凄い!で良くない?

イニエスタJリーグくるなんて凄い。リージョがJリーグの監督やるって凄い。

それで良くないですかね?

普通、まずびっくりするしワクワクするものじゃないですかね。

バルサ追っかけてないのにイニエスタwwとか、

リージョの戦術とか成績とか知ってるのかよとか、

凄い選手一人獲っても変わらないよとか、

面白いサッカーやっても勝てないよとか、

それが最初にくるのってちょっとシニカル過ぎないかね?

バルサで活躍する世界的に有名な選手と名将達が尊敬してる有名な監督。具体的に凄さがわからなくても、それだけでテンション上がるものじゃないのかな。

そのワクワクを提供してくれただけで、三木谷さん凄いと思うけどなあ。

ゾーンディフェンスは守備の魔法じゃない(と思うよ)

 試合がなくて暇なんで適当に思ったことを。特に強い主張はありません。

 これはシーズン始まったころから思ってたこと。ある論に対する違和感。

「ヨンソン監督になってゾーンディフェンスに取り組んでいる。これが完成すれば守備が良くなるはずだ」

ってやつ。

 完成ってなんぞやと。もう2年以上4-4-2ゾーンやってるし、基本はできてるじゃんと思うわけです。セットしての守備はヨンソンさんも前監督の小林さんもやり方は概ね一緒で目新しいことなんて別にしてないと思うんですね。

 守備がぱっとしないのはメンツの問題じゃないかと。中盤4人が攻撃に長所を持つタイプで決して守備が強いわけじゃないですからね。

 4-4-2ゾーンって失点を防ぐ魔法の技じゃなくて、たんなる守備の一般教養だと思います。それがないチームがゾーンに取り組んだら守備はがらっと良くなるかもしれないけど(2015年と2016年じゃ守備がらっと変わったよね)、エスパルスはある程度一般教養は身についてるんですよね。

 今のチームの失点っての逆にゾーンの特徴を利用されてやられてるような気がします。例えば、

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 サイドに運ばれて、ギャップをボランチがカバーに行ったスペースを使われるやつ。スライドしたギャップをカバーするのは4-4-2ゾーンのセオリーだけど、エスパルスはそこをよく使われますよね。

 他には、
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ボールホルダーに対して一人がアタック、横の選手は斜め後ろのポジションを取るというセオリー。この時、横に横に動かすと、守備者は斜め斜めにポジションするので中盤のラインが徐々に下がってしまう。そこでできた中盤のスペースをフリーで使われるというやつとか。

理論上はスペースはスライドしたり、前や後ろから列を変えてカバーするんだけど、ボールを繰り返し動かされたら常にスライドが間に合うわけじゃない。
 ということで、ゾーンどうのこうのじゃなくて後は個々の守備技術や判断力だったり、プレッシングのはめ方だったり、システム変更で乗り切ったり、その辺なんじゃないかと思うわけです。

 僕はヨンソンさんになって変わったのは、プレッシングと攻撃面だと思うんですけどね。

 おまけ。4-4-2ゾーンの弱点解説されてます。


明治安田生命J1リーグ第25節ベガルタ仙台戦 コーナーキックレビュー


 ベガルタ仙台の配置は以下の通り。

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 キッカーは野津田。左足からのインスイングのキック。ボックス内に6人。180cm台の大岩、平岡はファーサイドにセット。
 奥楚がショートコーナーとこぼれ球、後ろに富田と関口のカウンター対応。

 それに対するエスパルスの守備の配置は以下の通り。

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 ニアゾーンの前に長谷川、その後ろにドウグラス。その他はマンツーマン。大岩にファンソッコ、平岡にはフレイレがマーク。
 カウンター要因に金子、こぼれ球とカウンターの中継役に河井。

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 野津田のキックと共に中央前の阿部、蜂須賀がニア側へラン。マーカーの白崎、松原を引き連れてゴール前中央にスペースを作る。
 ファーの集団の内、椎橋と平岡はステイ。大岩がそこを膨らむように回り込み中央へ向かう。
 マーカーのソッコが付いていくが、ステイする平岡と椎橋、そのマーカーのフレイレと飯田の4人の集団がスクリーンになってマークが遅れる。

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 ボールはニアを越えて中央に向かう。ストーンのドウグラスが反応するがクリアできず。大岩が入ってくるがソッコは追いつけない。

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 大岩がシュート。ゴール前にいた石原がややファー側に動きデュークもマークに付いているためたファーのコースは消えたように見える。そのためか六反はニア側に動いて対応。しかしボールは石原とデュークの間を抜けてゴールイン。

 仙台のデザインを推測すると、

・最も高さのある大岩にシュートを撃たせる。

・シュートを撃つポイントはゴール前中央。あらかじめ中央にセットした選手をニアに走らせシュートポイントを空ける。

・大岩をシュートポイントから一番遠いファーにセット。間に2人の味方を置いてマーカーのファンソッコにスクリーンをかける。

・中央ストーンのドウグラスが追いつけないように、ニアを越えてゴールからやや離れたゴールエリアのラインの手前に落とす。

 スペースの空け方、マーカーをスクリーンしてマークを剥がす、ニアを越えてゾーンで守るストーンが触れない位置に落とすキック、シュートのコース。

 全てが決まった見事なセットプレーからのゴールだった。


ゾーンディフェンスの歴史の話...の続き

 
ようやく4バックのゾーンディフェンスまでやってきました。この本のゾーンプレスの章では、ここからミランでのサッキの戦術に続くのですが、その前に他の章にも注目します。この頃に各地で起きた重要な2つの戦術について触れてみましょう。
 
ヴィクトル・マスロフのプレッシング戦術
 
 
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1つ目の戦術の舞台は共産圏旧ソ連のチーム、ディナモキエフキエフで1964年から監督を務めたのがヴィクトル・マスロフです。マスロフは、選手全員を連動させ一気に守備の網をかけ相手からボールを奪うプレッシング戦術を生み出しました。
 
プレッシング戦術の誕生は、サッカーを11人と11人の個が戦うスポーツから、11人の選手が構成する組織と組織が戦うスポーツへ変換させた戦術思想史上の大きな出来事と言えます。
 
さらにマスロフの後、ヴァレリー・ロバノフスキーがサッカーに科学的なアプローチを持ち込むこむことでプレッシング戦術を進化させます。ロバノフスキー率いるソ連代表は、強烈なプレッシングとオートマティックな連動性を持った攻撃を武器に1988年ユーロで大躍進を果たします。決勝でオランダに敗れるもそのサッカーは西側諸国に大きな衝撃を与えました。
 
マスロフ、ロバノフスキーが作り出した戦術は共産主義という政治体制と一脈通じるアプローチであったのは間違いありません。そして共産主義体制の崩壊と共に、旧共産圏のサッカーもその力を失っていきました。
しかし彼らの戦術思想はその後の戦術家に確実に引き継がれていきます。後にドイツにおける新世代の戦術家として登場するラルフ・ラングニックはその代表的な一人と言えるでしょう。
 
 
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2つ目の戦術はオランダの地に生まれた「トータルフットボール」です。(トータルフットボールという言葉はミケルス本人でなく、メディアが名づけたそうですが。)
そもそもオランダ、アヤックスには古くから技巧的で攻撃的なサッカーを好む土壌がありました。
 
パスによるポゼッションサッカーの源流は、イングランドのキックアンドラッシュに対抗したスコットランドのクインズパークというクラブチームのサッカーだと言われています。1959年にその流れを汲むヴィック・バッキンガムが就任しアヤックスポゼッションサッカーを植え付けました。ヨハン・クライフはユース年代にこのバッキンガムの元で指導を受けています。
 
1965年、バッキンガムの後を受け就任したのがリヌス・ミケルス。ミケルスは中盤に厚みを持たせた4-3-3システムを採用。ヨハン・クライフを中心選手として、ポジションチェンジによる流動性とパスワークによる攻撃、高い位置からのプレスとラインの押し上げという現代サッカーにつながる要素を含んだサッカーを作り上げます。
この戦術の重要なポイントは、フォワード、ミッドフィルダーディフェンダーといったポジション毎に相手を上回ろうと勝負するのでなく、11人でピッチ上のスペースを支配しようという考え方です。
 
攻撃的で美しく、なおかつ強いトータルフットボールは世界中のサッカーファンを魅了しました。しかしこのサッカーを実現するためにはトータルフットボールをやるためにカスタマイズされた高い技術と戦術理解を持った選手を必要としました。そのためミケルスもクライフもユース年代からの育成の重要性を強く説いています。
結局、ミケルスのアヤックス、オランダ代表、クライフの「ドリームチーム」バルセロナ以降、トータルフットボールをピッチに表現するチームは長らく現れることはありませんでした。
 
ミケルスとマスロフ、彼らの思想は後のフットボールに大きな影響を与えることになります。
個と個の戦いから、組織と組織の戦いへ。ポジションからスペースの支配へ。この2つの大きな戦術思想の変化を理解して、ようやくゾーンディフェンスの歴史の舞台をイタリアの地に移すことにしましょう。 

(1988年欧州選手権ソ連vsオランダ)
(↑縦横がおかしくなっていますが、非常に興味深い動画ですね。)
 
 
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マンツーマンからゾーンディフェンスへと守備戦術が移っていく中、イタリアはその流れと一線を置く例外的な国でした。
 
 
カールラパンの「スイスボルト」は、インテルを率いたエレニオ・エレーラによって「カテナチオ」と呼ばれる守備戦術に整備されます。自陣に引いてのマンツーマン守備から少人数でロングカウンターというカテナチオ。この戦術は、1950年代から1960年代に全盛期を向かえます。以後、イタリア国内の戦術は1対1で勝つことが全てという発想が主流となりイタリアの伝統になっていきます。
そこに登場したのがアリゴ・サッキです。1980年代後半、サッキはACミランに就任すると、マンマーク思想がはびこるセリエAにゾーンディフェンスをベースにしたプレッシング戦術を採用。このサッキの生み出した戦術は現代サッカーにもいまだ大きな影響を与える革新的なものでした。 
 
(ナポリvsACミラン 1990/91年セリエA
 
ただしこのサッキの戦術革命は、一人のイタリア人戦術家が突如生み出したアイデアではありません。
個をベースにした守備から組織をベースにした守備。マンツーマンからゾーンをケアする発想。引いて守ってカウンターではなくプレッシングからショートカウンター。サッキの取ったアプローチは脈々と続く戦術史の流れ(ゾーンディフェンス、マスロフのプレッシング、ミケルスのトータルフットボールなど)を汲み、それをイタリアという土壌と融合させようという試みに他ならないのです。
 
リベロシステムからの脱却と新世代のドイツ人戦術家達
 
イタリア同様にマンツーマンへ独特のこだわりを見せていたのがドイツです。ドイツは1974年ワールドカップ西ドイツ大会で優勝しましたが、その時のシステムが皇帝フランツ・ベッケンバウアーリベロに配した4-3-3のリベロシステムでした。確かに1960年代後半から1970年代においてはリベロは最も先進的な戦術思想でした。しかしサッキのゾーンプレス以降、 他の国が次々とゾーンディフェンスを採用していく中、ドイツでは1990年代に入ってもリベロシステムが踏襲し続けられていたのです。
1990年代に入るとフォルカー・フィンケラルフ・ラングニックといった新世代の戦術家が頭角を現し、ようやくドイツでもゾーンディフェンスが注目されていくことになります。特にラングニックはロバノフスキーの影響を強く受けており、ドイツに根付き始めたゾーンディフェンスの土壌にプレッシングのエッセンスが加えられていきます。さらに彼の思想を引き継いだ、クロップ、トゥヘル、ナーゲルスマンなど現在活躍する優秀なドイツ人指導者がぞくぞくと出現し、今やドイツは戦術大国と言っても過言ではない地位を確立しています。
 
続いていく思考実験
 
これでようやく現代までやってきました。ここまで見てきて守備戦術の歴史とは人からスペースへという戦術思想の移り変わりだというのがわかると思います。その思想の変換を戦術としてピッチ上に具体的な形に表したのがサッキのゾーンプレス戦術です。
そして、スペースをいかに支配するかという攻防は現在も続いています。だからこそサッキの戦術は今でも戦術家達に研究され、様々な戦術のベースになっているのでしょう。

いかにスペースを支配するかという思想が進んでいくとプレッシングの重要度はますます高まっていきます。現在の守備戦術ではプレッシングはもはや欠かせない要素となっています。

プレッシングと言えばマルセロ・ビエルサが教祖的存在として有名ですが、彼はマンマークという一見時代に逆行する守備戦術を採用しています。しかし、彼がスペースを徹底的に支配するためにプレッシングを極め、そのために必要な手法としてマンマークを採用していると考えれば、ビエルサの戦術も現代の戦術思想に沿ったものだと理解できるでしょう。
 
この章で最後に触れられているチームは2004年ユーロで優勝したギリシャ代表。ギリシャを率いたドイツ人のオットー・レーハーゲルは1988年、1993年にブレーメンをドイツブンデスリーガ優勝に導いた監督でした。レーハーゲルはすでに過去のものとなり誰もが対策を忘れてしまったマンツーマンディフェンスを採用しギリシャを優勝に導いたのです。
 
次から次へと戦術のアイデアが提示され、アイデアが提示されるたびに何か対策を見出そうとする戦術家達が出てきます。戦術の歴史とは100年を超える正に思考実験の歴史です。
 
今回はゾーンディフェンスという軸に沿ってその歴史を辿ってきました。本では他にも様々な戦術の思想史について書かれています。それぞれの戦術がその時代の様々な戦術思想と網のように絡まり、影響し合い新たな戦術が生み出されていきました。
これらの戦術思想史の積み重ねの上に、僕達が今見ているフットボールは成り立っています。
 
思想のない戦術は中身の無い空き箱です。システムや選手の動きという目に見える戦術だけでなくその思想史に思いをめぐらせることで、より深くフットボールを理解できるようになるのではないかと思います。
 
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ワールドカップが終わってだらだらと、その2。日本人に合ったサッカー。

大雑把にというか単純に考えます。

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CBがボールを持った時、相手がプレスに来ます。さあ、どうしよう。

~考え方。その1。~

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ボールを持っているCBに、味方が近づいてパスコースを作ってあげる。近くの味方にパスが出たら、そこに合わせてまた動いてパスコースを作ってあげる。そのように次々と動いてパスコースを作りながらゴールに近づいていく。

キーワードとして挙げられるのは、

・近い距離感
・数的優位
・ショートパス
・流動的な動き

日本のスタイルはこちらに近いですね。ボールに直接多くの人数が絡むので、このスタイルを「組織的」といって好む人も多いような。

~考え方。その2。~

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相手がいないスペースにボールを出してしまう。

そしてそのスペースを起点にして攻撃を組み立てていく考え方です。

そのため必要なことは、

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・あらかじめフリーになりやすいスペースに人を配置しておく。
・前方のスペースに一発でボールを通せるCB。
・前線の選手を引かせずに前目にポジションさせておく。

離れた場所に人を配置しておくこと、長いボールを使うこと、ボールホルダに人を寄せないこと。これは組織的でないと嫌われることも多いですね。ハリルホジッチのサッカーを好まない人が多かったのもわかるような気がします。

日本人選手の特徴としては、ボール扱いが上手い、アジリティが高い、フィジカルが弱い、というのが挙げられます。世界のチームと戦うには、これらを考慮してチームを作ることが必要というのには異論がありません。

そしてそのアプローチは様々な方法が考えられると思います。

・低い位置から繋いでいくということは、自陣寄りで相手のデュエルを受けては交わすを何度も繰り返すということ。
・直接高い位置のフリースペースにボールを付ければフィジカル勝負を避けることが出来る。
・相手のゴールに近い位置で、高い技術や瞬間的なスピードなど優位性を発揮する。

ハリルホジッチの考えていたサッカーは日本人の特徴を生かすために理にかなったやり方だと思ってたのですけどね。ワールドカップで見たかったけど、残念でした。それは仕方ないとして「あのサッカーは日本には合わない」と考え方丸ごと否定されるのは今後を考えると勿体ないですよね。

とは言え、日本人の好むサッカーというのも大切なのも事実です。それが日本人の特徴を生かしたサッカーと一致しない場合もあるというのが難しいところですが。

今はどういうのが良いのか、よくわからんので、また色んなサッカーの試合を見て考えていけたらと思います。

何かイマイチぼんやりしたオチですみません😢⤵⤵

ワールドカップが終わってだらだらと

夢のような約一ヶ月間がついに終わってしまいました。これまでにないくらい試合を見まくりましたよ(それでもまだ見てない試合がHDの中に残ってたりして)。

さて、では感想。開幕前には、クラブチームのように整備された戦術を駆使してくるチームが多いのではなんて声が聞かれたりもしました。戦術クラスタ界隈では戦術理論の一般化、認知トレーニングなんてワードも話題になりました。

しかし、いざ開幕して見るとやっぱり選抜チームの大会だなという印象でした。基本的には4-4-2のゾーンで守って、相手の急所を狙ってシンプルに攻めるというゲームモデルのチームが多いかったですね。

4バックのゾーンで守って固い守備組織が作れていたのは、それが彼らにとって一番わかりやすい守備の共通言語だったからでしょう。つまり理解度が高く実行しやすいゲームモデル、そのチームのやり方を徹底できていたチーム、相手の組織の隙をぶん殴れる個がいるチームが勝っていた印象です。

日本代表に目を向ければ想像以上の良い結果を残してくれました。ただ上の条件に当てはまるかなと考えると「?」になってしまいます。

そもそも何故ゲームモデルが必要かというと、それがチームのプレーの基準になるからだと僕は理解しています。基準があればチームのプレーが一つになりやすい。チームスポーツなのでチームが一つになれば強いですよね。

日本はゲームモデルに関しては「?」なのですが、「基準」と考えれば明確なものがあったと思います。たぶんそれはいわゆる「俺達のサッカー」。「俺達のサッカー」は我がままなサッカーという否定的な意味で使われることが多かったのですが、今大会ではチームの一番わかりやすい共通言語としてゲームモデルの役割を果たしていたのではないかと思います。

ハリルホさんが解任されてから大会中、そして大会後。聞こえてくる話から推測すると日本代表は選抜チームではなかったような気がします。南アフリカ大会から続いている一つのチーム。南アフリカ大会で中心となった選手達は今後日本代表が強くなるために必死に努力してプレーを磨き、思考し続けてきたのでしょう。それが積み重なりチームのプレーの基準になっていたのだと思います。

そう考えれば主力選手が4年前にはザックさんの、今回ハリルホさんの戦術に異議を唱えたのは一貫して理由があったなと理解できました。それが良いか悪いかは言いませんが、少なくとも彼らにとっては自分の我がままを通そうとした行動ではなく、日本サッカーのために起こした行動だったのでしょうね。

西野監督が代表経験の多い選手、それらの選手と波長のあう選手を中心に選考したのも正解だったと思います。それにより基準が統一されるからです。プレーの基準といっても選手の内側から出てくるもので言語化出来るほど明確なものでないならば、監督が戦術を考えて与えるのでなく、選手側からの発信をまとめる形を取った方が良かったのでしょう。

海外のユース年代指導者が日本の選手は味方に気を使ったプレーをする、それによる即興性のあるプレーには驚かされると言っていたのをどこかで読んだことがあります。
今回の編成によってそういったものが日本の優位性として発揮された形なのかななんて思ったりしました。

戦術はあくまでチームのフレームを構成する一部分であって、中身を伴わなければ意味がありません。選手が一体となって全てを出し切れるものがあれば、多少あいまいなフレームでもそちらの方が勝利に近づける場合もあるということを学べたのは収穫でした。

仮にも今回それなりの結果が出たので(結果とは何を指すのかという議論もありそうですが)ちゃんと分析して良いところを抽出して今後に生かして欲しいと思います。しかし理論立てて考えるのが苦手な我が国のサッカー界(サッカー界だけじゃないけど)なので、経験と身内の自己肯定感でこれからの進路が決まっていきそうですね。自分達に合わないと思いこんで慣れないものを否定するのはもったいないような気もしますが。

まあ、肩ひじ張ってサッカーを考えても疲れるので、あるがままでサッカーを見ていきたいと思います。ムキにならず、かといって流され過ぎずに。twitterでは大人しくしてましたが、大会中めちゃ盛り上がって楽しんでましたしね。Jリーグも始まったことだしサッカーは基本的に楽しめる方向で行きますよ。



2018年W杯 日本代表 vs コロンビア代表 レビューを読み漁っての感想

ワールドカップ、何だかんだありましたが思いっきり楽しんでおります。代表の試合で有り難いのは、エスパルスの試合と違って詳しい人が何人も分析記事を書いてくれることでして。試合後も満喫しています。

日本対コロンビアの試合も幾つか解説されています。ほんとは自分で見直したいのですが結局よくわからん。なので、それらの分析を読んで最大公約数みたいのを拾ってまとめてみたいと思います。

開始早々にコロンビアの退場とPKによる日本の先制。結果に一番影響を与えたポイントがここというのはどのレビューでも同じ見解。ただ完全に偶然だったのかというとそうでもなさそう。試合の入りが緩かったコロンビアとしっかり集中して前への意識を持っていた日本。準備のしっかり出来ていた日本が「運」を引き寄せたというのが事実に近いような気がします。

1人少なくなったコロンビアはトップ下のキンテーロをボランチに下げてファルカオ1トップの4-4-1の守備陣形。そして守備力の一番低いクアドラードをはずしてボランチバリオスを投入。キンテーロをサイドに回します。クアドラードを残した方が良かったのではないかという論もありましたが、バリオスボランチに入れたのを評価したのは全員一致。ぺケルマンの頭の中を想像すれば、より守備を重視しながらワンチャンスを狙う采配。後は攻め返す時にどういう絵を描いているかで残す選手を決めたと。前半に関してはコロンビアの方が実際に上手く行っていたので、ぺケルマンの采配は成功だったと考えて良さそうです。

早々に1点リードした日本ですが、相手が1トップなのにも関わらず必要以上に後ろに人数をかけてボールを繋ぎ、そして相手ブロックの中に突っ込むように攻撃を仕掛けてしまいます。

コロンビアは待ち構えて、日本が突っ込んできたら奪ってカウンター。

日本側の状況としてはまずこちらが1点リードしている、そして相手は1人少なくなって、ブロックを固めて前に来なくなっています。。考えられる方法としては数的優位を生かしてゆっくり後ろで回して相手が前に出てきたら裏にボールを出しても良し、また相手の人数の足りないところにボールを動かしてじっくりボールを前進させても良し。どちらにしてもリスクをかけずにプレーしたいところでした。

1点リードした後のポイントとしては、日本が状況の変化に対応できず無駄にリスクをかけたプレーをしてしまったという点のようです。

ただ縦パスを奪われてカウンターを食らっても、相手の攻撃人数も足りないので日本はハードワークでなんとかピンチをしのぎます。

人数の多い日本がバタバタしながら前半は進んでいましたが、結局キンテーロにフリーキックを決められ同点でハーフタイムを向かえることになってしまいました。キンテーロを残したペケルマン采配が適中した形でした。

後半に入ると日本が修正を見せます。サイドバックの位置取りを上げて、香川をビルドアップに参加させずに相手ブロック内に留まらせます。これにより相手のブロックを押し下げて、柴崎、長谷部の両ボランチが高い位置で前向きにボールを持ちことが出来るようになりました。

特にブロック内で間受けのできる香川をバリオスが見るため日本のボランチがフリー状態。日本は優勢に試合を進められるようになります。

ここでこの試合もう1つの注目ポイント。ハメスロドリゲスの投入。その後にFWのバッカを投入していることからも、グループリーグの戦略として日本からは勝ち点3を取るというペケルマン監督の考えだったのでしょう。前半は守備を固めカウンターという狙いでしたが、後半守備の強度を下げても得点を狙って勝負にきました。その意図は理解できますが、結果としては守備力の低下というデメリットの方が大きかったようです。

日本は香川に代えて本田。ここで本田へは評価はわかれています。守備での貢献が低いこと、ボールを失う場面があったことなどがデメリット。相手を押し込んでいたのでミドルシュートやセットプレー、トランジションよりポゼッションで仕事が出来るというのがメリット。そしてハメスの守備が緩くコロンビアのブロック内にはスペースがあったので本田の特徴を生かすための条件は揃っていました。結果的に追加点に直接関わったことを考えれば彼を投入したメリットがデメリットを上回ったと言えます。またメリットはあるがデメリットも大きい選手を先発から外し、途中出場で仕事をさせた西野監督の采配は非常に理にかったものだったと言っていいでしょう。

で、やっと最後に感想です。

分析記事をいくつか読ませてもらいましたが、この試合に対しての評価は様々でした。しかしそれらの違いは書いている方のスタンスや注目点の違いであって試合で起こっている現象については概ね同じように理解がなされているような気がします。

開始早々に相手が退場したのは幸運でしたが、その他は内容に沿った結果が出ていたと言えそうです。

僕は日本代表を過小評価していて、戦術的にも個の能力(戦術理解、フィジカル含む)にしても世界との差は大きく、特にここ数年はどんどん世界は進み続けていると思っていました。

しかし、日本代表は思っていた以上にポテンシャルがありました。日本の選手は現時点でも状況さえ整えば世界の強豪チームとも技術的でもフィジカルでも、ちゃんと勝負ができていて、その差はわずかかほぼ無いとされ思えます。また戦術厨からは評価が低い西野監督も采配は的確だったと言えます。分析スタッフの力もあったかもしれませんがベンチは試合はちゃんと見えていました。

ただ前半を見るように、この力を発揮する条件が相手が状況を与えてくれた時、または偶発的に状況が出来た時に限られているのではないかという疑問も残ります。他の国の試合を見ているとまず自分達が狙った状況を作り出すという勝負をしているようです。例えばメキシコがドイツにマンマークをつけて使いたい場所にスペースを作ってカウンターを仕掛けたような。親善試合でもウクライナは日本の守備を見てビルドアップを変えていったし、ガーナも早々に日本の守備を見破ってきました。

実は日本と世界との距離自体はそれほど離れているわけではないのかも知れません。少しのずれを言うなら世界のサッカーが今どこで勝負しているか、そこに注目できるか。差はそこのなのではないでしょうか。

そう考えると、ボール周辺でどうプレーしようかという日本のサッカーと、勝負するための構図を作り出すことに強みがあるハリルのサッカー。今の日本のサッカーでは理解し合えなかったのかなという気もします。

まあ、あまり深くは考えていない直観的な感想ですが、果たしてどうなのかこの後の日本の姿を見ていきたいと思います。