明治安田生命J1リーグ第7節 ジュビロ磐田vs清水エスパルス ~ 静岡ダービー

1.スターティングメンバーと配置

 

f:id:hirota-i:20190417180933p:plain

 

 清水エスパルスのシステムは4-4-2。右のSHに中村が復帰。前節好プレーを見せたヘナトが引き続きのスタメン起用となっています。

 ジュビロ磐田のシステムは3-4-2-1。保持した時はポジションの入れ換えが起こりますが、基準となるベースは3-4-2-1といっていいでしょう。川又離脱以降の3試合は同じスタメン起用となっています。

 調子が良いとは言えない両チーム。しかしこの試合は静岡ダービー。絶対負けられない戦いです。これまでの歴史同様に、選手、サポーター、チームに関わる全ての人達の想いがぶつかり合う熱い試合になるのは間違いないでしょう。

 

2.ディフェンスラインのギャップを狙う(清水の攻撃)

 

 ジュビロは3-4-2-1のシステム。3-4-2-1で守る時に問題となるのがボランチの脇。磐田はボランチ脇に運ばれた時はWBが前に出て、後ろはボールサイドにスライド。実質4バックのような形を作り守っていました(下の図)。

 エスパルスはその守備に対して、相手のボランチ脇にボールを1度入れることでWBを前に引っ張り、相手がスライドする前にWBの裏のスペースを使っていました。特に前半始めの方はこの形が多かったですね。

 

f:id:hirota-i:20190419181555p:plain

 

  また、ジュビロがスライドする時に、テセが相手のCB新里を中央でピン止めするとHV(HalbVerteidiger=中間のDF、つまり3バックにおける左右のCB)との間にギャップができます。

 

f:id:hirota-i:20190419183948p:plain

 

 そのスペースに北川やSHが走り込むという攻撃も見られました。

 要はWB裏も含めて、相手のDFラインをスライドさせて揺さぶる。そして隙ができたところを突く。そんな狙いが強く感じられました。

  

 ジュビロボランチ脇からWB裏を執拗に狙われると、そこが気になりシャドウがサイドのカバーをするようになります。すると前からのプレスがかからなくなり、徐々にエスパルスが保持する展開になっていきます。

 長くなるので詳しくは省きますが、エスパルスは右SBエウシーニョが中に入ることで相手のボランチを動かしたり、中央で誰かがフリーになってパス出しできるような仕組みができてきています。前半はエスパルスがサイド、中とパスを通して上手く攻撃ができていました。

 

 また、繋ぐだけでなく後ろからテセへのロングボールも多用していました。ターゲットに当てて前線とのコンビネーションはエスパルスがどの試合でもやる攻撃です。

 ただジュビロは最終ラインを攻撃された時にカバーの関係性が乱れやすいという傾向があったので、ここに対する狙いもあったのではないかと思います。エスパルスはテセを競わせた時には他の選手がその近くでDFラインの裏を狙うような動きをしています。

 先制の場面は六反からテセに入った時、ジュビロのDFは斜め後ろでカバー。ここはカバーできていましたが、すぐ横にいた北川にボールが渡ると北川一人に複数人が行ってしまい結果的にテセがフリーになってしまいます。この場面のようにDFラインを連続攻撃された時に特に乱れが出やすいようでした。

 

 それでもジュビロは守備の仕組み自体は整理されていたと思います。サイドをWBにカバーさせることで、後ろ加重になることを防ぎ、シャドウを攻撃に専念させるという形は理解できます。

 しかし局面の対応は昨年失点した時の形に似ているなというのは何度も感じました。まあ、弱点が直らないというのはお互い様なので偉そうなことは言えませんが... 。

 

3.ジュビロの可変システム

 

 ジュビロの攻撃も見ていきましょう。ジュビロは保持している時、面白い可変をしていました。

 ボランチがDFラインに降りるのはどのチームでもやる形ですが、更にシャドウがボランチの位置に降りて、WBがシャドウの位置に絞りこみます。そしてHVがSBのように開いてサイドのスペースを使います(下の図)。

 

f:id:hirota-i:20190421095519p:plain

 

 この動きで使いたいのはサイドと中央のスペース(当たり前かw)。

 

f:id:hirota-i:20190421101903p:plain

 

  図がごちゃごちゃしてすみません。

 サイドはWBが中に入ることでスペースを作ります。前半にあったアダイウトンの決定機はこの形から。

 中というのは相手のボランチを動かして、そこに後ろから大久保や山田が入っていく形。シャドウがプレッシャーの強いブロックの中で受けるのではなく、味方が作ったスペースに入ってフィニッシュに絡むという形を作りたかったのではないかと思います。

 それに対してエスパルスの守備はボールの位置を基準にコンパクトなブロックを作り、ジュビロの動きにも大きな隙を作ることはほぼありませんでした。しかも、空いてしまったスペースはヘナトアウグストがことごとくカバーして奪取。そしてカウンターです。

 元々ボランチとCBの間が空きやすいジュビロですが、ポジションチェンジによりシャドウがボランチの位置にいるのでなおさら後ろへの意識が薄くなっています。そこから失点はありませんでしたが危険な場面は何度か作られていました。

 

4.エスパルスの2点目を考える

 

  エスパルスジュビロのビルドアップに対して、ボランチに強いプレッシャーをかけていました。そしてSHはハーフスペースを消すようなポジションを取ります。

 ジュビロはポジション変換をすることで中と外にビルドアップの選択肢を作っていましたがエスパルスが中央からハーフスペースを消していたため、ジュビロボランチにボールが入った時は選択肢が無いという状態になっていました。

 ジュビロは中央で詰まると、割りとオートマチックにサイドにボールを動かします。それをパスカットするというのは、おそらくエスパルスの狙いとしてあったのではないかと思います。見た目は山田のイージーパスミスを奪っての得点ですが、中から外へのパスをカットする形は得点場面以外でも何度か見られました。

 

5.ジュビロの選手交代からの逆襲

 

 ジュビロは53分に森谷→ロドリゲス、62分に大久保→エレン、63分に山田→荒木と選手交代。この選手交代でシャドウがロドリゲスと荒木。左のWBがエレンになっています。

  僕が思うポイントの1つはシャドウがドリブルで運べる選手に代わったこと。前半の大久保、山田違い彼らは低い位置に下がらずブロックの中でドリブルを使いボールを運ぼうとします。

 エスパルスはそれをケアするためライン間が広がりジュビロの選手がボールを持った時にプレッシャーがかからなくなっていたように見えます。

 ジュビロは相手のプレスによって、ボランチにボールが入った時にビルドアップが詰まる傾向がありました。しかし、エスパルスのプレスが弱まりジュビロボランチがプレッシャーから開放されるとボールの流れがスムーズになっていきます。

  またロドリゲスとエレンは中外とポジションを入れ替えてサイドにスペースを作ります。ジュビロの得点はまずエレンがハーフスペースで受けたところから。その時サイドにいたロドリゲスが中に入っていきサイドにスペースを空けます。エレンは内側にプレスをかけていた金子をドリブルで外しそのスペースに運んでクロス。中に入って行ったロドリゲスがヘディングシュートを決めます。エスパルスの相手のボランチからハーフスペースを塞ぐような守備を逆に利用された形でした。

 

6.試合終了までとちょっとした感想

 

 エスパルスはまず北川に代えてドウグラスを投入。その後、テセに代えて飯田を入れます。

 ジュビロはロドリゲスが中や外に動いてサイドの守備をぼかしていました。そこでシステムは4-4-2のまま、エウシーニョが外に開かず中を固めて、サイドの上下を飯田がケア。守る場所を明確にして一番危険だったエレンのクロスを防ごうという動きでした。

 そして、最後はボールを落ち着かせて試合を終わらせるために中盤に六平を入れて4-5-1。なんとかそのまま試合は終了しました。組織が整っていたとは言えませんが、それでも最後は体を張ってゴールを割らせませんでした。内容が良くても勝てなかったこのチーム。最後の踏ん張りという足りなかったものをこの大事な試合で見せてくれました。監督も上手く手を打ったと思います。

  ここまで勝てていなかったという苦しい流れの中での静岡ダービー。この重圧に負けず結果を出してくれたチームを誇りに思います。これを良いきっかけにして本来チームの持っている力を発揮してくれることを期待します。

 

 一方ジュビロも選手交代から最後の追い上げは見事でした。やはりダービーはライバルがあってこそ。仲良しにはなれないけど、良きライバルではありたいですね(笑)