試合結果
【得点】
清水 2-1 C大阪
【得点者】
45+2' 鈴木義宜(清水)
51’ 西澤健太(清水)
両チームのメンバーとフォーメーション
(清水)フォーメーション:1-4-4-2
選手交代:71’山原(後藤)、80’中山(西澤)、80’ディサロ(鈴木唯)、87’立田(チアゴサンタナ)87’宮本(松岡)
(C大阪)フォーメーション:1-4-4-2
選手交代:71’中島(藤田)、71’豊川(加藤)、87’松田力(大久保)
試合の概要
2021年シーズンもついに最終戦。未だ残留の決まらぬ清水だが、引き分け以上で自力残留、敗戦でも得失点差次第で残留可能とライバルチームの中ではかなり有利な状況だ。とはいえ敗戦の場合、その得失点差は安全圏とは言えない。ゲームプランとしてはまずはいかに失点しないかが重要になるだろう。
清水は前節浦和戦と同様、高い位置でのプレスは抑えミドルゾーンで構える守備から入っていった。ボールの保持はC大阪に譲ったが、中盤でボールを奪えば積極的に前へ飛び出しショートカウンターからゴールに迫っていく。
試合開始から狙いを遂行できていた清水だが、先制したのはC大阪。コーナーキックから大久保が撃ったシュートが清水の選手に当たりオウンゴールになってしまう。引き分け以上は死守したい清水にとって痛い失点となった。
しかし、それでもペースを乱すことなくプレーを続ける清水。先制後にC大阪がやや引いたこともありボール保持からもチャンスを作っていった。そして前半アディショナルタイム、西澤のフリーキックを鈴木義宜が決めて同点に追いつく。
さらに後半に入り6分。西澤がカットインから左足でコントロールショットを撃つと、これが決まり逆転に成功。
その後はC大阪も攻勢を強め、一進一退の攻防が続いたが清水も粘り強く戦い2-1のまま試合は終了。
これで清水の残留が決定。苦しいシーズンだったが最後は3連勝。来シーズンJ1で戦う権利を自らの手で掴み取った。
清水の非保持時の振る舞い(C大阪の保持)
C大阪の保持局面は、後ろでは巧みにボールを運べているが、中盤から前線にかけては少し苦労していた印象だ。試合を通して保持率は高かったが、決定機はそれほど多くない。
保持時の配置はかなり意識されているようで、配置とそれぞれの役割はおおむね下の図のようになっていたと思う。
ここから例えば清武が自陣まで下がると奧埜がライン間に上がったり、松田が後ろに下がれば坂元が幅を取って奥埜が前に上がったりと人は動いても全体のバランスはほぼ崩さないのが特徴だ。
後方の保持では無理にボールを前に出すことはなく、相手のプレスの動きを見ながらポジションを取ってボールを動かしている。前が詰まれば後ろに戻して何度もやり直し、まずは相手の2トップを越える。そしてそこにフリーの選手を作ってボールを入れていた。
そこから左のハーフスペースに降りてくる清武が受け、サイドに展開してクロスという攻撃パターンが多い。
対する清水の守備組織は1-4-4-2。最前線からのプレスは抑えているが完全にリトリートはせずミドルゾーンにコンパクトなブロックを構えている。まずは内側のスペースを埋めて2列目にボールが入ったら強く奪いにいく動きだった。
特にCHの松岡、竹内の2人で連動してアタックする意識が強くここでボールを遮断できている。
C大阪に崩される場面は少なかったが、序盤に少し気になったのが右SH西澤とCH松岡の間。松岡と竹内が強く連動する反面、SHとの結びつきが弱い場面が見られる。
そのため前半途中までは下図のように右のハーフスペースから斜めに左のハーフスペースに動かされることで清武がフリーになる場面が散見していた。
清水が明確に内側を消していたので、そこからの展開をサイドに限定できていたが、やはり清武をフリーにするとボールを前に運ばれる。
時間が進むと共に松岡が清武を見るようにしっかりスライドするようになっていた。
C大阪の後ろから前線へボールを届ける役を担っているのは、おそらく中盤に降りてくる清武や大久保。そのため中盤のスペースを消されると彼らがより低い位置に下がりボールを受けるようになっている。
しかしC大阪は元々後ろでの保持には問題がないので、清武や大久保がブロックの外でボールを持つだけではビルドアップに大きな変化が起きない。33分に降りた清武を飛ばして奧埜に入れたプレーが見られたが、このように強く寄せてくる清水の中盤の特徴を利用する仕組みを作れれば良かったかもしれない(ここから奧埜、清武、加藤と繋がりCKのきっかけとなったシュートを撃たれている)。
前半を通して清水は後ろでは持たれるものの、ミドルゾーン以降の前進は食い止めることができていた。そしてボールの回収からカウンターに移行し相手ゴール前に迫る場面を作っていた。
清水のポジティブトランジション局面の振る舞い(C大阪のネガトラ対応)
清水のチャンスの多くは中盤で奪ってカウンターから生まれていた。
C大阪はボールを奪われた後、即時奪回よりゴール前を固めることを優先しているようだった。ボールを奪われるとC大阪のDFラインはまずゴール前を固めるように撤退している。
対する清水のカウンターの形は以下のように行われることが多い。
まず前線のサンタナに当てたり、唯人のドリブルなどで中央高い位置にボールを運び、相手のDFラインをリトリート&中央収縮させる。それによりサイドにスペースができるのでそこにSHやSBが飛び出してボールを展開する。
C大阪はサイドのスペースへはSBがスライドして対応するが、残りのDF陣とCHの1枚は中央にステイする。
この動きより清水はサイドからのクロスまではもっていけている。しかしゴール前は相手に固められている状態。ただしDFラインが中央に絞り気味なのでファーにクロスを上げて逆サイドのSHが外から中に飛び込み合わせればシュートに繋がる可能性が高い。
おそらく清水は事前にこれを狙っていたと思われる。似たような展開からクロスをファーに上げ逆サイドのSHがシュートを狙うことが多かった。
清水の保持局面の振る舞い
まず狙うはダイレクトにサイドの奥
C大阪も清水と同様に積極的なプレスはかけず1-4-4-2の守備組織で構えて守っていた。そのため清水もある程度は後ろでボールを持てる。しかし清水はあまりボールの保持にはこだわっていないようだった。
上に後ろでボールを持った時のざっくりとした動きを表した。まずCBとCH1枚が後方でボールを左右に動かす。そして相手がスライドでずれると同時にダイレクトにサイド奥のスペースを狙うのがよく見られる攻撃だった。
内側にポジションを取る選手はいるが間を使うことにもこだわっていないよう。CBが持つとSHはまずハーフスペースから裏を狙って飛び出す動きを見せる。
これが通ればチャンスになるし、回収されてもサイドの奥なので直接カウンターを受けることはない。やや確実性の低い攻撃ではあるが、回収されてもセットして守備をやり直せばいいと割り切っているようにも感じた。
狙い目となるスペース
C大阪が先制した後、ややラインを下げたこともあり、清水もボールを持つ時間を作り始めていた(31-45分の清水の保持率は50.6%)。
CHも中央でボールを持てていたが、持っている場所はやはり守備ブロックの外側。そのCHを経由してサイドを変えて大外のレーンに運ぶルートをよく見せていた。
C大阪はサイドからの攻撃に対しては、カウンターからクロスを上げられた時と同じ対応だ。必ずCBとCH1枚はゴール前に確保した上でサイドの選手がスライドしていく。そうなると中央と大外の間にギャップが広がるがそこはもう1枚のCHがカバーする。
ただしカバーに入るCHが1枚なのでやはりハーフスペースに広がるギャップは狙い目だったと思う。
例えば前半45分、内側レーンでボールを持った原がギャップから裏に抜けた唯人にパスを出した場面。原が内側レーンで持つことでカバー役のCHが引きつけられるので裏へ抜ける唯人がフリーになりCBがスライドして対応せざるを得なくなる。
試合全般で唯人はボールを受けるためハーフスペースの低い位置に降りてくることが多かったが、C大阪が構えてスペースを消していたので間で受けても効果的なプレーはできていない。C大阪の守備構造から考えれば、低い位置でなく前目にポジション取りをしてCB-SB間への攻撃に関与した方が良かったのではないかと思える。
後半について
逆転ゴールの場面
後半の入り、C大阪は割と早めに長いボールを入れてきた。守備でもややボールを追いかけがちで、この時間帯は少しだけオープンな展開になっていたと思う。オープンになればスペースが生まれる。そのスペースを唯人に使わせるのは清水が望む状況だ。
逆転の場面だが、まず左から右への大きな展開でC大阪の守備組織が広がった。そのため右サイドの西澤からのパスを唯人が中間ポジションで受けた時に周囲にフリースペースが生じている。
唯人はサンタナとパス交換して仕掛け、裏に抜けたサンタナにスルーパス。これが通ってサンタナが速いクロスを入れた。この場面、唯人は前目で受けてCB-SB間のギャップに仕掛けた。やはりこの位置でプレーに関与した方がチャンスになりやすいと思った。
サンタナのクロスを相手DFが弾き、そのボールを右のぺナ角あたりで西澤が拾う。下がその時の両者の並びだ。
西澤がボールを拾った後のC大阪の守備対応を見ると、やはりサイドの清武と丸橋は西澤の方に寄っているが、CH2枚プラス他のDF陣はゴール前を固め、スライドしてこない。そのため清武を外すと内側にスペースができている。
西澤の駆け引きとシュート自体はスーパーだったが、C大阪の守備組織の特徴によって西澤が清武との1対1を制すればシュートに持っていける状態であったと思う。
試合終了まで
清水がリードするとゲームプランは明確になった。失点のリスクを抑えるため清水のプレスラインはやや下がり、C大阪がまたボールを保持する流れになっていった。
71分にC大阪は藤田に代わり中島が入る。清水の中盤はボールに強くいける反面、複数人でボールにスライドし過ぎる、さらに若干矢印の逆を取られやすい傾向がある。
清武が2列目ラインの手前でさばき相手を引きつけると、それによって空いたライン間にパス交換しながら中島が侵入している。この役割が整理されC大阪が清水のライン間でボールを動かせるようになっていた。
さらに坂元がサイドで受けて仕掛ける場面も増えていく。 70分以降はC大阪が攻勢を強めている。
清水の選手交代は71分に後藤から山原。さらに80分に西澤→中山、鈴木唯人→ディサロ。清水の守備はいかにプレスバックやスライドを献身的にこなせるかが重要そうだ。それゆえ特に運動量の多いSHと唯人を順番に交代するのは納得だ。
残り時間はわずか。後はとにかく守りきるのがミッションだ。87分にはサンタナを下げて立田を投入。前にかかるC大阪の攻撃を受けてFWを削って3バックで対抗。さらに松岡→宮本で中央を固める。
最後までC大阪の追加点を許さず2-1で清水が勝利した。