マッチレポート【2025年明治安田生命J1リーグ 第5節 ガンバ大阪vs清水エスパルス】~なぜミスが起きたのか

 いつも無駄に長く読みづらい私のブログ。今回こそポイントを絞って短くまとめたい。ポイントは試合後の監督コメントにあった技術のミスについて。そのミスがなぜ起こったかを中心に試合を観察する。

 

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”これだけ止める、蹴る、運ぶの部分でミスが出てしまうと、戦術・戦略以前の話になってしまいます。

基本的な技術のところを見直しながら、なぜこのようなゲームになってしまったのかをしっかりと分析し、次に向けて全員で必死になってやっていければと思います。”(試合後秋葉監督コメントから引用)

 

 アウェイの雰囲気に飲まれたのか。はたまたメンタルやコンディションの問題があったのか。そういった目に見えない原因はわからない。

 ただし、ピッチで起こる現象から読み取れることもある。単純化してしまうと、ガンバの守備の1列目と2列目の間を徹底して使わせてもらえなかったのは理由としてあると思う。

 ではガンバはどう守ってそこを消したのか。清水はどうボールを運ぼうとしていたのか。試合を追いながら見ていく。

 まずは両チームのスタメンから。

 ガンバの守備組織は4-4-2。清水のCBには強くプレスに出てこない。ただし2トップの一人が縦パスを切るよう限定をかけ、もう一人は少し下がってボランチを抑える位置を取っていた。そして中盤のラインはボールがある方向に全体でスライドする。

 これにより清水の清水の後方保持は、狭いエリアに限定される。

 今年の清水はビルドアップで縦を切られたら、平行の横パスを多用してプレスを回避するプレーがよく見られる。

 平行パスのメリットは、横に動かすことで相手のプレスをずらせることと、受け手がボールを前向きに処理できること。

 しかし、ガンバの2トップの一人(この図ではジェバリ)が横を、ガンバのボランチが出てきて縦を切るため平行パスを受けても詰まってしまう。

 相手を引き付けて次の味方を解放させられるマテウスブエノも、縦と横からプレスを受けて、ためを作るのもままならなかった。

 清水の前進は、相手のプレスに捕まる前にボールを動かすようなワンタッチを多用した速いパスワークが中心だ。そういうパスワークは相手の限定が厳しければより速く動かす必要が出てくる。速さと正確さを求めればプレーの難易度も上がっていく。難易度が上がればミスも増える。

 そこで味方のポジション調整の時間を作るのが、マテウスブエノと乾のドリブル。しかし彼らが時間を作れずギリギリのパスを出せば、その負荷は次の選手が背負うことになる。よって嶋本のロストやパスミスが目立ってしまう。

 サイドを使うにも清水は基本はボランチの位置を経由する。なぜならCBが運ぶ仕組みになっていないから。

 CBが運ばないと、ボールを受けるためにSBのスタートポジションは低めになる。SBはボールを受けて、中に預けて中盤でパスを繋ぐ間に上がっていく。どちらにせよ中央を経由するので、そこが詰まればサイドにもボールが出てこない。

 前半途中で山原が負傷交代すると、サイドの縦突破がないのでよりビルドアップが詰まっていった。

 そこで20分すぎからマテウスブエノがCBの脇に降り始める。1列目と2列目の間でボールが持てない。そしてCBがボールを運ばない。それなら自分が降りて、ガンバの2トップ脇から運んだほうがいい。理屈に合った判断だと思う。

 ただボールを運んでも味方との連携が上手くいかず、状況は特に大きく変わらない。36分に失点して、前半は1-0のビハインドで折り返す。

 

 後半、嶋本に代わり小塚。小塚はそのまま左SHに入る。前半と大きくやりかたは変わってないけど、小塚の方が味方を見ながらのポジション取りや、ボールを持った時も落ち着いてさばける。経験の差か。

 そこでボールが繋がるので、周りの選手が一気に前に飛び出す。SBとCBの間にスペースに流れる。ガンバがカバーに入る。カバーに動いたスペースに宇野が飛び込んでシュート。

 後半始めの方は、そんなぐるぐるとサイドを旋回しながら相手を動かし、ボランチが飛び出すいつもの攻撃が見られ始めた。

 しかし、基本的には1列目と2列目の間を経由するビルドアップは前半と変わらない。ガンバの守備が対応してくると前半同様、パスが引っかかるようになっていく。

 60分すぎだったか、ジェラが右の脇から運んだプレー。ガンバの左SH倉田がジェラに対応すれば、その後ろで北爪がスペースを得る。

 相手に影響を与えて活用すれば、難易度の高いプレーをしなくてもボールを前進されられる。こういうプレーを増やしたかったが、単発で終わってしまった。

 逆にガンバの保持はシンプルで、CBが清水2トップの脇を取る。少し運んでSHが出てきたらワイドに入れる。 

 SHが出てこなかったらインサイドのネタラヴィが受けて、インサイドキックでライン間に入れる。

 清水が前からプレスではめてきたら、長いボールを最前線のジェバリへ。ジェバリの下で満田が拾ってCBに向かって仕掛ける。CBが満田に出てきたら、ジェバリがその裏を取ってシュートを狙うと。

 理詰めでやや淡々とした感じも受ける攻撃だけど、相手のポジションに動かされやすい清水は守備も上手くいってなかったように見えた。

 清水は、66分に乾に代えてアフメドフ。乾との交代は、乾のロストが多かったからか。それとも前を2トップ気味にして並べたかったからか。

 いずれにしても、乾のロストが多いから前進できないのではなく、ロストしやすい厳しい状況の中で、乾が無理して運ぼうとしていたというのが実状だと思う。

 結果として単純に繋ぎ役が一人減って、より前進に苦労するようになった。

 この後、お互い交代策があったりしたけど、ガンバが変わらず優勢に試合を進める。そしてスコアは動かず0-1のまま試合終了となった。

 ガンバの守備は、特別なという感じではなくよく整備されたゾーンディフェンスという印象を受けた。

 ただ2トップが前に出て限定するだけでなく、プレスバックしてライン間をきっちり消してきたのはとても面倒くさかった。相手のボランチにカットされるより、2トップに引っかけられる回数が目立ったのではないか。

 これからどのチームもガンバみたいにやってくるわけではないだろうけど、参考にしてくるチームはあるかもしれない。

 となったら今度は清水がどうひっくり返すか。それをステップアップの第二弾として楽しみにしていきたい。