明治安田生命J1リーグ第9節 清水エスパルスvs浦和レッズ

1.スターティングメンバーと配置

f:id:hirota-i:20190506203547p:plain

  清水エスパルスのシステムは4-4-2。キャプテン竹内の負傷欠場によりCHに六平が起用されているのが前節との変更点。

 浦和レッズは保持時3-5-2、非保持時5-3-2またはFW武藤が左の中盤に下がっての5-4-1。浦和も右のWBが前節出場の橋岡から森脇。そして3バックの右には鈴木大輔と前節からメンバー変更されている。

 

2.浦和の保持とネガトラ設計

 

 浦和は3バックの左側に長澤が降りたり、槙野とマウリシオの間に青木が降りたりと清水のファーストディフェンスの挙動をうかがうように後ろの形を変えながらのビルドアップスタート。さらに清水の2トップ脇にボールを入れては戻すを繰り返すなど、非常に慎重なボール回しだった。

 

 それに対して清水は前からはめ込むよりも、FWと中盤が連動してまず中央のスペースを消す、ボールが動いたらFWが1枚出てサイドに追いやるようなプレスをしていた。   

 浦和は、後から興梠や武藤に縦パスを入れようとそぶりも見せたが、清水が中央のスペースを消していたこともあり基本無理をせずサイドからの前進が中心となっていた。

f:id:hirota-i:20190508100042p:plain      

  上はイメージ図。

 組み立ての中心は右サイド。浦和は右サイドにWB森脇とHV鈴木を縦に並べるような位置取り。鈴木はビルドアップ時にはDFラインの一角というよりも、森脇と共に右サイドでの組み立てに関与する役割だった。
 サイドでボールを動かしながら松原を森脇に引き付けてFWがSB-CB間を狙う、また鈴木がサイドを上がり森脇がハーフスペースに入って行くなど、清水のSB-CB間を狙うというのが一つの形。

 

 右サイドで詰まると森脇から左WB山中へのサイドチェンジ。左サイドの攻撃はその他には清水の右SH金子を槙野が引き付けて山中へのパスなど、細かい繋ぎはあまりなく山中をフリーにさせてシンプルにゴール前に入れていく攻撃が中心だった。

 

 浦和の組み立てが主に右サイドで行われるということは、当然ネガトラも右サイドで起こりやすい。鈴木を森脇の後ろに置いていたのは奪われた時のガードの意味合いもあったと思われる。

 

 そして左サイドはシンプルにゴール前に入れることで攻撃を完結させてネガトラを発生させない。逆に左でボールを奪われた時は、左サイドやや内側で金子がフリーになっている場面が多く清水のカウンターの起点になっていた。

 

3.清水の保持と浦和の守備局面。

 

 清水のシステムは4-4-2だが、保持をするとCHが1枚アンカーのような位置に下がりもう一枚のCHと縦関係を作る。そしてテセが前に張り、北川がやや降りてくるので見た目は4-1-4-1に近い配置になっていた。

 

 浦和は清水の保持に対して高い位置からのプレス。噛み合わせとしてはまず2CBに2トップ。そして中盤の脇は(浦和から見て)左側は長澤がスライド、右側はWBの森脇が前に出て対応していた。

 

 そこで清水の配置と浦和の守備の基準を嚙み合わせると、下の図のような現象が起こりやすくなるのがわかる。

 

f:id:hirota-i:20190508165047p:plain

 まず左SB松原が森脇を押し下げると、浦和の中盤の脇にスペース。中村がこのスペースに下がって受けるのはよく見られたプレーだ。

 

 また一度金子サイドにスライドさせてサイドチェンジすると中盤の逆サイドがフリー。13分37秒の金子のサイドチェンジから中村慶太のシュートはこのスペースを使って撃っている。浦和はこのスペースが気になったのか時間が経つと武藤が中盤に下がり5-4-1守備になっていく。

 

 次にCHの1枚がアンカーの位置に下がり相手の中盤を前に釣り出すので、その裏にパスコースができる。FWの北川は頻繁にこのスペースに降りてボールを受けていた。

 

 そして左WBの山中はあまり中に絞らず、しかもテセは必ず前に張ってDFラインを押し下げているので金子が内側に入って行くとフリー。さらに北川についていく浦和DFの裏のスペースを狙う。北川がボールを受けると決まったようにフリックをしていたことからもこのスペースの作り方と使い方はチームで共有されていたものだと思われる。

 

  浦和はDF3枚はゴール前から動かさず必ず人を確保。DFラインに侵入してくる相手は絶対に撃退するという守備だった。清水はアタッキングエリアまでは狙い通りボールを運べていたが最後の精度と判断がずれて決定的なシュートまでには至らない。

 

 確かに理にかなった清水の前進ではあったが、ゴール前でフリーでもオートマチックにフリックやスルーで味方を使おうというプレーは気になった。引いてくるだけでなく、2トップが直接相手のCBを攻撃しても周囲にスペースはできる。昨年見られたそのようなプレーをもう少し意識しても良かったような気はする(無責任な感想ではあるが)。

 

 4.繰り返す失点パターン 

 

 後半しばらく前半と同じ流れ。しかし7浦和の武藤と汰木が交代した直後の73分。右からのCKを一度は跳ね返したが、拾われてのクロスを興梠がシュート。六反が弾くもこぼれ球をマウリシオに決められて先制点を奪われる。

 

 まず興梠のシュートはファンソッコがマークについていたが、一瞬ボールを見失いシュートを撃たれている。元々ソッコはクロスの対応が得意でないように思えるが、特に今期はマークを外してしまうことが多い。

 

 またマウリシオのシュートはフリーで撃たれたが、興梠がシュートを撃った時点ではヘナトがそのスペースを埋めていた。ここの約束事で明確でこの動きは必ず行われる。しかしシュートを防いだ後の二次攻撃に対しての守り方がかなりアバウト。CHはそのままゴール前を埋めるのか、受け渡して中盤のポジションに戻るのか。結果的にはヘナトが前に戻ったことでマウリシオがフリーになってしまった。

 

 クロスに対してマークを外してしまうことと、CHがDFラインのカバーに入った後のバイタルの埋め方。ここが原因での失点は繰り返されている。

 

5.最後に

 

 アディショナルタイムにカウンターから2点目を決められ0-2での敗戦。しかし、シュート数は清水7本に対して浦和10本。ペナルティエリア侵入回数は、両チームとも8回(いずれもFootball LABより)。作り出したチャンスの数はそこまで大きな差は無い。決めるか決めないか、止めるか止められないか。単純に考えれば、そこの差が結果に表れたと言える。

 

 この試合がお互いに慎重でスローな展開だな、というのは見た人の多くが抱いた印象だと思う。浦和が慎重だったこともあるが、清水もあまり長いボールを使わず中盤を使って組み立て、サイドでもえぐってクロスよりも一度内側に持ち直して逆足でクロスを入れるなど確実なプレーを選択しあえてオープンな展開を避けている節も感じられた。

 

 Football LABのデータによると、昨期の清水は攻撃回数リーグ7位、被攻撃回数リーグ16位。つまり攻撃もするけど攻撃もされる行ったり来たりの展開が多いチームだった。しかし今期の清水は攻撃回数リーグ15位、被攻撃回数リーグ6位。じっくりと攻撃して相手の攻撃回数を減らす遅行型のチームに近い数字だ。

 

 オープンで不確定要素の多いチームから、自分達で試合をコントロールし狙い通りの結果を導けるチームへバージョンアップさせようとしているというのは1つの推測。今期の清水は、概ねどの試合でも自分達でボールを握り相手の陣内まで前進することができている。昨年のカウンターを消されると沈黙してしてしまうチームを考えればそこは上積みだ。しかしコントロールできないとより穴はより大きくなる。またより緻密な組織が必要となりシンプルにプレーしていた昨年に比べプレーに迷いが出て個々のデュエルに集中できなくなる。あくまで可能性の1つだが。

 

 実際は望んでのこの戦いなのか、なにか消極的な理由があってなのかはわからない。いずれにしても良し悪しでなく、チームが何をしようとしているか、その結果試合がどうなっているのか。僕にはそこを想像していくことしかできないけど。