マッチレポート【2023年明治安田生命J2リーグ第17節 藤枝MYFCvs徳島ヴォルティス】

 注目しているチーム同士の対戦だったのでウォッチしてみました。とはいえ両チームに関してそれほど詳しくないので変なところがあったら教えてください。

メンバーと基本フォーメーション

 藤枝は3421、徳島は352の基本フォーメーションです。

藤枝の攻撃

 藤枝保持時の配置はおおむね下図のようになっていました。

 まずWBがワイドの高い位置を取り、1トップ2シャドーとともに5レーンを取る。

 ボランチの1枚がサイドや前線に出ていって、ビルドアップや崩しの局面でプラス1を作る。

 そして左右のCBが2トップ脇から持ち運んでいくのがスタートです。

 対する徳島の守備は5-3-2、またはボールを運ばれたら柿谷が下がって5-3-1-1。

 開始後、徳島は藤枝のボランチ2枚を中盤3枚で見るので、運んでくるCBを誰が見るかがあいまいに。そのため藤枝にボールを運ばれチャンスを作られます。

 藤枝は前線までボールを運んだら、WBが前向きでサイドで仕掛ける、またはIH(岩淵、徳永)とのコンビでポケットを取って速いクロスを上げていきます。

 相手が裏に対応したら、押し下がったDFラインの間を通すような横パスを中央に入れる。間に入れたら前線3枚でのコンビネーションを使ってシュートを狙う。こんなパターンを見せていました。

 前半、少し進むと徳島は守備を修正。2トップが背中でボランチを消して脇を運ぶCBへIHが、ボランチには白井がスライドする形を作ります。

 これで徳島の守備の制限が効くようになりました。それでも徳島はそこまで前から奪いに行かず基本は藤枝がボールを持つ流れでした。

 藤枝は後ろから運ぶと、5レーンに顔を出す前線へのボールを狙いますが、徳島も内側のレーンは塞いで何とか対応はできていています。

 時折、藤枝はサイドを突破してチャンスを作りますが、徳島のWBも対応し決定的な場面までは作らせない。こんな流れになっていたと思います。

徳島の攻撃

 徳島の保持はCB3枚にGKが加わり、後ろで動かすのがスタート。ここに藤枝は最前線からマンツーマンでかみ合わせてプレスをかけていきます。

 本来、後ろで動かし引き込んで背後のスペースを使いたい徳島ですが、藤枝がマンツーマンでくるため背後にフリーの選手が生まれません。

 ただし最前線からマンツーマンということは、後ろは同数になっているということで。

 そこで徳島は後ろで持つと、早めに前に長いボールを入れていきました。

 後ろも藤枝はマンツーマンで捕まえていますが、同数なので抜け出してしまえばそのまま背後を取れる状態です。29分の柿谷のシュートは対応していた小笠原の背後に抜けだしたもの。24分西野のシュートもフリーキックからダイレクトに出して裏に抜けたものでした。

藤枝の先制点 

 徳島にもチャンスはありましたが、プレスから前に出させて回収、そしてボール保持への流れは藤枝の望む構図だったと思います。

 そして前半39分、藤枝の先制ゴールが生まれます。直前の状況が下の図。

 この時、ボランチの横山が右の前に上がって前線でプラス1。これで徳島DF5枚に対して藤枝の前線6枚です。同時に岩渕が左側のハーフスペースに移動していて、これで藤枝左サイド大外で榎本をフリーにします。

 2トップ裏の平尾が中央アンデルソンを見ると、徳島が中を締める。そこで平尾はキックの軌道を変えて横山へパス。横山がレイオフで小笠原に落として逆側ハーフスペースの岩淵へ。

 岩淵がスルーしてボールはフリーの榎本へ。榎本は少しカットインして右足でファーに突き刺しました。

 強みであるワイドをフリーにするポジション取り、後ろから相手の重心をずらすキックを用いた個人戦術、そして榎本選手のシュート。すべてが見事な藤枝の先制ゴールでした。

後半

 徳島は森海渡、玄に代えて棚橋と坪井がイン。試合後の監督コメントにもあるように高い位置からプレスをかけてきます。

 2トップ、特に棚橋がCBまで積極的に出ていって、やり方としては中を切ってサイドに寄せるようなプレスでした。そして左右のCBにはIHが出てきています。

 これで藤枝のキックの方向を限定して中に縦パスを刺し込んだところを、中盤が狙い撃ちしてカットする。こんな守備になっていたように見えます。

 徳島がボールを奪えるようになると、切り替え局面がミドルゾーンで起きるようになる。切り替えの局面では藤枝も完全に人を掴めずに、徳島がボールを持てるようになると。

 藤枝はミドルゾーンでボールを持たれると、早めに5-4-1で撤退。すると徳島がワイドを使って藤枝ゴールに迫れる流れになりました。

 また徳島はビルドアップで白井が後ろに落ちて、藤枝のマンツーをずらしてボールを前進させるようになります。

 これらの修正が効いて徳島がペースを掴みましたが、またもやゴールを決めたのは藤枝。

 58分、藤枝のビルドアップにIHの坪井が出て行き、そこをひっくり返された形です。

 徳永のスルーで岩淵にパスが通り、岩淵はワイドの久保に展開。徳島が慌てて戻りましたが、守備がばらけてゴール前にはスペースができています。久保は得意のDFラインの前を横切るような低いクロスで折り返し、スペースで岩淵が受けて2点目を決めました。

 89分の藤枝の3点目も同じく。徳島は79分に櫻井を入れてダブルボランチの3-4-2-1にシステム変更。失点場面は前3枚と左WB西谷も前にプレスに出たところをダブルボランチの裏にボールを入れられる。背走しながら後ろ同数で対応したところに後方から入ってきた横山がフリーになってシュートを決めました。

最後に

 前半は完全に藤枝の流れ。後半は修正した徳島がやや主導権を握る流れでしたが、リスクを負って前に出たところを逆手に取られ失点という結果だったと思います。

 藤枝はボール保持、崩し、また守備局面でのハイプレスが強みのようです。ただ少し押し込まれてセット守備になった時に弱みを見せるかなという感じはします。

 徳島は前半押されてしまいましたが、後半は上手く修正したと思います。ただ修正で得たメリットと引き換えに生まれたデメリットで失点してしまった形でした。

 後半に限れば決定機の数はそれほど変わりありませんでしたが、最後のフィニッシュ局面は藤枝が上回ったといえるのかもしれません。