マッチレポート【2024年明治安田生命J2リーグ第12節ファジアーノ岡山vs清水エスパルス】

 第12節の相手は岡山。序盤快調で首位に立ったが、直近は勝点が伸びず現在3位。それでも失点数はリーグ最少、敗戦は1試合のみと手堅いチームであるのは間違いない。

 清水は3連勝中で首位キープ。前節は乾が不在の中で仙台に勝ちきった。今節も乾は不出場。ここで再びきっちりと結果と内容を見せつけたいところだ。

 この日の岡山は、3421の基本システムから非保持時に442っぽくなるような形を見せていた。右WB柳が中盤に上がり、シャドーのどちらかが中盤の左を埋める。

 一方、清水は左SHの矢島がボランチの左脇に降りて4-3-3のような配置になる。

 この清水の左サイド、降りてくる矢島とSBの山原。前半の岡山はここをどう捕まえるかが曖昧にみえる。基本は右WB柳が矢島を見ているけど、矢島を見てから山原にスライドするとプレスが遅れる。プレスが遅れると山原に時間ができてそこから斜めに刺すようなパスが中に入っている。

 また柳の守備がぼやけると、となりのボランチ藤田のポジション取りもやや迷子に。こちらは対面の中村にいきたそうに見えたけど、矢島も気になり中途半端な位置取りになっていた。

 例えば16:30。柳が山原へ出て、藤田はサイドで矢島が浮いたのでそこを捕まえにいく。藤田がサイドに動いたのでスペースができて、そこに降りた北川へ斜めのパスが入った。

 このボランチの裏で受けるFWに対して岡山はあまりCBが追撃にこない。なのでここを起点に展開されて自陣まで運ばれる形を作られやすい。前の試合を見た時は似た場面でCBが追撃していたのに何故だろう。

 さらに岡山ボランチの位置取りがぼやけるので清水のアンカー的ポジションを取る中村への制限もかかりづらい。このように対清水でボランチとその周辺に降りてくる前線を強く制限できないと厳しくなると思う。

 ただし岡山は、自陣で5-4-1セットして守る時は、スライドとカバーの関係は相変わらず整理されている。DAZNの解説では3バックの脇に言及していたけどWBが出ても残り4枚がスムーズにスライドするので実際には脇がフリーになることはない。ということで自陣に運ばれるけど、ゴール前は固いよねという岡山非保持になっていたような気がする。

 28分、コーナーの流れから清水がPKゲット。しかしGKブローダーセンがこれをストップ。岡山がピンチを防いで、逆襲かと思われた34分、岡山のクリアボールをグレイソンが収められずにトランジション発生。岡山は1トップ2シャドーが前に出ていて守備をセットできない。清水はその中央を割る速攻からカルリーニョスと北川のワンツーコンビネーションで北川が先制ゴールを決めた。この清水の局面打開能力は見事。

 ということで前半は清水が1点リードで折り返す。

 

 さて後半。岡山は保持、非保持で少しやり方を変えたよう。

 非保持では前半の4-4-2ぽい形から、後半はプレッシング時5-2-3からボールサイドのWBが前に出る本来の形になったように見える。しかし自信はない、どうだろう。

 前3枚なので山原のところへ右シャドー(基本は木村)がいきやすくなっている。またシャドーがCBにいく時はWBの柳が思い切ってSBまでいきましょうとお互い関係が整理された気がする。

 またここで清水の非保持を振り返ると、前半から岡山の後ろ3枚に対して右SHブラガを前に上げて同数気味にしていた。その時、左SHの矢島はどちらかというと中盤少し絞り気味のような位置取り。

 前半の岡山からすれば、左サイドはブラガが高めなのでそのサイド奥の末吉に入れたいし、右は矢島が下がり気味なので阿部が運んで清水の守備を動かしたい。でも前半はCBが持っても前のグレイソンに蹴って、前線3人の関係性だけでゴールに向かうような攻撃をしていた。それでも何度かチャンスを作ってはいたけれど。

 ここを後半、左CBの本山から末吉へ入れる場面が増え始める。清水はプレッシング時は右SHのブラガを上げるけど、自陣でセットするとSHはDFラインと同じ高さまで下がって守備をしている。中盤が下がって1枚減ればサイドから中へのボールも繋がりやすく(清水はボランチが動く割にはそのカバーが整理されてない)、左サイドを押し込むことから岡山がチャンスを作り始めた。 

 決定機に近い場面を作られ始めた清水。ここで早めに手を打つ。58分、矢島に代えて原をin。システムを3-4-2-1、非保持時5-4-1で幅を埋めてきた。 

 岡山は攻め手のサイドを埋められて勢いが弱まる。岡山も中盤で動かせるを竹内を入れたり、前線のパワーを増すような交代で活路を見出そうとするも、基本はお互いに噛み合ったままずらさないので素直に前に向かうような攻め筋になる。

 清水もそれを受け入れて、無理には動かず交代もそのまま個人で持てる松崎、西原を入れる。時間を稼ぎながらワンチャン突破からゴールへ向かえれば良しといった考えか。ある意味、清水が試合を塩漬けにしてそのままスコアは動かず。1-0のまま試合は終了した。

 

 試合自体は清水の完勝。でも力の差がそれほどかというとそうでもなく感じた。清水は相変わらずボランチの周辺にはスペースがあるし、SHの守備もぼやけやすい。そこで岡山もボランチが動いたらその背後をシャドーが取ったり、SBが前に出たらギャップランしたりとお互いのシステム上、生まれやすいスペースは認識していたと思う。

 ただ少しそれが直接的で(それでも前3人の関係でチャンスを作れてるんですよね)、それだとスピードや技術の質の勝負になると清水を上回るのは大変だよねという内容に見えた。もうワンクッション入れたり、二択で矢印を折るプレーを交えられれば違ったと思う。

 また非保持でも前半のプレッシング局面は上手くいかなかったけど、その他はとても整理されていて良かった。

 清水を見れば、危なっかしいところもありながら、試合の流れを読んで早めの交代から落ち着いて試合を締めたところは上積みだと思う。そう考えれば今回の試合結果1-0は内容を正当に評価したものだったかもしれない。