マッチレポート【2022年明治安田生命J1リーグ第1節 清水エスパルスvs北海道コンサドーレ札幌】

試合結果

【得点】

清水 1-1 札幌

【得点者】

15' ルーカス・フェルナンデス(札幌)

68' 鈴木唯人(清水)

スターティングメンバーとフォーメーション

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(清水)フォーメーション:1-4-4-2

選手交代:46’コロリ(中山)、64’髙橋(神谷)、64滝(山原)、84’岸本(原)84’宮本(竹内)


(札幌)フォーメーション:1-3-4-2-1

選手交代:62’菅(シャビエル)、75’荒野(駒井)、75’深井(宮澤)、87’トゥチッチ(小柏)、87’青木(金子)

 

清水の非保持局面(札幌の保持局面)

 清水は4-4-2の守備組織。試合開始から積極的なプレスをかけていったが、上手くはまらない。札幌おなじみの可変からのポゼッションでプレスが空転。多くの時間で苦しい状況を作られていた。

 札幌のビルドアップスタートは、例えば下図のようなポジション取りだ

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 ボランチ1枚が最終ラインに降りて、宮澤と真ん中にGK菅野。清水はこの後ろ3枚を2トップで追い切れず脇でフリーな選手(図だと高嶺と宮澤)を作られる。そして右SHの中山が高嶺にいくのか、福森を見るのかがあいまいになり、そこからの展開を許している。

 清水のプレスの問題点をもう一つ。2トップは始めは背中でアンカーポジションの選手を消しているが、ボールを追いかけるうちにアンカーポジションへのコースを空けてしまう。そのため2トップ脇の選手にプレスしても中央経由でそれを回避されている。

 このようにファーストディフェンスがはまらず1列目を越えられる。そこに浮いた選手ができる。浮いた選手をボランチが動いてカバーする。ボランチが動くので、2列目のラインが崩れる。そしてライン間は間伸びし、シャドーの小柏やシャビエルに使われる。

 また高嶺や福森がフリーなので逆サイドにクリーンに展開され、右WB金子が絡んでのチャンスを多く作られていた。

 清水は開始しばらくするとプレスの開始を相手のアンカーポジション辺りまで下げるようになる。ライン間を使われるのが気になったのだろう。

 すると札幌は前へ長いボールを入れて清水のラインを下げる。さらに後方の保持からサイドチェンジやSHの守備のずれを利用してサイドを攻略する。札幌優勢の流れは前半を通して続いた。

 札幌はボールを前進させるとWBから決定機を作っていく。札幌のWBは逆足で、カットインや逆サイドから入ったボールをシュートさせるのが狙いのよう。

 右サイドでは金子が運んで、その後方をSBのような位置取りをする田中がフォローする関係。左サイドはルーカスフェルナンデスが小柏の突破や福森のフィードと上手く絡みながら組み立てていく関係になっていた。

 中でも多く決定機を作るのは右サイドの金子を使った攻撃で、金子が縦に運んでカットインしてシュートやクロスが1つの形。

 清水はそれを警戒して金子には片山、山原の2枚で対応する。山原が金子に付くのでその後ろで田中がフリー。ここに戻して田中がフリーでクロスを入れるのも多く見られたパターンだ。

 この時、清水のDFラインはゴール前に3枚で札幌の1トップ2シャドーを見ている。なので逆サイドから入ってくるルーカスフェルナンデスが浮くことが多い。

 6分(ルーカスフェルナンデスのシュート)、15分(失点場面)、また20分にガブシャビがヘディングシュートした場面でも逆サイドでルーカスフェルナンデスが浮いている。

 他にもこれらに近い形は頻発していたので、札幌が狙った攻撃だったのだろう。

 清水の保持局面(札幌の非保持局面)

 札幌の守備はボールサイドの相手をマンツーマンで捕まえる。捕まえたら相手が移動してもそのまま付いていき常に前向きに撃退するやり方だ。

 下図は清水がビルドアップスタートする時によく見られた配置とその時の札幌の守備基準。

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 ここから清水は下がってくる唯人やハーフスペースにポジションする選手への縦パスを入れていく。しかし割と素直な縦パスのため札幌のマンツー対応でボールを失うことが多かった。

 前半、清水のビルドアップは上手くいったとは言えないが、それでも動きの特徴から狙っていたものは推測できる。

 1つはハーフスペース裏の攻略だ。右サイドで中山と原が内と外を使い分けながらハーフスペースの裏に抜ける動き、また68分の唯人のゴールのようにダイレクトにFWが流れて裏を狙う。これらはチーム戦術として仕込んだ動きだろう。

 もう1つは生じたスペースを素早く使うプレーだ。昨年からこの傾向は強いが、これは相手の対応より先にスペースを攻略したいからだと思う。

 清水のビルドアップは最後尾ではゆっくりボールを動かすが、中盤以降で前を向くと、前線に複数人が飛び出して一気にスピードアップする。

  またボールの前進と共に両SBが前線中央に侵入していく。これは相手のDFの対応にバグを起こす効果を狙っているのかもしれない。実際にスペースに飛び込んでいくSBの動きで札幌のマークがずれる時が度々あった。

 とはいえ前半に作る決定機は少なかった。しかし、後半は修正が入りその狙いがチャンスに繋がるようになっていく。

後半の流れ

コロリ投入の効果

 清水は後半頭から中山に代えてコロリ。コロリをFWに、神谷を右SHに回す。

 背負って収められるコロリが入り、マンツーマン対応されてもマイボールにできるポイントができた。

 札幌は前向きに追撃する守備は強いが、下がりながらの守備時にはマークの基準があいまいになり脆さを感じる。コロリが収めて、それをスイッチに後ろから人が飛び出し前向きにボールを繋げていくと、札幌の守備は人を掴み切れず後追いのような対応になっていた。

 清水は後半、コロリへの縦パスだけでなくダイレクトに裏を狙うボールも増やしている。またボールが前進すると両SBに加えてボランチの白崎も前に上がっていく。こうしたプレーは札幌に背走させるような守備を強いていた。

オープンな展開になった後半

 前半は丁寧に後ろで相手を剥がしながら前進を図っていた札幌だが、後半は中央に縦パスを差し込んだり、ドリブルを仕掛けたりとダイレクトに前に向かうプレーが増えている。

 一つの理由としては清水のファーストディフェンスが改善しビルドアップが窮屈になったからと考えられる。後半入ったコロリは必ず背後を確認しながらタイミングよくプレスに出ていく。この限定で周囲もプレスをかけやすくなり簡単に1列目を越えられることが減っていた。後の理由はよくわからない。

 札幌は65分にシャビエルに代えて菅。菅が左WBに入り、ルーカスフェルナンデスを右WB、金子をシャドーに回す。どうせオープンになるなら前に推進力を出そうということかもしれない。(これもわからないけど)

 いずれにしても清水とすればオープンな方が前向きで速い攻撃がしやすくなる。そうなると必然的に札幌は背走しながら守備をする機会が増える。しかし返す刀で清水もゴール前まで攻められる機会も作られる。

 それでも清水が追いつくためには望む展開になったと言える。ここがチャンスと平岡監督が交代策を打つ(実際に地元放送局の実況がこの時間帯で監督が「ここだよ」と声をかけていると伝えていた)。

 64分、より直接ゴールに向かえる滝と髙橋を投入。両サイドハーフを入れ替える。

 68分唯人のゴールは原と2人の関係から作ったゴラッソだ。しかし、この交代がゴールに向かえという強力なメッセージになっていたはず。またダイレクトにハーフスペースを攻めるのは清水が狙っていた形でもある。

 清水が追いついた後も後半の構図は変わらず。終盤まで刺しつ刺されつの展開が続く。攻守とも清水の特徴を生かせそうな展開だったがお互いに決め手を欠き、1-1のまま試合終了した。