対して、サイドハーフのカピシャーバ選手は自分が受けて突破したいタイプ。

 結局、カピシャーバ選手がゴリゴリっとドリブルしてクロスか、ブルネッティ選手がアーリー気味に中央に入れるか。これだと少しシンプルなのでピンポイントでクロスが合わないとチャンスを作るまでには至りません。

 ここでマリノスのプレスを観察すると、ボールが後ろの中央にある時は、プレスに出ないで中央へのパスコースを塞ぐようなポジションを取っています。

 ボールが動いたら中を消しながらプレス開始。サイドに誘導したらコンパクトに全体を押し上げて、一気に出しどころを塞ぐようにプレスをかけにいくようやり方でした。

 後ろでちょっと持たされて、サイドで少し進んだところではめ込まれるのは、J2時代から苦手とするやり方です。

 ということで、清水の右サイドはジェラ選手、高木選手とそこまでボールを動かせるタイプでないので保持が詰まり気味。

 しかもちょっと持たされるので、ボールを受けようと人が自由に動きます。そこで取られてしまうとポジションバランスが崩れているため、カウンターを受けやすい状態になっているわけです。

 さらに奪われた後に左サイドに振られると、ブルネッティ選手やカピシャーバ選手が上がっているので、例えば13分の松原選手のシュートのように左サイドが絞りきれずにスペースを使われる場面が出てきます。

 攻撃局面から守備局面への切り替え。またはプレッシングからブロック守備への移行。清水は組織のやり方として目の前の局面へ全振りで、局面の移行に難を抱えているような気がします(もちろん目の前の局面への出力は高くなるというメリットはあるのですが)。

 いずれにしてもこの試合では、マリノスのやり方とこちらの意図の噛み合わせ的にその難が出やすい状態になっていたように思えます。

 それが秋葉監督いわく「安い失点」含めたやるべきことができていないように見える状態に繋がっていたのではないでしょうか。

後半の流れを簡単に

 両チームとも後半頭から選手交代。

 清水は矢島選手、蓮川選手、松崎選手から北川選手、乾選手、山原選手の3枚代え。

 マリノスは前半痛めた角田選手に代わりボランチの山根選手。ボランチの喜田選手がセンターバックの位置に入ります。

 清水は選手交代と同時に再びシステムを4231に。左センターバックにブルネッティ選手、左サイドバックに山原選手と左サイドに選択肢を持ってボールを動かせる選手が配置されました。

 またボランチ嶋本選手が右センターバックの脇に降りてさばくため、ブエノ選手が左右どちらにも降りる必要がなくなりアンカーの位置に留まることができています。ブエノ選手が真ん中にいれば、乾選手も降りなくて済むので保持時の初期配置的にはバランスが良くなった気がします。

 これにより乾選手が中間ポジションでマリノスボランチに影響を与えるためか、山原選手から右足で斜め内側に差し込むボールがライン間に頻繁に入るようになりました。

 マリノスセンターバック交代の影響か前半よりブロックを高い位置に押し上げられず、清水が前半よりも深い位置にボールを運べるようになっていきます。

 保持で深い位置まで運べれば、当然ネガトラ(攻撃から守備への切り替え)も深い位置で起きるので被ショートカウンターの機会は減少します。

 こうして後半は清水が押し込む時間を作りますが、センターバックのブルネッティ選手がサイドバック並みに攻撃参加するのは気になりました。

 清水が押し込んではいましたが、ロングカウンターでたやすく決定機を作られる場面が時折あって、その内一つを交代で入った谷村選手に決められてしまいます。

 試合は最後まで、後ろが不安定ながらも清水が押し込む展開。その流れで最後の最後に山原選手のクロスを北川選手が決めて一矢報います。

軽くまとめ

 おそらく姿勢としては広島戦のアグレッシブさをイメージしながら、マリノス用に微調整したゲームプランだったのではないかと思います。

 広島戦のハイプレスはいわば後先考えない振り切った運動量が必要で、あれを全試合フルタイムやるのは無理があります。

 なのでどうしても普段はバランスが必要になりますが、バランスよくやろうとすると上手くいかないのはこのチームのあるあるだと思います。

 試合後監督コメントの「守備は3バックのほうがうまくいって、攻撃は4バックのほうがうまくいく」というのは、そのバランスの難しさの表れなのかもしれません。おそらくその悩みの解決策の一つは「攻撃と守備が同時に行われるようなチームの設計」だと思います。

 秋葉監督が戦術や局面のプレーのディテールをしっかり指導しているのは理解しているつもりです。そしてそれぞれのチームにそれぞれのやり方がある。ただ僕個人としては、そうしたチームの設計はあまり重視していないのだろうなという感想をここ2年以上抱いています。

 

 

マッチレポート【2025年明治安田生命J1リーグ 第25節 サンフレッチェ広島vs清水エスパルス】

 8月6日に行われた天皇杯広島戦では0-3の大敗。中3日で再びサンフレッチェ広島との対戦です。

 同じチームとの連戦で天皇杯からどうリカバリーするかが一つの注目のポイントでしょう。

 それではさっそく両チームのメンバーは下の通り。

 天皇杯では4-2-3-1システムでしたが、この試合は3-4-2-1システムを採用。

 メンバーはこれまでファーストセットだった北川選手、乾選手がベンチに。代わりに新加入の髙橋利樹選手がトップに、左ウィングバック起用が多かったカピシャーバ選手がシャドーの位置で起用されました。

 またウイングバックには山原選手、高木践選手とサイドバックタイプの選手を起用。これらは多くの方が指摘するように、特に非保持でマッチアップを嚙み合わせ対面の相手に負けない強度を重視していたように思います。

 さらにボランチにルーキーの嶋本選手を起用するなど、天皇杯から変化を見せた清水エスパルス。試合の前半は、清水が天皇杯とは打って変わりアグレッシブなプレーを見せてペースを握ります。

前半(主に清水視点)について

清水の非保持(守備の局面)で見えたこと

 清水は開始から前への意識が高く、非保持でもかなり積極的なプレスをかけていきました。

 特にトップで起用された髙橋選手のプレスが効果的。髙橋選手は前に強くプレスに出るだけでなく、ボールの動きに合わせたプレスバックも献身的に行ない広島のボールの出しどころを潰していきます。

 広島はこうした清水の出足の鋭さにかなり窮屈さを感じていたよう。後方保持でパスがずれたり、パスコースを作れずやや慌てて前に出したりといった不安定さが見られました。

 そうして広島のボールがアバウトになったところに、相手より出足鋭くアプローチしてボールを回収。守から攻への切り替え(ポジティブトランジション、通称ポジトラ)が起きれば勢いよく後ろから人が前へと飛び出して広島陣内へと攻め込こんでいきます。

清水の保持(攻撃局面)と髙橋選手起用の効果

 またボール保持でも髙橋選手の起用は効いていました。髙橋選手は北川選手よりロングボールでの競り合いで特徴を出せる選手のようで、広島のセンターバックに対しても引けを取らずに競り合えていました。

 前半、清水はボール保持率で広島を上回っていましたが、後ろからクリーンにボールを運び出せていたかというとそうでもなくて、特にこれまでと変わらないように見えました。

 清水の前進は基本的にマテウスブエノ選手が後ろに降りて、個人の技能で剥がして中盤にボールを届けるか、サイドを起点にシャドーなど人がグルグル動いて最終的にサイドの裏に飛び出すような攻撃がメインです。

 ショートパスやドリブルを多用するので、成功すればテンポ良くエンタメ性の高い魅力的な攻撃になりますが、相手を動かすプレーが希薄なのでパスがリスキーだし、相手より自分達がグルグル動くので奪われた時のポジション取りが不安定になります。

 結果的に攻から守の切り替え(ネガティブトランジション、通称ネガトラ)時にいて欲しい場所に人がおらず、一気にゴールまで運ばれやすいという状態にもなりがちです。

 しかし、髙橋選手が最前線にいると後ろからロングボールを出せば競り合いで少なくとも五分のボールにしてくれます。そこで非保持時と同様にこぼれたボールに素早くアプローチすればマイボールにすることができます。そうなればそのまま押し上げて後ろの陣形を崩すことなく広島陣内に攻め入ることが可能です。

 と、ここまでいいことだらけの前半ですが、髙橋選手がボールを受ける時に中盤まで引いてきたりサイドに流れたりといった動きをするのは北川選手と同様で(これはチームのやり方としてそうしないとボールが動かない)、アタッキングサード(広島のゴール近く)まで行った時に、ゴール前に人がいない問題が発生するのもやっぱり同じでした。

 それでもシュートの機会を作れていたのは、ボールアウトからのコーナーキックだったり、ファールを受けてのフリーキックだったりと相手陣内でのセットプレーを獲得できたのが大きいかなと思います。

清水保持時の盤面について

 ここで少し清水の保持時の盤面に触れると、


 こんな感じでマテウスブエノ選手を降ろして後ろ4枚。右シャドーの松崎選手が繋ぎ役で降りてきて代りに右ウイングバックの高木選手がインサイドの最前線に上がっています。

 清水はチームの志向として個人が局面でどう勝つかを重視しているので、非保持では対面を捕まえやすいようにマッチアップを噛み合わせる。逆に保持ではずらして捕まりにくくするのが一番やりやすいのかなと思います。

 この盤面でいうと、やはり高木選手のところが捕まりづらいので飛び出しから何度かチャンスを作っていました。さらにこのずれたところに右センターバックの蓮川選手がガシガシ前に侵入してくるので、サイドの高い位置でファールをもらったり、コーナーに繋げたりといった場面を作れていました。

お互いのプランと少し広島について

 こうした前半のプレーに繋がったのは、戦術的な工夫ももちろんありますが、前提として清水が試合開始からフルスロットルで前へのアプローチを行えていたことが要因だと思います。試合後の秋葉監督コメントで主にメンタルの部分に触れているのは大げさではないでしょう。

 ただし前半、少し気になったのは清水はマラソンでスタートからダッシュするようなアグレッシブさを見せていたので、どう90分をプランニングするかというところです。

 それでいうと広島の前半の非保持は、意外とハイプレスはかけてきませんでした。もちろん前に制限はかけてきますがある程度ボールが動くと5-4-1のブロックをセットしていたように見えます。

 もしかしたら広島は前半は少し抑え気味に入っていたのかもしれません。そうだとしたら逆にフルスロットルで入った清水的には良い方に噛み合ったことになります。

 広島は非保持でブエノ選手に川辺選手をマンツーマン気味につけていましたが、全体的にはそこまで積極的なプレスではないので清水のセンターバックの選手は比較的ボール保持に余裕がありました。

 おそらくそれも清水のボール保持率が高かった理由の一因だと思います。

 と、こんな感じで前半は過ぎて清水がペースを握るもののスコアは動かず後半に向かうことになります。

後半について

ペースを握りかえす広島の修正

 後半、広島は右ウイングバックを新井選手から中野選手に交代。さらに加藤選手に代えて東選手をイン。左ウイングバックだった中村草太選手をシャドーにして東選手が左ウイングバックに入ります。これでウインバックが両サイドとも選手が代わった形になりました。

 後半、広島が巻き返すわけですが、要因は試合後のスキッペ監督のコメント通りと受け取って良いのではないでしょうか。つまり広島もプレスの圧力を強めたことと全体的に裏へ向かう意識を高めたことかなと。

 例えばですが、後半入ってすぐの46分過ぎ。清水のロングボールを弾くと東選手からパスを受けたシャドーの中村草太選手がドリブル開始。

 この時、前の3枚に加えて左右両ウイングバックボランチの川辺選手も前線へ向かっています。中村選手は中央に運んでいき、清水のディフェンスを中央に引き付けると右ワイドの中野選手へ開く。そして中村選手の折り返しを後ろから入ってきた川辺選手がシュート。この一連のプレーはロンクカウンターのセオリー通り。

 前半の広島は、ボールが前に入った時にトップとシャドーの3枚という状態が多いように見えました。ジャーメイン選手や木下選手が踏ん張って時間を作っていましたが、そこからの選択肢が少ないですし、清水もその間に全体が帰陣することができます。

 46分のようにウイングバックも前に出れば、相手のディフェンスを中央に収縮させてから開くことでサイドにフリーの起点を作れます。また清水のウィングバックの位置が高いのでその裏を狙えると。

 広島はこのサイドに展開してクロスでゴールを狙うところに強みがあるチームなのではと感じました。

 さらに右ウイングバックに入った中野選手は高さと馬力があって、清水の左ウイングバック山原選手に優位を作っているように見えました。

 前節まで右サイドでの起用が多かった山原選手ですが、どちらかというと左サイドの方がボール保持時に脅威を発揮できるような気がします。

 逆足でボールを持つと自然と相手に対峙する形になる(正対状態)。これで相手を止められるので、独力での縦突破も内側の味方に出すこともできます。

 実際に前半、清水の左サイドは山原選手とインサイドのカピシャーバ選手が共に独力でも仕掛けていましたが、後半に中野選手とガチンコになると山原選手のところが特に非保持でしんどくなってきます。

 広島は非保持でも前半より圧を強めてきます。例えば前半は何度か後ろからボールを持ち運んでいた蓮川選手をフリーにすることがなくなって、ボールを外回しに限定。

 アバウトに中に入れたボールには清水と同様のプレッシャーをかけてくるので、前半ほど間で受けれる場面はなくなっていたはずです。

 ガチの球際勝負になると、広島もかなり強いので流れは広島に少し傾いてくる。こんな感じになっていたかなと思います。

勝負を仕掛ける清水の交代策

 清水はここでおそらく予定していた選手交代。57分に山原選手と松崎選手に代えて、北川選手と乾選手をピッチに送り出します。

 高橋選手をトップに残して、北川選手と乾選手はシャドーに。カピシャーバ選手を左ウィングバックに回します。

 相手も強度を出してきたので、同じ土俵のままでは消耗の激しいこちらが次第に劣勢になってしまいます。そこで間でターンやドリブルなどでかわせる乾選手とゴールを奪える北川選手をセットで投入したのではないかなと。

 さらにフィジカルのあるカピシャーバ選手を左に回して中野選手とマッチアップさせる。個人的には納得感のある采配です。

 ただしこれで清水が相手ゴールに迫れるようになったかというと微妙でした。乾選手が入ればダイレクトに後ろから髙橋選手に出すよりも、パスを繋いで中盤の乾選手にボールを届けようとするプレーが増えてきます。

 しかし後半、広島が前からのプレスの圧力を強めてきたので、例えば61分のように後ろで繋いだところを引っ掛けられてカウンターを受けるリスクも高まっています。

 しかも選手の関係性で連携を作る清水は、多少プレッシャーを受けていても乾選手にボールを集めます。広島もライン間で乾選手にターンされるのが一番危険なのでそこを重点的にケアしてきます。そうなるといくら乾選手の技術が高くてもロストが増えるのは当然です。

 また最前線の髙橋選手もさすがに後半、運動量が落ちて前後左右に広く動いてボールを引き出し、広島のセンターバックと競り合い勝ち続けるのは不可能になってきます。

 髙橋選手の疲労は、非保持プレスにも影響してこの時間には前半ほどのプレスはかけられていません(体力には限界があるので当たり前ですが)。そうなると少し構えて守ることになるので、広島の後方保持に余裕ができて、より全体を押し上げた状態で後ろからのフィードが出せると。このあたりから広島は切り替えだけでなく、後ろのボール保持からもチャンスを作れるようになっていました。

70分の交代から終了まで

 そこで清水は疲労の影響が見える髙橋選手とカピシャーバ選手に代えて、吉田選手と中原選手。広島も木下選手に代えて前田選手がインします。

 カピシャーバ選手と吉田選手を代えた時点で最低限引き分けは担保しようという狙いだったようにも思えますが、真意はわかりません。ただとりあえずこの交代後も基本的な構図が変わってなかったと思います。

 お互いにチャンスは作っていましたが、試合のベースとしては広島が押し込むという構造になっていたと思います。

 それでも清水は前半同様、ボールを持てばアグレッシブに左右のセンターバックも前に押し出して広島ゴールに向かいます。しかし前進方法は前半と違い、ショートパスをい使った地上戦。

 左右のセンターバックが前に出た状態で地上戦のパスをカットされれば、そのままその裏を使ったカウンターを受けやすい。この時間帯に広島の右シャドー前田選手が4回(僕の計測が正しければ)、ゴール前でチャンスを作っていますがその全てが清水のボールロストからブルネッティ選手の裏を突かれています。そして内、3回に乾選手が絡んでいるという再現性。

 これは乾選手の調子の良し悪しの問題でなく、相手の狙いとこちらの構造。そして多少リスキーでもその時の状態に関わらずパスを入れてその選手の技能で打開するというチームの志向によって起こる事象です。

 それでも最後に交代で入った北爪選手の決定機など清水も何度か広島ゴールに迫ります。結局、試合はスコアレスのまま終了しましたが、試合内容としては最初から最後まで熱い充実したものだったと思います。

最後に

 スタートから強度を出して、非保持と切り替えでペースを握る。最低限無失点をキープして、後半に流れを見ながら得点に直結するセットを投入し勝ち越しを狙う。僕の想像ではこれが秋葉監督のプランです。だとすれば特に前半は狙い通り試合を進めることができていました。

 そしてこれを実行した選手は素晴らしく、だからこそ監督も試合後にあれだけ熱いコメントを残したのでしょう。

 今回のプランは、プレスをいなして後ろから組み立ててくるよりも、どちらかというとガチンコで正面からぶつかってくる広島だから機能した面もあると思います。

 それでもこれまでの形とは別のセットを機能させたこの試合は、今後の選択肢が広げる意義のあるものになったはずです。

 あとは後半のように、お互いの構造的に「それはリスキー過ぎるよ」というプレーを当たり前にするのはちょっと修正が必要かなとは思います。まあ、これはこのチームのアイデンティティに関わるところでもありますし、修正どうこうの問題ではないかもしれませんが。

 とりあえずこんなところでこの試合のレビューは終わりです。また頑張れれば他の試合も書いてみたいと思います。それでは。