マッチレポート【2024年明治安田生命J2リーグ第7節 モンティディオ山形vs清水エスパルス】

 第7節の相手は山形。開幕2連勝の後、3敗1分と調子は上がっていないよう。

 かたや清水はここまで5勝1敗。直近の試合は3連勝中。しかしこの試合は主力の北川、乾、カルリーニョスが負傷により欠場。主力抜きでの戦い方が注目される。

 前半始めから山形が完全にペースを握った。山形のビルドアップスタートは右SB熊本を残して後ろ3枚。

 対する清水は左のSH白崎を1枚前に出して数合わせ。高い位置からかみ合わせるようにプレスに出ていた。

 しかしこのプレスがはまらない。山形は右SH杉山で清水のSB山原をピン止めすると、プレスに出る白崎の裏のスペースにトップ下の国分が流れてくる。さらにボランチが2トップ脇の奥に顔を出す。

 これで中と外に前進コースを作る。清水はSHが外切りでプレスすれば内側に、中切りするとサイドへとボールを出されてしまう。

 トップ下から右サイドに流れる国分は常にフリーになっていて、ここがビルドアップの出口になっていた。清水はこれにボランチ中村がサイドへのスライドで対応するが、すると今度は中央が数的不利に。

 山形は国分が中央の選手に平行のボールを入れたり、もう1枚のボランチが前に出てさらに清水の守備を動かしていく。

 山形は左SHの氣田が中央にポジショニングする特徴的な動きを見せていて、ここが最後の崩しのポイントになっているようだった。中央に残った宮本は数的不利の中、これらの動きへの対応を強いられる。

 氣田が中に入ると対応する清水の右SB吉田豊は内側に絞り気味。そのため左の大外で山形左SB吉田泰授はフリーになりやすく、そこで1対1を仕掛ける攻撃も山形の狙いだったと思う。

 32分山形の先制点もこの流れ通りの形で生まれる。左SB熊本がボールを持つと左SHブラガ(ブラガは前半途中で左SHにポジションを移している)は外側を消すような位置取り。そこで熊本は内側に顔を出した高江にパスを出す。高江にはボランチ中村が出てきたが、高江は当てられる前にブラガの裏でフリーの国分にはたく。

 ボランチ中村が前に出たので中央は宮本一人。宮本は国分に寄せたいけど、中に氣田と南がいるため寄せきれない。逆サイドから松崎が絞って対応するも気田が余ってフリーに。氣田は慌てて寄せた宮本を外してシュートを決めた。まさに再現性のある攻撃から生まれたゴールと言える。

 

 清水の保持vs山形の非保持も見ておこう。山形のファーストプレスは明確に清水のボランチを消しながらCBにプレッシャーをかけていた。

 普段ならボランチを消された時は、SB山原と乾の関係性でそれを回避するところ。しかしこの試合は乾がいない。左SHの白崎が降りてフォローはしていたが、山原が単独で縦を狙う様子が目に付いた。

 また清水はビルドアップに詰まればシンプルに前に入れるが、この試合の前線は郡司と松崎。どうしてもフィジカルバトルで優位に立てない。

 ということで、後ろからの組み立ては詰まり、縦に入れたらボールは回収される。清水が保持してもすぐに山形のターンになり、山形に持たれると奪えない。清水にとってかなり厳しい前半の内容となってしまった。

 

 後半、清水に修正が見られる。まずボールを保持した時は、吉田が残って後ろ3枚の並びに。さらにトップ下の松崎が右ハーフレーンの低い位置まで降りるようになった。

 山形は吉田には氣田、右サイドを降りる選手にはSBが縦スライド。清水は山形の左サイドがタテずれしたその奥にボールを届けるプレーを何度か見せる。

 右サイドの高い位置を取れるようになったため、66分にブラガに代えてサイドを個で殴れる西原を入れたのは納得しやすい采配だった。

 また清水は非保持時にはマーク基準をはっきりさせたよう。まずボランチは相手ボランチをそのまま掴みにいく。右サイドに流れる国分はSB山原が前に出て捕まえる。

 山形の左SB吉田はブラガが下がって対応し、内側で浮く氣田は吉田がマークする。こんな守備基準になったように見える。

  これにより後半しばらくは互角の流れに見えたが、徐々にまた山形にペースが傾き始める。

 山形は清水が前からきたら長いボールで裏返すと、サイドを一人で見ているブラガの裏を狙い打ち。右SB吉田はトップ下のように振る舞う氣田に付いていくので、ブラガの裏のカバーに入れない。

 そこでマンツーマンだ!とマークを徹底するわけでもないようで、次第に清水の右サイドの守備はちぐはぐなものになっていく。

 ボール保持時はサイドに持っていくことはできるが、ただただ西原で殴るだけの攻撃になってしまった。西原が突破できればチャンスだけど、抑えられればカウンターで押し下げられる。

 お互い選手交代がなされたけれど、その後もこの構図は変わらず。最後はクロスのクリアが中途半端になったところを山形がダメ押しのゴール。スコア、内容とも山形に圧倒された試合となってしまった。

 

 思い出すのは昨年プレーオフ準決勝の山形戦だ。山形のチーム全体が繋がるようなポジショニングと相手を引きつけて止める、次に繋げる個人戦術。これらに対応できず押し込まれる構図はほぼ同じ。

 

 勝ち負けに関しては、主力3人の欠場が大きい。例え劣勢でも彼らがいればどこかでゴールを決めてくれたかもしれない。

 しかし結果だけでなく(結果は絶対的に大事だよ!)、試合の現象が正しく認識できているのか。そうでなければ個人能力ガチャにかけるようなチームから向上できないと僕は思う。今後同じような構図をぶつけてくる相手にどんな試合を見せるのか。そこに注目したい。

 

 清水側では、後半から出場した千葉選手は頑張っていた。彼の持ち味ではないけど味方のボールを引き受けて、背負って繋ぐプレーを懸命にこなしていた。できればもう少しだけでいいのでゴールに集中させてあげたい。

 山形の南選手、高江選手の両ボランチはとても良かった。次のプレーのために相手を引きつける。出し手にも受け手にもなり、裏表のキックの蹴り分けもできる。全くストレスを感じさせないプレーだった。