明治安田生命第9節 清水エスパルスvsベガルタ仙台~足りないのは個の力なのか

 盤面の動きだけでサッカーは語れないのは重々承知の上で。ただ配置と動きの特徴から考える部分も多少はあるはず。

 まず基本的な配置から。ベガルタ仙台のシステムは343、エスパルスは442。

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 ベガルタは守備ではWBが下がって541。特徴はFWの周辺で受ける相手(主に六平、野津田)にはボランチが前に出て対応、シャドーはあまり低い位置まで下がらないということ。
 完全にマンマークというわけではないが、右の枝村を見るのが左WB、鎌田を左シャドー、高い位置を取る松原を右WB菅井、ブロックの内側で受けようとする白崎には右DFの大岩が出て対応していた。
 エスパルスが保持している時の配置とマークはこんな感じ。

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 エスパルスの右を見よう。ベガルタのシャドーの11石原があまり下がってこないということは鎌田が上がれは枝村と2人でベガルタの左WBにどちらを見るか2択を迫ることができる。後はそれによってできるスペースを順番に使っていけばいい。理屈上はね。
 例えば、

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ベガルタボランチの1枚は守備のため中央にとどまるので図でいうと野津田がフリーになりやすい。そこでシャドーを引き付けながら高い位置に出る鎌田にパス。2番WBが鎌田に寄せる。その裏にスペース。

② そこに枝村が流れ、鎌田からのパスを受ける。50番が寄せる。左DFと中央のDFの間にスペース。

③ 鎌田がそこに進入。枝村からのパスでペナ角奪取。

 下のは実際の場面。

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 鎌田に付いた裏を狙う枝村。ここから、

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 枝に出たことでできたギャップに今度は鎌田が入っていく。こういうこと。
 枝村は中央へのクロスだったので実際は鎌田にパスは出ていない。しかし、できるスペースはお互い認識していたはず。
 ほかの場面でも枝村が内側に入れば鎌田は外を狙っていたし、自分でなく他の選手が作ったスペースに入ればそこに迷わずパスを入れていた。つまり枝村、鎌田はどう動けばどうスペースができるかがわかっていたのだろう。
後は、金子やボランチコンビがこのスペースを作る動きに絡んでくれていれば決定機まで持っていけたのではないかと思う。

 次は左を見る。
 ベガルタボランチが前に出るのでそこで白崎がパスを受けることはできる。しかし27番が付いてくる。

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 左で保持した時はこんな感じ。問題はその時できているスペースに入っていくだけで自分達から相手の守備をずらす動きが見られないこと。白崎、松原、金子は常にマークを背負った状態でパスを受けていた。
 実際の場面だとこんな感じ。

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 白崎は27番に狙われている状態でボールを受けている。ここからターンしようとして止められる(相手のファールになったけど)。
 常にこの状態でボールを受けるので、白崎、金子はターンで外して前を向く、松原はドリブル突破くらいしかやるプレーがない。選択肢がなければ相手は対応しやすいわけだ。結果、白崎、金子はミスが多いね、松原はミスるけど時々いい突破はするねという評価に繋がっているのではないかと思う。
 白崎に右CBが付いているということは構造的にベガルタのDFラインの右側は薄かったということ。また角田がシャドーを引き付ける動きをしていた時はベガルタの守備がずれる時があった。しかし、そこを意図的に狙う動きは見られない。これは個人のミスでなく(もちろん個人戦術の問題はあるよ)チームの仕組みの問題だと僕は思う。

 試合結果は0-3での敗戦だった。3失点はしたが守備の心配はそんなにしていない。監督が問題点を認識して、それを修正する手段を持っていればいい。去年から見ていてその手段を持っているのはわかる。それでもダメなら選手の能力の問題だし。
 ただ攻撃に関してはアタッキングゾーンではコンビネーションとテセ頼みなのは変わっていない。そして個の力で相手を上回れるのはテセくらい。
 カウンターのように相手の守備が崩れている状態なら問題ないだろう。しかし、後ろからビルドアップしての攻撃の時は相手チームの特定のゾーンを攻略していく仕組みが作られていないと得点を奪っていくのは厳しいかなと感じている。個々の連携ではなくてチーム戦術として。
 逆にこの仕組みがあれば今の選手でも充分チャンスを生み出せると思うのだが。監督はその手を持っているのかどうか。
 まあ、いい意味でこれを裏切ってくれればそちらの方が嬉しいのですけどね。