2020年明治安田生命J1リーグ第6節 サガン鳥栖vs清水エスパルス レビュー【定番のエスパルス対策】

 

1.はじめに

 勝ち点1獲得しました。とりあえず第一歩。

2.スターティンメンバーと配置

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・清水のシステムは1-4-2-1-3。

 システムはこれまでと同じ。メンバーは前節から3人の入れ替え。スタメンは固定せずローテーションで起用していく方針のようです。しかしここまで起用されたメンバーから主力とされるグループは見えてきた感があります。

鳥栖のシステムは1-4-4-2。

 1-4-3-3をメインに採用していた鳥栖ですがこの試合は1-4-4-2でした。(FW金森は10分に負傷交代)

3.フリーになる鳥栖サイドバック

 試合を見ていて、「プレスがかからないなあ」と思われた方が多いのではないでしょうか。僕も同じ感想でした。特に鳥栖サイドバックがフリーになるのが気になったのでそこに注目します。

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 鳥栖のシステムは4-4-2でしたが、保持した時はサイドハーフが2トップと同じ高さまで上がり4トップのようになっていました。清水は4バックなので相手と同数。そのため清水のDFはゴール前から動けないよ、という状態でした。

 次に鳥栖のビルドアップのスタートを見ると鳥栖はGKの高丘がCBの間に入って保持するので後ろは3人。ここに清水の3トップがプレスに行くと鳥栖サイドバックを見る人がいなくなるよ、というのを表したのが上の図です。

 ことはこんなに単純ではないでしょうが、鳥栖サイドバックがフリーになるのはこのあたりも関係していたと思います。

 さらに鳥栖は清水のウイングが前にプレスにいくとその空けたスペースにボランチの松岡がふっと降りたり、4トップの内の1人が清水のボランチ脇に下がってきたりと清水の守備を迷わすような動きを見せます。これでサイドバックだけでなく全体的にプレスがあいまいになったというのも付け加えておきます。

4.サイドバックセンターバックの間のスペース

 

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 鳥栖サイドバックが高い位置でフリーになったら放置するわけにはいきません。

 当然清水はサイドバックが対応に行くのですが、そうするとサイドバックセンターバックの間が開いてしまいます。鳥栖はその開いたスペースにランニング。その選手に清水のセンターバックがついていくと、今度は一番危険な中央が空いてしまいます(上図)。

 この形のピンチは何回か見られました。これを防ぐ方法の一つがボランチがカバーに入るです。しかし超人ヘナトならかなりの範囲をカバーできますが、守備は常人の中村にそこまで求めるのはちょっと難しい。なので中村サイドの方が攻められる回数が多いように見えました。たまにボランチが左右入れ替わっていたのはその理由もあったのかなと思いました。

5.清水のビルドアップと鳥栖のプレス

 清水がボールを持つと、鳥栖サイドハーフも前に出して高い位置からかなり厳しいプレスをかけてきました。

 清水のセンターバックと補助に降りてくるボランチにもプレスをかけられると清水の出しところはサイドに張っているウイングへのコースのみ(下図)。

 

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 そしてウイングへボールが出たらサイドバックの徹底マークでつぶします。特に右センターバックのヴァウドは割りと素直にウイングへパスを出すので右サイドの攻撃が繋がらりづらいようでした。

 このようにビルドアップを封じられた清水はパスワークで崩す場面はあまり見られませんんでした。チャンスになるのは強引にプレスを外した時か、カウンターの時ぐらいでした。

6.後半の流れを軽く

 鳥栖にサイドを攻められていた清水は守備の時にウイングの位置を下げてコンパクトなブロックを作るようになりました。これでサイドを無防備に殴られることはなくなりました。代わりに高い位置からのプレスをやめたので鳥栖にボールを握られることになります。(Football LABのデータを参照)

 鳥栖は69分に左サイドハーフにアンヨンウ、フォワードに豊田を投入。持ち場をお留守にしがちなエウシーニョ周辺を打開してクロス、中央で豊田に合わせる狙いでしょう。実際にアンヨンウはエウソンへガンガン1対1を仕掛けて、豊田めがけてクロスを上げています。

 ちょっとピンチが増えたところで今度は清水。その4分後にエウシーニョに代えて岡崎、カルリーニョスに代えて金子を入れます。あらかじめ用意した交代ではありましたが、右サイドのケアは間違いなく意識されていたと僕は思います。

 相変わらず右サイドから1対1は仕掛けられますが岡崎投入で不要にスペースを空けることはなくなりました。この交代前に竹内、鈴木唯人が入っていたこともあり前半に比べてボール保持もスムーズになってきます(若干危なっかしい場面はありましたが)。

 そんな感じでそこから終了までは互角に試合を進めましたが1-1のまま試合は終了。勝つことはできませんでしたが勝ち点1はゲットしました。

7.最後に

 鳥栖は、清水がボールを持ったら前から激しくプレス、ウイングへ出たところを激しく潰す。攻撃ではサイドバックのところを攻めてDFラインにギャップを作ることを徹底してきました。このような作戦は再開後に対戦したどのチームも行ってきました。攻守における清水対策は明確になっているようです。

 それでも後半の選手交代で流れを互角まで持っていけました。そして交代で入った選手はこれまでの出場時間が長い選手達です。このことはクラモフスキー監督のサッカーの理解へが進んでいる選手を起用すれば対策の中でも形は作れることの証明です。

 ということで対策への対策は、対処療法や特定の個人に頼るものではないというのが僕の考えです。クラモフスキー監督のサッカーの理解をチーム全体で深めること。それを目指すことが対策への一番の対策になるのではないでしょうか。