J2リーグ 第14節 東京ヴェルディ vs 清水エスパルス レビュー

【得点者】
  6分 白崎 (清水)
44分 高木大(東京)
47分 高木善(東京)

試合開始時の配置
 
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4戦連続勝ち無しの清水エスパルス。上位チームがもたついているため首位との勝ち点差はそれほど離れてはいませんが、そろそろ勝って首位との差を縮めたいところ。一方の東京ヴェルディも9戦連続勝ち無し。調子の上がらないチーム同士の対戦でどちらが久々の勝ちを手にするか。また昨年共に清水で戦った高木純平(完全移籍)、高木善朗(レンタル)が相手方のスタメンに名を連ね、そこも注目となる一戦となりました。
 
システムはお互い4-4-2のマッチアップ状態です。前半途中まで優勢に試合を進めたのは清水エスパルスでした。
 
ヴェルディの1列目はボールを追いかけるような守備。2人では追いきれないところはボランチの高木善が前に出てきてカバーします。このファーストディフェンスを外せば中盤は3枚。しかもヴェルディはライン間があまりコンパクトではありませんでした。清水はボールを運べるCBのヤコ、角田がファーストディフェンスを交し、プレスの薄くなった中盤でボランチの河井、本田が組み立てます。これまでの試合では清水はここから相手のライン間でボールを受けても前を向けず潰されるという問題が発生していました。しかしこの試合の前線は元紀、北川、白崎、金子。ライン間で前に仕掛けられるメンバーがヴェルディの中盤とDFラインの間のスペースを利用して攻撃を仕掛けます。特に左SHに入った白崎が好調で対面の相手を外しゴール前まで迫り相手の脅威になっていました。またテセが入るとポストプレーが主体になりますが、北川を起用したことで裏を狙ったショートカウンターも機能。試合開始からしばらくは清水がマッチアップの噛み合わせを制し試合を優勢に進めます。
前半6分、白崎が高い位置でボールを奪い元紀、もう一度白崎が受け突破、ペナルティエリア左からゴール右上にコントロールされたシュートを放ちます。これが決まり清水が先制。ショートカウンターから白崎、元紀、さらに右外から金子が中央に向かって走っており、スピードやスペースへの動きなどスタメンの特徴が生きた見事な先制点でした。
 
一方ヴェルディの攻撃はSBを上げ、CBからボランチを経由したビルドアップを試みているようでした。清水はそれに対し4-4-2のブロックを整え北川、元紀のファーストディフェンスがCBにプレスをかけボランチへのパスコースを塞ぎます。ヴェルディは中後からゲームを作りたいはずなのですが4-4-2で噛み合わされた上コースを切られているため中後にボールが入りません。高木善は中盤を自由に動いて時折そこにボールが入りますが攻撃は単発でした。
 
失点後しばらくしてヴェルディはSHの左右を入れ替えます。さらに25分過ぎ右の高木純平をSHに安西をSBと上下を入れ替え。これはたびたび対面の守備を外して前にボールを運ばれた白崎を制限するためとSHとSBのコンビのバランスでしょうか。明確な意図はわかりませんがヴェルディはある程度ゲームを落ち着かせることに成功します。流れが大きく変わったのは39分。アクシデントもあり南に代え井上を投入。井上をボランチに、ボランチにいた善朗を左のSHに回します。
 
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ボールを持って前線に絡む善朗と違い、井上は中盤の低い位置でシンプルにはたきボールを循環させます。この動きで中後にボールが渡るようになり中後は清水のブロックの外、左右のオープンスペースに中長距離のパスをビシビシと入れ始めます。さらにSHに入った純平は3トップの一角のように清水のDFラインのギャップに流れる動きを繰り返していました。これで清水のブロックは縦横に引き伸ばされます。サイドチェンジと裏抜けでブロックを拡げられゾーンの間を攻められるとゴール前までわりとあっさり運ばれるのは前節徳島戦と同様でした。ヴェルディの同点弾は44分。中後が左奥へロングフィードを放つと左SB安在が追いつき対応した金子に競り勝ちます。そこからクロス。高木大には角田が付いていましたがマークを外されゴールを決められます。各々マークは付いていましたが外されての失点でした。
 
その場面の対応、実際は白の矢印のように動いているのですが
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黄色の矢印のようにサイドにスライドして川口が金子のカバーを、もしくは川口に受け渡して対応し金子はカバーという動きが監督の求めていた動きのようです。ただ川口がカバーをサボったというのは違うと思います。川口は金子に任せて中を固めに動いたのだと思いますがチームの求める動きとは違った判断をしてしまったということだと思います。ここはもう一度チームとしての動きを確認して次に生かして欲しいです。
 
さらに前半終了間際、高木善朗に逆転ゴールを奪われます。井上のシュートのこぼれ球に反応された形ですが、井上のシュートはフリー状態で撃たれています。スローインからでしたので時間的にはポジションを修正する余裕はあったはずです。金子、河井はもう少し左に寄って、ボランチの河井がここに対応した方が良かったかもしれません。
 
このスライドとカバーの不安定さは攻勢に見えた前半途中までも気になっていました。CBの2人はポジショニングに優れたタイプでなく初めてボランチに入った河井も意識が前目であったことも影響していたと思います。前半終了間際に連続失点してしまったのでメンタル面の弱さが強調されてしまいますが、それより組織として守る時の個々の判断が明確でなかったことが一番の原因だと僕は考えます。ただコメントで詳細に説明しているように監督の中には明確な答えがあるようです。僕は答えがあるのいうのが大切で選手にそれが浸透してくれば守備は改善するはずだと信頼していますが。
 
後半開始と同時に左SH金子に代え村田を投入します。金子の動きが特に悪かったようには思えません。攻撃で横幅を取ることと前に出てきた相手のSBの裏、またビハインドを負っていたのでより「一発」のある村田というのはある程度、理解は出来る交代です。ちなみに僕個人的には村田の守備はそこそこ気に入ってます。
 
1点リードのヴェルディは後半に入るとややブロックを固めてカウンターからの失点を警戒するような守備でした。ボール支配率でもわかるように後半は清水がボールを保持するようになります。守備で不安を覗かせた清水のCBコンビですが2人ともボールを持って持ち上がれるのは強みです。ボランチを下げずに中盤で組み立て、そうすることによりボランチの1枚をブロックの中で崩す役を担わせることが出来ます。ただボールを保持しても攻撃での優位に繋がらないというこれまでと同じ状況が発生します。FootballLabでは15分毎の支配率とシュート数が記録されていますが1番支配率が低いのが前半15分まで。しかイメージではこの時間帯が一番優勢に試合を進めていたように感じられました(イメージで語るのはちょっと反則ですが)。後半は保持をしてシュートを撃てども入らないいつものエスパルスの姿を見せることになります。理想の攻撃の形と実際に点の獲れる形のギャップ。この試合でもボールを後方から繋いで相手ブロックの間で後ろ向きで受けるようになると得点の匂いは薄れてきます。
 
ヴェルディは70分に善朗→杉本、79分に純平→中野の交代。これは同ポジションの交代でシステム変更は無し。守備の強度を求めたか。清水は78分、本田に代えてテセ。河井をワンボランチに据えた4-1-4-1の布陣。後ろのリスクを取って前に厚みを出します。
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2CBの持ち上がりと河井の配球でビルドアップ。テセのポストを2シャドーが近い位置で受けるため前への可能性が見え出します。ただ前に人数が増えることでブロック内でもボールが多少繋がるようになりますが根本的なゴールへのルートは変わらないので組織的な崩しで決定的な場面に持っていくことは出来ません。こうなれば数と力でねじ込めるか。ヴェルディの方は完全に逃げ切り体制。時折カウンターを返しますがリスクを取ってまで攻め上がりません。清水は北川に代えて石毛で最後まで得点を狙いにいきますがこのまま試合終了します。
 
ヴェルディは4-4-2システム、技術があり攻撃に特徴がある選手が多いなどタイプとしてはやや清水に似通ったチームでした。正面からのぶつかり合いになるだけに力を見せつけて勝たなければいけない試合でした。加えて下位チームに連敗をしたとなればどんどん悪くなっているのではないかと極端な悲観論が湧いてくるのも理解出来なくはありません。しかし落ち着いて見ればこれまで通り、出来る事は出来て、出来ない事は出来ていないいつものエスパルスでした。攻撃に関しては遅攻が主なパターンですが点を獲れるのは速攻です。守備に関しては清水がゾーンで守っているということの弱点を突かれています。左右のサイドチェンジと裏狙いでブロック間を拡げられゾーンの間に入ってこられる、マンマークでないのでボールと味方の状態を見て判断するということが必要となり、そこに迷いや甘さがあるので間に入ってきた相手に対する反応が遅れるというところです。

2連敗はしましたがチームが悪い方に向かっているかというとそうは思えません。チーム戦術にも納得しているし、ちょっとした部分が噛み合っていないような気がします。そのちょっとを僕の観戦眼や知識では明確に説明出来ないので説得力がないですけど。ただそんな時には個の力でねじ伏せたり、自分達の強みで押し切ったりする強さを見せて欲しいなとは思いました。
最後に。高木善朗と純平はチームに馴染み存在感を出していました。エスパルスに深く関わりのある選手が活躍するのはうれしくもあり、ここで活躍されるのは悲しくもあり...。