2020年明治安田生命J1リーグ第16節 清水エスパルスvs鹿島アントラーズ レビュー【プレスに対してはボール保持で】

 

1.スタメンと配置

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・清水のシステムは1-4-2-1-3

 前節から6人と久々に多めのメンバー変更。ボランチの河井はリーグ初スタメンです。

・鹿島のシステムは1-4-4-2

 清水同様に今期からスタイルの再構築に取り組んでいる鹿島アントラーズ。結果の出ないシーズン当初でしたがここにきて調子を上げてきています。

2.鹿島のプレスvs清水のボール保持

 鹿島の守備は、4-4-2で高い位置からプレス、パスの出どころを消しながらサイドに追い込み奪取を狙ってきます。そして清水が中村を降ろして後ろの数的優位を作ればサイドハーフを1枚上げて枚数合わせのプレス。

 枚数合わせのプレスにはキーパーを使って回避したいところ。しかし大久保はパス出しが得意なタイプではありません。そこで清水の一列目突破は中村や立田が相手を1枚かわして縦パス、または中村が2人引きつけて空いているセンターバックへのパスから行われていました。

 一列目を越えるとボランチの河井が相手ブロックの間で受けてリンクマンの役割。鹿島は一列目を外されると間で受ける河井が捕まえづらいよう。理由はトップ下から降りてくる鈴木やハーフスペースで受けようとする左ウイングの西澤が気になった。そんなところでしょうか。明確には言い切れませんけど。

 前半の飲水タイムまでは、強くプレスにくる鹿島に対してもしっかりラインの間にボールを入れて前進することができていました。

 清水のスタメン構成はターンオーバーだけでなく、鹿島のプレスに真正面から対抗する意図も多分に含まれていたものと思われます。

3.清水のロングボールによる攻撃

 短い距離のパスが注目される清水の攻撃ですが、長いボールも攻撃戦術に含まれています。ただしそれはセンターフォワードポストプレーを求めるものではありません。

 ディフェンスラインで左右に動かすことで相手のサイドバックの意識が前に向かったら、裏を狙う金子へ向かって長いボールを出しています。

 サッカーでは幅と深さが大切と言われますが、清水で深さを担当するのは主にサイドの金子になっているようです。

4.鹿島の攻撃局面について

 鹿島は清水の守備に対して下の図のようなポジショニングを取っています。

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2トップとサイドハーフでゴール前に菱形を作る配置。

 前進のスタートはカルリーニョスの脇から。脇から大外とハーフスペース、2つのパスコース。清水陣内に入ったら菱形から1人が裏抜け、清水のセンターバックが警戒して下がったらその前のスペースに入ってシュートを狙います。

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 清水の守備陣は鹿島のこの前線4人の関係を抑えるのにかなり手間取っているようでした。

5.飲水タイム後の失点

 しっかり保持して前進したい清水とプレスではめ込みたい鹿島の構図。それを考えれば前半の入りは清水ペースだったと言っていいでしょう。

 流れが変わったのは飲水タイムの後。 そして立て続けの2失点。

 鹿島の変化で見えたのは、間で受ける選手(河井や鈴木)へのプレスを強めたこと、保持ではセンターバックが深く持ち運び直接前に縦パスを入れるプレーを増やしたことなど(他にもなにかあるかも知れないので誰かぜひ教えてください)。

 清水は相手が変化すると上手く対応できずにそのままペースを握られ続けてしまう傾向があります。

 後半になれば再び持ち直す試合が多いだけに、少しの時間だけでも上手くやりすごす方法を模索して欲しいと思います。例えば流れによってはプランから外れてもリスクを抑えたプレーを選択するのもよいかもしれません。

6.さいごに

 前半途中からの悪い流れを後半は修正。1点差まで追い詰めますが惜しくも1-2の敗戦。

 連続失点のイメージが強くなってしまいますが、全体を通せばここ最近では良い流れを作れていた試合でした。

 メンバー的に保持を前面に出した構成でおそらくプランもそうしたものだったと思います。相手に対してどう対策するかは監督の志向次第ですがプレッシングが特徴の鹿島に対して正面から保持で挑んだのはクラモフスキー監督らしい選択でした。私は好印象を持っています。

 守備だけをどうにかしようと考えればもう少しやりようがあると思います(両ウイングを完全に下げてブロックを固めるとか)が、降格のない今シーズンのレギュレーションならばそれをやるのは逆に遠回りのような気もします。

 しかし常に得点を目指すスタイルだからこそ、守備でも精緻なポジショニングが求められますし通させてはいけないところは絶対防ぐべきです。前向きにチームを応援しつつも、できていない部分を見極めようとする姿勢もファンとしては間違いではないかもしれません。