いよいよ2020年のJリーグが始まりました。何度味わっても開幕戦のワクワク感は心地よいものです。新監督の元、開幕戦に挑む今年は特にワクワク感が強まっています。
さて、新スタイルのお披露目となった先日のルヴァンカップは残念ながら1-5の大敗でした。特徴は見えたものその完成度は実戦で相手を上回るためにはまだ未完成だったと言えます。
そこでこの試合では勝敗はもちろん、同時にルヴァンの試合からどれだけ完成度を高められたか注目されます。
それでは悔しさと同時に大きな未来への希望を見せてくれた2020年J1リーグのスタートを振り返ってみましょう。
- 1.スターティングメンバーと基本システム
- 2.高まったボール保持の完成度(清水のボール保持局面)
- 3.セットした守備もしっかりと(清水の非保持局面)
- 4.システム変更と個の力と(後半の流れ)
- 5.最後に切り替え局面を簡単に
1.スターティングメンバーと基本システム
清水エスパルスのシステムは4-2-1-3。
ルヴァン川崎戦から少しメンバー変更。センターフォワードに新加入の”タイの英雄”ティーラシンを起用。そして後藤がトップ下に回り、怪我により欠場したボランチ竹内のポジションには中村慶太が起用されました。
FCと東京のシステムは4-3-3。
ルヴァンで対戦した川崎フロンターレと同じシステムです。3トップはブラジリアントリオ揃い踏みかと思われましたが、ウイングの位置に田川が起用されています。
FC東京もリーグ前に行われたACLでの試合と若干のメンバー変更が行われているようです。
2.高まったボール保持の完成度(清水のボール保持局面)
FC東京は守備局面になると右のFW田川と右のIH(インサイドハーフ)三田が積極的に前に出てボールを奪いにきていました。
FC東京のプレスと清水が保持した時の立ち位置は下の図のようでした。
清水がボールを持った時に見られた動きは、
- ヴァウドと立田が左右に広がり、その間に中村が顔を出す。
- 左SB石毛はFC東京の3センター脇
- 後藤が降りて橋本をピン止め
- 田川が前に出てくるため左サイドが3vs2の関係になり、中村か石毛がフリーになりやすい。
- 三田が中村にプレスすると左のハーフスペースが空く。石毛がそのスペースに上がってボールを受ける。
上に書いた理由から清水は中村か石毛がフリーになりやすい状態でした。そしてその2人が絡んでいくことでボールを前に運ぶことができていました。特にピッチの中央(中村の位置)とハーフスペースを使えたのは清水の狙い通りだったと思います。
ボールを相手陣内に運んだ後も、サイドでのコンビネーションからクロスやディフェンスラインにできたスペースへの飛び出しなど、形を見せることはできていました。
とは言えFC東京は、後ろの4枚とアンカーの橋本でゴール前に決定的なスペースを作らないこと、個々の対応力など守備の強さは昨年同様。清水に決定機を作られることはあまりありませんでした。
前線からの守備にやや未整備さを見せながらも押さえ込んでしまうところなど、昨年リーグ2位の実力を見せつけられた形です。
3.セットした守備もしっかりと(清水の非保持局面)
FC東京がボールを持った時、清水のプレスは下の図のように行われていました。
- ティーラシンがサイドを限定
- トップ下の後藤がアンカーの橋本を見る。
- ボールサイドの相手を見るように近くの選手がマーク。
- 後ろの選手はゾーンでスペースを消し中に入るボールをカット。
中央を消してサイドに追いやり、中に入るボールを奪ってポジティブトランジションに繋げるのが狙いのようです。
おおむね清水の守備ははまっていました。時折FC東京もサイド経由でボールを運べていましたがそれは高萩やレアンドロがサイドで上手くプレスを外すなど個々の能力によるところが大きかったと思います。
しかし攻撃方向がサイドに限定されているので対応は難しくなく、保持からの攻撃でピンチを作られる場面は多くありませんでした。
4.システム変更と個の力と(後半の流れ)
後半開始してすぐ47分にティラーシンのゴールで清水が先制。しかしその後の三田→アダイウトンの選手交代をきっかけに勢いを増したFC東京に押し込まれ3失点してしまいます。
リードされたFC東京はまず55分に三田に代えてアダイウトンを投入。前線がわりと自由に動くので少しはっきりしませんでしたが、おそらく基本システムは442。その時の噛み合わせが下の図です。
この交代によるシステム変更による影響は、
- アンカー1枚からダブルボランチになったことで高萩か橋本がフリーになりやすい。
- ボランチが1枚フリーになることでサイドの崩しに参加できるようになった。
- トップからディエゴが降りて受けることでバイタル付近に起点ができた。
こんなところでしょうか。
特にダブルボランチになって中盤にボールを預けられるようになったのが大きかったと思います。中盤でボールを回されるためサイドや降りてくるディエゴオリベイラを消しきれなくなってきます。
清水の守備が対応に追われずれが出てきたところで、FC東京は個で打開できる選手を投入して殴り勝ち。力技ではありますが力を出しやすい状態を作ったのは長谷川監督の采配の力なのは間違いないでしょう。
5.最後に切り替え局面を簡単に
FC東京の守備は3トップを前に置いて彼らの攻撃力を生かす代わりに、中盤の3枚がハードワークと気を利かせてバランスをとるのが戦術全体の考え方のように見えました。
中でも左のFWレアンドロはそこまで守備を求められていないようで、代わりに右サイドの田川と三田のコンビの守備負担が大きくなっていたようです。
ただこれは組織のエラーでなく機動力のある選手を右サイドに配して奪ってネガティブトランジションに繋げたい意図なのではないかと思われます。
実際、三田や田川が奪い、カウンターに繋げる場面は何度もありました。限定的ではありますがチームの狙いは機能していたと言えます。
清水はパスワークを中心とした攻撃力が注目されていますが、私は攻守とその間の切り替え、全ての局面のバランスの良さに目をひかれました。
特に注目がトランジションの局面です。はじいたボールが自然と清水の選手の元に転がってくる場面が何度も見られました。おそらくポジショニングが整備されているのが原因と思われますが詳しい仕組みはまだわかりません。時間があるのでさらに見直してみたいと思います。
清水は保持して前進はできていましたがやや最後の精度とパワーが欠けていました。もちろんユニットでの崩しの精度を上げることも大切ですが少し時間がかかるかもしれません。現実は先制点がそうであったように得点を奪うなら前にスペースのあるトランジションからというパターンが多くなると思われます。しばらくはカウンターをいかに整備できるかが勝敗の鍵になるのではないでしょうか。