2020年明治安田生命J1リーグ第32節 鹿島アントラーズvs清水エスパルス レビュー【相手の土俵】

 ここ数年すっかり苦手化している鹿島アントラーズとの対戦。振り返れば2015年3月の勝利以来一度も勝っていないらしい。

 とはいえ平岡監督が就任してから上昇気流に乗りつつある清水エスパルス。ここで悪い流れを断ち切って久々の勝利が期待された。

 しかし開始早々の2失点。それを最後まで跳ね返せず0-2の敗戦だった。決して圧倒された内容ではなかった。しかし試合巧者鹿島に要所を締められずるずるとペースを握られてしまった格好だ。

 

 スターティングメンバーと配置は下図の通り。 

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・清水のシステムは1-4-4-2

 ディフェンスラインは前節と変わらずだが中盤から前は大幅のメンバー変更。注目はユース所属で2種登録の成岡。クラモフスキー体制では主に中盤中央に配置されることが多かったが、この試合では右SHでの起用となっている。

・鹿島のシステムは1-4-4-2

 メンバーは前節と変更無し。保持した時はSHが中央に絞りFW同様に振る舞う1-4-2-2-2のようになるのが特徴。

 

鹿島が保持した時は

・前線ポスト役への長いボール

・サイドでシンプルに動かして前へ

 

 主にこの2パターンが多いように見えた。

 ポストへのボールは収まれば良し、五分五分になっても内側に絞っているSHと前に押し上げるCHで即座にプレスをかける位置を取っている。鹿島の動きはトランジションが中央付近で起きた時に優位になるようあらかじめ設定しているようにも感じる。

 サイドからの前進の際にはまずCBが運んで清水の前線を動かす、または後ろを3枚(GKを入れる、CHを降ろす)にして横に動かしながら清水のSHを引き付ける。高い位置の中央付近から塞ぎたい清水の守備を前や内にずらして速いタイミングでサイドを動かしていく。

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 これら2つのパターンはどちらも清水の守備の網(高め、内寄り)を回避するような動かし方。

 しかも鹿島はSHが中央に絞って中へのパスコースを作っている。そしてCBはそれをのぞきながらボールを横に動す。早めにプレスをかけたい意識の清水の守備はそれに反応してより中盤の背後やサイドにスペースを作ってしまっていた。

 ボールをゴール近くに運んだ鹿島は2トップ+SHのコンビネーション。特徴は必ずボールに寄せにいく守備者の背後を突く動きが組み合わされているところ。

 中で詰まったらシンプルにサイドに開いてクロス。この辺はヤンヨンソン時代の清水の攻撃とイメージが重なるものがあった。

 

清水が保持した時は

・SBとSHが絡みサイドからの前進

・SB、SHだけだと詰まるのでヘナトがサイドに回っての打開(右サイド)

・鈴木が降りてきて起点になる

 

こんなところかな。

 鹿島はサイドに押し込めるようなプレス。プレスをかけ始めたらボールホルダーのパスコースを消す。持ち場を捨てても一気に押し込んでくるのが特徴。

 清水はサイドのパスコースを消される。ボールが通ってもボールサイドに寄せてくる鹿島の守備者にすぐ捕まってしまう。エウシーニョを中心にボールを運ぼうとしてもSHや2トップにボールが入った時に奪われることが多くなっていた。

 鹿島はプレスを回避されたらまず中央を消しながら下がって4-4-2を組む。清水もヘナトの飛び出しやエウシーニョのカットインからチャンスを作っていたがこの442ブロックを崩しきることができなかった。

 清水はサイドで詰まると鈴木やSHの選手が下がって受けるなどポジションを動いてボールを繋いでいこうとする。鈴木が降りることで宮本と共にボールを動かせる場面も出ていた。しかしヘナトの飛び出しも同じだが動いたことでネガトラが発生した時にスペースができてしまう場面が散見していた。

 

 これまでの試合を観てきて、清水は持っていない時にどう上手くやるかを中心に試合を組み立てているような気がする。ボールを保持している時はSHがどれだけ上手くボールの中継地点になれるかにかかっていて、他にそれほど手立てがあるわけではない。言わば現時点ではトランジション勝負のチームだ。

 しかしトランジション合戦の観点で見ると鹿島の方が上手く設計されているように見える。鹿島にプレスを回避された上、ボールを持たされてしまった清水は相手の土俵での勝負してしまった格好だ。これは個々の頑張りだけではどうしようもない部分だったと思う。