2021年J1リーグ明治安田生命第12節 大分トリニータvs清水エスパルス レビュー”エスパルスの攻撃を中心に大分戦を振り返ってみましょう”

 アウェイでの大分戦を振り返ります。試合全体のお話というより見たとこだけを書き流していきますね。得点不足が話題になっているので主に相手の守りとこちらの攻めについて見ていきます。

 まずはスタメンと選手の並びです。 

f:id:hirota-i:20210504103952p:plain

 エスパルスは4-4-2。スタメンはある程度主力が固定してきた感もあります。左の中盤は中村だったり西澤だったりですが、この試合は中村慶太が起用されました。

 大分は3-4-2-1でしょうか。ワントップに元エスパルス長沢駿が起用されています。チームは変わっても主力として活躍してくれているのは嬉しいですね。

 

 さて、まずは大分の守備から見ましょう。

f:id:hirota-i:20210504105235p:plain

 大分の守備は基本はウイングバックが下がって5-4-1の形(上図)。

 ただエスパルスが後ろでボールを持つと下の図のように駿が右サイド寄りをケア、同時に右サイドの町田が前に出てくる5-3-2のような形になっていました。

f:id:hirota-i:20210504141615p:plain

 エスパルスは鈴木義、エウシーニョ、河井で相手を引き付け中盤にスペースを作りたい。しかしFWの駿に右寄りをケアされることでマッチアップがずれずボールが入った時に強くアタックされてしまいます(下図)。

f:id:hirota-i:20210504164900p:plain

 大分の守り方を見ると間で受ける唯人や河井には強く当たってターンさせない、またそこからボールをサイドに出させて小林成豪と香川の2枚で挟んでボールを奪取しています。そこに大分の狙いを感じました。

 

 一方、左サイド。こちらは右シャドーの町田が立田にいける時はいくのですが、どちらかというと町田は立田を見ながらも下がってブロックを形成する傾向が見られました。

f:id:hirota-i:20210504170024p:plain

 そして奥井にパスが出たらウイングバック松本が前に出てプレス。間の慶太にパスが出れば町田と小林裕紀ではさみます。エスパルスの左サイドは基本中村と奥井で攻めるので大分のこの守備対応で詰まっているようでした。

 

 こんな感じで前半の序盤は上手くいったとは言い難いエスパルスの攻撃。しかしちょっとずつ修正らしきものを見せてきます。それを見ていきましょう。

 

 まず飲水タイム後、25分すぎくらい。唯人がサンタナと左右入れ替わったり、中山がワイドから中に入って縦パスを受けたり。ちょっと立ち位置を変え始めています。おそらく役割を入れ替えることで相手の守備基準をぼかしたかったのでしょう。また右の奥に長いボールを入れて相手ブロックを下げようとする狙いも見えます。

 これで少し唯人が浮くようになってゴールに向かって仕掛ける場面も作れてきます(まあほんの少しですが)。

 また一つ、個人的に注目したプレーですが

f:id:hirota-i:20210505092115p:plain

 前半29分。実際はここで立田はパスを町田に引っかけられてしまいます。しかしもし通っていれば図のように慶太が左サイドの奥を取ることができました。形としては良かったと思います。

 この大分の右ウイングバックに対して2対1ができるのは大分の守り方から構造的に発生する形です。しかし前半の始めの方は立田は早くパスを出し過ぎ、慶太は中盤に引き過ぎでこの形を発生させられませんでした。この少し前の28分にも立田は町田の近くまでボールを運んでいたので、もしかしたらこれは飲水タイムに指示が出たプレーだったかもしれません。

 

 僕の妄想はこんなところにして時計の針を後半まで進めます。後半はざっくりしか見てないので大雑把にわかるところだけでいきますね(笑)

 後半にはもっとはっきりした修正がされていました。

f:id:hirota-i:20210505095216p:plain

 後半になると慶太は明らかに左の高い位置を取って対面の松本を押し下げます。慶太が高い位置を取ると町田は奥井と立田の2人を見る状態。町田は自陣寄りの奥井をフリーにするわけにはいかないので中盤に吸収され大分は5-4-1で守備ブロックを作る傾向を強めていきます。

 こうなると清水は後ろで持てるようになってきます(46~60分の保持率55.4%、61~75分の保持率62.9% Football LABより

 後ろで持てるようになるとエウシーニョが下がる必要がなくなりどんどん前に出てきます。エウシーニョが前の内側に入ってくるので左サイドの小林成豪が絞る。小林が絞ると中山は対面の香川と1対1になり仕掛ける状態を作れる。こんな感じで徐々にポジショニングでチャンスを作れるようになってきます。

 61分に唯人→後藤、河井→西澤の交代。中山を左のワイドに置いて1対1を仕掛けさせるとその流れはより顕著になってきます。

 ここからは左に中山、右に西澤でクロスを上げて中で合わせる狙い。中山が左に回ってからは流れ自体をこちらに引き込みチャンスも何度か作り出します。

 しかしチャンスは作っても決めれないいつものパターン。徐々に高さを加えて最後はヴァウドを入れての鬼のパワープレー。

 しかし最後に入ったエンリケトレヴィザンが想像以上に強い。

 最後は不完全燃焼でタイムアップを向かえてしまいました。

 

 こんな流れで振り返ってきました。エスパルスの守備面は?それはもう大変なのでなしにします。

 最後に僕の全体の感想を言うと始めの方は上手くいかず、でも少しずつ修正して後半はまあまあやれていたのではないかと。ただやれていても点が決まらず負けてしまうのはやっぱり問題でそこは監督が”分析しがたい”とコメントした部分であると思います。やれていたから負けていいとは思っていません。

 それでもチームが成長しているかといえば成長しています。これは間違いない。どんなにイマイチに見えてもここ数試合は狙った形でチャンスを作り出せていてそれはチームのやりたいことが浸透している証だと思います。これは絶対続けるしかない。

 後はチーム戦術を使って相手とやりとりすること(ハーフタイムを待たずにピッチで何らかの修正をして欲しかった)、そして何よりゴールを決めることでしょう。

 そしてそのゴールに関しては僕は唯人だと思っています。現在、チームとして確立されたゴールの形のひとつはサンタナへのクロス。こちらはそれで実際に点も取っています。

 もうひとつ必ず決定機として表れるが唯人のゴール前での突破。これも唯人のためにスペースを作って彼の力を生かすチームで作る形です。これが決まるようになれば一気に複数点が取れるチームになれると思います。まあ、これ希望なんですけど(笑)

 どちらにしても計算できる得点パターンはもう一つ欲しい。なので唯人と唯人が作ったチャンスを決める周囲の選手。そこには過剰に期待しているんですけどね。

  

以上、今回はこれで終わります。

試合結果

大分トリニータ1-0清水エスパルス

得点

38’町田也真人(清水)

昭和電工ドーム大分 /屋内/気温13.9度)

選手交代

清水 61’奥井(西澤)、61’後藤(鈴木唯)、71’指宿(中山)、87’ヴァウド(中村)、87’福森(奥井)

大分 68’渡邉(小林成)、74’福森(松本)、89’エンリケトレヴィザン(小出)