2020年明治安田生命J1リーグ第14節 柏レイソルvs清水エスパルスレビュー【プランとプランの戦い】

 

1.スタメンと配置

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清水エスパルスのシステムは1-4-2-3-1

 左ウイングは久々に西澤がベンチスタートでドゥトラがスタメン。センターバックは川崎戦欠場したヴァウドが復帰です。

柏レイソルのシステムは1-3-5-2

  注目のオルンガは欠場。システムは基本の1-3-5-2から保持した時は1-3-4-2-1のワントップツーシャドーに、非保持時は北爪を前に出した1-4-4-2っぽく可変しているように見えました

2.エスパルスの守備局面について

 柏の保持時は中盤の戸嶋が前に出て前線がワントップツーシャドーのような配置。

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 清水の守備は終始ライン間でボールを受けるシャドーの戸嶋と江坂を捕まえるのに苦労しているようでした。

 清水の守備を眺めているとトップ下の中村が柏のアンカー大谷をかなり意識しているようで、大谷の移動に中村が動かされやすい傾向が見られます。そのためヒシャルジソンがフリーになると竹内が前に出てきて、両シャドーをヘナトが一人で見ている状態になっていました(下図)。

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 柏は清水のボランチが動いたタイミングでシャドーに縦パスを狙っています。特に古賀から戸嶋へのボールが多くそこを通されるとヘナトがスライド。ヘナトが戸嶋にスライドして中央が空くとそこに江坂が入ってフリー。このパターンは繰り返されていてちょっと危険な形でした(下図)。

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 その形を防ごうとサイドバック(奥井、金井)が絞ってシャドーに対応すると、今度は高い位置を取った柏のサイドバックが大外でフリーになります。

 清水の守備は相手ボランチの辺りを抑えてボールを奪おうとする意識があるように見えます。しかし、逆にボランチの動きでスペースを作られボールを運ばれています。それがここ数試合の守備のはまらなさの要因になっているのではないかと思います。

3.清水の攻撃局面について

 ボールを後ろから保持していきたい清水に対して柏は前向きに強いプレスをかけ続けてそのままカウンターに移行することを狙っているようでした。

 2トップが積極的にプレスをかけてサイドに誘導。

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 ボールサイドをマンマークで塞いで出口を無くします。そしてサイドの狭い場所に追い詰めたらボールホルダーに強くプレス。奪ってカウンターに移行します。

 またボールを逆サイドに展開されたら根性のスライド。

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 同様にサイドに追い詰めて奪いにいきます。
 このレイソルの守備によりサイドで詰まりなかなか前進できない清水。攻守ともに柏に上手くはめられてしまった前半でした。


4.後半の流れ

 後半になると清水がボールを持てるようになってきます。要因の一つとして清水がボールを左右に振るようになったこと、それに対して柏がスライドしきれなくなったことが挙げられると思います。

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 柏はスライドしてマンマークにいけなくなると右ウイングバックの北爪を下げて1-5-3-2でセットします。これでタイトなマンマークから解放された清水はボールを後ろでボールを動かしながら柏陣内まで前進できるようになってきました。

 セットする相手に対してはポジションの移動で相手の守備基準をあいまいにする普段の攻撃が効果を発揮します。より動きで相手をかく乱できる後藤と西澤の投入で攻撃が活性させたのは理に適った交代策だったと思います。

5.まとめ

 清水のサッカーはまずボールを保持することが前提になっています。それを実現するために柏の運動量と強い球際を前面に出したマンマーク気味の守備にどう対抗するかが一つのポイントになっていたと思います。

 それに対する答えが柏の強いプレスに1対1の強さで対応できるドゥトラと中村の起用だったのかもしれません。

 柏の守備は中盤3枚の負荷が高そうで、前半のプレスの形をフルタイム維持するのは難しかったと思います(ほぼブラックなタスクをやり通した戸嶋は凄かったけど)。 前半を2点リードで折り返せたことは柏にとっては願ったりかなったりのの展開だったでしょう。逆に考えればそこを乗り切れていれば清水にも勝機はあったかもしれません。

 智将ネルシーニョのチームだけあってプランが明確に浮き出た試合だったと思います。清水の方は監督のプランをやりきるにはまだ個々のプレーも組織力ももう少し成長させる必要がありそうです。