2020年明治安田生命J1リーグ第1節 清水エスパルスvsFC東京【高まる完成度と未来への期待】

 いよいよ2020年のJリーグが始まりました。何度味わっても開幕戦のワクワク感は心地よいものです。新監督の元、開幕戦に挑む今年は特にワクワク感が強まっています。

 さて、新スタイルのお披露目となった先日のルヴァンカップは残念ながら1-5の大敗でした。特徴は見えたものその完成度は実戦で相手を上回るためにはまだ未完成だったと言えます。

 そこでこの試合では勝敗はもちろん、同時にルヴァンの試合からどれだけ完成度を高められたか注目されます。

 それでは悔しさと同時に大きな未来への希望を見せてくれた2020年J1リーグのスタートを振り返ってみましょう。

 

1.スターティングメンバーと基本システム

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 清水エスパルスのシステムは4-2-1-3。

 ルヴァン川崎戦から少しメンバー変更。センターフォワードに新加入の”タイの英雄”ティーラシンを起用。そして後藤がトップ下に回り、怪我により欠場したボランチ竹内のポジションには中村慶太が起用されました。

 FCと東京のシステムは4-3-3。

 ルヴァンで対戦した川崎フロンターレと同じシステムです。3トップはブラジリアントリオ揃い踏みかと思われましたが、ウイングの位置に田川が起用されています。

 FC東京もリーグ前に行われたACLでの試合と若干のメンバー変更が行われているようです。

 

2.高まったボール保持の完成度(清水のボール保持局面)

 FC東京は守備局面になると右のFW田川と右のIH(インサイドハーフ)三田が積極的に前に出てボールを奪いにきていました。

 FC東京のプレスと清水が保持した時の立ち位置は下の図のようでした。

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清水がボールを持った時に見られた動きは、

  • ヴァウドと立田が左右に広がり、その間に中村が顔を出す。
  • 左SB石毛はFC東京の3センター脇
  • 後藤が降りて橋本をピン止め
  • 田川が前に出てくるため左サイドが3vs2の関係になり、中村か石毛がフリーになりやすい。
  • 三田が中村にプレスすると左のハーフスペースが空く。石毛がそのスペースに上がってボールを受ける。

 上に書いた理由から清水は中村か石毛がフリーになりやすい状態でした。そしてその2人が絡んでいくことでボールを前に運ぶことができていました。特にピッチの中央(中村の位置)とハーフスペースを使えたのは清水の狙い通りだったと思います。

 ボールを相手陣内に運んだ後も、サイドでのコンビネーションからクロスやディフェンスラインにできたスペースへの飛び出しなど、形を見せることはできていました。

 とは言えFC東京は、後ろの4枚とアンカーの橋本でゴール前に決定的なスペースを作らないこと、個々の対応力など守備の強さは昨年同様。清水に決定機を作られることはあまりありませんでした。

 前線からの守備にやや未整備さを見せながらも押さえ込んでしまうところなど、昨年リーグ2位の実力を見せつけられた形です。

3.セットした守備もしっかりと(清水の非保持局面)

FC東京がボールを持った時、清水のプレスは下の図のように行われていました。

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  •  ティーラシンがサイドを限定
  • トップ下の後藤がアンカーの橋本を見る。
  • ボールサイドの相手を見るように近くの選手がマーク。
  • 後ろの選手はゾーンでスペースを消し中に入るボールをカット。

  中央を消してサイドに追いやり、中に入るボールを奪ってポジティブトランジションに繋げるのが狙いのようです。

 おおむね清水の守備ははまっていました。時折FC東京もサイド経由でボールを運べていましたがそれは高萩やレアンドロがサイドで上手くプレスを外すなど個々の能力によるところが大きかったと思います。

 しかし攻撃方向がサイドに限定されているので対応は難しくなく、保持からの攻撃でピンチを作られる場面は多くありませんでした。

 

4.システム変更と個の力と(後半の流れ)

 後半開始してすぐ47分にティラーシンのゴールで清水が先制。しかしその後の三田→アダイウトンの選手交代をきっかけに勢いを増したFC東京に押し込まれ3失点してしまいます。

 リードされたFC東京はまず55分に三田に代えてアダイウトンを投入。前線がわりと自由に動くので少しはっきりしませんでしたが、おそらく基本システムは442。その時の噛み合わせが下の図です。

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この交代によるシステム変更による影響は、

  • アンカー1枚からダブルボランチになったことで高萩か橋本がフリーになりやすい。
  • ボランチが1枚フリーになることでサイドの崩しに参加できるようになった。
  • トップからディエゴが降りて受けることでバイタル付近に起点ができた。

こんなところでしょうか。

 特にダブルボランチになって中盤にボールを預けられるようになったのが大きかったと思います。中盤でボールを回されるためサイドや降りてくるディエゴオリベイラを消しきれなくなってきます。

 清水の守備が対応に追われずれが出てきたところで、FC東京は個で打開できる選手を投入して殴り勝ち。力技ではありますが力を出しやすい状態を作ったのは長谷川監督の采配の力なのは間違いないでしょう。

 

5.最後に切り替え局面を簡単に

 FC東京の守備は3トップを前に置いて彼らの攻撃力を生かす代わりに、中盤の3枚がハードワークと気を利かせてバランスをとるのが戦術全体の考え方のように見えました。

 中でも左のFWレアンドロはそこまで守備を求められていないようで、代わりに右サイドの田川と三田のコンビの守備負担が大きくなっていたようです。

 ただこれは組織のエラーでなく機動力のある選手を右サイドに配して奪ってネガティブトランジションに繋げたい意図なのではないかと思われます。

  実際、三田や田川が奪い、カウンターに繋げる場面は何度もありました。限定的ではありますがチームの狙いは機能していたと言えます。

 清水はパスワークを中心とした攻撃力が注目されていますが、私は攻守とその間の切り替え、全ての局面のバランスの良さに目をひかれました。

 特に注目がトランジションの局面です。はじいたボールが自然と清水の選手の元に転がってくる場面が何度も見られました。おそらくポジショニングが整備されているのが原因と思われますが詳しい仕組みはまだわかりません。時間があるのでさらに見直してみたいと思います。

 清水は保持して前進はできていましたがやや最後の精度とパワーが欠けていました。もちろんユニットでの崩しの精度を上げることも大切ですが少し時間がかかるかもしれません。現実は先制点がそうであったように得点を奪うなら前にスペースのあるトランジションからというパターンが多くなると思われます。しばらくはカウンターをいかに整備できるかが勝敗の鍵になるのではないでしょうか。

 

 

 

YBCルヴァンカップ グループステージ第1節 川崎フロンターレvs清水エスパルス レビュー【ポジションはあるけどポジションレス】

 今期からクラモフスキー新監督を迎え新しいスタイルに取り組む我らが清水エスパルス。このルヴァンカップが初お披露目の試合となります。結果は1-5の敗戦でしたが、私の観測範囲では敗戦のショックよりこれから完成していく新しいエスパルスのサッカーへの期待感を抱いているサポーターが多いように感じられます。

 そこで今回のレビューでは、試合の流れや両チームのやりとりよりも、新生エスパルスの攻守の形を中心に見ていきます。

 初の公式戦ながら新しいエスパルスの特徴ははっきり見てとれました。それを局面ごとに注目し書き進めてみます。

 

1.スターティングメンバーと基本システム

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 清水エスパルスのシステムは4-2-1-3。CHにU-21枠の西村が起用された以外はおおむねプレシーズンに主力組だったメンバーで構成されました。

  川崎フロンターレのシステムは4-3-3。右のWGにU-21の宮代。体制にこそ大きな変化はないもの川崎も4-3-3システムをメインシステムとして採用し、新しいスタイルにチャレンジしていくことになりそうです。

 

2.ボール保持の局面

(1)サイドバックインサイドハーフ

 エスパルスがボールを持った時は明確に決まった配置を取っていました。それが下の図です。

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 ヴァウド、立田の間に竹内が降りて3枚でビルドアップスタート。そしてサイドバックが前に上がって中盤に4枚の形です。

 そしてワントップは深さを取るため最前線に、ウイングは幅を取るためサイドラインいっぱいに張っていました。最前線3枚は流動性は少なくほぼポジション固定です。

 最も特徴的なのがご存知の通りサイドバックの位置。ボランチの横でなくほぼインサイドハーフといっていい位置まで上がっていました。

 いわゆる偽サイドバック、つまりサイドバックが内側に入るポジショニングはいまや珍しい動きではありません。しかし常にサイドバックにここまで高い位置を取らせるのはあまりない動きだと思います。

 得点場面で見られたようにインサイドハーフポジションとウイングポジションの連携(中村がWG、西村がIHのポジションになっていた)がエスパルスの武器のひとつになりそうです。

(2)自分達の型にこだわり過ぎて...

 前線に人数をかける攻撃的なクラモフスキー戦術ですが、前半はその攻撃が上手くいったとは言えません。

 中に絞ったサイドバックを使う意識が強いせいかボール回しが中央ばかりになっていたのが理由のひとつだと思われます。川崎のシステムは433で中央には人数が揃っています。さらに川崎の3トップは全員が前にプレスをかけるのではなくボールと逆側のウイングは少し下がり気味で中盤のフォローにいけるポジションを取っていました。

 果敢にボールを回そうとするも川崎の守備に捕まりカウンターを浴びることが多い前半のエスパルスでした。

 ただこの裏を返せば高い位置に入ったサイドバックを使う意識を全員が共有していると考えることもできます。クラモフスキー戦術においてボールを引き出し直接ゴールに結び付けていくキープレーヤーはサイドバックで、その共通認識は植えつけられていると言えるのではないでしょうか。

(3)ポジションはあるけどポジションレス

 前半に比べて後半はボールが動くようになります。前半は固定気味だった選手のポジションが後半になるとスペースに合わせて動き始めます。特に中盤のサイド、川崎の3センターの脇を使い始めた影響が大きかったと思います。

 さらにサイドにドゥトラが降りてきたり、石毛が低い位置で配球役に回ったりと前にいた選手が下がってきたり、前にスペースが空けば今度は後ろの選手が上がっていきます。

 どの選手もスペースがあればポジションに関係なく躊躇なくそのスペースに入っていきますが、それによって空いたスペースは他の選手が入って埋めています。結果的に個々の動きは流動的でも、チームとしては決められたポジションに選手が配置されている状態です。これがクラモフスキー戦術の大きな特徴ではないかと思います。

 

3.ボールを保持していない局面 

 噂通りかなり積極的なプレスでした。形としてはセンターフォワードの後藤とウイングの片方が前に出て相手のセンターバックにプレス。トップ下のドゥトラが相手のアンカーを消して中央のコースを埋めます。

 ボールがサイドに出たら一番近い選手が即座にプレスをかけ、次に近い選手がその内側に戻りスペースを消すのが基本的な動きのようです。

 何度も川崎にボールを運ばれてしまったのは球際の強度不足もありますが、プレスの方向とカバーのポジションがずれていたのが一因だと思われます。

 後半はサイドに出された時にウイングが単独で張り付くのではなく、カバー役のボランチの選手との距離が離れないよう修正してたような気がします(ここは気がするだけ。要観察)。

 

4.切り替えの局面

(1)サイドバックの裏問題

 一番気になるのはやはり奪われた時にサイドバック裏をどう守るかだと思います。当然奪われた瞬間にプレスをかけて相手の前進を食い止めるのが第一です。しかし、必ずそこで食い止められるとは限りません。もし裏に出されてしまった時の対応を観察したのが下の図です。

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・サイドの裏は基本はCBが出ていく。しかし完全には食いつかずにぺナ幅辺りに壁を作るような対応。

サイドバックは中盤ボールサイド辺りのスペースを埋める。

・中を抑え遅らせている間にボールサイドのウイングは全力帰陣。

センターバック間のギャップはボランチがカバー。

 

少し内側に壁を作り相手を遅らせてその間に中のスペースを埋めていく感じに見えました(あっているかは自信無し、ここも今後要観察)。

 

 5.まとめ

 攻守いずれの局面でも前にスペースがあれば迷わず出ていき(攻撃ではスペースを使い、守備ではスペースを消すため)、周囲の選手が次の可能性を考えて同じく素早くポジションを取れるかがカギになりそうです。

 唯一の得点場面ではウイングの位置にトップ下の中村、インサイドハーフの位置にボランチの西村がいて、シュートポジションには中央、ファー、マイナスと個々のポジションでは流動的ですが、チームとしてはしっかりバランスの取れた配置になっていました。判断とチャレンジ。この日見えたチーム最大の特徴を出しての得点は非常なポジティブだと言えるでしょう。

 スタートしたばかりのチームなのでまだ完成度が低いのはしかたありません。後はどれだけ早く最低限ほかのチームに対抗できる完成度にもっていけるか、選手の成長と監督の手腕に期待したいと思います。

 

2019-2020 UEFAチャンピオンズリーグ グループステージ グループC アタランタvsマンチェスターシティ

両チームのスタメンと配置

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1. マンチェスターCの攻撃局面とアタランタの守備局面

 シティの保持時システムは433。それに対してアタランタは下の基準でプレスを行っている。

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 アタランタは532の守備。2トップが2CBへ、アンカーのギュンドアンには中盤から1枚前に出して相手のビルドアップの形に噛み合わせている。GKエデルソンへはプレスをかけず持たせていたようだ。

 マンマーク気味に噛みあわされ後ろでは出しどころがないシティが起点にしていたのはSB。アタランタはシティのSBへボールが出たらWBが前に出てプレス。しかしここは距離があるためシティのSBは比較的、時間とスペースを得ていた。エデルソンが持ち、そこから中盤に上げたSBへフィードすることが多かった。

 シティの中央ルートでの前進はIHが第2レイヤーに下がりボールを受ける。アタランタはCHの選手が付いていく。中盤の脇が空くのでWGがハーフスペースに絞りそのスペースを使う。

 アタランタは引いて受ける相手、スペースに入る相手には躊躇なく後ろのラインから前に出てプレス。代わりにマーカーを持っていない選手が下がり後ろのラインのスペースを埋めている。アタランタは非保持時だけでなくすべての局面でライン間の人の交換がスムーズ。仕組みはよくわからない。ラインの担当という考えではないのかもしれない。

 シティは中盤からDFラインの裏を狙うWGに出すパスが多いように感じた。視野外から左右のCBの背中側を狙って裏へのランニング。受けたらお決まりのロークロス。逆側のCBの裏からも抜け出した選手が合わせてシュートみたいな。ここはちょっとあやふや。

 アタランタは持ち場から離れて躊躇なくプレスにいくが簡単にはがされてしまった時はカバーが整わずに、後ろにぽっかりスペースができることがある。シティのチャンスはここから生まれることもあった(かも)。

 

2.アタランタの攻撃局面、マンチェスターシティの守備局面。

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 アタランタは左のCBがサイドに開き2CBのようなビルドアップのスタート。

シティの非保持時は442。相手の2CBに2トップを合わせて積極的にプレスをかけていく。

 アタランタは列降ろしを盛んに行なっていた。シティの2トップ脇にCHが降りてきてボールを受ける。相手のプレスの届かない場所に降りる、逆側の選手など受け手にならない選手は入れ替わるように前に上がっていく。

 アタランタの15番が2トップ脇でボールを持つとシティ7番スターリングが対応。アタランタからすると第3レイヤーのハーフスペースにポジションする72番とWBの33番への2択をスターリングに迫っている。シティのSHは始めはハーフスペースに立ちながら、サイドに出たら即座にWBに行けるポジションを取っているようだった。

 アタランタは雑な表現だがポジションが流動的。ボール周辺の選手が迷いなく前に行く、列を下げる。代わりにその他の選手はポジションバランスを取っている。

 初めて見たけどアタランタは面白い。もう少し見たら何かもっと気づくことがあるかも知れない。

 まとまってないけどメモなので終わり。

 

2019年 明治安田生命J1リーグ 第34節 清水エスパルスvsサガン鳥栖

鳥栖の保持局面

 鳥栖はあまり前掛かりにならずシンプルな攻撃を繰り返していた。ボールを持つと清水のSB裏に金森を走らせ、そこに後ろからロングボールを入れている。清水のCBをサイドに引っ張り出して中央にスペースを作る狙いか。引き分けでも残留決定の鳥栖。なるべくリスクを抑えたい意図があったのだろう。

 人に食いついてスペースを空ける傾向のある清水の守備だがこの試合ではゴール前のスペースを埋める意識が強く見られた。CBが動いたときはCHの竹内か六平のどちらかが早めに下がりゴール前のスペースを埋めている。

 清水は前線の守備にも少し変化が見られた。普段の清水はドグと河井が縦並びで河井が相手のアンカーを見る形をとっている。しかしこの日は明確に守備基準を決めるよりも横並び気味で2人でスライドしながら相手のCBを見ていたようだった。特に河井の豊富な運動量と巧みなポジション取りで相手を制限できていたため、2トップ脇を使われたりサイドでずらされることはあまりなかった。

 

次に清水が保持した時。

 清水が保持した時の鳥栖の守備基準は下の図。

鳥栖守備d

 鳥栖の4バックは広がらずにゴール前を固めている。SBが広がらないため、サイドのレーンはSHが上下動して見ていた。またサイドに運ばれた時はCHもサイドに出て2人で対応。それにより空く中央のスペースはFWが1枚下がって埋めるが約束事のようだった。しかしそこを埋めきれない時も多く、中盤中央にスペースができやすいのが鳥栖の守備の傾向だった。

 清水はエウシーニョがスペースのある中央にカットインしてブロック内にパスを入れるのが一つの形。

 清水のもう一つは左SHのドゥトラへのロングボール。ドゥトラに当てて松原と絡みながら左サイドを崩してクロス。

 ゴール前では2トップと両SHを集めて数的優位を作る。ごちゃっとさせてずれを作ってドウグラスドゥトラがフリーになってゴールを狙う。そんなゴール前の動きだった。

ゴールを奪った形を見る

 上に書いた動き以外にも、清水は狙っていたスペースがあった。左サイドバックの裏だ。

 鳥栖の左SB三丸は右SH金子がハーフスペースにポジション取りすると早めに前に付いて出てくる。それを利用して右サイドのハーフスペースに金子や河井がポジションすると同時に他の選手が裏を狙う動きを見せている。

 下の図はゴールの直前、ドクがDFラインの裏に抜ける場面。

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 金子が中盤まで引いて、河井がハーフスペースに入っていく。傾向の通り三丸が河井を捕まえにきて鳥栖の左サイドが前寄りに。それによりできたスペースにドクが流れると同時に六平から裏へのパスが出された。

 このプレーの少し前にはほぼ同じ形から河井がサイドバック裏に抜け出している。

 シュート自体はドクの個人能力によるゴラッソだが、そこに至る形はチームとして狙っていたものだと思われる。

 

少し感想

 引き分けでも残留の鳥栖はプランが難しくなっていたのかもしれない。逆に清水の方がやること明確だったと思う。

 相手と自分達の特徴から監督が明確なプランを練り、選手達がそれを粘り強く実行し続ける。リーグ最終戦は篠田エスパルスらしさを見せての勝利だった。

2019明治安田生命J1リーグ第30節清水エスパルスvsジュビロ磐田

~はじめに~

 思いもよらぬ展開となった今期最後の静岡ダービーでした。開始早々の退場により試合が壊れてもおかしくない状況でしたが、一進一退の見どころ十分な試合となりました。

 不利に立たされたエスパルスはどのように勝つための道筋を探り、そして遂行していたのでしょうか。

 またフペロ新監督によって整備されたジュビロ磐田の攻守の狙いにも軽く触れておきます。

 それでは以下、この熱い戦いをマッチレビューの形で記録していきます。 

 


1.スターティングメンバーとシステム

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 清水エスパルスのシステムは4-4-2。怪我人続出の清水エスパルスだが、直近に行われた天皇杯で起用されたメンバーを中心にスタメンを組んできた。注目は怪我から復帰した右サイドバックエウシーニョ。右サイドからの独力でのチャンスメイク、そしてゴール前での得点力はエスパルスにとって非常に頼りになる存在だ。

 ジュビロ磐田のシステムは4-4-2。2トップの一角にこれまで途中出場が続いていてたアダイウトンを起用。CHは山本、上原のコンビ。そして左サイドバックには宮崎が起用されている。残留のためには何が何でも勝ち点3が欲しいジュビロ磐田。ボールを保持した局面で優位に立ちたい意図がうかがわれる。 


2.序盤に見えたお互いの狙い

  試合の序盤、お互いに持ち味を生かしてチャンスを作り出した。
 エスパルスドウグラスを中心としたカウンター。下の図は0:30の場面。

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 ドウグラスに当てることで相手のDFラインを押し下げライン間を広げてトップ下のドゥトラがパスを受ける。同時にSHが飛び出し裏を狙ったり、ライン間でコンビネーションで崩すパターンだ。

 一方、ジュビロが狙っていたのはエウシーニョの裏への斜めのランニングとそれによって開いたライン間。

 下は1:30の場面。

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 SHの藤川がサイドで受けることでエウシーニョを前に引っ張り、その裏にアダイウトンが中央から斜めに流れていく。そして藤川は開いたライン間やゴール前に入る。ジュビロはSB-CB間を狙った上で、SB裏とチャンネル突撃によって開いたライン間も狙う2択を突き付ける前進をベースに攻撃を仕掛けていた。

 

3.プレスをかけて相手の選択肢を削る(ジュビロの非保持時)

 ジュビロエスパルスが保持すると高い位置からプレスをかけてきた。これまでの試合を見てもファーストディフェンダーのプレスに連動して次々と周囲のパスコースを消し、相手の選択肢を削りボールを奪う守備を志向している。

 例えば、12:50のプレスからのカウンター。ルキアンが松原の縦を切るプレスをきっかけに戻しのパスのコースを消しながら周囲が二見、竹内にプレッシャーをかけていく。竹内から立田へのパスが少しアバウトになりトラップが乱れたところにルキアン、と藤川が襲い掛かりカウンターに転じた。

 自陣近くにボールを運ばれた時も同様。陣形を整えるより早めに相手の選択肢を消しボールを奪いにいく。その際、これまでの試合ではスペースの管理ができずただの噛みつき守備になっていたがこの試合では多少の修正が見られた。

 例えば2:50からの場面。左から中央ゴール前に入ってフリーでシュートを撃ちかけた西澤に左SHの藤川がアタック。このように逆サイドの選手がスペースをケアする動きが見られた。

 しかし戻りながらの守備ではスぺースを大きく開けてしまうことが良く見られる。エスパルスの作るチャンスはカウンターからの場面がほとんどだった。


4.ソッコ退場後のゲームプラン

(1)守備を落ち着かせるための4-4-1

 ソッコの退場後、まずトップ下のドゥトラに代えてCBの立田を入れて4-4-1のシステムに。

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 4バックはなるべく横に開かないよう締め、開いてしまうサイドライン際は金子が上下動してケアする。エウシーニョが開かなければアダイウトンのSB-CB間突撃を消すことができる。
 またこれで金子が相手SBを、立田がアダイウトンを見るというように守備の基準が明確になった。開いてしまう中盤のラインはCHがカバー。このCH周りを徹底して狙われたらきつかったかもしれないが、一人多くなってもジュビロは基本的には攻め手は変わらずサイドからずらしての裏狙いだった。それでも脅威なアダイウトンの動きだが守備の基準が明確になったこともあり立田がよく対応できていた。

 ジュビロにほとんどの時間を保持されながらもなんとか守っていたエスパルスだが39分にクロスのこぼれ球を藤川に決められてしまう。

 前半の内に追いつきたいエスパルスは40分辺りから前にプレスをかけてショートカウンターを狙っていくが得点は入らず0-1で前半が終了した。

(2)4-3-1-1で前に圧力をかける。

 エスパルスは後半の頭からシステムを4-3-1-1に変更。
 前半のエスパルスの問題点のひとつがボールを奪った後にドウグラスに当ててもトップ下がいないため落としたボールを拾う選手がいなかったことだ。SHが懸命に前に出ていくが距離があるためどうしてもドウグラスが孤立してしまう。4-3-1-1にして西澤をトップ下の位置に置けばこの問題は解消する。

 またジュビロは保持時にCHを1枚落として3バック、1アンカーの形になる。奪って河井、金子のIHが前に出ればそのまま相手のアンカー脇を突くことができる。
 そして非保持時には下の図のようなかみ合わせになる。

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 IHが前に行くことでジュビロの3バックに圧力をかけて守備のゾーンを押し上げる。中盤が3枚になってスペースができるというデメリットには、まず最初のポジショニングで真ん中を塞ぐ。ジュビロにU字型のビルドアップをさせ、ハーフスペースとサイドはIHの根性のスライドでケアしようという狙いだったと思われる。

 前半に比べて高い位置で相手の前進を食い止めカウンターに転じる機会が増えたエスパルス。そしてついに50分、二見のロングスローから同点に追いつく。 

(3)ジュビロの勝ち越し弾について。想像による考察。

 エスパルスの4-3-1-1を攻めあぐねていたジュビロだが徐々に攻略の兆しを見せてきた。3センターの脇から脇へボールを動かしてIHのスライドが追いつかない状態を作って間のスペースを使っていく。

 ジュビロは69分に藤川に代えて大久保。ライン間にボールが入るようになったのでそこで受けてゴールを狙える選手を入れる。

 エスパルスは78分河井に代えて川本。負担の大きかったSHを代えて運動量を上げるともに同点ではなく逆転を狙うという意図が感じられる。

 ジュビロは82分には小川に代えて荒木。右SHに荒木が入ってドリブルで突破することでエスパルスのIHがサイドに引っ張られてより3センターの間にスペースができるようになっていった。

 中盤の脇を使われ3センターのスライドが追いつかない上に、 中とサイドに個で打開できる選手が入りスペースをカバーできなくなったエスパルス。85分に西澤に代えて水谷を入れてシステムを441に戻す。しかしその1分後にアダイウトンの勝ち越しゴールが決まる。

 結果的には4-4-1に戻してすぐ失点してしまったことになる。しかし中盤を3人でカバーできなくなりブロックの間にパスを通されていたのでシステムを441にして中盤を4人にする判断は全くもって理にかなっている。篠田監督はシステムではなく、局面の対応に問題があったと考えているようだ。ではこの時、監督の頭の中ではどう守ろうと考えていたのかを想像する。

これまでの流れから考えられるのは以下。

ルキアンはポイントゲッターというより最前線のハブ役。

アダイウトンがスペースに抜けてシュートが一番恐い形。

ジュビロはSB-CB間を開かせてそのスペースを突くことを狙っているのでエスパルスは4バックを閉じてそれを防いでいる。

エスパルスは守備の基準を明確にしている。ポイントゲッターのアダイウトンは立田がマーク。

 

これらを頭に入れて失点場面を考える。

 まず中盤に引いたアダイウトンからライン間ハーフスペースのルキアンに縦パスが入りそこに立田がアタックに行く。

 上の考えに沿うと立田はルキアンに一発でアタックにべきでないと言った監督の考えが理解できるような気がする。何故なら理由は3つ。

・立田がルキアンに行くことでDFラインに穴が空いてしまう。

・得点の脅威で言えばルキアンでなくアダイウトン。ハブ役のルキアンは自らターンしてシュートよりアダイウトンに落とすことが予想される。

・ライン間からミドルシュートよりDFラインにできたスペースを抜けられてシュートを撃たれる方が危険度が高い。

 監督としては最後はアダイウトンがDFラインのスペースに入ってシュートを撃つのでそれを警戒していた、そして立田にはそれを防いでほしかったのではないかと推測する。

 ただこれは頭を振り絞って監督の意図に沿って考えた答え。立田のプレーも決して間違いではなかったはずだ。

 

5.最後に

 一人少ない状況で監督の判断は的確だった。そして選手の戦術理解と献身的な実行は素晴らしかった。試合後は彼らはここまでできるのかと正直言って感動すら覚えた。

 ダービーは結果が全て。それに異論はない。どんなに頑張っても勝ち点は0。そして公式に残される結果は得点、失点、敗戦という記録だ。

 では負けた試合に何の意味もないのかと言えばそれは違うと思う。このチームはできることはそれほど多くないができることを信じて実行しきる力があるんだというのを再確認した。残りのリーグ戦でこの試合で見せてくれたことを生かしてくれると信じている。

 そし応援する僕らにとって意味があるかないかは自分次第。この試合で選手や監督が勝つために力を尽くしていた姿を各々が心に刻めば、それこそが大切な意味となるはずだ。

 しかしダービーに負けて悔しい想いは変わらない。それを晴らすには近いうちにジュビロに対してリベンジする。それしかない。それが静岡ダービーだ。

 

2019年明治安田生命J1リーグ第28節浦和レッズvs清水エスパルス

 

0.スタメンと基本システムf:id:hirota-i:20191009110545p:plain

1.前半【保持する浦和、守ってカウンターの清水】

  浦和はまずボランチの青木をDFラインに降ろして槙野と岩波をSBの位置に開かせる。4バックみたいな形にしてビルドアップのスタート。サイドの槙野と岩波で金子と西澤を開かせてシャドウへのパスコースを作りたかったのではないかと思う。

 この浦和の狙いに清水は上手く対応できていた。下の図がその清水の守備の狙い。

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 ドグと河井は横並びになって442の守備。FWの2人はいつもに比べて前から行かずに下がって真ん中のスペースを消す。清水はFWとSHとボランチの距離を縮めることで中を締め浦和のシャドウへパスを入れさせない守り方をしていた。

 そしてSHの金子と西澤は浦和のCBが持った時は中に絞り、縦パスを出されそうになったら前に出てプレスをかけてボールをサイドに誘導している。
 中を消された浦和がWB(関根、橋岡)にパスを出すと清水のSHはサイドにスライド。SBと協力してはさみ込む。

 清水のSBがサイドに出て行くと浦和はシャドウがSB-CB間を狙う。ここにはCBがついて行きボランチが空いた中央スペースを埋める。そしてサイドからボールを運ばれるとブロック全体が撤退。河井も下がってブロックのスペースを埋めていた。
 中を消すことでサイドに誘導。サイド側のガードを強くしながら撤退して後ろのスペースを埋めてボールを奪うというのが清水の守備全体での狙い。

 守備で強いて気になるところを言うならときおり西澤が前に出てスペースを空けてしまうことくらい。でもそこを使われても上手くサイドに追い出せていたので僕の気にしすぎ、もしくはチームの想定内のプレーだったのかもしれない。

 流れとしては浦和が保持して清水が撤退するので浦和の選手は清水陣内に多く入っていて、自陣には3バックが残っているのみ。さらに清水がボールを奪った時にドウグラスが前を狙って浦和のDFを後ろに引っ張るのでポジトラ時には浦和中盤にスペースができていた。

 今の清水の特徴の1つが攻めに転じた時の思い切りの良さ。ポジトラ時にできたスペースで河井がボールを運んで両SHが一気に前に出てドウグラスと共にゴールを狙う。またはスペースを使ってコンビーネーションで相手をかわしたり。

 一方、清水がボールを持った時は基本ドウグラスへのロングボール。競って落としたセカンドボールを拾ってという攻撃だった。シンプルな攻撃だったので配置が崩れてカウンターでピンチという場面はあまり無かった。

 こんな感じで守ってカウンターという狙いが上手く機能していた前半だったと思う。そして悪くないけど決めきれないなぁという流れの中、二見のスローインからドグが決めて先制。まさに清水にとっては願ったり叶ったりの展開になっていった。

  しかし前半アディショナルタイム、相手陣内でのパスミスからカウンターで失点。この時、橋岡のクロスの前に竹内が金子に対して橋岡を見るよう指示をしている。しかし金子は上がってきた岩波が気になってサイドに出ていくことができなかったように見える。金子が岩波を気にしたのは不意のロストが原因で河井もドグも戻り切れていないからだろう。残り時間を考えればリスクのあるプレーは避けるべきだったと思う。

 

2.後半【変化を出したことが裏目に】

 後半も前半同様に442でセットして守る清水。しかし少し守備局面で前に出て奪いに行ったり、ボールを持った時も後ろで繋いでいこうというプレーが見え始めた。やっぱり勝ち点3が欲しいという考えはあったのだろう。

 かたや浦和の攻撃を見ると前半の途中から少しずつライン間にパスが入るようになっていた。シャドウがブロック内から下がってきたり、サイドのレーンに開いたりと清水の守備が届かない場所へ動き出し始めたのが理由だと思う。さらに興梠もひんぱんに降りて受けようとし始める。清水からしたら「シャドウを消していたら前にいた興梠が隣にいる!」みたいな感じでマークに付きづらかったはずだ。

 そんな感じで前半と同じ形ではあるけどちょっと動きが出てきたよ、というのがが後半の始めの方の流れだった。そして62分に体調不十分だったドウグラスに代えてドゥトラがピッチに入る。それと同時にシステムを4141に変更。

 交代とシステム変更後、明らかに前にプレスしていくようになった清水の守備。

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 プレスの意識が強くなるとマッチアップのずれが明確に浮かび上がってくる。まず左右のCBにはIH(六平、金子)が出ていくという動きははっきりしていた。しかしそうなると後ろのスペースにいる相手のボランチやシャドウが浮いてしまう。例えば六平が岩波にプレスしたら竹内や西澤がスライドして見るのが約束のようだが、竹内は中央のスペース、西澤は橋岡へのパスコースが気になるようでプレスが後追いになってしまっていた。

 その後の監督のコメントを読むと守りを意識しながらもギアを上げて点を狙って欲しいようだった。しかしこれまで4141への変更では「スペース気にせずとにかくガンガン」みたいな動きで点を取ってきたので監督の希望は少し難しいのではと思ったのは個人的な感想。

 そんなこんなでボールを運ばれ始めてしまう清水の守備。75分にはセットプレーの流れから橋岡に逆転ゴールを決められてしまう。4141への変更後は守備の基準がぼやけていたのは事実。セットプレー後にポジションがごちゃごちゃしていた中でのマークはさらに難しくなっていたのだろう。

 逆転された清水は金子、河井に代えて川本とテセ。ここは意図がはっきりしている。もう点を取るしかないので試合をコントロールするよりオープンにしての殴り合い。そのために前をより馬力のある選手に代えたのではないかと思われる。

 ドゥトラのシュートや川本の仕掛けなど前でチャンスを作ろうとするもそのままスコアは動かず1-2での敗戦となった。

 

3.最後に【打つ手の少なさゆえに...】

 前半は最後に失点したものの全体的には狙いを遂行できていた。そして後半62分の選手交代とシステム変更が分岐点になった。ここは多くの人が感じるポイントだと思う。僕も同じ。ではなぜあのような采配になったのか。その推測をまとめにしたいと思う。

 まず後半しばらくして何らかの対策をする必要があったのは理解できる。文中に書いたように前半途中から後半にかけて442での守備を浦和にかいくぐられる場面が何回か出てきたからだ。そのままだとじりじりと攻略されてしまう可能性があった。

 しかしその時選択できる手が4141しかないというのが悩ましいところ。しかもこれまでの成功例を考えると、4141はハイプレスと前線の馬力で押し切る代りにこっちの守備にできる穴も受容するという安定感とは程遠い手段。

 理想を言えば守備の意識はそのままで変化をつける手段があれば良かったのだろうがその手は持ち合わせていない。結局、そのまま何とか耐えるか、思い切って4141に変更するか以外に方法はなかったのだろう。

 そうであればどちらでもかまわないのでもっと明確なメッセージを送って欲しかったなというのが一番の感想だ。できることは多くなくても迷いなくチームを信じてプレーするのが今のエスパルスの強みだと思っている。もし結果的にミスであってもその時の意図や判断を明確に信じて欲しいし、監督にはそういうメッセージを送るような采配をして欲しいと思う。

 

 

2019-2020プレミアリーグ第6節 マンチェスターシティvsワトフォード

スターティングメンバーとチームオーガニゼーション

 

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 マンCは1-4-3-3。中盤はアンカーにロドリ、IHにデ・ブライネとダビドシルバの逆三角形。

 ワトフォードは1-4-4-1-1。

 

 ワトフォードの1列目の守備はトップの7番がCBを、トップ下の8番がアンカーのロドリを見て縦並びになる形。

 マンCはその1列目の守備の脇にIHのデブライネ、Dシルバが降りて受けることが多かった。

 マンCの保持に対して積極的にプレスをかけていくワトフォード。例えばデブライネが降りればCHドゥクレが前に出ていく。

 マンCはこの守備を利用してスペースを作る。先制点の場面の直前。第2レイヤーに降りたデブライネに対してCHドゥクレが前に出ていく。サイドを上がるウォーカーへはSHのヒューズ。ドゥクレとヒューズの間でマフレズがフリーで受ける。ドゥクレは戻ってマフレズを見るが完全にデブライネとの2択状態。デブライネがフリーになって高速クロス。DFラインの裏を抜けたDシルバが合わせてシュートを決めた。

 

 試合を通してマンCのシュートを狙う形の多くがローポストからの速いクロス。徹底してこれを狙っている。

 ローポストの位置を取るために相手のDFラインにスペースを作る。 そのためにワイドに開いてSBを引き出したり、CBを引き出すためにハーフスペースを取ったり。そしてハーフスペースを取るためにIHが降りたりSHを開かせたり。 スペースを作ったら視野外からローポストに向かってランニング。スルーパスが出てクロスみたいな。

 ワトフォードはSHが最終ラインの大外を埋めたり、CHがCB-SH間を埋めたりと2列目が最終ラインに吸収されることが多かった。これはマンCのローポストからのクロスを防ぎたいという意図があったのでは。一方、攻撃の形としては前で引っ掛けてショートカウンターを狙いたいので保持に対しては前からいきたい。実際カウンターでゴールに迫る場面も何度かあった。しかし結果的には2列目にスペースを作りまくるというデメリットの方が大きく表れてしまったのかなと思う。

 

  マンCはこういう狙いでゴールに迫りたいというものがまずあって、そのためにこのスペースを使っていきたい、だから選手がこういう動きをするというのが明確。IH降ろしや偽SBという動き自体を語るだけはたぶんそんなに意味は無くて自分達が使いたいスペースを作るために結果的にそういう動きになっている(たぶん)。

 試合中には1列目の脇をIH降ろしでなくSBを絞らせたり、大外はSBを上げたりWGを張らせたりみたいにそのスペースを使う選手が変化していく。全体のポジショニングは変わらないけど入っていく選手が変わる。同じ動きでスペース取っていると対応しやすいから選手の動きで変化を付けてるのかな。これはただの思い付き。

 

 ワトフォードはDFラインのスペースを埋めたい意図はわかるけど、視野外から飛び込まれたり入って行く選手について行けなかったりと翻弄されてしまった。これなら始めから後ろ5枚にして前向きに守備した方が~というのは解説の戸田さんに同意。でもこの試合だけのためだけ対応して自分達の形から離れすぎてしまうのは長いリーグ戦を考えるとデメリットもあるのではというのもやっぱり同意。

 

 以上、こんな感じで。軽くメモ程度。