マッチレポート【2023年明治安田生命J2リーグ第13節 清水エスパルスvs徳島ヴォルティス】

メンバーと基本フォーメーション

 徳島は352(非保持5-3-2)。前節から変更はルイズミケサダ→西野。西野が右WBで西谷が左WBに回った。

 清水は442。前節から7人のスタメン変更。

徳島保持、清水非保持の局面

 徳島の3バック+アンカー白井に対し、清水は2トップの1枚がアンカー、もう1枚がCBへが基本形。ただし前から行く時は2トップともCB(もしくはGK)まで出ていく。

 左右のHVにはSHが出て、WBへはSBが早めの縦スライド。降りるIHにはボランチが付いていた。中盤の背後を空けても前から出し所を消しにいくプレスだ。

 徳島は前節に比べ、相手を引きつけるように低い位置で動かしている。WBはあまり高い位置を取らず、GKスアレスもビルドアップに参加していた。

 徳島のHVはボールを持つと2トップ脇から持ち運ぶ。そしてフリーのWBだけでなくインサイドの裏表を使ってIH、さらに奥の前線へのパスも出している。

 清水が2トップとも前に出して積極的にプレスをかけると中盤は3対2で清水の数的不利。しかしヘナト、ホナウドの守備範囲が広く、寄せも速いため徳島の中盤を自由にさせていない。

 徳島の中盤、またはWBも清水のプレスが来れば無理に前には出さない。キープから後ろに戻してさらに清水のプレスを引きつける。そしてスペースのできた清水の2列目の裏、またはSB裏にボールを入れていた。

 前半10分。GK含めてかなり低い位置で左右に動かし、安部が岸本の背後にボールを入れる。ボールはタッチを割ったが柿谷と森海渡が同時にナイスボールのジェスチャー。引き付けて背後のスペースがチームの共通理解だとわかる。

 スペースにボールを入れたらライン間を柿谷、またはIHの1枚がドリブルで運んで、森海渡へのスルーパス、または中央に寄せて上がってくるWBに展開する。

 清水非保持は前線から押し込めるようなプレスと越えられたらCBの追撃で対応。

 徳島保持はプレスを引き付けて2列目の裏。そこからドリブルでディフェンスラインにギャップを作り、上がってきた選手が狙っていく。

 両者の攻防はそんな構図になっていたと思う。

徳島非保持、清水保持の局面

 徳島の非保持は5-3-2。または自陣に構える時は柿谷が中盤の前に下がって5-3-1-1(5◇1)のような形。

 徳島の2トップに対して、清水は2CB+1枚(ボランチを脇に降ろすか、SBを残すか)。2トップ裏に1枚。3センターの脇にSH、もしくはSBが顔を出して、両サイドに1枚ずつ置く形。

 SHとSBはお互いの位置を見て中外を使い分け。神谷は低い位置まで降りてきてボールを引き受ける動きを頻繁に見せていた。

 ただしこの配置はそこまで厳密でなく、ボールを受けるため複数が中に寄ってきたり、ヘナトとホナウドが2トップ裏に並んだりと、各選手の判断の度合いが大きいようだ。

 徳島のファーストデェフェンスはCBにはそれほど強くいかない。前は軽い限定にとどめて、1列目を越えようかという位置でプレスが発動する。

 2トップ脇への侵入にFWが寄せ、SBへボールが出たらWBが早めに前に出てきて縦を塞ぐ。同時に中盤がボールサイドにスライドしてスペースを消す。WBが縦スライドした時は、DFラインがボールサイドにスライドして4バックを形成していた。

 徳島は清水が2列目を越えようと差し込むボールを奪い所にしているようだ。  

 清水は2トップ脇から前をうかがうが、3センター+柿谷で対応されるため、2列目を越えるのにかなり苦労している。

 パスコースを作れないため前線(FW、SH)がライン間で後ろ向きで受け手になろうとする。そしてビルドアップ隊も内側に寄ってくる。プレスの網にかかりやすいし、ボールが通っても裏を狙う選手が少ない。

 清水は相手陣内にボールを前進させるとボランチの1枚が前に上がってくるのも特徴の1つ。清水はボール周辺に人を集めて崩そうとするが、徳島も中央3枚(+柿谷)と後ろ5枚で対応できている。

 清水が前半作ったチャンスはサイドのプレスを神谷が外して切り込むなど、サイドを個人で剥がせた場合に限られている。

徳島ポジトラ、清水ネガトラ

 清水は徳島の2列目ラインを上手く越えられないため、トランジションもここで発生しやすい。

 徳島のIHや柿谷はキープの技術が高く清水のファーストプレスを受けても簡単に奪われないため、2列目の辺りでポジトラが発生すれば高い確率で相手陣内までボールを運べている。徳島は清水のボランチのプレスを外してその背後(2列目と3列目の間)のスペースをドリブルで運ぶ。同時にWBがサイドを上がっていく形を作っていた。

徳島ネガトラ、清水ポジトラ

 徳島のネガトラ発生時には基本3センター、3バックが中央にいる。そのため清水のポジトラ局面でダイレクトに中央を運ぶ場面は少ない。そこでサイドを経由するが徳島の撤退は速く、そのまま非保持でのブロック形成に移行。清水ネガトラ局面からは決定的なカウンターでのチャンスは生まれていない。

後半について

 清水はオセフン、北川、ヘナトから、サンタナ、乾、宮本の3枚交代。

 後半は保持時にボランチが降りずに後ろはCB2枚でスタート。宮本が相手2トップの背後、ホナウドが少し上がりめの配置をとっている。ボランチが降りなくなったため、2列目ブレイクに関わる人数が1枚増えた。

 徳島の方は後半、後ろからダイレクトに前に出す回数が増えた。リードしたため少しリスクを避けたのだろうか。

 後半の清水は相手守備ブロックにボールを差し込んだり、裏を取ってチャンスを作れるようになっていった。その中でも監督が強調していたポケットに侵入して作ったチャンスに注目する。

51:25

 直前の配置が下の図。これが後半保持の典型的な配置。ここから降りてきた神谷、ワイドの吉田、そしてサンタナとボールが渡る。

 この時、サンタナには森、吉田には西野が対応。サンタナはプレスを受けながらも身体で森を抑えながらターン。サンタナが前を向いたので西野はサンタナに対応しようと反応する。これで吉田のマークが一瞬外れ、裏を取りポケットまで侵入してクロスを上げた。

54:15

 右サイドに流れたディサロからハーフスペースの乾にパス。乾には左HV安部が対応したが、乾はターンで安部を外してゴール方向にドリブル。安部が動いたスペースにホナウドが侵入してポケットからクロスを上げた。

60:12

 左サイドの高い位置に入った乾からノールックワンタッチで吉田にパス。これで西野の対応が遅れて吉田がポケット侵入。

 

 以上、ポケットに侵入して作ったチャンスにはほぼ交代出場の乾、サンタナが関わっているのがわかる。67分の神谷の決定機も、右に流れたサンタナに安部が対応して背後に生まれたスペースに神谷が飛び出したものだ。

 前半との違いは、ボランチを1枚上げたことで中盤に関わる人数が増えたことが1つ。そしてブロック内で相手のプレスを受けることでスペースを作り、独力で相手を剥がして前を向きそのスペースにボールを送れる選手の存在と言えそうだ。