2020年明治安田生命J1リーグ第12節 清水エスパルスvs横浜FC レビュー【横浜FCのビルドアップに対する清水エスパルスの守備】】

 中2日の厳しい日程。フィジカルコンディション低下の影響が表れたような試合内容でした。特に守備に関してはプレスがかからず簡単に前進を許し3失点してしまいます。実際に疲労の影響は間違いなくあったでしょう。しかしこの試合内容を運動量の不足だけに押し付けるのは少し単純過ぎに感じます。

 ではこの試合での意図や狙いは何なのか。それは今の自分の考察力ではわかりかねます。なので今回はあまり考察を入れず守備について現象面だけを見ていきたいと思います。

 サッカーは複雑なので書いたものが全てではありません。それはわかった上で単純化して一部だけ浮き出したものと考えてください。

 それではまず両チームのスタメン紹介。

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【すこし前置き】

 まず本題に入る前に4-4-2ブロックを組んだ時にスペースのできやすいところを確認しておきます。下図の赤くマークしたエリア。

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 各選手の間はどうしてもスペースができやすくなります。中でも始めに使われやすいのが2トップの脇。ビルドアップのスタート地点になることの多い場所です。442の配置のままだとフォワードの横はピッチの横幅を2人でカバーしなければなりません。それは物理上不可能なので、守備側がここへのプレスをどうするかは注目すべきポイントです。

【前半開始から40分ころまで】

 さて本題。横浜FCの保持に対してやや引いて4-4-2のブロックをセットする清水。一方、横浜FCは4-4-2の配置から下の図のように変化してビルドアップを開始します。

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 これは4-4-2のチームが保持する時の定番の可変です。

 これを清水の4-4-2ブロックとかみ合わせると横浜FCの各選手が清水の4‐4-2ブロックのちょうど間。先に書いた4-4-2のスペースができやすい場所に横浜FCの選手がポジションしている状態です。簡単に言えば清水は横浜FCにこの配置通りにボールを運ばれてシュートに結びつけられていました。

 横浜FCは2トップ脇にボランチの佐藤が動いてボールを持つのがスタート。清水はそこに対して竹内が前に出てプレスをかけていました。

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 しかしボランチの位置から2トップ脇へは距離がある、加えて周囲の選手の連動がないためこのプレスが上手くかかりません。逆に竹内が動いてできたスペースにボールを通され楽に相手に前進を許していました。

 この現象は前半ずっと全く同じ仕組みで何度も繰り返されています。

 ただ選手はこれはまずいなと感じていたはずで、竹内をステイさせて西澤が前に出たり、どうしたらいいかを探り探りしている様子が見てとれます。しかし西澤が出てもサイドが空いてサイドバックにパスを通されます。後は同様なボールの運ばれ方です。

 25分に飲水タイムがあったので何か修正があるだろうと思っていましたが、再開後はまた竹内の単独プレスに戻っていました。そして当然同じように竹内が出た後ろのスペースを使われます。

 これが前半40分手前まで続きます。フィジカル的に動けなかったにしてもカルリーニョスも後藤も守備をさぼる選手ではありません。動かないのは何らか理由があったのだろうと思います。ちょっとそれがわからず疑問に思う時間帯でした。

【40分手前から前半終了まで】

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 40分手前辺りの時間になると、清水は最前線からのプレスを敢行するようになりました。私の確認では38分のプレスから変化したように感じます。

 ゴールキーパーが持ったところからプレスに行き、後ろも連動して全てのパスコースを塞ぐように前に出てきます。

 金子のゴールもこのプレスの形から生まれています。ゴールキーパーカルリーニョスがプレスに行くと上に図示したように周囲のパスコースを全て塞ぐように連動して前に出てきます。プレスを受けた南から松浦へパスが出て、それをヘナトがカット。右サイドで相手のマークを外した金子へ展開して金子がゴールを決めます。狙いを持ったプレッシングからのゴールでした。

 ちなみにこの時の金子の動きに注目します。ヨンアピンにぴったり付かずにマーカーを監視しながら裏も狙える位置。ヨンアピンから少しずれたポジションを取っています。彼は守備をしながらも相手から浮くようなポジションを取るのが非常に上手く味方がボールを奪ったら即座にカウンターに移行することができます。この能力はチーム随一です。本題とはずれましたが、ここまで金子の評価がいまいちのようなのでちょっとした宣伝です(笑)。

【後半から終了まで】

 ちぐはぐだった前半から修正されプレッシングとセットした守備を使い分けるようになりました。

 セットした際の一番の変化はカルリーニョスと後藤が相手のディフェンダーに対して制限を入れるようになったことです。

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  図のように周囲が相手をマークしたり背中でパスコースを消すことで、竹内が前に出て行っても容易にパスで逃げられることがなくなります。これで前半のようにスルスルとボールを運ばれることはなくなりました。本来の清水の守備に戻った形です。

 これでもやはり動ききれずにプレスをかわされてしまうことがありました。しかしこの形を作った上なら「体力が持たずにプレスがかからなかった」も納得はいきます。

【最後に】

 納得はいきます、と書きましたが前半の守備が悪いと言うつもりはありません。とにかく走らなければ駄目だとも言えません。

 あくまで良し悪しでなく、こちらの守備のやり方と相手の保持からの前進について「こうなっていたよ」という観察記録を自分の見える範囲で書いてみました。もし見直しをする奇特な方がいらしゃればちょっとした道しるべにしていただければ幸いです。